精神外科

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ロボトミー から転送)

精神外科(せいしんげか)は、かつて散発的に流行した、外科手術を行うことにより精神疾患の治療が行えるとした医療分野。代表的なものにロボトミーがある。後に脳神経外科学

目次

[編集] 術式

  • モニス術式
    • 両側頭部に穴をあけ、ロボトームという長いメス前頭葉を切る。
  • 経眼窩術式
    • 眼窩の骨の間から切断すべき脳の部分に到達する。
    • 外側から見える傷跡が無いというメリットがある。

[編集] 生理学的観点から

当時の標準的なロボトミーの術式は、前側頭部の頭蓋骨に小さい孔を開け、ロイコトームと呼ばれたメスを脳に差し込み、円を描くように動かして切開するというものであった。前頭前野と他の部位(辺縁系や前頭前野以外の皮質)との連絡線維を切断していたと考えられる。前頭前野は、意志、学習、言語、類推、計画性、衝動の抑制、社会性など、ヒトをヒトたらしめている高次機能の主座である。ロボトミーは前頭前野の機能を奪う、極論すれば「人間性を奪う」手術であったとも言える。

[編集] 死者

死者が多数出たが、正式な死者数や、死因が手術による者が何割かなどは不明である。切除により反応が低下するのは当然であるが、治療効果があったかどうかは疑問である。

[編集] 歴史

[編集] ロボトミー

1935年、ジョン・フルトンとカーライル・ヤコブセンがチンパンジーにおいて前頭葉切断を行ったところ性格が穏やかになったと報告したのを受け、同年ポルトガル神経科エガス・モニスが、リスボン大学で外科医のアルメイダ・リマと組んで、初めてヒトにおいて前頭葉切裁術(前頭葉を脳のその他の部分から切り離す手術)を行った。その後、1936年9月14日ワシントンDCのジェームズ・ワシントン大学でもウォルター・フリーマン博士の手によって米国で初めてロボトミー手術が激越性うつ病患者(63歳の女性)におこなわれた。世界各地で追試され、そのうちには成功例も含まれたが、特にうつ病の患者の6%は手術から生還することはなかった。また生還したとしても、しばしばてんかん発作、人格変化、無気力、抑制の欠如、衝動性などの重大かつ不可逆的な副作用が起こっていた。

しかし、アメリカのW.フリーマンとJ.W.ワッツにより術式が“発展”されたこともあり、難治性の精神疾患患者に対して熱心に施術された。1949年にはモニスにノーベル生理学・医学賞が与えられ、1952年には教皇ピオ12世も容認発言をしたほどであった。しかしその後抗精神病薬が発明されたことと、ロボトミーの副作用の大きさとあいまって行われなくなった。また、エガス・モニスもロボトミー手術を行った患者に銃撃され重傷を負った。現在は精神疾患に対してロボトミーを行うことは禁止されている。

[編集] ロボトミーという語の意味

人をロボットのようにしてしまうからロボトミー、という誤解も一部であるが、ロボトミーとはロベクトミー(=葉切除)と同義である。肺や脳などで、臓器を構成する大きな単位を「葉」と呼ぶが、葉を一塊に切除することを意味する外科分野の術語である。

大脳は前頭葉や側頭葉、頭頂葉などから構成され、肺は上葉、下葉などから構成される。

当項目のロボトミーとはすなわち「前頭葉切除」を意味する。 肺ガンなどのため肺の一部を葉ごと切除する、例えば肺下葉切除などもロボトミー(臨床ではロベクトミーの方が用いられるが)の一種である。

[編集] 日本

日本では1942年新潟医科大学(後の新潟大学医学部)の中田瑞穂によって初めて行われ、第二次大戦中および戦後しばらく、主に統合失調症患者を対象として各地で施行された。施行された患者数は、一説によると3万から12万という。

日本では1975年に「精神外科を否定する決議」が日本精神神経学会で可決され、それ以降は行われていない。日本ではこのロボトミー手術を受けた患者が、同意のないまま手術を行なった医師に対し復讐と称して殺人を行った事件がある(ロボトミー殺人事件)。

[編集] その他

  • 難治性てんかんなど他の神経疾患に対しては、両側帯状回切除術が行われることもある。
  • 2007年夏には、大相撲の現役横綱を診察した「精神保健指定医産業医美容外科(精神外科)医」が自身のHP上やマスコミに対し再三「美容外科は精神外科だ」と発言しているが、この「精神外科」はこの記事で述べていることを指しているのではなく、「精神のために行う外科処置」程度を表す比喩的表現であると推察される。

[編集] 精神外科を取り上げた作品

  • 手塚治虫の漫画ブラック・ジャックでは、精神外科の描写がある第58話「快楽の座」が単行本未収録となっている。他にも未収録の作品はあるが文庫版や他の書籍での収録や改作などが行われていないのはこの作品のみである。少年チャンピオンに掲載後、表現などの問題で抗議が来たためと考えられるが、この話において手塚は、精神外科に対し否定的な描写をしている。また、描写が認められる(単に言葉が使われているだけ、しかも誤用されている)ものとして、第41話「植物人間」がある。これは単行本(旧版少年チャンピオン第4巻)に収録されていたが、後に「からだが石に…」に差し替えられた。
  • 渡辺淳一の『脳は語らず』は、1970年代に日本の大学で行われ、後で週刊誌などに取り上げられて「事件」に発展したロボトミー手術をドキュメンタリータッチで描いた小説である。
  • 家庭用ゲームソフト「零~月蝕の仮面~」では精神疾病の治療のための精神外科を取り上げている。そのためか、取扱説明書には、一部に現在では使用されていない表現が使われているという旨の注意が掲載されている。
  • 同人ゲーム「ひぐらしのなく頃に」では過去の回想として登場人物の一人である入江京介という医者の父親が脳の外傷で性格が急変したという描写がある、入江は医者だったため、性格の急変の理由を理解していたが、周りの人物が皆「外傷で性格が変わる」ということを理解できず、母にいたっては死ぬまで「夫と同じ墓に入りたくない」と言っていた。そのため入江は精神外科の道に進み始めるが、精神外科の否定により学会より放逐される。

[編集] 関連