コトリン型駆逐艦

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コトリン型駆逐艦
56型駆逐艦
ヴォズブジュジョーンヌイ
1981年1月6日インド洋で撮影された
56-A号計画型駆逐艦「ヴォズブジュジョーンヌイ
艦級概観
艦種 駆逐艦
運用者  ソビエト連邦海軍
 ロシア海軍
 ポーランド海軍
就役期間 1952年 - 1990年
前級 タリン型駆逐艦
次級 キルディン型駆逐艦
性能要目[1]
排水量 基準排水量 2667 t
満載排水量 3230 t
全長 126.1 m / 118 m(水線長)
全幅 12.7 m / 12.4 m(水線長)
喫水 4.2 m / 4.2 m(水線長)
機関 ギアード蒸気タービン機関TV-8 2 基
蒸気ボイラーKV-76 4 基
合計出力 72800 hp
53500 kWt
スクリュー 2 基
電源 タービン発電機 2 基
供給電力 53500 kWt
ディーゼル発電機 2 基
供給電力 300 kWt
速力 38 kn
航続距離 3860 nm/14.7 kn(巡航速度)
行動期間 10 日間
乗員 士官 19 名
水兵 265 名
武装 130 mm連装高角砲SM-2-1 1 基
45 mm4連装機関砲SM-20-ZiF 4 基
5連装魚雷発射管PTA-53-56 2 基
K型爆雷投射機BMB-2 6 基
爆雷投下軌条 2 基
爆雷(BPS/GB/BB) 48 発
C4I 戦術情報処理装置「プランシェート56」
レーダー フートN 対空・対水上捜索」 1 基
ザリャー 対水上捜索 1 基
「ヤーコリ」/「ヤーコリM2」(主砲射撃指揮用) 1 基
「フートB」(対空火器射撃指揮用) 2 基
ソナー GS-572「ペガース2」
EW 電子戦対抗装置一式
測距儀 指揮測距所SVP-42-50 1 基
通信 装備一式
IFF 装備一式
艦載機 なし
装甲 主砲 20 - 40 mm
司令塔 10 mm
艦橋 10 mm
魚雷発射管防禦壁 10 mm
機関室覆い 10 mm
砲弾起重機 10 mm

コトリン型駆逐艦(-がたくちくかん Kotlin class destroyer)は、ソヴィエト/ロシア海軍駆逐艦である。SAMコトリン型などのサブタイプが存在する。

コトリン型NATOコードネームであり、ソ連海軍の計画名は56型駆逐艦(スポコーイヌイ級)Лидеры эсминцев проекта 56 "Спокойный")である。「コトリン」はロシアの「コトリン島」あるいはこれに因んで命名された帝政ロシア時代水雷艇の名称に由来する。

概要[編集]

開発[編集]

56号計画は、「改41号計画」という位置付けで1951年夏より計画が開始された。この年の6月2日付けのソ連政府第1867-891号政令により、計画は正式に「41号技術計画のスペック変更型」という規定がなされた。政令は、戦後初めて設計された41号計画型駆逐艦の過大な排水量に不満を感じたヨシフ・スターリンがその小型化を求めたことによると考えられている。41号計画は失敗と看做され、1番艦のネウストラシームイ1 隻が建造されただけに終わっている。56号計画は41号計画反対派によって設計が進められたが、その具体的進展については正式には公表されていない。恐らくは、ネウストラシームイの建造が開始された頃に56号計画の設計が開始されたと考えられているが、これはつまり41号計画の是非が問われる以前に「発展型」の開発が始められていたということになる。

結局のところ、56号計画の目的を明確化することはできない。少なくとも言えるのは、発注側(ソ連海軍)ではなく産業側の要求で計画は作成されたということである。計画が進む中で、設計陣も41号計画の最も主要な監督官に代わった。開発要求では、スペックは41号計画との比較において、排水量で3770 tに対し3150 t、速力は36 knに対し39 kn、航続距離は5500 に対し4000 浬、行動期間は20日間に対し10日間、主要兵装は4 基の小型砲塔に収められた45 mm安定式連装自動砲SM-16に対し4 基の45 mm非安定式連装自動砲SM-20-ZiFとされた。56号計画計画では、従来予定された41号計画型駆逐艦110 隻の建造計画に対し、100 隻の同型艦の建造が予定された。このように、41号計画の排水量を抑えて速力と航続距離を増すよう修正をした結果、「発展型」の性能は本質的に低下させられた。計画はすぐに見直され、速力と航続距離はそこまで重視しなくてもよいこととされた。それでもなお、1954年4月4日付けの第1648-592号政令では3230 tの排水量と38.5 knの速力が要求された。

設計[編集]

前計画との間に、基本的な変更要素は存在しなかった。最大の変更点は、構造上のものであった。船体形状は要求された排水量における装備品と機関配置のために最適の形状とされ、殊のほか航洋性は優れていたが航続距離にはやや不満が残った。荒天時の対策としては、隔室の防水設備の改良が行われた。上部甲板には増築された上部構造が設置され、軽量化と経済性工場のためこれはすべてアルミニウム製とされた。しかし、この構造は容易に変形し、またひどい振動を招いた。1番艦の建造中に3度も修理が行われ、最終的には完全な鋼鉄製に改められてしまった。コトリン型駆逐艦は、破片から艦を防禦する装甲を有していた。司令塔、艦橋周り、魚雷発射管防禦壁、機関室覆い、最初の1 発を装填する砲弾起重機には10 mm、主砲砲には20 - 40 mmの装甲が施された。

エンジン出力は、41号計画の66000 馬力から72000 馬力に強化された。しかしながら、エネルギー転換効率は41号計画の79 %より5 %悪化の74 %となった。最終的に1番艦スポコーイヌイ海上公試において明らかになったのは、41号計画型の完全な繰り返しとなる不十分な速力であった。41号計画型より400 t少ない排水量で、10000 馬力も大きな出力を持つ機関を搭載し、スポコーイヌイが達成できたのはただネウストラシームイより1 kn早いだけの速力であった。特別審理が行われ、主任技師がその責任を問われた。その結果、56号計画でも彼の設計した41号計画とまったく同じ艦尾・スクリュー・操舵装置の「正しくない」設計が論理的に明らかにされた。スポコーイヌイは艦尾を新しい「正しい」設計に変更する必要に迫られた。この変更は比較的すばやく、また十分に行われた。その結果、56号計画型の速力は39 kn近くに達するようになった。特に優れていたのはナストーイチヴイで、1957年の海上公試において41 kn以上の速力を発揮した。尤も、その速力はその後の改修によりすぐに失われてしまったが。また、最大稼動時に機関の冷却水が非常に高温に達することも問題であった。また、結局のところ1 隻の56号計画型駆逐艦も要求された航続距離を実現することはできなかった。ただ、燃費は当時の標準的な駆逐艦30-bis号計画型の1.8倍となり、大きく改善された。しかしながら、試験における審査員の総合的な評価は30-bis号計画型に及ばず、特に巡航速度が劣ることを指摘された。

配備[編集]

コトリン型駆逐艦の海軍への登録は1952年より開始され、1955年の時点ですでに5 隻が在籍した。最初のスポコーイヌイは1956年6月27日に竣工し、赤旗受賞バルト艦隊へ配備、同年10月から11月に追加試験を受けた。最終的に、コトリン型駆逐艦はソ連国内の3つの造船工場で27 隻が建造されたに留まった。

建造されたコトリン型駆逐艦は全艦がソ連海軍で運用され、一部がロシア海軍に継承された。スプラヴェドリーヴイはポーランドへ引き渡され、ワルシャワとしてポーランド海軍で運用された。

中華人民共和国では、タリン型を元に、コトリン型を参考にした旅大型駆逐艦を開発・建造している。

サブタイプ[編集]

1984年10月5日に撮影された56-A号計画型駆逐艦ソズナーテリヌイ
1970年1月に撮影された56-M号計画型大型ミサイル艦ネウロヴィームイ
56号計画 (スポコーイヌイ級)
1953年に開始された基本型。
56-PLO号計画 (スポコーイヌイ級)
コトリンModに相当する、1960年に開始された近代化改修型。対潜水艦兵装を拡充した。11 隻が改修された。
56-K号計画 (ブラーヴイ級)
SAMコトリンに相当する、1956年に開始された防空駆逐艦型。艦対空ミサイルM-1「ヴォルナー」を搭載した。56号計画型として起工されたブラーヴイが建造中に設計を変更された。
56-A号計画 (ブラーヴイ級)
1964年に開始された近代化改修型。56-K号計画に準じたもので、8 隻が改修された。

派生型[編集]

56-EM号計画 (ベドーヴイ級)
NATOコードネームは、キルディン型。1958年に開始された大型ミサイル艦計画。艦対艦ミサイルKSShchを搭載した。56号計画型として起工されたベドーヴイが建造中に設計を変更された。
56-M号計画 (ベドーヴイ級)
56-EM号計画の量産型。完成されなかった56号計画型駆逐艦の船体を利用した大型ミサイル艦。4 隻の建造が予定されたが、4 隻目については建造中止となった。
56-U号計画 (ベドーヴイ級)
1978年に開始された近代化改修型。艦対艦ミサイルP-15M「テルミート」、新しい主砲となるAK-726、新しい電子戦対抗装備を搭載した。
051型 (西安級)
中華人民共和国における発展型。ソ連の41号計画を元に、56号計画を参考にして開発された。

脚注[編集]

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  1. ^ 要目は56号計画型のもの。

外部リンク[編集]