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本型は、あたご型(14DDG)の設計を基本として、[[電気推進 (船舶)|電気推進]]の導入を図っている。これに伴い、全長にして5メートル、[[基準排水量]]にして450トン大型化した{{Sfn|徳丸|2018}}。ただし最大幅21メートル、深さ12メートル、吃水6.2メートルというその他の主要目は変更せず、凌波性や[[造波抵抗]]等を大きく変化させないような船体設計とすることで、14DDGと同様の運動性能を確保しているとみられている{{Sfn|内嶋|2019}}。
本型は、あたご型(14DDG)の設計を基本として、[[電気推進 (船舶)|電気推進]]の導入を図っている。これに伴い、全長にして5メートル、[[基準排水量]]にして450トン大型化した{{Sfn|徳丸|2018}}。ただし最大幅21メートル、深さ12メートル、吃水6.2メートルというその他の主要目は変更せず、凌波性や[[造波抵抗]]等を大きく変化させないような船体設計とすることで、14DDGと同様の運動性能を確保しているとみられている{{Sfn|内嶋|2019}}。


護衛艦への電気推進の導入は[[あさひ型護衛艦 (2代)|あさひ型(25DD)]]より着手された。本型の機関構成は、[[COGLAG]]方式という点では25DDと同様だが、25DDでは電圧450ボルトの低電圧であったのに対し、本型では電圧6.6キロボルトという高電圧とされており、技術的にはより進んだものとなった。電力は7.4メガワット{{Sfn|徳丸|2018}}、電動機2基、主機は[[ゼネラル・エレクトリック LM2500|LM2500IEC]][[ガスタービンエンジン]]2基とされている{{Sfn|内嶋|2019}}。
護衛艦への電気推進の導入は[[あさひ型護衛艦 (2代)|あさひ型(25DD)]]より着手された。本型の機関構成は、[[COGLAG]]方式という点では25DDと同様だが、25DDでは電圧450ボルトの低電圧であったのに対し、本型では電圧6.6キロボルトという高電圧とされており、技術的にはより進んだものとなった。電力は7.4メガワット{{Sfn|徳丸|2018}}、電動機2基、主機は[[ゼネラル・エレクトリック LM2500|LM2500IEC]]ガスタービンエンジン2基とされている{{Sfn|内嶋|2019}}。


== 装備 ==
== 装備 ==
本型は、イージス武器システム(AWS)としてはベースラインJ7(ベースライン9C)、[[イージス弾道ミサイル防衛システム|イージスBMDシステム]]としてはBMD5.1を装備し、これらを統合している。AWSベースライン9Cは、対空戦(AAW)機能とミサイル防衛(BMD)機能を両立した、IAMD(integrated air and missile defense)機能、および[[NIFC-CA#NIFC-CA_FTS|NIFC-CA FTS]]を備えている。本型では、NIFC-CA FTSのための[[RIM-174スタンダードERAM|SM-6]][[艦対空ミサイル]]は後日装備とされているが、[[共同交戦能力]](CEC)には対応しており、海上自衛隊で初の搭載例となる{{Sfn|徳丸|2018}}。
本型は、イージス武器システム(AWS)としてはベースラインJ7(ベースライン9C)、[[イージス弾道ミサイル防衛システム|イージスBMDシステム]]としてはBMD5.1を装備し、これらを統合している。AWSベースライン9Cは、対空戦(AAW)機能とミサイル防衛(BMD)機能を両立した、IAMD(integrated air and missile defense)機能、および[[NIFC-CA#NIFC-CA_FTS|NIFC-CA FTS]]を備えている。本型では、NIFC-CA FTSのための[[RIM-174スタンダードERAM|SM-6 艦対空ミサイル]]は後日装備とされているが、[[共同交戦能力]](CEC)には対応しており、海上自衛隊で初の搭載例となる{{Sfn|徳丸|2018}}。


本来ベースライン9Cと統合されるイージスBMD5.0システムでは、[[RIM-161スタンダード・ミサイル3|SM-3ブロックIIA]]の発射には対応していないが、本型のシステムはBMD5.1と同様、すべてのSM-3の発射に対応できるように能力の向上が図られる{{Sfn|徳丸|2018}}。
本来ベースライン9Cと統合されるイージスBMD5.0システムでは、[[RIM-161スタンダード・ミサイル3|SM-3ブロックIIA]]の発射には対応していないが、本型のシステムはBMD5.1と同様、すべてのSM-3の発射に対応できるように能力の向上が図られる{{Sfn|徳丸|2018}}。

2019年1月5日 (土) 07:56時点における版

まや型護衛艦
艦級概観
艦種 ミサイル護衛艦 (DDG)
建造期間 2017年 -
就役期間 2020年(計画) -
前級 あたご型
次級 最新
性能諸元
排水量 基準:8,200トン
満載:10,250トン
全長 170 m[1]
全幅 21.0 m[1]
吃水 6.2 m[1]
深さ 12.0 m[1]
機関 COGLAG方式
LM2500IEC ガスタービンエンジン 2基
電動機 2基
可変ピッチ・プロペラ 2軸
電源 ガスタービン主発電機(6,000 kW) 2基
ディーゼル主発電機 2基
出力 69,000馬力[1]
速力 最大30ノット以上
乗員 約300人[1]
兵装 62口径5インチ単装砲 1基
高性能20mm機関砲
(CIWS Mk.15 mod.25)
2基
Mk.41 VLS(64+32セル)
SM-2 SAM[注 1]SM-3 ABM07式 SUM
を発射可能
2基
90式/17式SSM 4連装発射筒 2基
324mm3連装短魚雷発射管 2基
艦載機 SH-60K哨戒ヘリコプター]]
(常時搭載機なし)
1機
FCS Mk.99 SAM用 3基
Mk.160 主砲用 1基
Mk.116 水中攻撃指揮用 1基
C4I イージス武器システム
レーダー AN/SPY-1D(V) 多機能型 1基
AN/SPQ-9B 対水上用 1基
ソナー AN/SQS-53C 艦首装備型 1基
MFTA 曳航式 1基
電子戦
対抗手段
NOLQ-2C電波探知装置
Mk.137 6連装デコイ発射機 4基

まや型護衛艦(まやがたごえいかん、英語: Maya-class destroyer)は、海上自衛隊ミサイル護衛艦(DDG)の艦級。26中期防に基づき、平成2728年度計画で1隻ずつが建造されている[3][4][2]

来歴

海上自衛隊は、第1次防衛力整備計画期間中の「あまつかぜ」(35DDG)によって、ターター・システムを搭載したミサイル護衛艦(DDG)の整備に着手した。その後、第3次防衛力整備計画より建造を開始したたちかぜ型(46DDG)3隻でシステムのデジタル化と海軍戦術情報システム(NTDS)に準じた戦術情報処理装置の導入、そして五三中業より建造を開始したはたかぜ型(56DDG)2隻ではCIC能力の強化とともにプラットフォームのガスタービン化も達成するなど、順次に性能強化を図っており、とくにはたかぜ型については在来型ミサイル護衛艦の頂点に立つものと評されていた[5]

またこれと並行して、1981年ごろからは新世代の防空武器システムであるイージスシステム(AWS)の導入が模索されており、これを搭載するイージス艦として、まず6103中期防こんごう型(63DDG)4隻が建造された。また13中期防では、たちかぜ型の代艦として、搭載システムの更新や航空運用能力の強化を図ったあたご型(14DDG)2隻が建造された[3]

そして26中期防では、はたかぜ型(56/58DDG)の代艦としてイージス艦2隻の建造が認可され、イージス艦8隻体制(4個護衛隊群に2隻ずつ)が整うことになった[3]。これによって建造されたのが本型である[4][2]

設計

本型は、あたご型(14DDG)の設計を基本として、電気推進の導入を図っている。これに伴い、全長にして5メートル、基準排水量にして450トン大型化した[2]。ただし最大幅21メートル、深さ12メートル、吃水6.2メートルというその他の主要目は変更せず、凌波性や造波抵抗等を大きく変化させないような船体設計とすることで、14DDGと同様の運動性能を確保しているとみられている[4]

護衛艦への電気推進の導入はあさひ型(25DD)より着手された。本型の機関構成は、COGLAG方式という点では25DDと同様だが、25DDでは電圧450ボルトの低電圧であったのに対し、本型では電圧6.6キロボルトという高電圧とされており、技術的にはより進んだものとなった。電力は7.4メガワット[2]、電動機2基、主機はLM2500IECガスタービンエンジン2基とされている[4]

装備

本型は、イージス武器システム(AWS)としてはベースラインJ7(ベースライン9C)、イージスBMDシステムとしてはBMD5.1を装備し、これらを統合している。AWSベースライン9Cは、対空戦(AAW)機能とミサイル防衛(BMD)機能を両立した、IAMD(integrated air and missile defense)機能、およびNIFC-CA FTSを備えている。本型では、NIFC-CA FTSのためのSM-6 艦対空ミサイルは後日装備とされているが、共同交戦能力(CEC)には対応しており、海上自衛隊で初の搭載例となる[2]

本来ベースライン9Cと統合されるイージスBMD5.0システムでは、SM-3ブロックIIAの発射には対応していないが、本型のシステムはBMD5.1と同様、すべてのSM-3の発射に対応できるように能力の向上が図られる[2]

対潜戦システムは改装後の14DDGと同様で、AN/SQQ-89(V)とAN/SQR-20 MFTA(Multi-Function Towed Array)曳航ソナーを組み合わせている[4]

対艦兵器としては、1番艦では14DDGと同じく90式艦対艦誘導弾(SSM-1B)を搭載するが、2番艦では新開発の17式艦対艦誘導弾を搭載予定とされている[4]

なお電子戦装置としてはNOLQ-2Cを備えているが、63DDGや14DDGの同系機と異なり、ECM機能が削除されている[2]

同型艦

平成27年度計画において、ネームシップの建造費と2隻分のイージスシステムの一部の調達費として1,680億円が盛り込まれた[6]。また平成28年度予算には、2番艦の建造費として1,734億円が盛り込まれた[7]

艦番号 艦名 建造 起工 進水 竣工 所属
DDG-179 まや[8] ジャパン マリンユナイテッド
横浜事業所 磯子工場
2017年
(平成29年)
4月17日
2018年
(平成30年)
7月30日[9]
2020年
(平成32年)
3月予定
第1護衛隊群第1護衛隊予定
横須賀基地
DDG-180 平成28年度計画艦
(28DDG)
2018年
(平成30年)
1月23日
2019年
(平成31年)
予定
2021年
(平成33年)
3月予定

脚注

注釈

  1. ^ SM-6も後日装備予定[2]

出典

  1. ^ a b c d e f ジャパン マリンユナイテッド 2018.
  2. ^ a b c d e f g h 徳丸 2018.
  3. ^ a b c 山崎 2014.
  4. ^ a b c d e f 内嶋 2019.
  5. ^ 香田 2015, pp. 210–213.
  6. ^ 井口主計官 (2015年1月). “平成27年度防衛関係予算のポイント” (PDF). p. 8. 2015年9月7日閲覧。
  7. ^ 防衛省 (2016年). “我が国の防衛と予算 -平成28年度予算の概要” (PDF). p. 4. 2016年4月29日閲覧。
  8. ^ “海自護衛艦「まや」進水 イージス艦7隻目、「共同交戦能力」初搭載 情報共有で屈指の防空能力”. 産経ニュース. (2018年7月30日). https://www.sankei.com/politics/print/180730/plt1807300022-c.html 2018年7月31日閲覧。 
  9. ^ 海上幕僚監部 (2018年7月10日). “平成27年度護衛艦の命名・進水式について” (PDF). 2018年7月10日閲覧。

参考文献

  • ジャパン マリンユナイテッド: “8,200トン型護衛艦の命名式並びに進水式について”. www.jmuc.co.jp (2018年). 2018年7月31日閲覧。
  • 内嶋, 修「注目の新型艦艇 (特集・新時代の海上自衛隊)」『世界の艦船』第891号、海人社、2019年1月、128-137頁。 
  • 香田, 洋二「国産護衛艦建造の歩み」『世界の艦船』第827号、海人社、2015年12月、NAID 40020655404 
  • 徳丸, 伸一「最新鋭DDG「まや」の防空システム」『世界の艦船』第889号、海人社、2018年12月、53-57頁。 
  • 山崎, 眞「ミサイル護衛艦建造の歩み (特集 ミサイル護衛艦50年史)」『世界の艦船』第802号、海人社、2014年8月、69-75頁、NAID 40020135975 

関連項目