ナガミヒナゲシ

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ナガミヒナゲシ
183 Papaver dubium, Papaver radicatum.jpg
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperm
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
: キンポウゲ目 Ranunculales
: ケシ科 Papaveraceae
: ケシ属 Papaver
: ナガミヒナゲシ P. dubium
学名
Papaver dubium L.
和名
ナガミヒナゲシ
英名
Long-headed poppy

ナガミヒナゲシ(長実雛芥子、長実雛罌粟、学名Papaver dubium)は、ケシ科一年草または越年生植物である[1]

分布[編集]

地中海沿岸の原産でヨーロッパ、北アフリカ、西アジア、オセアニア、南北アメリカ、日本に分布する[2]

特徴[編集]

紅色、もしくは肉色と評されるオレンジ色の花を付ける。花弁は基本的に4枚だが、多少の変動がある[3]。開花時期は4-5月[3]

高さは栄養状態によって異なるが、15cmくらいから最大60cmぐらいにまで生長する。茎には硬い剛毛が生えている。は細かく切れ込む。果実(芥子坊主)は細長く、和名の長実雛芥子はここから付けられた[4]。果実の中には文字通り芥子粒の大きさの種が入っている(種子一粒の大きさは0.6×0.7mm、重さは0.13mg程である[5])。果実が熟して乾くと柱頭との間に7-9箇所の隙間が出来、長い茎が風に揺れることでこの射出部から種を地面に落とす(風靡散布)[6][7][8]

梅雨時に非常に小さな灰黒色の種子を大量に成す。一つの果実には約1600粒の種子が内包されている。一個体は100個の果実を成すこともあるため、多い個体では15万粒の種子を持っている。種子の表面には凹凸があり未熟な状態でも発芽し、また、結実から5年を経たものでも発芽することができる。種は秋に発芽してロゼット状態で越冬するものと、翌春に発芽するものとに分かれる[1][5][6]。発芽適温は7-25℃と広範囲にわたり、殊に気温の低下により発芽が促される[6]

茎を切ると黄色または乳白色の乳液が出てくる[6]と葉からは周辺の植物の生育を強く阻害する成分を含んだ物質が生み出される(アレロパシー)。外来植物の改良FAO方式による雑草化リスクの評価では、特定外来生物に指定されている植物に匹敵するか、これらを上回る高いリスク点数が得られているが[5]、特定外来生物などにはいまだ指定されていない[9]。各国ではコムギ畑などの秋播き作物の農地へ侵入して難防除雑草となっている[6]

ナガミヒナゲシは他のヒナゲシと同様、阿片の原料となるアルカロイドを含んでいないとされ、あへん法による栽培や所持等の禁止対象とはなっていないが[4][10][11]、同法により栽培等が禁止されているケシとの交配の可能性を示唆する論文も有る[11][12]

亜種[編集]

ナガミヒナゲシにはsubsp. lecoqiisubsp. dubiumという2種類の亜種がある。両者は花の外見や開花時期、茎内の乳液の色などが異なるが、日本の図鑑などでは区別されずにどちらもナガミヒナゲシと表記されている。どちらの種も日本へ流入している[6]

花言葉[編集]

平静、慰め、癒やし[13]

日本における植生と雑草化[編集]

日本では帰化植物として自生している。輸入穀物などに紛れて渡来したと推測され、1961年東京都世田谷区で初めて確認された[5]。以後群馬県福岡県などにも分布が広がり、2000年以降には全国へ爆発的に拡散した。2007年には青森県沖縄県を除く日本全国で繁殖が確認されている[4][14]。発生場所は初期には幹線道路沿いに限られていたが、2011年には農地への繁殖も認められる[5]。2016年以降、埼玉県千葉県神奈川県京都府・東京都・栃木県茨城県等に位置する複数の自治体では住民に対し、「特定外来生物や生態系被害防止外来種(要注意外来生物)には指定されていないものの、これらと同様に生態系に大きな影響を与える外来植物」としてナガミヒナゲシの危険性を周知するとともに、駆除の協力を呼びかけるに至っている[15][16][17][18][19][20][21][22][23][24][25][26][27][28][29][30][31] [32][33][34][35][36]

都市部に多くの繁殖が確認され、路傍や植え込みなどに大繁殖しているのがよく見られる。また、コンクリートの隙間からも生育が確認される[4]。これらを基としてかアルカリ性土壌を好むという記述も見られるが[4]国立環境研究所ではナガミヒナゲシは土壌の種類は選ばず、温暖で日当たりの良い乾いた肥沃地を好むとしている[7]農業環境技術研究所の藤井義晴は道路沿いにできた種子が雨で濡れた車のタイヤに付着することによって運ばれることにより、分布を拡大していると推測している[5]。日本では年度変わり以降の5月ごろに役所や企業の予算が付いて、路肩中央分離帯、空き地などの除草作業が行われるが、この頃には既にほとんどの株が結実を終え枯死しているためなかなか減らない。むしろ除草機の振動により種子を周囲に撒き散らすなどするので、除草の意図とは逆に翌春になると前年より増えていることの方が多い。ナガミヒナゲシの蔓延を防ぐには花が咲く前のロゼット状態の時期に駆除することが肝要である[5]

ひとつの芥子坊主から1000-2000の種子(ケシ粒)をばら撒いてしまうために爆発的な繁殖力を示す場合があり、地場の他の草花を駆逐してしまう可能性がある。そのため、園芸花として楽しむには花が終わり次第摘み取る(摘花)等の種子拡散を防ぐ注意が必要である。

脚注[編集]

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  1. ^ a b 吉田ほか(2009年)63頁
  2. ^ 吉田光司、根本正之、鈴木貢次郎、藤井義晴「日本列島におけるナガミヒナゲシ(Papaver dubium L.)の生育地の拡大」、『雑草研究』第53巻第3号、日本雑草学会、2008年9月、 134-137頁、 doi:10.3719/weed.53.134ISSN 0372798X2017年4月23日閲覧。
  3. ^ a b 岩槻秀明 『街でよく見かける雑草や野草がよーくわかる本』 秀和システム2006年11月5日ISBN 4-7980-1485-0 pp.122-123
  4. ^ a b c d e “外来種ナガミヒナゲシ急増 専門家は「生態系乱す」と指摘”. 共同通信. 47NEWS. (2010年5月17日). オリジナル2014年5月13日時点によるアーカイブ。. https://archive.is/20140513102430/http://www.47news.jp/CN/201005/CN2010051701000015.html 2014年5月13日閲覧。 
  5. ^ a b c d e f g 藤井義晴「春に気をつける外来植物:ながみひなげし (PDF) 」 、『農環研ニュース』第90号、農業環境技術研究所2011年3月、 3-5頁、 ISSN 0910-20192014年5月6日閲覧。
  6. ^ a b c d e f 吉川正人「ナガミヒナゲシ(緑化植物 ど・こ・ま・で・き・わ・め・る) (PDF) 」 、『日本緑化工学会誌』第35巻第4号、日本緑化工学会、2009年ISSN 091674392018年5月24日閲覧。
  7. ^ a b ナガミヒナゲシ”. 侵入生物データベース. 国立環境研究所. 2017年5月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年5月7日閲覧。
  8. ^ 福原達人. “8-2-2. 風靡(ふうび)散布 (風力射出散布 【Wind-Ballistic/Anemoballistic seed dispersal】)”. 植物形態学. 福岡教育大学. 2018年6月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年6月9日閲覧。
  9. ^ “かれんな花…実は特定外来生物、「オオキンケイギク」県内で生息地拡大/神奈川”. 神奈川新聞. (2011年6月11日). オリジナル2014年5月6日時点によるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20140506132704/http://www.kanaloco.jp/article/31781/cms_id/31611 2014年5月6日閲覧。 
  10. ^ 上田泰久 (2011年6月9日). “全国各地で広がっている『植えてはいけないけし』 – アツミゲシ”. ワールドジョイントクラブ. アクティネットワーク社. 2014年5月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年5月13日閲覧。
  11. ^ a b 不正なケシの見分け方”. 東京都健康安全研究センター. 2016年1月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年5月28日閲覧。
  12. ^ ナガミヒナゲシ”. 平成17年度 科学技術振興調整費 外来植物『外来植物のリスク評価と蔓延防止策』. 外来植物図鑑. 農業環境技術研究所 (2005年). 2018年5月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年5月24日閲覧。
  13. ^ 稲垣栄洋 監修 『子どもと一緒に覚えたい道草の名前 = Name of the weed』 加古川利彦 絵、マイルスタッフ( インプレス)〈momo book〉、2017年4月27日、初版、73頁。ISBN 9784295400691
  14. ^ “外来種「ナガミヒナゲシ」、繁殖力強く急速に拡大”. 日本経済新聞. 共同通信 (日本経済新聞社). (2010年5月17日). オリジナル2018年5月10日時点によるアーカイブ。. http://archive.is/nXYNw 2018年5月11日閲覧。 
  15. ^ 外来生物にご注意ください (PDF) 」 、『広報わこう』、和光市2016年6月、 13頁、2018年5月30日閲覧。
  16. ^ アメリカオニアザミ、ナガミヒナゲシについて”. 外来植物(オオキンケイギク、アメリカオニアザミ、ナガミヒナゲシ・・・)の駆除について. 飯能市 (2017年1月13日). 2017年4月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年4月25日閲覧。
  17. ^ 外来植物にご注意ください”. 新座市 (2017年3月3日). 2017年4月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年4月25日閲覧。
  18. ^ 春に気を付ける外来植物「ナガミヒナゲシ」駆除のおすすめ2017年4月 千葉市緑化推進協議会
  19. ^ 外来種の対策について”. 厚木市 (2017年4月28日). 2018年5月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年5月28日閲覧。
  20. ^ 外来生物にご注意ください”. 京田辺市 (2017年5月19日). 2018年5月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年5月28日閲覧。
  21. ^ 外来植物にご注意ください”. 坂戸市 (2017年5月25日). 2017年8月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年5月11日閲覧。
  22. ^ 外来植物にご注意ください”. 狭山市 (2017年5月30日). 2017年8月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年5月11日閲覧。
  23. ^ 平沢裕子 (2017年6月2日). “実は要注意!かれんな花…外来植物「ナガミヒナゲシ」 強い繁殖力、在来種に影響も”. 産経ニュース (産経新聞社). オリジナル2018年5月10日時点によるアーカイブ。. http://archive.is/D4Si0 2018年5月11日閲覧。 
  24. ^ 外来生物に要注意!”. ふじみ野市 (2017年6月5日). 2018年5月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年5月30日閲覧。
  25. ^ ナガミヒナゲシについて”. 清瀬市 (2017年6月6日). 2018年5月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年5月11日閲覧。
  26. ^ オオキンケイギク(特定外来生物)等の拡散防止にご協力を”. 日高市 (2017年6月12日). 2018年5月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年5月23日閲覧。
  27. ^ 市内でよく見られる外来生物”. 松戸市 (2017年11月21日). 2018年5月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年5月30日閲覧。
  28. ^ ナガミヒナゲシについて”. 青梅市 (2018年2月8日). 2018年5月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年5月11日閲覧。
  29. ^ ナガミヒナゲシについて”. 熊谷市 (2018年3月2日). 2018年5月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年5月11日閲覧。
  30. ^ 外来生物「ナガミヒナゲシ」について”. 日光市 (2018年3月6日). 2018年5月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年5月23日閲覧。
  31. ^ ナガミヒナゲシにご注意を!”. つくば市 (2018年3月19日). 2018年5月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年5月11日閲覧。
  32. ^ 外来植物の駆除に御協力ください”. 習志野市 (2018年4月20日). 2018年5月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年5月28日閲覧。
  33. ^ ナガミヒナゲシの駆除のお願い”. 昭島市 (2018年4月25日). 2018年5月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年5月28日閲覧。
  34. ^ ナガミヒナゲシを駆除しましょう。”. 蕨市 (2018年5月10日). 2018年5月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年5月11日閲覧。
  35. ^ ナガミヒナゲシにご注意ください”. 筑西市 (2018年5月23日). 2018年5月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年5月28日閲覧。
  36. ^ ナガミヒナゲシにご注意ください”. 本庄市 (2018年6月5日). 2018年6月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年6月8日閲覧。

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]