ナガミヒナゲシ
ナガミヒナゲシ | |||||||||||||||||||||
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分類 | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Papaver dubium L. | |||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||
ナガミヒナゲシ | |||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||
Long-headed poppy |
ナガミヒナゲシ(長実雛芥子、長実雛罌粟、学名 Papaver dubium L.[1])は、ケシ科の一年草または越年生植物である[2]。
分布
[編集]地中海沿岸の原産でヨーロッパ、北アフリカ、西アジア、オセアニア、南北アメリカ、日本に分布する[3]。
特徴
[編集]紅色、もしくは肉色と評されるオレンジ色の花を付ける。花弁は基本的に4枚だが、多少の変動がある[4]。開花時期は4-5月[4]。
高さは栄養状態によって異なるが、15cmくらいから最大60cmぐらいにまで生長する。茎には硬い剛毛が生えている。葉は細かく切れ込む。果実(芥子坊主)は細長く、和名の長実雛芥子はここから付けられた[5]。果実の中には文字通り芥子粒の大きさの種が入っている(種子1粒の大きさは0.6×0.7mm、重さは0.13mgほどである[6])。果実が熟して乾くと柱頭との間に7 - 9箇所の隙間ができ、長い茎が風に揺れることでこの射出部から種を地面に落とす(風靡散布(ふうびさんぷ))[7][8][9]。
梅雨時に非常に小さな灰黒色の種子を大量に成す。1つの果実には約1600粒の種子が内包されている。1個体は100個の果実を成すこともあるため、多い個体では15万粒の種子を持っている。種子の表面には凹凸があり未熟な状態でも発芽し、また、結実から5年を経たものでも発芽することができる。種は秋に発芽してロゼット状態で越冬するものと、翌春に発芽するものとに分かれる[2][6][7]。発芽適温は7 - 25℃と広範囲にわたり、ことに気温の低下により発芽が促される[7]。
茎を切ると黄色または乳白色の乳液が出てくる[7]。根と葉からは周辺の植物の生育を強く阻害する成分を含んだ物質が生み出される(アレロパシー)[6]。外来植物の改良FAO方式による雑草化リスクの評価では、特定外来生物に指定されている植物に匹敵するか、これらを上回る高いリスク点数が得られているが[6]、特定外来生物などにはいまだ指定されていない[10]。各国ではコムギ畑などの秋播き作物の農地へ侵入して難防除雑草となっている[7]。
ナガミヒナゲシはほかのヒナゲシと同様、阿片の原料となるアルカロイドを含んでいないとされ、あへん法による栽培や所持などの禁止対象とはなっていないが[5][11][12]、同法により栽培などが禁止されているケシ[12]との交配の可能性を示唆する論文もある[1]。
亜種
[編集]ナガミヒナゲシにはsubsp. lecoqiiとsubsp. dubiumという2種類の亜種がある。両者は花の外見や開花時期、茎内の乳液の色などが異なるが、日本の図鑑などでは区別されずにどちらもナガミヒナゲシと表記されている。どちらの種も日本へ流入している[7]。
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subsp. lecoqiiの花
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subsp. dubiumの花
花言葉
[編集]平静、慰め、癒やし[13]。
日本における植生と雑草化
[編集]日本では帰化植物として自生している。輸入穀物などに紛れて渡来したと推測され、1961年に東京都世田谷区で初めて確認された[6]。以後、群馬県、福岡県などにも分布が広がり、2000年以降には全国へ爆発的に拡散した。2007年には青森県、沖縄県を除く日本全国で繁殖が確認されている[5][14]。発生場所は初期には幹線道路沿いに限られていたが、2011年には農地への繁殖も認められる[6]。2016年以降、埼玉県・千葉県・神奈川県・京都府・東京都・栃木県・茨城県・新潟県・群馬県・大分県・愛知県などに位置する複数の自治体では住民に対し、「特定外来生物や生態系被害防止外来種(要注意外来生物)には指定されていないものの、これらと同様に生態系に大きな影響を与える外来植物」としてナガミヒナゲシの危険性を周知するとともに、駆除の協力を呼びかけるに至っている[15][16][17][18][19][20][21][22]。
一方で周知が十分に行き届いていない面も見られ、個人レベルでは雑草駆除をこまめに行っているような人物であっても、本種は「花が綺麗であるから」とし、駆除せずに残してしまうケースも多く、こうした背景も繁殖を手助けしている要因となってしまっている。
都市部に多くの繁殖が確認され、路傍や植え込みなどに大繁殖しているのがよく見られる。また、コンクリートの隙間からも生育が確認される[5]。これらを基としてかアルカリ性土壌を好むという記述も見られるが[5]、国立環境研究所ではナガミヒナゲシは土壌の種類は選ばず、温暖で日当たりの良い乾いた肥沃地を好むとしている[8]。農業環境技術研究所の藤井義晴は道路沿いにできた種子が雨で濡れた車のタイヤに付着することによって運ばれることにより、分布を拡大していると推測している[6]。日本では年度変わり以降の5月ごろに役所や企業の予算が付いて、路肩や中央分離帯、空き地などの除草作業が行われるが、この頃には既にほとんどの株が結実を終え枯死しているためなかなか減らない。むしろ除草機の振動により種子を周囲に撒き散らすなどするので、除草の意図とは逆に翌春になると前年より増えていることの方が多い。ナガミヒナゲシの蔓延を防ぐには花が咲く前のロゼット状態の時期に駆除することが肝要である[6]。
一つの芥子坊主から1000〜2000の種子(ケシ粒)をばら撒いてしまうため、爆発的な繁殖力を示す場合があり、地場の他の草花を駆逐してしまう可能性がある。そのため園芸花として楽しむには花が終わり次第、摘み取る(摘花)などの種子拡散を防ぐ注意が必要である。
脚注
[編集]- ^ a b “ナガミヒナゲシ”. 平成17年度 科学技術振興調整費 外来植物『外来植物のリスク評価と蔓延防止策』. 外来植物図鑑. 農業環境技術研究所 (2005年). 2018年5月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年5月24日閲覧。
- ^ a b 吉田ほか(2009年)63頁
- ^ 吉田光司、根本正之、鈴木貢次郎、藤井義晴「日本列島におけるナガミヒナゲシ(Papaver dubium L.)の生育地の拡大」『雑草研究』第53巻第3号、日本雑草学会、2008年9月、134-137頁、doi:10.3719/weed.53.134、ISSN 0372798X、2017年4月23日閲覧。
- ^ a b 岩槻秀明『街でよく見かける雑草や野草がよーくわかる本』秀和システム、2006年11月5日、122-123頁。ISBN 4-7980-1485-0。
- ^ a b c d e “外来種ナガミヒナゲシ急増 専門家は「生態系乱す」と指摘”. 共同通信. 47NEWS. (2010年5月17日). オリジナルの2014年5月13日時点におけるアーカイブ。 2014年5月13日閲覧。
- ^ a b c d e f g h 藤井義晴「春に気をつける外来植物:ながみひなげし」(PDF)『農環研ニュース』第90号、農業環境技術研究所、2011年3月、3-5頁、ISSN 0910-2019、2014年5月6日閲覧。
- ^ a b c d e f 吉川正人「ナガミヒナゲシ(緑化植物 ど・こ・ま・で・き・わ・め・る)」(PDF)『日本緑化工学会誌』第35巻第4号、日本緑化工学会、2009年、ISSN 09167439、2018年5月24日閲覧。
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- ^ 福原達人. “8-2-2. 風靡(ふうび)散布(風力射出散布 【Wind-Ballistic/Anemoballistic seed dispersal】)”. 植物形態学. 福岡教育大学. 2018年6月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年6月9日閲覧。
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- ^ a b “不正なケシの見分け方”. 東京都健康安全研究センター. 2016年1月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年5月28日閲覧。
- ^ 稲垣栄洋 監修『子どもと一緒に覚えたい道草の名前 = Name of the weed』加古川利彦 絵(初版)、マイルスタッフ( インプレス)〈momo book〉、2017年4月27日、73頁。ISBN 9784295400691。
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春に気を付ける外来植物「ナガミヒナゲシ」駆除のおすすめ 2017年4月 千葉市緑化推進協議会
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“外来植物「ナガミヒナゲシ」が市内に拡大しています”. 府中市 (2022年4月27日). 2022年5月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年5月18日閲覧。
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“外来種について”. 船橋市 (2023年6月1日). 2023年6月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年6月12日閲覧。
“その他の注意を要する外来生物”. 新潟市 (2023年6月2日). 2023年6月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年6月12日閲覧。
“外来植物「ナガミヒナゲシ」にご注意ください”. 碧南市 (2023年6月16日). 2024年3月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月1日閲覧。
“市内で見られる代表的な外来種(植物)”. 小金井市 (2023年7月27日). 2024年3月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月1日閲覧。
参考文献
[編集]- 吉田光司、金澤弓子、鈴木貢次郎、根本正之「種子発芽特性からみたナガミヒナゲシの日本の生育地」『雑草研究』第54巻第2号、日本雑草学会、2009年、63-70頁、doi:10.3719/weed.54.63、ISSN 0372-798X、CRID 1390282679257655040。
関連項目
[編集]- ヒナゲシ(虞美人草)
- ナガミヒナゲシ同様生態系保護の観点から注意が呼び掛けられている帰化植物
- ユウゲショウ
- コマツヨイグサ 要注意外来生物
- セイタカアワダチソウ 要注意外来生物
- オオキンケイギク 特定外来生物
- 外来生物法
外部リンク
[編集]- 春に気をつける外来植物:ながみひなげし - 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
- ナガミヒナゲシ - 国立環境研究所 侵入生物DB
- ナガミヒナゲシ - ウェイバックマシン(2006年5月17日アーカイブ分)(植物雑学辞典)
- ナガミヒナゲシ (野草雑記)