ヒナゲシ

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ヒナゲシ
Common Poppy - Papaver rhoeas (18441384243).jpg
ヒナゲシ
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperm
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
: キンポウゲ目 Ranunculales
: ケシ科 Papaveraceae
: ケシ属 Papaver
: ヒナゲシ P. rhoeas
学名
Papaver rhoeas L. (1753)
和名
ヒナゲシ
英名
Corn poppy

ヒナゲシ(雛芥子、雛罌粟、学名:Papaver rhoeas)は、ヨーロッパ原産のケシ科一年草グビジンソウ(虞美人草)、コクリコフランス語: Coquelicot)、シャーレイポピー (英語: Shirley poppy) とも呼ばれる。他のケシ科の植物も含めて単にポピーということもある。フランスポーランドなどの国花として有名である。

特徴[編集]

ヨーロッパ中部の原産[1]。畑の雑草、グビジンソウ(虞美人草)ともいう[1]

耐寒性の一年草で、全体に粗毛が密生し、は直立し[1]、草丈50センチメートル (cm) - 1メートル (m) 位になる。互生し、羽状に深い切れ込みがあり、裂片は線状披針形、葉縁は粗歯牙状になる[1]。初夏に花茎を出し、上の方でよく分枝し、茎の先に直径5 - 10 cmの赤・白・ピンクなどの4弁花を開く。現在タネとして売られているものには、八重咲きの品種が多い。ケシオニゲシに比べるとずっと華奢で、薄い紙で作った造花のようにも見える。

ケシとは、毛がないところと、葉に深い切れ込みがない点で相違があり、区別することができる[1]

栽培[編集]

ヒナゲシは、観賞用のオニゲシとともに栽培してよい種である[注釈 1]

土質は選ばないが、排水がよい土地を選ぶ[1]。移植を嫌うので、9月下旬から10月中旬頃に、花壇に直まきする[1]覆土はタネが見え隠れする程度でよい。かなり細かいタネなので、砂を混ぜて散布し、発芽してきたら間引いて[1]、株間が30 cmくらいになるようにする。

利用[編集]

民間療法[編集]

生薬名はないが、咲いた花は花柄とともに採取して乾燥したものが生薬になり、止めに利用される[1]。ケシにあるような麻薬成分は含まれていない[1]。民間では、乾燥花を1日量2 - 4グラムを、水300 ccで半量になるまで煎じた汁に砂糖を少量加えて、2 - 3回に分けて分服する用法が知られている[1]

有効性[編集]

俗に「咳によい」「睡眠障害によい」「痛みを緩和する」などと言われているが、信頼できる研究方法[2][3]で調べた情報は見当たらない[4]

安全性[編集]

乾燥させた花の摂取は安全性が示唆されているが、焼いた花の多量摂取は危険性が示唆され、頻脈、徐脈、吐き気、嘔吐、胃痛、不安、痺れ、呼吸困難、乳酸アシドーシス、瞳孔収縮、強直間代性発作、意識喪失を生じることがある[4]

小児の花や生の葉の摂取は危険性が示唆され、妊娠中や授乳中の安全性については情報が不足しているため、摂取を避けることが求められる[4]

グビジンソウの名について[編集]

グビジンソウ(虞美人草)名は、中国の伝説に由来している。

末の武将・項羽には虞と言う愛人がいた。項羽が劉邦に敗れて垓下に追い詰められた時に、死を覚悟した項羽が詠った垓下の歌に合わせて舞った。

力拔山兮氣蓋世 (力は山を抜き、気は世を覆う)
時不利兮騅不逝 (時利あらずして 騅逝かず)
騅不逝兮可奈何 (騅の逝かざる 如何すべき)
虞兮虞兮奈若何 (虞や虞や 汝を如何せん)

— 垓下歌垓下の歌)『史記』巻7項羽本紀 第7 司馬遷、『漢書』巻31陳勝項羽傳第1 班固

この舞の後に彼女は自害した。彼女を葬った墓に翌夏赤くこの花が咲いたという伝説から、こう呼ばれる。

その他[編集]

フランスのハイ・ウッド・セメトリー
イギリスでは赤いポピーが第一次世界大戦における犠牲の象徴とされている
秩父高原牧場のポピー

ああ皐月(さつき)仏蘭西(フランス)の野は火の色す君も雛罌粟(こくりこ)われも雛罌粟(こくりこ)

— 与謝野晶子

陽(ひ)に倦(う)みて雛罌粟(ひなげし)いよよくれなゐに

— 木下夕爾

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ ケシは、阿片がとられ、モルヒネコカインなど麻薬成分を含んでおり、日本の法律で栽培が厳禁とされている[1]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l 馬場篤 1996, p. 96.
  2. ^ その情報は「確かな情報」ですか?”. 国立健康・栄養研究所. 2022年8月13日閲覧。
  3. ^ どんな論文が本当に治療効果を証明しているのか?”. 大須賀覚 (2018年7月13日). 2022年8月13日閲覧。
  4. ^ a b c ヒナゲシ、グビジンソウ、レイシュンカ”. 国立健康・栄養研究所. 2022年8月13日閲覧。

参考文献[編集]

  • 馬場篤 『薬草500種-栽培から効用まで』大貫茂(写真)、誠文堂新光社、1996年9月27日、96頁。ISBN 4-416-49618-4 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]