ヴァルカンエンジン

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博物館で展示されているヴァルカンエンジン
ヴァルカン2エンジン

ヴァルカンエンジン(Vulcain)は、欧州宇宙機関(ESA)のアリアン5ロケットエンジンである。

概要[編集]

性能諸元
  ヴァルカン [1] ヴァルカン 2 [2]
真空中での推力 1120 kN 1340 kN
海面高度での推力 800 kN 900 kN
燃焼室圧力 114 bar 117 bar
膨張比 45:1 60:1
比推力 433 s 431 s

ヴァルカンエンジンはガスジェネレーターサイクルの液体水素と液体酸素を推進剤とする液体燃料のロケットエンジンである。チューブウォールの内部を推進剤を循環させることによって冷却する再生冷却構造でヴァルカン2はノズルの下部をフィルム冷却する構造になっていてタービンを駆動した後の排出ガスはエンジンに再噴射される[3]。アリアン5ロケットの第一段EPC (Étage Principal Cryotechnique,主低温段)の総離床推力の8%を供給する[4]。 (残りは2本の固体燃料ロケットブースターから供給)両方のエンジンの燃焼時間は600秒である[1]。全高3 m、直径1.76 mで重量は1686 kgで最新型の推力は137 tである[5]。酸素ターボポンプは3 MWで13600 rpmで回転して水素ターボポンプは12 MWで34000 rpmで回転する。総流量は235 kg/sで水素はそのうち41.2 kg/sである。

歴史[編集]

フランス国防省は1957年に既に低温燃料ロケットエンジンの開発を決めていた[6]。最初の試作機が1964年に運用開始されて以来多くの世代のエンジンが開発された。1987年にハーグで開かれたESAの閣僚会議より強力な運搬ロケットであるアリアン5の開発が承認され、同様に新しいエンジンであるヴァルカンエンジン(正式名称HM60)の開発も承認された。スネクマによる比較的短期間の開発の後、1990年4月に最初のヴァルカンエンジンの燃焼試験が行われ、1996年6月4日に最初の打ち上げに使用された。改良型のアリアン5GSにはヴァルカン1Bと呼ばれるエンジンが使用される。燃焼室圧力が10bar上昇したことにより推力は20kN増えた。

1990年代末により強力な上段エンジンの重量が増えた事により大型のアリアン5 ECAが提案された。後継のヴァルカン2が開発された。2002年12月11日の最初の打ち上げ時にノズルが高温の負荷によりノズルを構成する管に亀裂が入ったことにより冷却材が失われ破壊に至った。更に真空環境下においてバックリングが座屈で破損した[7]

ヴァルカンの開発は1988年に始まった。1996年にアリアン5ロケットに搭載されて打ち上げたが失敗した。1997年に最初の打ち上げに成功した。2002年には20%推力を増加した改良型のヴァルカン2が最初の打ち上げを行ったが失敗。原因は重量過多と推測される。ノズル形状が再設計された。最初の飛行が成功するのは2005年の打ち上げだった。

開発の特徴[編集]

ヴァルカンエンジンはガスジェネレーターサイクルロケットエンジンである。燃焼室はチューブウォール(壁面が管で構成されている)構造である。比推力は433秒である。ヴァルカン2ではノズルが伸展式になっており、膨張比を45:1から53.8:1まで変えることが可能である。その構造上、従来用いられてきた液体水素を循環させてノズルを冷却することが難しい為、水素ガスを噴射する事で炎が直接あたる事を避けるフィルム冷却を採用している。その為、比推力が初代に比べやや落ち、431秒である。ただし、燃焼圧力の増加と進展式ノズルの採用により膨張比を高める事によって相殺している。

製造会社[編集]

主な製造会社はスネクマである。液体水素ターボポンプの供給も行っている。液体酸素ターボポンプはイタリアのアヴィオ社である。ターボポンプを駆動するガスタービンを製造しているのはスウェーデンのボルボ・エアロ社である。

脚注[編集]

  1. ^ a b Volvo Aero: Vulcain - characteristics”. Volvo Aero. 2007年5月12日閲覧。
  2. ^ Volvo Aero: Vulcain 2 - characteristics”. Volvo Aero. 2007年5月12日閲覧。
  3. ^ L. Winterfeldt, B. Laumert, and R. Tano, Volvo Aero Corporation, Trollhättan, Sweden; P. James and F. Geneau, Snecma, Vernon, France; R. Blasi and G. Hagemann, EADS Space Transportation, Ottobrunn, Germany (2005年7月10日). “Redesign of the Vulcain 2 Extension (PDF)”. American Institute of Aeronautics and Astronautics. 2007年6月26日閲覧。
  4. ^ ESA - Launch Vehicles - Vulcain Engine”. European Space Agency (2005年11月29日). 2006年12月16日閲覧。
  5. ^ ESA - Launch Vehicles - Ariane 5 ECA”. European Space Agency. 2006年12月16日閲覧。
  6. ^ Vulcain engine Artikel auf esa.int vom 29. November 2005.
  7. ^ Prof. Wolfgang Koschel im Magazin des Zentrums für Luft- und Raufahrt, Juli 2005, S.19

リンク[編集]

ニュース[編集]