反精神医学

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反精神医学(はんせいしんいがく、英語: Anti-Psychiatry)とは、1950年代後半から1960年代にかけて、伝統的な精神医学理論治療上の処置に対して提起された批判的な思想運動。

概要[編集]

主な批判内容は、

  • 異常とみなされた人々の強制入院基本的人権の侵害である
  • 精神医学は社会的逸脱にある種の精神病というラベルを付与する<社会統制(social control)>の一形態である
  • 狂気アサイラム(asylum)の必要性を産み出すのではなく、アサイラムが狂人の必要性を産み出す
  • 診断上のカテゴリーが表現しているのは、中立的な科学ではなく支配的な一群の価値なのであり、こうした診断上のラベルが使用されることによって精神的に病んでいる人々に烙印が押される(stigmatize)
  • 精神医学が利用している電気けいれん療法のような治療上の処置は、人間尊厳を傷つけるものであり、その効果も不確かなものである

反精神医学運動は、伝統的な形態に取って代わる一連のアプローチと処置を提示した。その根本的提案は、既存のアサイラムと精神病棟を閉鎖して、<地域医療(community medicine)>を選好することであった。この運動にはアメリカのトーマス・サス(T.Szasz,1971)、フランスのミシェル・フーコー(M.Foucault,1961)、イギリスのロナルド・D・レイン(R.D.Laing,1959)などが参画している。アサイラムが<全制的施設/全面的収容施設(totalinstitution)>であるとするアーヴィング・ゴッフマン(E.Goffman,1961b)の批判は、社会学の領域で影響力をもった。1960年代以降では精神病院からの退出が進み、外来診療の利用が増大しているので、現代では精神医学に対する批判はそれほど強いものではない。この脱施設化(de-institutionalization)あるいは脱監禁化(decarceration)が可能となったのは、一つには向精神薬が改良されたからであらう。しかし、精神医学の批判者からは、この政策がもたらされたのは、それ以上に入院加療費の増大によるものである、と主張する。

参考文献[編集]

N・アバークロンビー/S・ヒル/B・S・ターナー 丸山哲央監訳・編集『新しい世紀の社会学中辞典』ミネルヴァ書房 1997年 ISBN 46230347

関連項目[編集]