ビホルダー

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ビホルダー (Beholder) とは、テーブルトークRPGダンジョンズ&ドラゴンズ (D&D) に登場する架空の生物状の体に巨大な一つを持つ。D&Dへの登場以後、他のファンタジー作品にも多数の類型の(そして名前の異なる)生物が登場している。

概要[編集]

直径2~3mほどの状の体に巨大な一つを持つモンスター。さらに頭頂には小さな眼がついた触手が10本ほど生えている。手足はなく魔法的な力で地面からわずかに浮遊して移動する。

D&Dでは非常に強力なモンスター種族[1]として描かれ、ドラゴンイリシッド(マインドフレイヤー)に並ぶプレイヤーキャラクターのライバル的種族である。その強力な存在感からキャンペーンシナリオなどではボス役を飾ることも多い[2]

D&Dのルール上では属性は一般的に「秩序にして悪」(ローフル・イビル)。知性は高く人間の言葉を解し高度な魔法を使うことも可能。頭頂の触手からは様々な不思議な効果を持つ怪光線を放つことができ、これはプレイヤーキャラクターに対して大きな脅威となる。

ビホルダーの能力として代表的なものは、巨大な一つ目[3]から放たれる不可視の魔法無効化光線である。視線に晒されている間、通常の魔法は打ち消され、さらにマジックアイテムですら魔力を失う(魔剣がただの剣となり、魔法の回復薬等もただの水となる)。ただし、効果時間に制限の無い物(主にマジックアイテム)なら、視界から逃れれば魔力を取り戻す。更に、触手の先の目玉は、それぞれ相手を石化する、分解する、即死させるなどの多種多様な能力を持っている。特に「分解」は物も生物も塵に分解してしまうため、この光線を受けると死亡するのは勿論、遺体も残らないため蘇生魔法が使えないという恐るべきものである(分解自体は高レベルの魔術師キャラクターも使用可能。また分解や蘇生魔法より高レベル(最高レベル)の魔法である「願い(wish)」で肉体を復活させれば蘇生魔法を使える)。これら特殊能力ゆえに、高レベルのキャラクターであっても苦戦は必至である。小眼による攻撃には、自ら放つ魔法無効化光線内に入ると効果が消えてしまうという弱点が存在するが、実際は小眼の能力を使う瞬間に巨眼を閉じるため、アクションゲーム以外では問題が無い[4]。またビホルダーを挟み撃ちにしようとすると、正面のキャラクター以外は巨眼の影響を受けない代わり、一度に同じ方向に向けられる小眼の本数制限から開放されるため、全ての小眼を使える様になる。

ビホルダーの死体から作り上げたアンデッドは魔法無効化光線を放たなくなるが、代わりに魔法反射の能力を持つようになる。あくまで巨眼の能力のため、生前の無効化光線と同様正面以外では効果が発揮されない。また、アンデッドビホルダーを狙った魔法以外はこの影響を受けないため、マジックアイテムや回復魔法、強化魔法を使えるのが敵対者にとっては幸いである。

他のファンタジー作品におけるビホルダー[編集]

後述する「鈴木土下座ェ門」の事件以降、日本ではビホルダーには強い権利問題が絡むという認識がある。そのため、D&D以外の多くのファンタジー作品においては、ビホルダー(のようなもの)を出演させる時には、名前や一部デザイン等を変更して登場させることが通例となっている。

2000年以前のD&Dの制作・販売元であったTSR社(後にWotC社が買収)が、権利関係で厳しい姿勢を示していたことは有名だが、ビホルダーの権利問題が過剰に意識されている背景には日本語版販売元(当時)であった株式会社新和がTSR以上に厳しい態度を取っていたことがある[5]

ただし英語でビホルダー(beholder)は「見つめる者」と言う意味で英和辞典にさえ載っている一般名詞のため、英語圏では商標登録ができず、同様の設定や外見を併せ持った著作権違反を犯さない限り問題は無い。

鈴木土下座ェ門[編集]

萩原一至の漫画『BASTARD!! -暗黒の破壊神-』に登場した、ビホルダーの外観に加えてを持つもの。週刊少年ジャンプ掲載時は手足はなく、名前も「ビホルダー」だったが、単行本掲載時に権利関係の問題により名前・デザインが変更されている[6]

「D&Dの日本販売元(当時)であった新和がジャンプ編集部にクレームをつけた際、担当の『鈴木さん』という人物が土下座して謝ったため、単行本での修正の際に名前が鈴木土下座ェ門になった」とOVA版『BASTARD!! -暗黒の破壊神-』のイベントで発言していたとされる。萩原の担当編集者に鈴木がいたという事実はなく、「土下座ェ門」という名前も適当に決められたものである[7]

「鈴木土下座ェ門」という名前のインパクトから、当時は読者に大きな話題になり、D&DやTRPGを知らない人間にもビホルダーという名前だけは広く知られることになった。D&Dオリジナルモンスターが他のファンタジー作品に無許可で出演している例はビホルダーに限らず多いが、ビホルダーだけ話題になりやすいのはこの事件に由来するとされる。

なお、作中では後ろからの一撃を受けて魔法無効化がゆるんだことにより倒されるが、本来のビホルダーでこのようなことはありえない。

コナミのアクションゲーム『悪魔城ドラキュラ』シリーズには、鈴木土下座衛門に似た「ドゲザー」というモンスターが登場している。

バグベアード[編集]

ソード・ワールドRPG』に登場する、球状の体に巨大な一つ目を持つ生物。名前のモデルとなったのは水木しげるがケルトの妖精から名前を持ってきてデザインした妖怪バックベアードだと思われる(外見がビホルダーに類似しており、特殊な眼力を持つという共通点もある)。

ゲームデータとしては石化能力、金属分解能力などがありビホルダーを強く意識している。リプレイに登場した際はプレイヤーから「土下座衛門!」と呼ばれている。

メドーサボール[編集]

ドラゴンクエストシリーズに登場する。ビホルダー自体がギリシャ神話メデューサに似た部分があるため(石化能力、頭頂の触手など)、それを逆手にとって「メデューサの頭部の形状をしているモンスター」がビホルダー相当のものとして作られた[要出典]。強化種として「ゴーゴンヘッド」というものもいる。

その他[編集]

上記以外にも多くのファンタジーゲームで、「ゲイザー」、「アイ・タイラント」(目玉の暴君。D&Dでもビホルダーの俗称として使われている)、「イビルアイ」など、様々な別名でビホルダー相当のモンスターが出演している。

Dr.モローのコミック『賽の目繁盛記』においても「名前を言っちゃいけない怪物」としてスカイライン(仮)と言う仮名で登場した。

逆に、「ビホルダー」の名前をそのまま使った作品も上記『バスタード』以外に、以下の様にいくつかある。

  • ファイナルファンタジー
    ファミリーコンピュータで発売された一作目のみ、「ビホルダー」の名前、同じ容姿で登場する(ニューファミコンと同時期に発売されたファイナルファンタジーI・IIでは、容姿のみが変更。それ以降の移植版では名前も「イビルアイ」に変更)。
    ファイナルファンタジーXIにも、同名のモンスターが登場するが、容姿の方は前述の権利問題を考慮しているらしく、英単語の意味に則した完全に別物の姿(ヘクトアイズ族と呼ばれる、スライムのような軟体の塊の前面に多数の眼球がついているという姿)となっている。
  • 魔界塔士Sa・GaSa・Ga2 秘宝伝説
    ゲームボーイ版では目玉系の最高ランクのモンスターとして登場しているがリメイク版以降はやはり名前が変えられている。FFでの改称「イビルアイ」は既にゲームボーイ版で「イーブルアイ」(どちらも元の英語は「Evil Eye」)が使われた為、「デスアイ」(FFでは亜種「デスビホルダー」からの改称)に改称。
  • ソーサリアン
  • ザナドゥ
  • カイの冒険
    近年の関連作品『攻めCOMダンジョン ドルルルアーガ』では「イビルアイ」に改称。
  • 大魔界村
  • ダンジョンマスター
  • ミスティックアーク
  • ウィザードリィエンパイアシリーズ
    「ビホルド」「アンデッドビホルド」という容姿が酷似したモンスターが登場する。モンスターグラフィックの大半は後の「エルミナージュ」シリーズに流用されているが、この2体は版権の都合上流用されていない。
  • マビノギ
    スキル封じと移動制限を加えるビームを放つ、大きな目玉しか持たない「ビーパー」というモンスターが登場する。「ビホルダーシールド」という、盾表面に大きな目玉の描かれた丸い盾も存在する。
  • RED STONE
    一対の羽で空を飛び、小さな2つの目玉と尻尾を生やした大きな目玉「アイウィング」郡の1種として登場している。原作通りの多種多様な異常状態を引き起こす魔法に加え、凄まじい威力の攻撃魔法も操る。また他のモンスターと違い捕獲されることもない。

脚注[編集]

  1. ^ 数多くの階級に分けられ、最下級のビホルダーでさえ、容易に初級のPCを瞬殺しうる。さらに下位のビホルダーを召喚する、生命力を吸収するなどの特殊能力を持った中位以上の種になると、登場数やPC側の戦術ミス一つでワンサイドゲームの末に全滅することもありうる。
  2. ^ 実際にビホルダーがラスボスを飾った有名な例としては、D&DベースのコンピュータRPGアイ・オブ・ザ・ビホルダー』がある。
  3. ^ D&Dではマジックアイテムの材料にもされる。
  4. ^ アクションゲーム『ダンジョンズ&ドラゴンズ タワーオブドゥーム』ではボタンを押した瞬間に魔法が発動するが、本来はクラシック・ダンジョンズ&ドラゴンズで10秒、ダンジョンズ&ドラゴンズでは1分以上の呪文詠唱が必要なため、眼を閉じた瞬間のみを狙う事は不可能。逆にビホルダーは巨眼にしろ小眼にしろ睨むだけで良い。
  5. ^ 新和が出版していた『オフィシャルD&Dマガジン』では「バス会社が「東京ディズニーランド前駅」を作ろうとしたら、ディズニー側から名称の使用料を請求された為、駅名を変更した」という例を出し、アメリカの商標権の厳しさを挙げて弁明している。ただしこれは事実誤認であり、実際には同駅を作ろうとしたのは鉄道会社のJR東日本(現・京葉線舞浜駅)であり、ディズニー側からは使用料の請求ではなく、イメージ管理の観点から許可が降りなかった、というのが真相。ディズニー開業当時のバス会社はディズニーリゾートの経営グループ(オリエンタルランド)100%出資の子会社であった。
  6. ^ バスタードQ&A#コミック2巻”. BASTARD!!のPAGE. 2007年5月13日閲覧。
  7. ^ 萩原一至古橋秀之 『BASTARD!! -暗黒の破壊神- NINJA MASTERガラ外伝』 株式会社集英社、2012年3月24日、第一版、284ページ。ISBN 9784087032383

外部リンク[編集]