ガーボル・デーネシュ

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Flag of Hungary.svg この項目では、ハンガリー語圏の慣習に従い、名前を姓名順で表記していますが、ヨーロッパ風にデーネシュ・ガーボルと表記することもあります。
ガーボル・デーネシュ
(Gábor Dénes)
人物情報
生誕 1900年6月5日
Flag of Austria-Hungary (1869-1918).svg オーストリア=ハンガリー帝国 ブダペスト
死没 1979年2月9日(満78歳没)
イギリスの旗 イギリス イングランドの旗 イングランド ロンドン
居住 Flag of Austria-Hungary (1869-1918).svg オーストリア=ハンガリー帝国
イギリスの旗 イギリス
市民権 マジャル人 / イギリス人
国籍 Flag of Austria-Hungary (1869-1918).svg オーストリア=ハンガリー帝国
出身校 ベルリン工科大学
ブダペスト工科大学英語版
学問
研究分野 電気工学物理学
研究機関 インペリアル・カレッジ・ロンドン
ブリティッシュ・トムソン・ヒューストン英語版
主な業績 ホログラフィーの発明
主な受賞歴 ノーベル物理学賞 (1971)
IEEE栄誉賞 (1970)
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ノーベル賞受賞者 ノーベル賞
受賞年:1971年
受賞部門:ノーベル物理学賞
受賞理由:ホログラフィーの発明

ガーボル・デーネシュ CBE, FRS[1](Gábor Dénes、1900年 6月5日 - 1979年 2月9日)はハンガリー系イギリス人[2]電気工学者物理学者。有名な業績としてホログラフィーの発明があり、それにより1971年のノーベル物理学賞を受賞した[3]

Gábor: ガーボル, : ガボール)が姓、Dénes: デーネシュ, : デニス)が名。名前の表記については英語圏の慣習に従って名姓順に倒置した上で英語読みしたデニス・ガボールも一般的。

生涯[編集]

オーストリア=ハンガリー帝国ブダペストで、ユダヤ人一家の長男 Günszberg Dénes として生まれる。1902年、一家は姓を Günszberg から Gábor に変える許可を得た。第一次世界大戦中は北イタリアでハンガリー軍の砲兵として働いた[4]。1918年からブダペスト工科大学で学び、その後ドイツに渡ってシャルロッテンブルク工科大学、現在のベルリン工科大学に進学した[5]。そこで陰極線管オシログラフを使って高圧送電線の解析を行い、電子光学に興味を持つようになる[5]オシログラフの基礎原理を学んだガーボルは、電子顕微鏡やテレビなどの陰極線を応用した機器へと興味を広げていった。1927年、ブラウン管についての論文でPh.D.を取得。その後はプラズマランプを研究した[5]

1933年、ユダヤ人であるガボールはナチス・ドイツから逃れてイギリスに渡り、ウォリックシャーのラグビーにあるブリティッシュ・トムソン・ヒューストン英語版 (BTH) の開発部門に招かれた。ラグビー時代にマージョリー・バトラーと出会い、1936年に結婚。1946年、イギリス市民権を取得[6]。1947年、BTHで勤務中にホログラフィーを発明した[7]。電子顕微鏡の解像度を向上させる研究の中で水銀灯光源に何重にもフィルターをかける実験をしていて発見した[5]。このホログラフィーはインライン型ホログラフィーと呼ばれる像を鮮明に観察できない形式のものであった。これは当時レーザーがなかったため、コヒーレント長の短い光源を利用せざるを得なかったからである。そのため1960年にレーザーが発明されるまでこの発明が注目を集めることはなかった。

ガボールは電子の入力と出力の着目した研究をすすめ、再ホログラフィーの発明に到達した[5]。基本的な考え方は、完全光学イメージングのためには全ての情報を利用する必要があり、通常の光学イメージングで活用する振幅だけでなく位相も利用する必要がある。そうして完全ホロ空間写真を得ることができる[5]。ガボールは1946年から1951年にかけてこの再ホログラフィーの理論に関する一連の論文を発表した[5]

また人間のコミュニケーションと聴覚についても研究し、グラニュラーシンセシス英語版の理論を生み出した。ただし、これを実際にシンセサイザーの技法として発明し実用化したのはギリシャ人作曲家ヤニス・クセナキスとされている[8] 。この研究や関連分野の研究が時間周波数解析英語版発展の基盤となった。

1948年、インペリアル・カレッジ・ロンドンに移り、1958年から1967年に引退するまで、応用物理学の教授を務めた。引退後は主にイタリアで過ごしたが、シニア研究フェローとしてインペリアル・カレッジとも繋がりを保ち、またコネチカット州スタンフォードにあるCBS研究所英語版のスタッフになった。そこで生涯の友人となったCBS研究所長ピーター・C・ゴルトマルク英語版と協調し、通信と表示の新方式を数多く研究した。その後は社会を分析することに関心を持つようになり、1972年に The Mature Society: a view of the future(成熟社会 新しい文明の選択)を出版[9]

レーザーが急速に発展し、様々なホログラフィーの応用(芸術、情報の格納、パターン認識など)が生まれ、ガーボルは生前に世界的に注目され成功を収めた[5]。ノーベル賞を頂点として様々な賞を受賞している。

受賞歴[編集]

2009年、インペリアル・カレッジ・ロンドンはナイツブリッジにガーボルの業績を称え、ガボール・ホールと名付けた学寮をオープンした。 ガーボル生誕110周年となった2010年6月5日、Googleのロゴはホログラムのようなものにされた[11]

ガーボル・デーネシュの名を冠した賞[編集]

文学作品での言及[編集]

デヴィッド・フォスター・ウォレスInfinite Jest (1996) には、「デニス・ガボールはキリスト反対者だった可能性が十分ある」というセリフがある[14]

著書[編集]

  • Inventing the Future (Secker & Warburg, 1963)
    • この中に「未来は予測できないが、未来は発明できる。人間社会を形作る発明をするのは人間の能力である」という名言がある。(Pelican Books, 1964, p. 161)
"The future cannot be predicted, but futures can be invented. It was man's ability to invent which has made human society what it is."
  • Innovations: Scientific, Technological, and Social (1970)
  • The Mature Society. A View of the Future (1972)
    • 成熟社会 新しい文明の選択 D・ガボール著 林雄二郎訳 講談社
  • Beyond the Age of Waste: A Report to the Club of Rome (Pergamon international library of science, technology, engineering and social studies, paperback, 1978)

脚注[編集]

  1. ^ a b Allibone, T. E. (1980). “Dennis Gabor. 5 June 1900-9 February 1979”. Biographical Memoirs of Fellows of the Royal Society 26: 106. doi:10.1098/rsbm.1980.0004. 
  2. ^ Hubbard, Arthur T. (1995). The Handbook of Surface Imaging and Visualization. CRC Press, Inc.. ISBN 0-8493-8911-9. http://books.google.com/?id=VbzL2-zJ6hEC&pg=PA537&dq=dennis+gabor+british+hungarian&q=dennis%20gabor%20british%20hungarian. 
  3. ^ “Dennis Gabor, 1900-1979”. Nature 280 (5721): 431–433. (1979). doi:10.1038/280431a0. PMID 379651. 
  4. ^ Johnston, Sean (2006). “Wavefront Reconstruction and beyond”. Holographic Visions. p. 17. ISBN 978-0-19-857122-3. http://books.google.com/books?id=B8dcFC43QWoC&pg=PA17#PPA17,M1. 
  5. ^ a b c d e f g h Bor, Zsolt (1999). “Optics by Hungarians”. Fizikai Szemle 5: 202. Bibcode 1999AcHA....5..202Z. ISSN 0015-3257. http://www.kfki.hu/fszemle/archivum/fsz9905/bor.html 2010年6月5日閲覧。. 
  6. ^ Wasson, Tyler; Gert H. Brieger (1987). Nobel Prize Winners: An H. W. Wilson Biographical Dictionary. H. W. Wilson. pp. 359. ISBN 0-8242-0756-4. 
  7. ^ GB685286 GB patent GB685286, British Thomson-Houston Company, published 1947 
  8. ^ Xenakis, Iannis (2001). Formalized Music: Thought and Mathematics in Composition. 9th (2nd ed.). Pendragon Pr.. pp. preface xiii. ISBN 1-57647-079-2. 
  9. ^ IEEE Global History Network (2011年). “Dennis Gabor”. IEEE History Center. 2011年7月14日閲覧。
  10. ^ Franklin Laureate Database - Albert A. Michelson Medal Laureates”. Franklin Institute. 2011年06月14日 (2011-06-14)閲覧。
  11. ^ “Dennis Gabor's birth celebrated by Google doodle”. London: The Telegraph. (2010年6月5日). http://www.telegraph.co.uk/technology/google/7805641/Dennis-Gabors-birth-celebrated-by-Google-doodle.html 2010年6月5日閲覧。 
  12. ^ Dennis Gabor Award”. SPIE (2010年). 2010年6月4日閲覧。
  13. ^ The Gabor Medal (1989)”. Royal Society (2009年). 2010年6月4日閲覧。
  14. ^ Wallace, David Foster (1996). Infinite Jest (New York: Little, Brown and Co.): 12. 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

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