回転レストラン

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シンガポールのプリマ・タワーの回転レストラン
ドイツドルトムントにあるフロリアンツルム。世界初の回転レストランが設置された。

回転レストラン(かいてんレストラン)とは、フロアがゆっくり回転し、窓から全周360度の景色の移り変わりを楽しみながら食事できるレストランである[1]。遠方までのパノラマビューを見晴らせる、ホテルやタワーの高層部および山頂展望台[2]

入店するには建物中央部の階段エレベーターなどでレストランのある階まで行き、建物中央部の床と接してゆっくり回転している床へ足を移す。日本ではピークの1980年代には30 - 50か所に達したが、建設やメンテナンスにはそのための技術・部品が必要で費用もかかることから、回転を停止したり休業・閉業する施設も多く、数を減らしている[1]

歴史[編集]

古代では、64年ローマ帝国皇帝ネロが建設した宮殿ドムス・アウレアには、水力によって回転する食堂があり、その天井からは香水薔薇の花弁が降り注ぐ仕掛けがあったとされる。

近代以降のものでは1956年、世界初の鉄筋コンクリート製テレビ塔として開業した西ドイツの「シュトゥットガルトテレビ塔」(Fernsehturm Stuttgart, 高さ216m)では、筒状の展望台部分に展望レストランが設けられた。これは回転しないものだったが、塔の回りを回転するレストランというアイデアに影響を与える。1959年、同じ西ドイツのドルトムントに建設されたテレビ塔「フロリアンツルム」(Florianturm)の展望台部分に世界最初の回転式レストランが開店した。

1964年、隣国オーストリアの首都ウィーンに建てられた展望塔「ドナウツルム」(Donauturm)には2階建ての回転式レストランが設けられたが、これは眺望に障害を与えないよう、外壁(ファサード)のガラス部分も回転するものであった。アメリカ合衆国での最初の回転レストランは、1961年ハワイ州ホノルルアラモアナショッピングセンターのオフィス棟頂上部に設けられた「ラ・ロンド」とされる。これを設計したシアトルの建築家であったジョン・グラハムは、シアトルの展望塔「スペースニードル」にも回転レストランを設けた。

60年代から70年代にかけて現代的なレストランとして人気を博した回転レストランも、次第に過去のものとなっていった。修理には相当の金額がかかるため、回転営業をやめてしまったところも多い[3]。アメリカでは、1996年に開業したラスベガスカジノホテル「ストラトスフィア」以後、新たな回転レストランはオープンしていない[3]

構造[編集]

回転レストランは、中央にある円形のコアの周りを、ドーナツ型のプラットフォームが回転するという仕組みになっている[3]。中央のコアにはエレベーター、階段、キッチンなどが設けられている[3]

レストランの床は薄い鉄製のプラットフォームになっており、プラットフォームの下はコンクリートの構造体になっている。コンクリートの床の上に上向きの車輪が多数設置され、プラットフォームは車輪の上に乗っている。車輪がゆっくりと回って下からプラットフォームを回転させる[3]。プラットフォームの下にゴム製タイヤがついている場合もある[3]。回転速度はだいたい30分から1時間ほどの間になる[3]

日本の回転レストラン[編集]

日本における回転展望台の元祖は1957年に六甲山上で開業した「回る十国展望台」(兵庫県神戸市)で、その後、レストランを主体とする回転展望台が観光地やホテル、百貨店などで増えた[1]。現役施設(下記参照)は少なくなったが、「スカイレストラン ロンド」(北海道札幌市)と、回転レストランを持つリーガロイヤルホテル京都(京都市)が連携して、「回転レストランの日」を9月6日(「くるくる」の語呂合わせ)を日本記念日協会に登録するなど回転レストランの魅力をアピールする活動を行なっている[1]

現在も回転稼動している回転レストラン[編集]

現在は営業していない、または回転稼動していない回転レストラン[編集]

※建物が現存しているものに限る

そごう店内の回転レストラン
そごう大宮店埼玉県さいたま市
そごう柏店千葉県柏市
T-FACE愛知県豊田市
ミ・ナーラ奈良県奈良市
  • 大宮そごう(現:そごう大宮店埼玉県さいたま市大宮区
    旧大宮そごう13階にあった。テナントは『中国料理 翠苑』であったが、2003年をもって、営業を終了した。現在は美容院、歯科医院が営業している。
  • そごう柏店千葉県柏市
    本館(タワー館)14階にあった。テナントは『ホテルオークラレストラン柏 中国料理 桃源』であったが、2016年9月30日のそごう柏店閉店と共に営業を終了した。
  • 豊田そごう愛知県豊田市
    11階にあったレストラン、紅虎餃子房豊田店。そごう時代は毎日回転しており、そごう閉店後(T-FACEB館となる)は豊田おいでんまつり花火大会当日に、花火開催中の予約客だけへのサービスとして回転していた。
  • 奈良そごうイトーヨーカドー奈良店を経て現在はミ・ナーラ奈良県奈良市
    旧奈良そごう7階にあった。 イトーヨーカドー時代は展望室として開放されていた。ミ・ナーラ開業時にセンチュリオンホステル奈良平城京が入居した。しかし、新型コロナウイルス感染症流行の影響で利用者が激減し、解約して閉鎖されている[9]
  • 小倉そごう(現:セントシティ福岡県北九州市小倉北区
    旧小倉そごう14階にあった。現在は「鮮魚旬菜 益正」が営業しているが、回転はしない。
その他
ニューオータニ松戸(千葉県松戸市
※左側の建物(松戸ビルヂング事務所棟)最上階 右側は旧伊勢丹松戸店(現:キテミテマツド
東京交通会館(東京都千代田区

日本以外の回転レストラン[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d 回るレストラン 喜び悲しみくり返し:現役わずか 関係者ら存続へ奔走」『朝日新聞』夕刊2022年11月26日1面(2023年1月5日閲覧)
  2. ^ レストランがなく、展望を楽しむだけの回転展望台もある。
  3. ^ a b c d e f g Paletta, Anthony (2014年10月16日). “A Brief History of Buildings That Spin”. Gizmodo. https://gizmodo.com/a-brief-history-of-buildings-that-spin-1625633621 2018年3月15日閲覧。 
  4. ^ a b c d e f g h 辰井裕紀 (2019年10月23日). “「回転レストラン」を知っていますか?【存続危機でも、今なお回り続ける楽園へ】”. メシ通. https://www.hotpepper.jp/mesitsu/entry/yuki-tatsui/2019-00039 2019年10月23日閲覧。 
  5. ^ 愛された『回転レストラン』 札幌センチュリーロイヤルホテル「ロンド」思い出残し2024年5月に閉店【北海道発】 - FNNプライムオンライン・2023年9月13日
  6. ^ パノラマ回転レストハウス Tee Horn(ティーホルン)開田高原マイアスキー場
  7. ^ a b c “鳥羽湾の風景と旬の料理味わう 戸田家が回転ラウンジ復活”. トラベルニュース 今すぐにでも出たくなる旅. (2017年10月11日). https://imatabi.travelnews.co.jp/west/17iseshima/20171011161625.html 2019年10月23日閲覧。 
  8. ^ 戸田家 楽天トラベル
  9. ^ 投資法人みらい第9期決算説明会資料
  10. ^ a b “狭くなった東京の空 回り続けて半世紀、レストランに幕:”. 朝日新聞デジタル. (2020年12月18日). https://www.asahi.com/articles/ASNDK4CD0ND8UTIL01W.html 2020年12月18日閲覧。 
  11. ^ “「東京會舘 銀座スカイラウンジ」リニューアル、限定スイーツ“パフェ マロンシャンテリー”も”. FASHION PRESS. (2021年7月12日). https://www.fashion-press.net/news/75565 2021年7月16日閲覧。 
  12. ^ “「大阪」を満喫できる最高の展望「OMM」…“商業の街”を支えた立体卸売センター(1ページ目)”. 産経新聞. (2017年3月17日). https://www.sankei.com/article/20170317-5MRY5YNSNBK35KUYUPTXW5M5C4/ 2020年9月13日閲覧。 
  13. ^ “姫路・手柄山  行く春来る春 回転展望台、老朽化で閉鎖 喫茶店、最後は無料開放/兵庫”. 毎日新聞. (2018年3月26日). https://mainichi.jp/articles/20180326/ddl/k28/040/400000c 
  14. ^ “ひろしま国際ホテル閉鎖も検討 地上14階のランドマーク…老朽化、年内めどに判断”. 産経ニュース. (2017年4月7日). https://www.sankei.com/article/20170407-E6BXE7JDGBI5PPVU2OGNF7KSZE/ 
  15. ^ コワーキングスペース〈空庭〉, 広島県営SNS「日刊わしら」, https://washira.jp/co-soraniwa0501 
  16. ^ ひろしま国際ホテル建て替えへ 展望レストランが回っていた広島名物 新たなホテルは2027年7月開業目指す”. 中国新聞 (2023年12月28日). 2023年12月28日閲覧。

参考ウェブサイト・資料[編集]