ビェールクト型巡洋艦

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ビェールクト型巡洋艦
Kerch2007Sevastopol.jpg
カーラ型3番艦「ケルチ」
艦級概観
艦種 大型対潜艦ミサイル巡洋艦
就役期間 1969年1990年代
前級 キンダ型巡洋艦
カシン型駆逐艦
次級 スラヴァ級ミサイル巡洋艦
ウダロイ級駆逐艦
主要諸元
主要諸元は#諸元表を参照。
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ビェールクト型巡洋艦ロシア語: Крейсера типа Беркут)は、ソ連海軍・ロシア海軍の艦艇。1134ビェールクト型(Серия 1134 Беркут・「ヴィツェ=アドミラール・ドロースト」級)、1134Aビェールクト-A型(Серия 1134А Беркут・クロンシュタット級)、1134Bビェールクト-B型(Серия 1134Б Беркут・ニコラーエフ(Nikolayev)級)がある。

NATOコードネームでは、それぞれクレスタI型ミサイル巡洋艦(英語:Kresta I class guided missile cruiser)、クレスタII型ミサイル巡洋艦(Kresta I class guided missile cruiser)、カーラ型対潜駆逐艦(Kara class ASW destroyer)または、カーラ型ミサイル巡洋艦(英語:Kara class guided missile cruiser)などと呼ばれた。ソ連・ロシア海軍での分類は、1134が「ロケット(ミサイル)巡洋艦」、1134Aと1134Bが「大型対潜艦(большой противолодочный корабль;БПКベペカー)」であるが、西側では、艦の性格から駆逐艦、または船体規模から巡洋艦とされる。

目次

概要[編集]

1134型[編集]

1134型は、それ以前の58(キンダ)型ミサイル巡洋艦と、61(カシン)型ミサイル駆逐艦(大型対潜艦)を統合した艦として設計されたミサイル巡洋艦で、M-1 ヴォルナ(SA-N-1)艦隊防空ミサイル・システム、及びプログレス(SS-N-3)長距離艦対艦ミサイル・システムを主兵装とする。全艦レニングラード(現サンクトペテルブルク)のジュダーノフ工廠(第190海軍工廠、現セーヴェルナヤ・ヴェルフィ)で建造されたが、建造は4隻で打ち切られ、以後は対艦ミサイルを対潜ミサイルに換装し、主任務を対水上から対潜水艦に路線変更した1134A型の建造に移行した。

本級は、ソ連崩壊前、既に2隻が除籍されており、残りの2隻も1994年までに除籍された。

1134A型[編集]

1134A型は、ヴォルナーSAMをM-11 シュトルム(SA-N-3)艦隊防空ミサイル・システムに換装、プログレス対艦ミサイルメテーリ(SS-N-14)対潜ミサイルに換装したタイプで、1134原型同様、レニングラード(現サンクトペテルブルク)のジュダーノフ工廠(第190海軍工廠、現セーヴェルナヤ・ヴェルフィ)で10隻が建造された。

本型は、ソ連海軍の艦艇で初めてメテーリ対潜ミサイルを搭載した艦であるが、同ミサイルの射程が55kmに及ぶのに対し、搭載ソナーの探知距離は10kmにも満たないため、艦のみでは対潜ミサイルの射程をフルに生かす事が出来ず、ヘリコプターなど航空機の協力を受ける必要があった。また、本型とほぼ同時期に、静粛なガスタービン機関を搭載した対潜任務艦(カーラ型、クリヴァク型)が続々と就役していく中、騒音が高いスーパーチャージャー付の蒸気タービン機関を搭載する本型は、対潜任務艦としては、今ひとつの感があった。

ソ連邦崩壊後、1993年までに全艦が除籍された1134A型の内、アドミラール・イサコーフハバーロフスクアドミラール・イサチェンコフは、スクラップとしてインドへ売却されたが、アドミラール・イサコーフは、1990年代末に大西洋を曳航中、沈没している。

1134B型[編集]

1971年1977年61コムナール記念造船工場 (ニコラーエフ北、第445海軍工廠) で建造された7隻の1134B型は、ソ連艦隊の対潜能力向上を意図し、プロジェクト1134A型の拡大型として設計された。主要兵装は1134A型とほぼ同一だが、機関はガスタービンとなり、静粛性は向上した。中口径砲も57 mmから76 mmに強化され、4K33 オサーM個艦防空ミサイルも追加された。強力な1134B型は巡洋艦クラスの大きさの船体であり、西側では「ミサイル巡洋艦」と呼ぶケースが多いが、最近では、対潜任務が主たる活動であることから駆逐艦と考える専門家も多い。搭載しているシュトールム艦対空ミサイルは、副次的に対艦攻撃能力を有しており、通常型150 kg高性能爆薬に代わり、25kT核弾頭を装着できる。また、アゾフ1977年よりS-300F フォールト艦隊防空ミサイル・システムを装備し、1134BF型と呼ばれている。

本型のガスタービンは、M-62巡航用2基、M8Eブースト用4基によるCOGAG方式である。ブースト用タービンは、本型以前に建造された世界初のオールガスタービン航洋艦・カシン型と同一のもの(ただし出力強化が図られている)であるが、これに加え、ソ連艦艇としては初めて巡航用タービンが別に備えられた。これは、カシン型においては、M8Eタービン4基のみの構成で、巡航時には、このうち半分の2基を運転する方式を採っていたのだが、M8Eのみでは燃費が悪く、巡航運転しても洋上航行中に燃料切れになって漂流するケースが続出したため、巡航用タービンの必要性が認識されたためであった。以後、ソ連のガスタービン艦は、一部を除いて同一主機のみの構成ではなくなった。

本型が出現した当時は、COGOGではないかとも思われていたが、1991年8月に、雑誌「世界の艦船」編集長・木津徹がウラジオストクを取材の為に訪問し、本型のペトロパーヴロフスクに乗った際、士官に「この艦が全速航行時に使用するガスタービンの数は?」と聞き、「6基です」という答えが返ってきたので、本型はCOGAG方式である事が確認された(ちなみに、木津編集長が乗る2年前の1989年8月には、軍事評論家・田岡俊次が、同型の「タリン」に乗艦している)。

本型は、1980年代後期になると陳腐化が目立ってきたため、1155型(ウダロイ級)と同等の能力を付与する近代化改装が計画された。この改装は、上部構造物までも換装するほどの大規模な工事になる予定であったが、1番艦ニコラーエフが工事に取り掛かろうとした時にソ連邦は崩壊、その後の財政難なども有り、本型は、改装されないまま次々と現役を去っていった。

現在、本型で現役に残っているのは、黒海艦隊第30艦艇師団第11対潜艦旅団所属の「ケルチ」のみとなっている。「ケルチ」は、1980年代後半に新開発の大型3次元レーダー「ポドベレゾヴィク」(フラットスクリーン)を試験的に搭載して海上テストを行った。しかしソ連邦の解体により、このレーダーを搭載するはずの艦艇の建造が中断してしまった。「ポドベレゾヴィク」は試作で終わるかと思われたが、2004年にインドに売却された空母ヴィクラマーディティヤ(旧バクー)に採用される事になった。

この他、1134Bの兵装をバザーリト(SS-N-12)対艦ミサイルに換装した発展型も計画されたが、1970年代には対潜任務艦の建造が優先されたため建造には着手されなかった。のちに、この計画はさらに改良され、1164型(スラーヴァ級)ミサイル巡洋艦として1980年代に実現する事になる。

1134シリーズの存在意義[編集]

本シリーズ、特に1134Aと1134Bは対潜兵装を重視しており、対艦攻撃任務はほとんど考慮されていない(この他、同世代のクリヴァク型フリゲートも同様)。これは、当時(1970年代初頭)ソ連海軍は対艦攻撃任務は陸上基地航空隊や潜水艦や高速ミサイル艇に委ね、大型水上戦闘艦は対潜任務に専念させる方針を打ち出していたためで有り、決してソ連海軍自体が、対艦攻撃を軽視していたわけでは無い。この当時も、対艦ミサイルを搭載する潜水艦と小型高速艦艇は、精力的に建造していた(チャーリー型原潜、タランタル型コルベットナヌチュカ型コルベットなど)。

ソ連海軍は、1970年代初頭より、自国近海からアメリカ本土を狙える長射程の潜水艦発射弾道ミサイルR-29を搭載する667B(デルタ)型戦略原潜の実戦配備を開始した。これにより、ソ連海軍の戦略原潜は、危険を冒して大西洋や太平洋の中部まで進出する必要が無くなり、オホーツク海バレンツ海といった自国近海に展開しても、米本土を射程に収める事が出来る様になった。だがそうなると今度は、強力な空母戦闘群と原潜艦隊を有するアメリカ海軍が自国近海に侵入し、自軍の戦略原潜を捕捉・撃沈する危険性を考慮する必要が生じた。そこでソ連海軍は、大型水上艦の任務を、自軍の戦略原潜の援護に切り替えたのである。この「路線変更」を端的に示したのが、対水上打撃任務重視である1134の建造を4隻で打ち切り、以後は対潜任務重視に設計変更された1134Aの建造に移るという事実であった。

また、本型が出現した当時(1970年代初頭)の西側諸国では、西ヨーロッパにおいて対艦ミサイルが実用化されはじめていたものの、アメリカにおいてはまだ有力な対艦ミサイルは実用化されておらず対空ミサイルとの兼用であり、東側と同様に対艦攻撃任務は低い位置づけであった。日本に至っては、護衛艦は対潜攻撃に注力する一方、対水上打撃能力は艦砲が主力であり、支援戦闘機F-180式空対艦誘導弾(ASM-1)の登場以前であった。少なくとも、1970年代の自衛隊にとっては、本型は強力な存在であったと言える。

諸元表[編集]

1134型
(クレスタ-I型)
1134A型
(クレスタ-II型)
1134B型
(カーラ型)
基準排水量 5,335〜5,375トン 8,200トン
満載排水量 7,125〜7,160トン 9,700トン
全長 156.2m 173m
全幅 16.7〜16.8m 18.60m
喫水 5.9〜6.3 6.70m
機関 蒸気タービン方式, 2軸(91,000馬力
ボイラー×4基+タービン(45,500馬力)×2基
COGAG方式, 2軸(92,000馬力)
M-62巡航用タービン×2基・12,000馬力+M8Eブースト用タービン×4基・80,000馬力
速力 34.3ノット (63.5 km/h) 34ノット(63km/h)
乗員 343名 385名 525名
兵装 AK-725 57.2mm連装両用砲×2基 AK-726DP 76.2 mm連装両用砲 ×2基
AK-630 30mmCIWS×4基
ZIF-102 ミサイル連装発射機×2基
M-1 ヴォルナ艦隊防空ミサイル・システム用)
B-187A ミサイル連装発射機×2基
M-11 シュトルム艦隊防空ミサイル用; ミサイル72発)
※ただし、「アゾフ」はシュトールム・システム×1基およびS-300F フォールトシステム ×1基(ミサイル24発))
ZIF-122 ミサイル連装発射機×2基
4K33 オサーM個艦防空ミサイル・システム用; ミサイル40発)
4K44艦対艦ミサイル連装発射機×2基 RPK-3対潜ミサイル4連装発射機×2基(ミサイル8発)
RBU-6000 12連装対潜迫撃砲×2基
RBU-1000 6連装対潜迫撃砲×2基
5連装 533mm魚雷発射管×2基
(※「アゾフ」は4門)
艦載機 Ka-25またはKa-27対潜ヘリコプター ×1機
C4I MVU-202 戦術情報処理装置
4R-90ヤタガン FCS(ヴォルナSAM用) 4R60グロム FCS(シュトルムSAMおよびメテーリSUM用)
MPZ-301 FCS×2基(メテーリSUM用)
アウル・スクリーチ砲射撃指揮レーダー ×2基
バス・ティルト/CIWS射撃指揮レーダー ×2基
レーダー MR-310アンガラ 3次元レーダー
(※「ケルチ」はMR-700フラットスクリーン)
MR-500 対空捜索レーダー MR-600ヴォスホート 対空捜索レーダー
ヴォルガ航法レーダー×2基
(※のちにドン航法レーダーを追加装備)
ドン・ケイまたはパーム・フロンド航海レーダー×2基
ソナー MG-312M チタン 全周捜索+MG-311 ヴィチェグダ 標定 MG-332 チタン-2
MG-325ヴェガ可変深度ソナー
電子戦
対抗手段
ESM MRP-11-12×2基+MRP-13-14×2基+MRP-15-16型×1基
ECM MRP-150/152型、R-740K/R-743KV型
ZIF-121 (PK-2)型チャフ発射機

同型艦[編集]

1134型[編集]

全艦が1990年代前半までに除籍

1134A型[編集]

全艦が1990年代前半までに除籍

1134B型[編集]

参考文献[編集]

  • アンドレイ V.ポルトフ「ソ連/ロシア巡洋艦建造史 第11回」、『世界の艦船』第702集、海人社、2009年2月、 106-109頁。(クレスタ-I型について)
  • アンドレイ V.ポルトフ「ソ連/ロシア巡洋艦建造史 第12回」、『世界の艦船』第703集、海人社、2009年3月、 156-163頁。(クレスタ-II型について)
  • アンドレイ V.ポルトフ「ソ連/ロシア巡洋艦建造史 第13回」、『世界の艦船』第704集、海人社、2009年4月、 154-159頁。(クレスタ-II型・カーラ型について)
  • アンドレイ V.ポルトフ「ソ連/ロシア巡洋艦建造史 第14回」、『世界の艦船』第706集、海人社、2009年5月、 156-163頁。(カーラ型について)

外部リンク[編集]