イリシッド

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イリシッド(Illithid)、あるいはマインド・フレイヤー(Mind flayer)は、テーブルトークRPGダンジョンズ&ドラゴンズ』(D&D)に登場する架空の魔族である。マインド・フレイヤーとは、“精神を砕く者”という意味であり、その名の通り精神攻撃の超能力を使う異世界からの邪悪な来訪者である。彼らは複数のキャンペーン・セッティング(D&Dのゲーム世界)において、アンダーダークのような地下世界の湿った洞窟や地下都市に棲息し、他の知性的な種族を超能力で奴隷にしたり、あるいは脳漿を捕食してしまうことで恐れられている。

元ネタ[編集]

イリシッドをデザインしたのはゲイリー・ガイギャックスである。彼はブライアン・ラムレイクトゥルフ小説、『地を穿つ魔』から着想を得たとコメントしている[1]。そうならば、この作品に登場するクトーニアンがモデルとなる。

掲載の経緯[編集]

イリシッドはD&Dオリジナル版の最初期から登場している。

D&D オリジナル版(1974-1976)[編集]

イリシッドが初めて登場したのは、TSR社の公式ニュースレター、『The Strategic Review』1号(1975年春)で、そこでは、「獲物を捕食するための4本の触手を口元に生やした、人間に似た非常に賢い生物」と紹介された。このニュースレターで、イリシッドが4本の触手で相手を捕らえ脳漿を喰らうこと、5フィートに届く衝撃派による精神攻撃で相手に精神異常、激怒、混乱、昏睡および死を与えるといった現在まで継承されている特徴が設定されている[2]

製品版では3番目のサプリメントEldritch Wizardry』(1976、未訳)にて、「脳を貫き、それを食べるために引きずり出すための触手を持った、非常に賢い、人型の(秩序にして)悪の生物」と紹介された。

AD&D 第1版(1977-1988)[編集]

アドバンスト・ダンジョンズ&ドラゴンズ』(AD&D)第1版においてイリシッドは『Monster Manual』(1977、未訳)に登場。『ドラゴン』78号(1983年10月)には、ロジャー・E・ムーアによって“マインド・フレイヤーの生態”特集が組まれた。

『ドラゴン』150号(1989年10月)には、Stephen Innissの寄稿によるイリシッドによって完全に破壊された世界を扱った "The Sunset World" 特集が掲載された。同号でのモンスター紹介コラム、"Dragon's Bestiary"には同じ作者によるイリシッドと似た生態を持つ怪物、“イリシッデー(Illithidae)”が紹介された。

AD&D 第2版(1989-1999)[編集]

『Monstrous Compendium VolumeⅠ』(1989、邦題『モンスター・コンベンディウムⅠ』)に登場し、『Monstrous Manual』(1993、未訳)に再掲載された。

、『ダンジョン』24号(1990年7、8月)にはジェームズ・ジェイコブスによる冒険シナリオ“Thunder Under Needlespire”にイリシッドの貴族、ウリザリッド(Ulitharid)が登場し、『Monstrous Compendium Annual One』(1994、未訳)に再掲載された。

超能力を扱ったサプリメント、『The Complete Psionics Handbook』(1991、未訳)では本書用に組み直されたイリシッドが登場した。
フォーゴトン・レルムの暗黒都市、メンゾベランザン(Menzoberranzan)を扱った『Book One: The City』(1992、未訳)にはイリシッドがリッチ(自らアンデットと化した魔術師)となったアルホーン(Alhoon)が登場した。

1998年にはイリシッド専門のサプリメント、『The Illithiad』(未訳)が発売され、そこではイリシッドを率いる脳漿、“エルダー・ブレイン(Elder brain)”や、イリシッドがローパーに寄生した“ウロピオン(Urophion)”が登場した。また、冒険シナリオ『Dawn of the Overmind』にはイリシッドの起源が掲載された。

D&D 第3版(2000-2002)、D&D 第3.5版(2003-2007)[編集]

D&D第3版では『モンスターマニュアル』(2000)に登場し、第3.5版の『モンスターマニュアル』(2003)に再掲載された。3.5版の『Monster Manual V』(2007、未訳)には宇宙にある異世界スーン(Thoon)に旅立ち、彼の地のエルダー・ブレインに支配された“スーンのマインド・フレイヤー(Mind flayers of thoon)”が登場した。

モンスター種族をPCとして選べるサプリメント、『Savage Species』(2003、未訳)ではプレイヤー用種族として登場している。

『Expanded Psionics Handbook』(2004、邦題『サイオニクス・ハンドブック第3.5版』)ではイリシッドのサイオニック版が登場した。

異世界からの来訪者を扱った『Lords of Madness: The Book of Aberrations』(2005、未訳)にはイリシッドを紹介する章がある。また、この本でイリシッデー、ウロビオン、エルダー・ブレインが再登場した。

また、ゲームにおける善の定義を著した『The Book of Exalted Deeds』(2006、邦題『高貴なる行ないの書』)では改心し正義の使徒となったイリシッド、サクアルムが登場した。

D&D 第4版(2008-)[編集]

D&D第4版では、『モンスター・マニュアル』(2008)、『モンスター・マニュアルⅢ』(2009)に登場している。モンスター・マニュアルⅢではエルダー・ブレインも登場している。また、同族によって肉体改造された“スーン・ハルク(Thoon Hulk)”が登場した。この版で登場する個体は以下の通りである。

  • マインド・フレイヤーの潜入者/Mind Flayer Infiltrator (MM1)
  • マインド・フレイヤーの首魁/Mind Flayer Mastermind (MM1)
  • マインド・フレイヤーの審問官/Mind Flayer Inquisitor (MM3)
  • マインド・フレイヤーの懲罰者/Mind Flayer Scourge (MM3)
  • スーン・ハルク/Thoon Hulk (MM3)
  • エルダー・ブレイン/Elder Brain (MM3)

また、エッセンシャルズのモンスター集、『Monster Vault』(2010、未訳)では以下の個体が登場している。

  • マインド・フレイヤーの奴隷主/Mind Flayer Thrall Master
  • 見えざるマインド・フレイヤー/Mind Flayer Unseen
  • 調和するマインド・フレイヤー/Concordant Mind Flayer

D&D 第5版(2014-)[編集]

D&D第5版では、『Monster Manual』(2014、未訳)に登場している。

D&D以外のテーブルトークRPG[編集]

D20モダン[編集]

D&Dのシステムで現代物を扱う『 d20モダン・ロールプレイング・ゲーム』にイリシッドの現代版が登場している。現代版イリシッドは技能として英語、スペイン語、ドイツ語、日本語に堪能である。イラストでは神父の身なりで説教台に立つイリシッドが描かれている[3]

迷宮キングダム[編集]

迷宮キングダム第1版では“ココログライ/Brain Eater”の名でイリシッドによく似たモンスターが登場する[4]。 第2版およびサプリメント、『大殺階域』では“脳漿喰らい/Mind Flayer”に改名されている[5]

迷宮キングダムにおけるマインド・フレイヤーは百万迷宮(迷宮キングダムの舞台)の地下深くに巣くう“深人”の支配者階級で、特徴もD&Dのイリシッドによく似ている。

肉体的特徴[編集]

イリシッドの身長、体重は人間とほぼ同じである。肌は藤色で、粘液で覆われている[6]

イリシッドの頭部はタコに似ている。彼らの口はヤツメウナギに似ており、口元には4本の触手が生えている。この触手と口を使い、獲物を捕らえ脳漿を吸い出して食べる。目は瞳のない白目である。また、イリシッドの指は3本もしくは4本である[7]

生態[編集]

イリシッドは雌雄同体であり、すべてのイリシッドが一生に2、3度ほど卵を産むことができる。卵は1ヶ月ほどで幼体へと成長する。イリシッドの幼体は成体同様に4本の触手があるオタマジャクシのような姿をしている。幼体は(後述する)エルダー・ブレインの浸るプールの中で10年ほど成育される。幼体はプールの溶液を栄養とするが、エルダー・ブレインによる捕食などにより成育するのは1000匹に1匹程度である[8]

幼体が十分に成育すると、イリシッドの共同体は成体へと変質させるために、“セレモルフォシス/Ceremorphosis”(“Ceremony”と“Metamorphosis”の合成造語。“変質儀式”ほどの意か)を行う。イリシッドは生贄たる人型生物の頭に幼体を植え付け寄生させる。寄生した幼体は犠牲者の頭蓋に入り込み、脳漿を食い尽くして肉体を乗っ取ってしまう。数日後には肉体成体のイリシッドになり、犠牲者の肉体的痕跡は消え失せる。
セレモルフォシスには犠牲者の種族によって適合、不適合の違いがある。献体として向いているのは人間、エルフドラウギスゼライギスヤンキグリムロックノールゴブリンの類、オークとされる。ドワーフハーフリングノームデロドゥエルガルセントールジャイアントのようなサイズの違う種族や、クオトアのような非哺乳類の種族は好ましくないとしている。イリシッドはセレモルフォシスのために奴隷の中から良好な献体を選ぶか、最良の献体を求めて地上世界を襲撃する。
人間以外の生物に対してもセレモルフォシスは行われたが成功例は少なく、大抵は双方が死んでしまう[8]

肉体が成育した後、能力が開花し一人前となるまでにおよそ20年ほどかかり、その間は共同体の中で過ごす[9]

イリシッドの寿命はおよそ115~135歳ほどである。強い精神力を持つ種族であるイリシッドは、死後も脳の感覚を保っている。脳はただちに摘出され、エルダー・ブレインの浸るプールの中に漬け込まれる。そしてエルダー・ブレインと融合し集団意識となる[7]

眷属[編集]

アルホーン(Alhoon) アルホーン(“イリシリッチ”とも呼ばれる)は死霊術の力でリッチとなったイリシッドである。アンデッドと化した皮膚は粘液を失い干からびている。死後エルダー・ブレインと融合するのが通例たるイリシッドの社会で、死と融合を拒むアルホーンはイリシッドの社会から迫害されている[9]

ウリザリッド(Ulitharid) ウリザリッドは一般的なイリシッドと同様に育つが、セレモルフォシスが完了するまでその幼体がウリザリッドであるかは分からない。ウリザリッドが生まれる確率は0.1%未満である。ウリザリッドは触手の数が2本多く、すべての能力でイリシッドより優れている。その横柄さも際立っており、統制できるのはエルダー・ブレインのみである。ウリザリッドの身長は7~8フィートで、通常のイリシッドより2倍長く生きる[9]

ヴァンピリック・イリシッド(Vampiric illithids) 吸血鬼と化したイリシッドである。この特異なアンデッドがどのように誕生したのかは不明である。分かっているのは、このイリシッドは卵を産むことができず、生きるために血液と脳漿が必要であり、より野性的で知性に乏しいことである。彼らの触手はより太く、棍棒のように振り回して攻撃してくる。他のイリシッドにとってヴァンピリック・イリシッドは忌まわしき敵である。
ヴァンピリック・イリシッドはレンヴンロフト世界の冒険シナリオ集、『Thoughts of Darkness』(1992、未訳)が初見とされる。このシナリオではヴァンピリック・イリシッドを生産しようとするイリシッドの長が登場する[10]

ヤゴール(Yaggol) ドラゴンランスにおけるイリシッドに相当する種族。
彼らが棲息するのはタラダス大陸の南、暗く霧がかったネロンの樹海である。彼らの文明を記す歴史はクリン草創期の終わりにまで遡る。彼らの帝国はアンサロン大陸でハイ・オーガが帝国を樹立したのと同時期に繁栄した。同じネロンの住人たるCha'asii族のエルフはヤゴールによって奴隷にされ、ヤゴールの支配を逃れる力を得るまで悲惨な境遇だった。大戦争が起こった後、互いに甚大な被害を出しヤゴールの帝国は潰えた。ヤゴールの生き残りはAkh-Tazi谷にある黒曜石の寺院に棲息している。
帝国崩壊後も度重なる襲撃と殺害によって平和を脅かされたCha'asii族は離別し、安心して暮らせるKe-Cha-Yat村を設立した。

起源[編集]

イリシッドの(ゲーム世界上での)起源は過去の版と現行の版との間でしばし食い違いがあり、謎に包まれている。それらの相違点はイリシッドの本性を隠す連続した後付け設定(Retroactive continuity)か、あるいは完全に違う物語なのかもしれない。
3.5版のサプリメント、『Lords of Madness: The Book of Aberrations』では滅亡に貧した未来の世界から、それぞれのゲーム世界における2000年過去の時代へと遡ってきたとしている[9]

第2版のサプリメント、『The Illithiad』では、イリシッドは彼方の領域という既知の次元界とは完全に無縁な不可解な世界から来たのではないかと示唆している。この書ではタイムトラベルに関する言及はないが、人類の歴史の数千年前から彼らは何処から出現し、世界の数多に広まっていったことを、最古の種族による最古の古代史書の幾つかに(他の種族に関する言及はないものでさえ)イリシッドに関する言及があることが明示している[8]

第4版では、『Wizards Presents Worlds and Monsters』(2008、未訳)にて、イリシッドが彼方の領域を起源としていることに言及している。

この物語における2つの相違点は、サーゴンヌ予言書(The Sargonne Prophecies)という(ゲーム内で設定された)予言書による所が大きい。『The Illithiad』では予言というより古代神話のように読み間違っているような説明をしている。一方、『Lords of Madness』ではサーゴンヌ予言書が文字通り正真正銘の予言書、あるいは未来の歴史であると述べている。

あるいは『The Illithiad』より前に出たスペルジャマー世界のサプリメント『The The Astromundi Cluster Cluster』(1998、未訳)では、イリシッドはアストロムンディ(Astromundi)と呼ばれた、今は滅んだ世界を支配していた人間たちのなれの果てたる子孫であると設定している。追放された人間は地下深くにてマインド・フレイヤーへと変貌していった。この書ではアストロムンディにおけるイリシッドの神Lugribosskの設定がされたが、その後イリシッドの神イルセンシーン(Ilsensine)へと設定を後付けされた。アストロムンディは独自の歴史を持った新しい世界なので、『The Illithiad』と『Lords of Madness』のどちらかで見つかったイリシッドの改竄された歴史の中で、アストロムンディのイリシッドの出現はイルセンシーン神の設定が盛り込まれたことで異常な出現となった。

しかしながら、それが発生するたびに、イリシッドは遠い昔の物質世界に到着し次第、他の知的生物を奴隷にすることによって己の帝国を築こうとした。彼らは成功し、彼らの世界を跨る帝国はすぐに全宇宙での最大版図を築いた。彼らには人工的な世界を築くための力…、サイオニック能力と、無数にいる奴隷を持っていた。その世界は千年をかけて星々を冠状に仕立てた“半影”(Penumbra)と呼ばれる帝国の中枢であった。イリシッドの勢力は、デヴィルデーモンに、イリシッド帝国と取引するために流血戦争を休止させるほどであった だが、イリシッドの主立った奴隷種族は、彼らの主人が発する精神支配への抵抗力を高めて反旗を翻した。ギスという戦士に導かれて、反乱は帝国全土に拡大し、帝国は瓦解した。イリシッドは滅びる運命だった。

イリシッドにとって幸運なことに、ギスは将軍の1人、ゼルシモンの裏切りにあった。そして、ゼルシモンはギスが専制的で過度に攻撃的であると主張し、両者の対立は内乱へと発展した。そして、奴隷たちはギスヤンキとギスゼライとに分裂した。イリシッドはこの混乱に乗じて地下世界に逃れることができた。
『ダンジョン』100号はギスの祖先たちが最初に棲んでいた場所はPharagosの名で知られていた世界であると紹介している。現在、それは「フォーゴトン・レルムやグレイホークのような魔法や神の奇跡に乏しい、注意を引かない物質世界」と記述されている。その世界の荒廃した砂漠の下に、ギス族が崇拝していた神の石化した骸がある。第1版および第2版の多くで言及しているように、ギス族の祖先はイリシッドの冒涜的な科学技術によって無数の世代の間に改造させられる前の、人間の文明であった。

D&Dの原型となったミニチュアゲーム、『チェインメイル』の背景世界(後のグレイホーク)では、オアリク大陸西部に存在したザルム(Zarum)という地下帝国がギス族の祖先の故郷としている。彼らは首都アニトゥル(Anithor)から他の種族を支配していた。彼らは厳格なカースト制度で、彼らの生活は古代の儀式によって決められていた。古代にギス族が崇めていた神の名は忘失したが、ザルムの廃墟は聖地と寺院が乱立している。ザルムが隆盛していた期間がどのくらいであったか確証はないが、グレイ・エルフの賢者はオアリク大陸西部を破壊したデーモン戦争のおよそ2000~3000年前ではないかと推測している。

ある時、イリシッドは近隣の異世界からザルムを侵略した。ギス族は激しく抵抗したけれども、彼らはマインド・フレイヤーのサイオニック能力に対抗できる術を持っていなかった。かくして、彼らは奴隷になった。“怒れる魂の川”はイリシッドとギス族との間の恐ろしい戦いの名残である。多くはイリシッドの奴隷として異世界に連れ去られた。ザルムの他の都市はイリシッドの監督が彼らの奴隷に何世代もの間強制労働を強いた牢獄へと変わった。

ギスの反乱の後、彼女は一族をアストラル界に連れて行った。僅かな従属種と生き残ったイリシッドがオアリクにいる間に、ギスの祖先は永久にこの世界から去っていった。もし彼らがザルムの遺跡への関心を練っていても、彼らはそれをひた隠しにするであろう。アニトゥルの遺跡の一部はその後、ドラウのキルセク(Kilsek)族が植民した。彼らはその新しい開拓地をカラン・ゲルド(Kalan-G'eld)と名付けた。

活動[編集]

イリシッドは悪辣でおぞましい性格と、他の人型生物を超能力で操り、脳漿を貪り喰らう行動から闇の世界にいるすべての種族から恐れられている。中にはデロのように崇拝をする種族もいれば、ギスゼライギスヤンキのように過去に奴隷の身になった経緯から仇敵となった種族もいる。

現在、イリシッドは宇宙の再奪取と永遠の支配をすべく研究と実験を繰り返している。彼らは社会混乱よりは文明の力を理解しているので、精神操作の超能力を駆使して、社会を裏から操ろうとする。イリシッドは地上の定住者が知性を増して、魔法と科学技術を進歩させるたびに、彼らの心を徹底的に調査する。イリシッド自身も精神修養による新たなサイオニック能力の開発に時間を費やしている[9]

イリシッドは食料や労働目的で、地上世界に定期的な奴隷狩りを行う。一般的に、マインド・フレイヤーはテレポートのゲートを作り出して、遠隔からの精神支配を仕掛けてくる。手に入れた奴隷たちはよく訓練した部下の手によって地下世界へと連行されていく[9]

社会[編集]

イリシッドの都市は、エルダー・ブレインと呼ばれる都市の中心部で脳髄液のプールに棲んでいる巨大な脳漿によって支配されている。イリシッドは死ぬとその脳漿を摘出され、エルダー・ブレインのプールへと投入される。イリシッドはエルダー・ブレインに取り込まれることで意識を保てると信じているが、実際にはエルダー・ブレインは知識、記憶、経験のみを吸収して残りは消失してしまう。このことはエルダー・ブレインのみが知る秘密である。すべてのイリシッドはそれとも知らず、エルダー・ブレインとの融合を不死の道と切望している。その超能力が絶大なために、エルダー・ブレインはゴッド・ブレインとも呼ばれている。
エルダー・ブレインはその共同体で死んだあらゆるイリシッドの記憶を吸収しているので、イリシッドはテレパシーによって訪れることができる知識の広大な図書館として機能している。エルダー・ブレインはその共同体でテレパシーによって誰とでも情報交換ができ、命令を出し従わせることができる。

イリシッドは一般的に魔法を忌避している。彼らはサイオニック能力をアイデンティティの不可欠な要素として好んでいる。
実はエルダー・ブレインは死んだイリシッドの脳から魔法の力を得ることができない。エルダー・ブレインはイリシッドの敵が用いる力を理解するだけであるならば、限られた魔法の研究を大目に見ている。だが、魔法に傾倒してサイオニック能力の研鑽を怠る者は追放される危険がある。エルダー・ブレインとの融合を拒んで追放された者は、アンデッドの研究を通して自身をアンデッドにしようとする。こうした者がアルホーンになる。

イリシッドの属性は、通常は“秩序にして悪”であり、邪悪でサディスティックな圧制者である。同時に利己主義者であり、戦闘で不利になると真っ先に逃亡する[6]。身動きできないエルダー・ブレインでさえ、不利になると情報と引き替えに命乞いをする[11]

クァリス文字[編集]

通常イリシッドはテレパシーで意思疎通を行う。だが、これだと互いに感情を伝えることができないので、筆記の必要を感じた時、彼らは“クァリス”(Qualith)と呼ばれる4本の点線からなる点字のような文字を使う。イリシッドは点線の間隔を触手でなぞることによって文章を理解する。

宗教[編集]

イリシッドは伝統的に“秩序にして悪”の神、イルセンシーンを崇拝している。第2版では、第2の神格として、プレーンスケープ世界でテネブロウス(オルクスの別名)に殺されたマーンゼコリアンという神を崇拝していた。いずれにせよ、イリシッドは自らを宇宙で最も偉大な種族だと思っているので、イルセンシーンに敬意を示すことは少ない[9]

D&D世界でのイリシッド[編集]

エベロンでのイリシッド[編集]

エベロン世界でイリシッドは狂気の次元界ゾリアット(Xoriat)からの来訪者である。彼らはビホルダーなどとともにゾリアットの支配者デルキールによって創造され、共にエベロンに侵略し、カイバー(エベロンでのアンダーダーク)に追いやられた。今でもデルキールに従っている一方、狂気の次元界へのポータルを再び開くべく独自の活動をしている[12]

グレイホークでのイリシッド[編集]

イリシッドは通常、アンダーダークの薄暗い地下世界に棲息している。おそらく、オアリク大陸で最も有名なイリシッドの都市はドラ・ムル・ショウ(Dra-Mur-Shou)である。ここはドラウの拠点から数マイル以内に位置している。ドラウの本拠地、エレルハイ・シンルー(Erelhei-Cinlu)にも有名なマインド・フレイヤーの研究所があり、幾人かのイリシッドが棲んでいる。

レイヴンロフトでのイリシッド[編集]

レイヴンロフト世界でのイリシッドはブルートスプール(Bluetspur)と呼ばれ、ゴッド・ブレインがダークロードとして領域の支配者となっている。なぜエルダー・ブレインがダークロードになったのかはいずれのレイヴンロフト公式作品の中でも明らかにされていない。

スペルジャマーでのイリシッド[編集]

後に『The Elder Scrolls IV: オブリビオン』のデザイナーとなるケン・ロストンは『ドラゴン』154号にて、ビホルダーとマインド・フレイヤーはスペルジャマー世界で銀河系間の脅威として主役を勝ち得、そしてマインド・フレイヤーは全ての知的生命体が家臣か脳漿を餌食になるように密かに策謀しており、取引相手にいかがわしくも中立的な見せかけを示すの十分な社交技術を磨き上げた悪しき脳喰らいの恐怖であると評した[13]

マインド・フレイヤーはスペルジャマー・キャンペーン・セッティングの主要な派閥の1つである。同じく異形のモンスターであるネオギが台頭するまだの間、レルムスペースは千年の間イリシッドの惑星Glythの支配下であった。

グレイスペースの星々でもイリシッドは強大な存在である。彼らが搭乗するスペルジャマー・シップ(宇宙帆船)はオウムガイの形態をしており、35トン級は全長は触手型の衝角を併せて125フィート(約38m)~180フィート(約55m)ほどある。螺旋型の外殻はイリシッドを太陽光から保護する優れ物である。他にも25トン級のイカ型、70トン級のタコ型、100トン級のモンゴウイカ型など、彼らの船は頭足類をモチーフにしている。グレイスペースにおけるイリシッド最大の拠点は惑星CeleneにあるSharpbeakと、惑星GrinderにあるSkullbringerである。イリシッドの版図はFalx、Ssirik Akuar、Penumbra、そしてGlythに及ぶ。

また、イリシッドはウートリング(Oortling)と呼ばれる高い知性と大柄な体格を持ちながら自衛本能のないおとなしい人型生物を作り出している。

コンピュータゲームでのイリシッド[編集]

ビホルダー同様に権利問題を考慮した、よく似たモンスターとして登場している。

マインド・フレイアの名で第1作目から複数の作品に登場している。
頭部がタコではなくイカである。
マインドフレアの名で登場している。
後継作『エルミナージュ 〜闇の巫女と神々の指輪〜』にも登場したが、第3作『エルミナージュIII 〜暗黒の使徒と太陽の宮殿〜』にて、頭部をイカに変えた“スクウィーザ”に改変した。
フォースマインドフレイア、ミニマインドフレイアとして登場。
萌え擬人化されており、帽子状のイカをかぶった少女の姿をしている。

D&Dのオンラインゲーム、『ダンジョンズ&ドラゴンズ オンライン』にはマインド・フレイヤーとしてそのまま登場している。

メディアの評価[編集]

イリシッドは『Dungeons & Dragons For Dummies』(2006年、未訳)にて、同書執筆者による「中級レベルのモンスター・ベスト10」の第4位にランクインした。彼らはイリシッドを「典型的な悪の天才」、「完璧な悪の大君主」と評した[14]

シアトルの週刊誌ザ・ストレンジャーにて、シエナ・マドリッド(Cienna Madrid)記者はイリシッドをD&Dのぞっとする悪魔の1つと紹介した[15]

認可[編集]

イリシッド(マインド・フレイヤー)はウィザーズ・オブ・ザ・コースト社が提唱するオープンゲームライセンスの“製品の独自性(Product Identity)”によって保護されており、オープンソースとして使用できない[16][17]

脚注[編集]

  1. ^ Gary Gygax Q&A: part VII” (2005年2月1日). 2008年5月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年2月27日閲覧。 "The mind flayer I made up out of whole cloth using my imagination, but inspired by the cover of Brian Lumley's novel in paperback edition, The Burrowers Beneath"
  2. ^ “Creature Features”. The Strategic Review 1 (1): p. 2. (1975年) 
  3. ^ ビル・スラヴィセク、ジェフ・グラブ、リッチ・レドマン、チャールズ・ライアン『d20モダン 基本ルールブック』ホビージャパン (2009) ISBN 4-89425-449-2
  4. ^ 河嶋陶一朗、冒険企画局『~シニカルポップ・ダンジョンシアター~ 迷宮キングダム』HOBBY BASE (2004) ISBN 4-9901230-2-6
  5. ^ 河嶋陶一朗、冒険企画局『大殺階域』冒険企画局 (2012) ISBN 978-4-904413-08-1
  6. ^ a b スキップ・ウィリアムズジョナサン・トゥイートモンテ・クック 『ダンジョンズ&ドラゴンズ基本ルールブック3 モンスターマニュアル第3.5版』ホビージャパン (2005) ISBN 4-89425-378-X
  7. ^ a b 『モンスター・コンベンディウムⅠ』新和 (1991)
  8. ^ a b c ブルース・コーデル『The Illithiad』TSR (1998)
  9. ^ a b c d e f g リチャード・ベイカー、ジェームズ・ジェイコブス、スティーブ・ウィンター『Lords of Madness: The Book of Aberrations』Wizards of the Corst (2005) ISBN 0-7869-3657-6
  10. ^ David Wise『Thoughts of Darkness』TSR 1992
  11. ^ マイク・ミアルズ、グレッグ・ブリスランド、ロバート・J・シャワルブ 『ダンジョンズ&ドラゴンズ第4版基本ルールブック モンスターマニュアルⅢ』 ホビージャパン (2010) ISBN 978-4-7986-0144-1
  12. ^ キース・ベイカー、ビル・スラヴィセク、ジェームズ・ワイアット『エベロン・ワールドガイド』ホビージャパン (2006) ISBN 4-89425-484-0
  13. ^ ケン・ロストン"Role-playing Reviews" 『Dungeon』#157 TSR (1992)
  14. ^ Slavicsek, Bill; Baker, Rich; Grubb, Jeff (2006). Dungeons & Dragons For Dummies. For Dummies. p. 373. ISBN 978-0-7645-8459-6. http://books.google.com/?id=xNU7E01MCEgC&pg=PA361&dq=%22mind+flayer%22 2009年2月12日閲覧。. 
  15. ^ Cienna, Madrid (2005年11月24日). “The Dice Storm”. The Stranger. 2009年8月15日閲覧。
  16. ^ Frequently Asked Questions”. D20srd.org. 2007年2月23日閲覧。
  17. ^ なお、ウィザーズ・オブ・ザ・コースト社系列のゲームではない『迷宮キングダム』の場合は、ビホルダーなどに見られる、よく似た別のモンスターという扱いだと思われる。ビホルダー#他のファンタジー作品におけるビホルダーを参照

外部リンク[編集]