二回投票制

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二回投票制英語: Two-round system)とは、選挙方法のひとつ。投票を二回行うことが多いため、この名がある(必ず二回行われるとは限らない)。フランスの大統領選挙における採用例が有名である。

概要[編集]

多くの場合、ひとりの公職者(大統領州知事自治体首長など行政府独任制の長や、小選挙区制を採用する場合の議員が多い)を選出する際、どの候補者も最初の投票において一定数の得票に届かなかった場合に、上位の候補者のみによって二回目の投票(決選投票)を行い、それによって決着をつける(このため最初の投票で一定数の得票をする者が出た場合はその者がそのまま当選となり、二回目の投票は行われない)[1]。上位二者のみを決選投票に残すことが多く、この場合は自動的にどちらかの候補者が過半数を得ることとなるため、Instant-runoff voting などの選好投票と並んで絶対多数制に位置づけられることが多い。長所としては幅広い支持によって公職が選出されることが期待できること、死票が抑えられることがあげられる。いっぽう、短所としては何といっても投票を2度行う手間やコストがあげられる。

フランス下院の実例[編集]

ただし、よくこの典型例とされるフランス国民議会下院)の選挙においては、現在の規定では決選投票に進むのは単純に小選挙区の上位二者というわけではなく、8分の1以上の得票をした候補者(正確には有効得票の50%超(2分の1)かつ登録有権者の25%以上(4分の1)の得票を得た候補がいない場合において、登録有権者の12.5%(全体の8分の1)以上の得票を得た候補。ただし、この条件を満たす候補が誰もいないか1人しかいない場合は、上位二者)となっている。そのため決選投票においては三つ巴の選挙戦となり、絶対多数ではなく相対多数で決まる場合も多い。これまでモーリス・デュヴェルジェジョヴァンニ・サルトーリらの研究により、この制度は複数政党制一党優位政党制ヘゲモニー政党制に陥らない意味での多党制)や小政党の存在を最初の投票で容認・維持しつつ、二回目の決選投票では次善の候補者への投票を促すことにより少数意見をある程度は反映させながら二大政党制に近い二大政党連合制を継続的に実現できる、優れた制度とみなされてきたが、特に最近はゴーリストなどの系譜を引く右派(現在は国民運動連合に結集している)と社会党共産党などの左派の二大勢力だけでなく、これらとの協力をしない極右国民戦線の進出により、この前提が崩れてきている。またフランソワ・バイル率いる中道新党民主運動も決選投票に残った場合に左右両派との協力をせず、独自の選挙戦を続けることがある。

また、過去のフランスでは第三共和政の時代から下院選挙に二回投票制を使うことが多かった。しかし当時は左右両派からそれぞれ有力候補を絞り込むのではなく、中道政党として左翼右翼保守)の両派から幅広く集票できる急進社会党に有利に働き、同党が第三共和政で中核的な政治的位置に君臨する要因となっていた。この違いは第三共和政が(第五共和政半大統領制と異なり)議院内閣制を採用しており、首相を信任する下院の力が大きかったためだという。

定数が2名以上の場合[編集]

二回投票制は主に小選挙区制において用いられるが、公職者を2人以上選出する選挙(大選挙区制)においても採用されることがある。この場合、例えば総投票数を「定数+1」で割った商(これをクォータ(英語: Quota)という)を求め、それを上回った候補者をまず先に当選とする方法が考えられる(定数が2なら、3分の1以上を上回った候補者を当選とする。2人の候補者が3分の1を上回った場合、3位の候補者が3分の1を上回ることはありえないため)。そしてここで当選者が定数を下回った場合は、先に当選した者以外の候補者のあいだで残る議席をめぐる決選投票を行うことになる。これは比例代表制の一種である単記移譲式投票を簡略化し、二回投票制で行うようなものである。大選挙区制における二回投票制はスイス連邦議会全州議会上院)選挙[2]イランイスラーム諮問評議会国会)選挙[3]で行われている。またリヒテンシュタイン国会では政党名簿比例代表が採用されているが、第1回投票で泡沫政党(8%を得られなかった政党)をふるい落とし(この考え方は阻止条項に近い)第2回投票で残った政党どうしで非拘束名簿式比例代表制に基づく選挙を行う。

日本[編集]

日本では現在、一般の有権者が公職を選挙する方法としては用いられていないが、間接選挙においては広く用いられており、国会における内閣総理大臣指名選挙をはじめ、政党である民主党代表選挙自由民主党総裁選挙などで採用されている。ほかに公職でない各種の選挙(自治会など)において使用される例も多い。また過去には地方首長選挙で1946年法定得票数(有効得票数の8分の3)を満たさない場合に限り導入されたことがあり、都道府県知事市町村長の選挙で適用例も多かったが、1952年に法定得票数を有効得票数の8分の3から4分の1に引き下げるとともに決選投票制から再選挙制に移行され、行われなくなった。

各国の採用例[編集]

他にも数多くの国・政体での採用例がある。

参考文献[編集]

  1. ^ 「諸外国の選挙制度 ―類型・具体例・制度一覧―」国立国会図書館 ISSUE BRIEF NUMBER 721(2011. 8.25.) [1]
  2. ^ 三輪和宏「諸外国の上院の選挙制度・任命制度」p.13 [2] これによるとスイス上院の議員選出方法は、によって非常に多様だという(例にあげたような方法はジュネーブ州で行われている)。同国の連邦制地方分権直接民主主義の伝統を反映したものと思われる。
  3. ^ 松永泰行「イラン・イスラーム共和国における選挙制度と政党」p.8 [3] これによるとイランの場合、第1回投票では総投票数の4分の1を上回った候補者を先に当選とし、残った議席を決選投票で争う。

関連項目[編集]

  • 単純小選挙区制 - 二回投票制はこの制度の欠点に対する批判から誕生したため、よく対比される。