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「アンタレス」の版間の差分

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| 仮符号・別名 = さそり座α星{{R|simbad}}
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| 視線速度 = -3.50km/s{{R|simbad}}
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| スペクトル分類 = M0.5Iab+B3V{{R|simbad}}
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{{天体 終了
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{{天体 基本
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{{天体 終了
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'''アンタレス'''{{R|nao_ac}}(Antares)は、'''さそり座&alpha;星'''、[[さそり座]]で最も明るい[[恒星]]で全天21の1等星の1つ。[[]][[]]の空に赤く輝くよく知られる[[恒星]]の1つである<ref>{{Cite web |url = https://kotobank.jp/word/アンタレス-29325 |title = 大辞林 第三版の解説 |publisher = コトバンク |accessdate = 2018-02-04 }}</ref>。
'''アンタレス'''{{R|nao_ac}}(Antares)または、'''さそり座&alpha;星'''太陽系から[[さそり座]]の方向約550光年の距離にあり、さそり座で最も明るい[[恒星]]で全天21の1等星の1つ。夏の南の空に赤く輝くよく知られる恒星の1つである<ref>{{Cite web |url = https://kotobank.jp/word/アンタレス-29325 |title = 大辞林 第三版の解説 |publisher = コトバンク |accessdate = 2018-02-04 }}</ref>。


== 特徴 ==
== 特徴 ==
[[スペクトル分類]]ではM型の[[赤色超巨星]]とされている。アンタレスはかつて[[直径]]が太陽の230倍とされ、「[[理科年表]]」も長らくこの値を採用していたが、実際はもっと大きな星で、直径は太陽の680とされている{{R|OhnakaHofmann2013}}{{efn2|理科年表2009年版では太陽の720倍変更されている。}}。以前は明るさと表面温度から大きさを推定していたが、現在は[[干渉計]]によって実測しており、過去と現在の直径の違いはこれを反映している。明るさは太陽の4万5000 - 129000倍と考えられている{{R|OhnakaHofmann2013}}
アンタレスはかつては1733日の周期で0.88[[等級 (天文)|等]]から1.8等まで変光するSRA型の[[半規則型変光星]]とされていたが<ref name="星座ガイドマップ"/><!--赤色超巨星のアンタレスが何故周期性の良い半規則型の変光をする赤色巨星が分類されるSRA型に分類されていたのか謎ですが、理由についての出典が見当たらないためここには書きません-->、実際はそれほど大きな光度変化は見られず、[[変光星総合カタログ]]では0.88等から1.16等まで変光するLC型の[[脈動変光星]]と<ref name="GCVS"/>、[[アメリカ変光星観測者協会]]では2180日の周期で0.75等から1.21等まで変光するSRC型の半規則型変光星と{{R|AAVSO alf Sco}}、『2008年 天文観測年表』では0.9等から1.2等まで変光するLC型の変光星と各々分類されている<ref name="天文観測年表"/>従って眼視観測ではアンタレスの変光はほとんどわからない(ちなみに眼視観測変光が分かるのは変光範囲が0.5等以上の星である)。むしろ[[さそり座デルタ星|さそり座&delta;星]]の方がアンタレスより変光範囲は大きい(さそり座&delta;星の変光範囲は1.7等~2.3等なので、眼視観測でも変光確認できる)


アンタレスはかつては1733日の周期で0.88[[等級 (天文)|等]]から1.8等まで変光するSRA型の[[半規則型変光星]]とされていたが<ref name="星座ガイドマップ"/><!--赤色超巨星のアンタレスが何故周期性の良い半規則型の変光をする赤色巨星が分類されるSRA型に分類されていたのか謎ですが、理由についての出典が見当たらないためここには書きません-->、実際はそれほど大きな光度変化は見られず、[[変光星総合カタログ]]では0.88等から1.16等まで変光するLC型の[[脈動変光星]]と{{R|Samus’Kazarovets2017}}、[[アメリカ変光星観測者協会]]では2180日の周期で0.75等から1.21等まで変光するSRC型の半規則型変光星と{{R|AAVSO alf Sco}}、各々分類されている。変光の振幅が小さいため、眼視観測ではアンタレスの変光はほとんど確認きず、むしろ[[さそり座デルタ星|さそり座&delta;星]]の方がアンタレスより変光の振幅が大き、眼視観測でも変光確認しやすい
アンタレスはかつて[[直径]]が太陽の230倍とされ、「[[理科年表]]」も長らくこの値を採用していたが、実際はもっと大きな星で、直径は太陽の600し800倍であ理科年表2009年版では太陽の720倍変更されている。以前は明るさと表面温度から大きさを推定していたが、現在は[[干渉計]]によって実測しており、過去と現在の直径の違いはこれを反映している。明るさは太陽の8000倍ないし1万倍と考えられている。なお、赤外線を含めて計算すると明るさは太陽の6.5万倍である。非常に大きな直径と太陽よりはるかに明るい光度、そして表面温度が3500[[ケルビン|K]]であることからアンタレスが[[赤色超巨星]]であることがわかる


== 伴星 ==
== 伴星 ==
アンタレスは[[実視連星]]で、1.09等の主星アンタレスA)から2.9秒離れたところに5.2等の伴星(アンタレスB)輝いている。伴星は主星から550[[天文単位]]の距離にあるものと推測されている。2つの星の[[スペクトル分類|スペクトル型]]はアンタレスAがM1.5でアンタレスBが[[B型主系列星|B]]2.5なのでアンタレスAが赤く、アンタレスBが青白く見えるはずだが、実際にはアンタレスAとの色の対比効果によりアンタレスBは緑色に見えることが多い。またアンタレスAも「赤」とはいっても「真っ赤」というよりはオレンジがかった赤色に輝いて見える。星は主星の370分の1の明るさしかないが、それでもなお太陽の170倍の明るさで輝いている。2つの星の光度差が大きいため、分離には口径150mmほどの望遠鏡が必要であると言われるが、長焦点の良好な光学系を持つ80mm屈折望遠鏡で観測の報告例もある。小口径で主星と伴星を分離してみるには、両星の光度差が大きいため望遠鏡の視界のコントラストに影響を与える内面処理も光学系の精度とともに重要である。伴星は主星が月により掩蔽される際に、小口径の望遠鏡で数秒間見ることができる。伴星は、[[1819年]][[4月13日]]の月によるアンタレス食の際に発見された。伴星の軌道についてはよく分かっていないが、878年の周期で公転しているものと推測されている。
さそり座&alpha;星系は[[実視連星]]で、1.09等の主星A(アンタレスから2.9秒離れたところに5.2等の伴星B見える。伴星は主星から550[[天文単位]]の距離にあるものと推測されている。2つの星の[[スペクトル分類|スペクトル型]]はアンタレスがM1.5Bが[[B型主系列星|B]]2.5であるため、アンタレスが赤く、Bが青白く見えるはずだが、実際には色の対比効果によBは緑色に見えることが多い。またアンタレスも「赤」とはいっても「真っ赤」というよりはオレンジがかった赤色に輝いて見える。B星はアンタレスの370分の1の明るさしかないが、それでもなお太陽の170倍の明るさで輝いている。2つの星の光度差が大きいため、分離には口径150mmほどの望遠鏡が必要であると言われるが、長焦点の良好な光学系を持つ80mm屈折望遠鏡で観測の報告例もある。小口径で主星と伴星を分離してみるには、両星の光度差が大きいため望遠鏡の視界のコントラストに影響を与える内面処理も光学系の精度とともに重要である。伴星は主星が月により掩蔽される際に、小口径の望遠鏡で数秒間見ることができる。伴星は、1819年4月13日の月によるアンタレス食の際に発見された。伴星の軌道についてはよく分かっていないが、878年の周期で公転しているものと推測されている。


== 掩蔽(えんぺい) ==
== 掩蔽(えんぺい) ==
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== 注 ==
== 注 ==
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=== 注釈 ===
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=== 出典 ===
== 出典 ==
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<ref name="天文観測年表">{{Cite book|和書
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|title=2008年 天文観測年表
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|author=[[渡部潤一]]
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<ref name="Samus’Kazarovets2017">{{cite journal
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|title=General catalogue of variable stars: Version GCVS 5.1
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|journal=Astronomy Reports|volume=61|issue=1|year=2017|pages=80-88|issn=1063-7729
|doi=10.1134/S1063772917010085|bibcode= 2017ARep...61...80S}}</ref>

<ref name="OhnakaHofmann2013">{{cite journal|display-authors=3
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|title=High spectral resolution imaging of the dynamical atmosphere of the red supergiant Antares in the CO first overtone lines with VLTI/AMBER
|journal=[[アストロノミー・アンド・アストロフィジックス|Astronomy & Astrophysics]]|volume=555|year=2013|pages=A24|issn=0004-6361
|doi=10.1051/0004-6361/201321063|arxiv=1304.4800|bibcode=2013A&A...555A..24O}}</ref>

}}
}}



2021年5月9日 (日) 04:28時点における版

アンタレス[1]
Antares[2][3]
仮符号・別名 さそり座α星A[4], α Scorpii A
星座 さそり座
見かけの等級 (mv) 0.91[4]
0.88 - 1.16(変光)[5]
変光星型 LC[5]
分類 赤色超巨星
位置
元期:J2000.0[4]
赤経 (RA, α)  16h 29m 24.45970s[4]
赤緯 (Dec, δ) −26° 25′ 55.2094″[4]
赤方偏移 -0.000012[4]
視線速度 (Rv) -3.50km/s[4]
固有運動 (μ) 赤経: -12.11 ミリ秒/年[4]
赤緯: -23.30 ミリ秒/年[4]
年周視差 (π) 5.89 ± 1.00ミリ秒[4]
(誤差17%)
距離 約 550 光年[注 1]
(約 170 パーセク[注 1]
絶対等級 (MV) -5.2[注 2]
物理的性質
半径 680 R[6]
質量 11 - 14.3 M[6]
自転速度 20km/s[7]
スペクトル分類 M0.5Iab+B3V[4]
光度 75900+53000
−31200
 L[6]
有効温度 (Teff) 3,660±120K[6]
色指数 (B-V) +1.83[7]
色指数 (U-B) +1.34[7]
色指数 (R-I) +1.23[7]
年齢 11-15×106[6]
他のカタログでの名称
さそり座21番星[4], Cor Scorpii, Kalb al Akrab, Scorpion's Heart, Vespertilio, FK5 616[4], HD 148478[4], HIP 80763[4], HR 6134[4], SAO 184415[4]
Template (ノート 解説) ■Project
さそり座α星B[8]
α Scorpii B
見かけの等級 (mv) 5.2[8]
位置
元期:J2000.0[8]
赤経 (RA, α)  16h 29m 24.2s[8]
赤緯 (Dec, δ) −26° 25′ 51″[8]
赤方偏移 0.000006[8]
視線速度 (Rv) 1.8km/s[8]
物理的性質
スペクトル分類 B2.5V[8]
他のカタログでの名称
HD 148479[8]
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アンタレス[9](Antares)または、さそり座α星は、太陽系からさそり座の方向約550光年の距離にあり、さそり座で最も明るい恒星で、全天21の1等星の1つ。夏の南の空に赤く輝く、よく知られる恒星の1つである[10]

特徴

スペクトル分類ではM型の赤色超巨星とされている。アンタレスはかつて直径が太陽の230倍とされ、「理科年表」も長らくこの値を採用していたが、実際はもっと大きな星で、直径は太陽の680倍とされている[6][注 3]。以前は明るさと表面温度から大きさを推定していたが、現在は干渉計によって実測しており、過去と現在の直径の違いはこれを反映している。明るさは太陽の4万5000 - 12万9000倍と考えられている[6]

アンタレスはかつては1733日の周期で0.88から1.8等まで変光するSRA型の半規則型変光星とされていたが[11]、実際はそれほど大きな光度変化は見られず、変光星総合カタログでは0.88等から1.16等まで変光するLC型の脈動変光星[5]アメリカ変光星観測者協会では2180日の周期で0.75等から1.21等まで変光するSRC型の半規則型変光星と[12]、各々分類されている。変光の振幅が小さいため、眼視観測ではアンタレスの変光はほとんど確認できず、むしろさそり座δ星の方がアンタレスより変光の振幅が大きく、眼視観測でも変光を確認しやすい。

伴星

さそり座α星系は実視連星で、1.09等の主星A(アンタレス)から2.9秒離れたところに5.2等の伴星Bが見える。伴星は主星から550天文単位の距離にあるものと推測されている。2つの星のスペクトル型はアンタレスがM1.5、B星がB2.5であるため、アンタレスが赤く、B星が青白く見えるはずだが、実際には色の対比効果によB星は緑色に見えることが多い。またアンタレスも「赤」とはいっても「真っ赤」というよりはオレンジがかった赤色に輝いて見える。B星はアンタレスの370分の1の明るさしかないが、それでもなお太陽の170倍の明るさで輝いている。2つの星の光度差が大きいため、分離には口径150mmほどの望遠鏡が必要であると言われるが、長焦点の良好な光学系を持つ80mm屈折望遠鏡で観測の報告例もある。小口径で主星と伴星を分離してみるには、両星の光度差が大きいため望遠鏡の視界のコントラストに影響を与える内面処理も光学系の精度とともに重要である。伴星は主星が月により掩蔽される際に、小口径の望遠鏡で数秒間見ることができる。伴星は、1819年4月13日の月によるアンタレス食の際に発見された。伴星の軌道についてはよく分かっていないが、878年の周期で公転しているものと推測されている。

掩蔽(えんぺい)

アンタレスは白道に近い位置にあるので、による掩蔽即ち星食が見られることもある。他の恒星が月に隠される場合は、その光は瞬間的に消失するが、アンタレスでは10分の1秒ほどかかる。アンタレスの視直径(見かけの大きさ)が非常に大きいためである。また、黄道から5度以内に位置する4つの1等星のうちの1つであるため、まれに惑星による掩蔽が起きる場合がある。2400年11月17日には、金星によるアンタレス食が起きる。毎年12月2日頃、アンタレスの北5度の位置を太陽が通過する。

名称

固有名のアンタレス (Antares) は、ギリシア語名の Άντάρης から来ている。これはギリシア語で ἀντι-Ἄρης すなわち「火星に拮抗する(星)」を意味している。このギリシア語の接頭辞である ἀντι- は多義性があるのであるが、日本語での「アンチ」の語源であることから "against to" =「反~」のニュアンスで捉えられしばしば「火星に対抗するもの」と訳されている。また、同様に "rival to" すなわち「火星の敵」とされることもある。しかしながら、ἀντι- には "similar to" との意味合いもあり「火星に似た(星)」とも解釈できる。プトレマイオスによるラテン語版『テトラビブロス』では "Marti comparatur" とあり、後者の意味合いで捉えられている。また、ホメーロス風の表現をするのであれば "equivalent of" すなわち「火星と同等(の星)」というような意味合いになる[13][1][2][14]黄道の近くに位置することから、この星はときおり火星と接近することがある。そのとき、その赤い色から火星と競い合っているように見えることからその名前が付いたものと考えられている[14]。なお、この名はプトレマイオスの『シンタクシス』に見えるが、星座の神話書、たとえばアラートスの『ファイノメナ』には見えない。2016年6月30日に国際天文学連合の恒星の命名に関するワーキンググループ (Working Group on Star Names, WGSN) は、Antares をさそり座α星Aの固有名として正式に承認した[3]

ほかに「さそりの心臓」を意味する ラテン語: Cor Scorpii(コル・スコルピイ)や Carbalacrab(アラビア語名 Qalb al-'Aqrab から)[15]ラテン語: Vespertilio(ヴェスペルティリオ) などの固有名がある。

和名のアカボシ(赤星)や、中国名を大火(たいか)あるいは単に(か)と呼ぶのも、この星の色に由来している。『詩経』「豳風七月」には「七月流火」の句があるが、「火」はこの星を指しており火星のことではない。「黄昏時に火が西へ沈む」ことでの訪れを意味するが[16]、しばしば「の如く暑くなる七月」とも誤解される[17]

アンタレスと関連のある天体

IC 4606

別名vdB107とも呼ばれる。HII領域であり[18]、アンタレスの周りを取り囲んで赤く輝いている。IC 4606は、他のHII領域のようにHα線も観測されているが、主に1階電離の鉄による輝線で光る星雲である[19][20]

Cr302

アンタレスはさそり─ケンタウルスアソシエーションさそり─ケンタウルス運動星団或いはさそり─ケンタウルス星流とも呼ばれる)の最も明るいメンバーであるが、そのなかでアンタレスを中心としたさそり座周辺(てんびん座へびつかい座も含む)の星を特にCr302さそり座OB2またはアンタレス運動星団とも呼ばれる)と呼ぶ。Cr302は散開星団に分類されるが[21]、明るい星が多いものの散開星団としてはまばらなので見応えはあまりない。

Cr302の主なメンバー一覧


注釈

  1. ^ a b パーセクは1 ÷ 年周視差(秒)より計算、光年は1÷年周視差(秒)×3.2615638より計算
  2. ^ 視等級 + 5 + 5×log(年周視差(秒))より計算。小数第1位まで表記
  3. ^ 理科年表2009年版では太陽の720倍と変更されている。

出典

  1. ^ a b 原恵『星座の神話 - 星座史と星名の意味』(新装改訂版第4刷)恒星社厚生閣、2007年2月28日、137頁。ISBN 978-4-7699-0825-8 
  2. ^ a b Paul Kunitzsch; Tim Smart (2006). A Dictionary of Modern star Names: A Short Guide to 254 Star Names and Their Derivations. Sky Pub. Corp.. p. 52. ISBN 978-1-931559-44-7 
  3. ^ a b IAU Catalog of Star Names”. 国際天文学連合. 2016年11月6日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q * alf Sco -- Double or multiple star”. SIMBAD Astronomical Database. 2017年3月13日閲覧。
  5. ^ a b c Samus’, N. N.; Kazarovets, E. V.; Durlevich, O. V.; Kireeva, N. N.; Pastukhova, E. N. (2017). “General catalogue of variable stars: Version GCVS 5.1”. Astronomy Reports 61 (1): 80-88. Bibcode2017ARep...61...80S. doi:10.1134/S1063772917010085. ISSN 1063-7729. http://vizier.u-strasbg.fr/viz-bin/VizieR-5?-ref=VIZ6080047f2efd89&-out.add=.&-source=B/gcvs/gcvs_cat&recno=50600. 
  6. ^ a b c d e f g Ohnaka, K.; Hofmann, K.-H.; Schertl, D. et al. (2013). “High spectral resolution imaging of the dynamical atmosphere of the red supergiant Antares in the CO first overtone lines with VLTI/AMBER”. Astronomy & Astrophysics 555: A24. arXiv:1304.4800. Bibcode2013A&A...555A..24O. doi:10.1051/0004-6361/201321063. ISSN 0004-6361. 
  7. ^ a b c d Hoffleit, D.; Warren, W. H., Jr. (1995-11). “Bright Star Catalogue, 5th Revised Ed.”. VizieR On-line Data Catalog: V/50. Bibcode1995yCat.5050....0H. http://vizier.u-strasbg.fr/viz-bin/VizieR-5?-ref=VIZ5fa5ff9f0c58&-out.add=.&-source=V/50/catalog&recno=6134. 
  8. ^ a b c d e f g h i * alf Sco B -- Emission-line Star”. SIMBAD Astronomical Database. 2013年1月14日閲覧。
  9. ^ おもな恒星の名前”. こよみ用語解説. 国立天文台. 2018年11月14日閲覧。
  10. ^ 大辞林 第三版の解説”. コトバンク. 2018年2月4日閲覧。
  11. ^ 藤井旭「星座ガイドマップ さそり座」『天文ガイド』、誠文堂新光社、1981年7月、25-26頁。 
  12. ^ VSX : Detail for alf Sco”. AAVSO. 2020年11月7日閲覧。
  13. ^ Richard Hinckley Allen (1899年). “Star-Names and Their Meanings”. G. E. Stechert. pp. 364-365. 2021年4月18日閲覧。
  14. ^ a b Jim Kaler. “Antares”. STARS. 2016年11月6日閲覧。
  15. ^ 『フラムスティード星図』のフランス語に基づく『フラムスチーヂ天球図譜』にはフランス語で フランス語: le Cœur du Scorpion(ル・クール・デュ・スコルピヨン)とある。
  16. ^ 大阪大学言語文化研究科杉村博文教授エッセイ、2016年6月7日閲覧。[リンク切れ]
  17. ^ 七月流火 - 中国国際放送局、2016年6月7日閲覧。[リンク切れ]
  18. ^ IC 4606 -- HII (ionized) region”. SIMBAD Astronomical Database. CDS. 2020年11月7日閲覧。
  19. ^ Swings, J. P.; Preston, G. W. (1978). “The spectrum of the Antares nebula”. The Astrophysical Journal 220: 883. Bibcode1978ApJ...220..883S. doi:10.1086/155977. ISSN 0004-637X. 
  20. ^ Braun, K. et al. (2012). “A hydrodynamic study of the circumstellar envelope of α Scorpii”. Astronomy & Astrophysics 546: A3. arXiv:1208.5866. Bibcode2012A&A...546A...3B. doi:10.1051/0004-6361/201219659. ISSN 0004-6361. 
  21. ^ 渡部潤一『図説 新・天体カタログ─銀河系内編』立風書房、1994年1月10日。ISBN 4-651-74509-1 

関連項目

外部リンク