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「入場券」の版間の差分

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駅ナカ以前からある、駅トイレ利用の場合の対応について加筆。
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{{otheruses|入場券一般|選挙の投票所入場券|投票所入場券}}
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{{出典の明記|date=2014年10月}}
{{出典の明記|date=2014年10月}}
'''入場券'''(にゅうじょうけん)とは、切符の一種で、入場に何らかの制限が加わっている施設において、その施設に場するため必要となる切符のことである。
'''入場券'''(にゅうじょうけん)とは、入場に何らかの制限が加わっている施設や場所へ入るため必要となるである。


本項では、[[鉄道駅]]に入場するための入場券と、鉄道駅以外の各種施設に入場するための入場券を別見出しにて説明する。
本項では、[[鉄道駅]]に入場するための入場券と、鉄道駅以外の各種施設に入場するための入場券をそれぞれ説明する。


== 各種施設の入場券 ==
== 鉄道駅以外の入場券 ==
有料施設等における入場券とは、'''利用入場料金証票'''、すなわち入場料金を支払ったことを証明する証票のことを言う。なお、無料の施設、催し物などにおいて入場に制限を加える場合においては、発行する整理券の類や招待状などを指す場合もあり、[[選挙]]の[[投票所入場券]]などがある。
有料施設等における入場券とは、'''利用入場料金証票'''、すなわち入場料金を支払ったことを証明する証票のことを言う。なお、無料の施設、催し物などにおいて入場に制限を加える場合においては、発行する[[整理券]]の類や招待状などを指す場合もあり、[[選挙]]の[[投票所入場券]]などがある。


一般には[[劇場]]・[[映画館]][[コンサート]][[スポーツ]]観戦などのものがあり、日本国内でも、英語の'''チケット'''(ticket)と呼ばれることも多い。[[美術館]]・[[博物館]]などに入るための証票は'''入館券'''、[[動物園]]・[[植物園]]・[[遊園地]]などに入るための証票は'''入園券'''、[[茶席]]などに入るための証票は'''入室券'''などの呼称がある。[[公衆浴場]]や[[温泉]]で入浴するための証票は'''入浴券'''と呼ばれる。
一般には[[劇場]]・[[映画館]][[コンサートホール]][[スポーツ]]観戦などのものがあり、日本国内でも、英語の'''チケット'''(ticket)と呼ばれることも多い。[[美術館]]・[[博物館]]などに入るための証票は'''入館券'''、[[動物園]]・[[植物園]]・[[遊園地]]などに入るための証票は'''入園券'''、[[茶席]]などに入るための証票は'''入室券'''などの呼称がある。[[公衆浴場]]や[[温泉]]で入浴するための証票は'''入浴券'''と呼ばれる。


劇場映画館競技施設などの入場券は、ミシン目などによって二つの部分にちぎれるようになっているものが多い。こうして出来た券片を'''半券'''といい、座席の確認や、施設へ再入場する際に使われるほか、これが領収書代わりともなる。こうした券をもぎ取る行為やそれを行う係の者を「[[もぎり]]」という。確実に来場者の入場券から切り取られていることから、スタッフが1枚1枚券片を数えるのが一番正確かつ簡単に来場者数を把握できる方法としてこの入場券の存在は重宝されている<ref group="注釈">かつては主催者がこの半券を税務調査のために取っておく必要があり、主にクラシックコンサートの主催者がこれを行なっていた。半券そのものに入場券の値段が書いてあることから、それを枚数と掛け合わせることによって当日のコンサートの収益がわかる仕組みだったため、合理性を求める上では必要不可欠なものであった。</ref><ref>{{cite news|url=https://biz-journal.jp/2020/08/post_172928.html|title=クラシックコンサートのチケット、“半券”はなんのためにある?意外に重要な役割が…|publisher=Business Journal|date=2020-8-08|accessdate=2020-08-10}}</ref>。
劇場映画館競技施設などの入場券は、ミシン目などによって二つの部分にちぎれるようになっているものが多い。こうして出来た券片を'''半券'''といい、座席の確認や、施設へ再入場する際に使われるほか、これが領収書代わりともなる。こうした券をもぎ取る行為やそれを行う係の者を「[[もぎり]]」という。確実に来場者の入場券から切り取られていることから、スタッフが1枚1枚券片を数えるのが一番正確かつ簡単に来場者数を把握できる方法としてこの入場券の存在は重宝されている<ref group="注釈">かつては主催者がこの半券を税務調査のために取っておく必要があり、主にクラシックコンサートの主催者がこれを行なっていた。半券そのものに入場券の値段が書いてあることから、それを枚数と掛け合わせることによって当日のコンサートの収益がわかる仕組みだったため、合理性を求める上では必要不可欠なものであった。</ref><ref>{{cite news|url=https://biz-journal.jp/2020/08/post_172928.html|title=クラシックコンサートのチケット、“半券”はなんのためにある?意外に重要な役割が…|publisher=Business Journal|date=2020-8-08|accessdate=2020-08-10}}</ref>。


近年では半券をもぎ取る従来式の入場券に代わって、極小[[集積回路|ICチップ]]を組み込んだ[[ICカード]]を用いたものも開発され、[[2005年]]の「[[2005年日本国際博覧会|愛・地球博]]」などから採用された。また、[[QRコード]]を使用するものも順次広まっている。これらは、[[スマートフォン]]に組み込むことによって、紙の入場券を発行しない場合もある。
近年では半券をもぎ取る従来式の入場券に代わって、極小[[集積回路|ICチップ]]を組み込んだ[[ICカード]]を用いたものも開発され、[[2005年]]の「[[2005年日本国際博覧会|愛・地球博]]」などから採用された。また、[[QRコード]]を使用するものも順次広まっている。これらは、[[スマートフォン]]に組み込むことによって、紙の入場券を発行しない場合もある。
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イベントの中止や施設の閉鎖が決定した場合は、入場券は払い戻しとなる。
イベントの中止や施設の閉鎖が決定した場合は、入場券は払い戻しとなる。


== 日本の鉄道駅における入場券 ==
== 日本の鉄道駅入場券 ==
{{triple image|center|Nyujouken tokyo.jpg|180|Platform ticket Ashio Sta.jpg|180|Platform ticket Haruhino Sta.jpg|180|[[マルス (システム)|マルス]]端末で発行した入場券|硬券入場券|軟券入場券}}
{{triple image|center|Nyujouken tokyo.jpg|180|Platform ticket Ashio Sta.jpg|180|Platform ticket Haruhino Sta.jpg|180|[[マルス (システム)|マルス]]端末で発行した入場券|硬券入場券|軟券入場券}}

[[鉄道]]においては、見送りなど、乗車船以外の目的で駅の[[改札]]内に入場する際に発行される。一般には、最低運賃と同額の場合が多い。しかし、最低運賃が異なる複数の会社・路線が同一改札内で利用できる駅([[共同使用駅]])には低い方の運賃に設定される場合や、各社の異なる料金で発行され、それぞれの収入として扱われながら効力が同一<ref group="注釈">改札分離前の[[和歌山市駅]]の場合、窓口では業務を受託していた南海電気鉄道の様式ながらJR西日本の料金で発売された一方、自動券売機では南海電気鉄道により同社の料金で発売され、それぞれの収入として扱われていた。</ref>という例がある。
[[鉄道]]においては、見送りなど、乗車船以外の目的で駅の[[改札]]内に入場する際に発行される。一般には、最低[[運賃]]と同額の場合が多い。しかし、最低運賃が異なる複数の会社・路線が同一改札内で利用できる駅([[共同使用駅]])には低い方の運賃に設定される場合や、各社の異なる料金で発行され、それぞれの収入として扱われながら効力が同一<ref group="注釈">改札分離前の[[和歌山市駅]]の場合、窓口では業務を受託していた[[南海電気鉄道]]の様式ながらJR西日本の料金で発売された一方、自動券売機では南海電気鉄道により同社の料金で発売され、それぞれの収入として扱われていた。</ref>という例がある。


なお、会社や駅によっては制限時間を設けているところもあり、その旨を説明する目的などから、券売機での発売をせず窓口でのみ入場券を発行する駅も地方の小規模駅を中心に存在する。かつては[[東急電鉄]](旧・[[東急|東京急行電鉄]]時代)、[[名古屋鉄道]]、[[近畿日本鉄道]]、[[京阪電気鉄道]]の全駅では、窓口でのみの発売であった。<!--これらの鉄道の入場券の多くは[[硬券]]である。←要検証-->入場券自体を発売していない事業者(ほとんどの[[地下鉄]]や[[西日本鉄道]]など)もあるが、便宜的に最低運賃の乗車券を入場券として利用させる場合もある<ref>{{cite web|archiveurl=https://web.archive.org/web/20160830085506/https://qa.city.yokohama.lg.jp/search-detail/3402/|url=https://qa.city.yokohama.lg.jp/search-detail/3402/|archivedate=2016-08-30|accessdate=2020-07-05|title=市営地下鉄に、見送りなどで入場したい場合にはどうすればいいですか
なお、会社や駅によっては制限時間を設けているところもあり、その旨を説明する目的などから、券売機での発売をせず窓口でのみ入場券を発行する駅も地方の小規模駅を中心に存在する。かつては[[東急電鉄]](旧・[[東急|東京急行電鉄]]時代)、[[名古屋鉄道]]、[[近畿日本鉄道]]、[[京阪電気鉄道]]の全駅では、窓口でのみの発売であった。<!--これらの鉄道の入場券の多くは[[硬券]]である。←要検証-->入場券自体を発売していない事業者(ほとんどの[[地下鉄]]や[[西日本鉄道]]など)もあるが、便宜的に最低運賃の乗車券を入場券として利用させる場合もある<ref>{{cite web|archiveurl=https://web.archive.org/web/20160830085506/https://qa.city.yokohama.lg.jp/search-detail/3402/|url=https://qa.city.yokohama.lg.jp/search-detail/3402/|archivedate=2016-08-30|accessdate=2020-07-05|title=市営地下鉄に、見送りなどで入場したい場合にはどうすればいいですか
|publisher=[[横浜市]]}}</ref>。過去に北海道地方では、最低運賃の[[乗車券]]と入場券が併記されている兼用の券も存在した。
|publisher=[[横浜市]]}}</ref>。過去に[[北海道]]地方では、最低運賃の[[乗車券]]と入場券が併記されている兼用の券も存在した。


中間改札口を有する駅で、それぞれの駅を管轄する事業者が異なる場合は、原則としてそれぞれの事業者が発行する入場券が必要である。ただし[[日本国有鉄道|国鉄]]時代からの慣例として、[[新幹線]]と[[在来線]]を管轄するJR旅客会社が異なる駅([[東京駅]]など)は、いずれかの事業者が発行する入場券で新幹線・在来線とも入場できる<!--ということは旅客営業規則に明確に記載されていないようです。調査しますがやはり慣例的なものか?-->。在来線が[[第三セクター鉄道]]に移管された駅では新幹線・在来線それぞれの入場券が必要である{{refnest|group="注釈"|[[2021年]]現在、新幹線がJR旅客鉄道会社の管轄、在来線が第三セクター鉄道会社の管轄である駅において、新幹線・在来線それぞれの改札内を直接接続する連絡改札口が設置されている駅は存在しない。例えば、[[八戸駅]]にはかつて連絡改札口が設置されていたが<ref>{{cite web|archiveurl=https://web.archive.org/web/20080622134037/http://www.jreast.co.jp/estation/stations/1230.html|url=http://www.jreast.co.jp/estation/stations/1230.html|archivedate=2008-06-22|accessdate=2021-09-18|date=2008-06|title=八戸駅構内図|publisher=東日本旅客鉄道}}</ref>、在来線の[[青い森鉄道]]移管に伴い閉鎖されている<ref>{{cite web|archiveurl=https://web.archive.org/web/20110323015716/https://www.jreast.co.jp/estation/stations/1230.html|url=http://www.jreast.co.jp/estation/stations/1230.html|archivedate=2011-03-23|accessdate=2021-09-18|date=2010-12|title=八戸駅構内図|publisher=東日本旅客鉄道}}</ref>。例外的に在来線が[[西日本旅客鉄道|JR西日本]]管轄である[[金沢駅]]は[[IRいしかわ鉄道]]も入場券を発売しているが、この入場券で新幹線改札内には入ることはできない<ref>{{cite web|archiveurl=https://web.archive.org/web/20200606071831/http://ishikawa-railway.jp/ticket/ticket_howto.html|url=http://ishikawa-railway.jp/ticket/ticket_howto.html|archivedate=2020-06-06|accessdate=2020-07-06|title=きっぷの取扱い・購入方法|publisher=[[IRいしかわ鉄道]]}} - 入場券の節参照。</ref>。}}。
中間改札口を有する駅で、それぞれの駅を管轄する事業者が異なる場合は、原則としてそれぞれの事業者が発行する入場券が必要である。ただし[[日本国有鉄道|国鉄]]時代からの慣例として、[[新幹線]]と[[在来線]]を管轄するJR旅客会社が異なる駅([[東京駅]]など)は、いずれかの事業者が発行する入場券で新幹線・在来線とも入場できる<!--ということは旅客営業規則に明確に記載されていないようです。調査しますがやはり慣例的なものか?-->。在来線が[[第三セクター鉄道]]に移管された駅では新幹線・在来線それぞれの入場券が必要である{{refnest|group="注釈"|[[2021年]]時点、新幹線がJR旅客鉄道会社の管轄、在来線が第三セクター鉄道会社の管轄である駅において、新幹線・在来線それぞれの改札内を直接接続する連絡改札口が設置されている駅は存在しない。例えば、[[八戸駅]]にはかつて連絡改札口が設置されていたが<ref>{{cite web|archiveurl=https://web.archive.org/web/20080622134037/http://www.jreast.co.jp/estation/stations/1230.html|url=http://www.jreast.co.jp/estation/stations/1230.html|archivedate=2008-06-22|accessdate=2021-09-18|date=2008-06|title=八戸駅構内図|publisher=東日本旅客鉄道}}</ref>、在来線の[[青い森鉄道]]移管に伴い閉鎖されている<ref>{{cite web|archiveurl=https://web.archive.org/web/20110323015716/https://www.jreast.co.jp/estation/stations/1230.html|url=http://www.jreast.co.jp/estation/stations/1230.html|archivedate=2011-03-23|accessdate=2021-09-18|date=2010-12|title=八戸駅構内図|publisher=東日本旅客鉄道}}</ref>。例外的に在来線が[[西日本旅客鉄道|JR西日本]]管轄である[[金沢駅]]は[[IRいしかわ鉄道]]も入場券を発売しているが、この入場券で新幹線改札内には入ることはできない<ref>{{cite web|archiveurl=https://web.archive.org/web/20200606071831/http://ishikawa-railway.jp/ticket/ticket_howto.html|url=http://ishikawa-railway.jp/ticket/ticket_howto.html|archivedate=2020-06-06|accessdate=2020-07-06|title=きっぷの取扱い・購入方法|publisher=IRいしかわ鉄道}} - 入場券の節参照。</ref>。}}。


日本で初めて入場券販売を行ったのは、[[1897年]](明治30年)の[[山陽鉄道]](後の[[山陽本線]]を敷設した[[私鉄]])であったとされる。
日本で初めて入場券販売を行ったのは、[[1897年]]([[明治]]30年)の[[山陽鉄道]](後の[[山陽本線]]を敷設した[[私鉄]])であったとされる。


素材により「[[硬券]]入場券」や「軟券入場券」と分けられる。改札の自動化が進んだ現在でも、一部の[[鉄道事業者]]では[[硬券]]入場券が窓口で販売されている。とりわけ[[硬券]](厚紙を用いた券)によるものは記念品として発行されることが多く、[[鉄道ファン]]のみならず旅行客などにも珍重されている。変わった需要としては、年月日が数字並びの時(例:平成12年3月4日)に、特に[[硬券]]入場券が記念で多く買われる例がある。一方、新駅開業などで記念入場券も発行されており、切符の一分野でもあることから[[収集家]]も存在する。
素材により「[[硬券]]入場券」や「軟券入場券」と分けられる。改札の自動化が進んだ現在でも、一部の[[鉄道事業者]]では硬券入場券が窓口で販売されている。とりわけ硬券(厚紙を用いた券)によるものは記念品として発行されることが多く、[[鉄道ファン]]のみならず旅行客などにも珍重されている。変わった需要としては、年月日が数字並びの時(例:平成12年3月4日)に、特に硬券入場券が記念で多く買われる例がある。一方、新駅開業などで記念入場券も発行されており、切符の一分野でもあることから[[収集家]]も存在する。


[[JR]]においては、[[みどりの窓口]]でも入場券を発券している。「軟券」に部類されるが、超耐久感熱紙のため、硬券が廃止された現在でいつでも手に入る入場券としては券売機券よりも保存性に優れており、観光記念に購入する者もいる。ただし、感熱紙のため、いくら耐久性が高いとはいえ、用紙製造メーカーが品質保証しているのは7年間であり、保存状態によってはさらに短くなる。
[[JR]]においては、[[みどりの窓口]]でも入場券を発券している。「軟券」に部類されるが、超耐久感熱紙のため、硬券が廃止された現在でいつでも手に入る入場券としては券売機券よりも保存性に優れており、観光記念に購入する者もいる。ただし、感熱紙のため、いくら耐久性が高いとはいえ、用紙製造メーカーが品質保証しているのは7年間であり、保存状態によってはさらに短くなる。


一部の駅では[[定期乗車券|定期券]]に類似した「定期入場券」も発行されている。これは表口と裏口を自由に行き来する通路を持たない駅で、頻繁に通り抜けする人を対象に発行されるものである<ref group="注釈">改札内店舗の従業員が購入し利用することも見られたが、近年では自社の従業員証での入場を認めることが多い。</ref>。
一部の駅では[[定期乗車券|定期券]]に類似した「定期入場券」も発行されている。これは表口と裏口を自由に行き来する通路を持たない駅で、頻繁に通り抜けする人を対象に発行されるものである<ref group="注釈">改札内店舗の従業員が購入し利用することも見られたが、近年では自社の従業員証での入場を認めることが多い。</ref>。
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したがって、定期乗車券を入場券代わりに使用することはできない。定期乗車券は乗車券の一種であり、乗車券は乗車券類に含まれるため、「乗車船の目的」に限り使用でき、「乗車船以外の目的」(送迎等の入場目的)には使用できないからである。同規則第147条第6項には「乗車券類は、乗車船以外の目的で乗降場に入出する場合には、使用することができない。」という規定があり、他の多くの鉄道事業者においても同様の規定がある。
したがって、定期乗車券を入場券代わりに使用することはできない。定期乗車券は乗車券の一種であり、乗車券は乗車券類に含まれるため、「乗車船の目的」に限り使用でき、「乗車船以外の目的」(送迎等の入場目的)には使用できないからである。同規則第147条第6項には「乗車券類は、乗車船以外の目的で乗降場に入出する場合には、使用することができない。」という規定があり、他の多くの鉄道事業者においても同様の規定がある。


SuicaなどのICカード式乗車券についてもあくまで乗車券類であることから、原則として入場券代わりに使用することはできない。ただし、JR東日本では2021年3月13日から交通系ICカードを入場券と同等に扱うサービス「タッチでエキナカ」を開始した<ref>{{cite press release|format=PDF|url=https://www.jreast.co.jp/press/2020/20210119_ho02.pdf|title=IC入場サービス「タッチでエキナカ」の開始について|publisher=東日本旅客鉄道|date=2021-01-19|accessdate=2021-01-19}}</ref>。
[[Suica]]などのICカード式乗車券についてもあくまで乗車券類であることから、原則として入場券代わりに使用することはできない。ただし、[[東日本旅客鉄道|JR東日本]]では2021年3月13日から交通系ICカードを入場券と同等に扱うサービス「タッチでエキナカ」を開始した<ref>{{cite press release|format=PDF|url=https://www.jreast.co.jp/press/2020/20210119_ho02.pdf|title=IC入場サービス「タッチでエキナカ」の開始について|publisher=東日本旅客鉄道|date=2021-01-19|accessdate=2021-01-19}}</ref>。


入場券に係る料金(入場料金)は、駅構内の秩序や安全に対する対価とされており、異常時の入場制限などへの配慮のため、また、車船内への立入禁止は、出発時のドア付近の混雑や誤乗防止のためとされている。なお古いタイプの券売機では乗車券と入場券の購入ボタンの区別が付きにくく、入場券を乗車券と間違えて購入して目的地までそのまま乗車してしまうケースも見受けられた。 厳密に規定を適用すると入場した駅から改めて運賃相当額を支払う必要がある。
入場券に係る料金(入場料金)は、駅構内の秩序や安全に対する対価とされており、異常時の入場制限などへの配慮のため、また、車船内への立入禁止は、出発時のドア付近の混雑や誤乗防止のためとされている。なお古いタイプの券売機では乗車券と入場券の購入ボタンの区別が付きにくく、入場券を乗車券と間違えて購入して目的地までそのまま乗車してしまうケースも見受けられた。 厳密に規定を適用すると入場した駅から改めて運賃相当額を支払う必要がある。


経理面では、乗車券・定期乗車券・入場券のいずれも、鉄道会社の経常収入(売上高)のうちの「鉄道事業営業収益」に当たるが、乗車券や定期乗車券は「旅客運輸収入」として、それぞれ「定期外運賃・料金」と「定期運賃・料金」に分類されるが、入場料金は「運輸雑収」のうちの「旅客雑収」として、乗車券払戻手数料金、携帯品一時預り料金、手回品料金等と同じく「旅客に係る諸料金」に分類される<ref>「鉄道事業会計規則」(昭和62年2月20日運輸省令第7号)第5条別表第一</ref>。
経理面では、乗車券・定期乗車券・入場券のいずれも、鉄道会社の経常収入(売上高)のうちの「鉄道事業営業収益」に当た、乗車券や定期乗車券は「旅客運輸収入」として、それぞれ「定期外運賃・料金」と「定期運賃・料金」に分類されるが、入場料金は「運輸雑収」のうちの「旅客雑収」として、乗車券払戻手数料金、携帯品一時預り料金、手回品料金等と同じく「旅客に係る諸料金」に分類される<ref>「鉄道事業会計規則」(昭和62年2月20日運輸省令第7号)第5条別表第一</ref>。


また、近くに踏切や通路がない、「[[開かずの踏切]]」となっているといった事情から、通行者の便宜を図るため「構内通行券」などと称した券を発行して駅改札内を通行させている場合もある。これは実質的な無料の入場券と言える。例えば[[北陸新幹線]]開業直後、高架化完成前の[[富山駅]]で在来線([[あいの風とやま鉄道]]管理)を対象に実施された例がある<ref>{{cite web|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210919012020/https://www.sankei.com/article/20150419-2UJW3DDEMBOY3NEIZKVLA3DJYQ/2/|url=https://www.sankei.com/article/20150419-2UJW3DDEMBOY3NEIZKVLA3DJYQ/2/|date=2015-04-19|archivedate=2021-09-19|accessdate=2021-09-20|title=日本の議論「北口に出られない!」混雑、不便、人手不足・北陸新幹線で難題次々|page=2|publisher=[[産経新聞社]]}}</ref>。現在でも[[神戸電鉄]]の[[志染駅]]で発行されており、駅改札内の踏切を無料で通行できる。
また、近くに[[踏切]]や通路がない、「[[開かずの踏切]]」となっているといった事情から、通行者の便宜を図るため「構内通行券」などと称した券を発行して駅改札内を通行させている場合もある。これは実質的な無料の入場券と言える。例えば[[北陸新幹線]]開業直後、高架化完成前の[[富山駅]]で在来線([[あいの風とやま鉄道]]管理)を対象に実施された例がある<ref>{{cite web|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210919012020/https://www.sankei.com/article/20150419-2UJW3DDEMBOY3NEIZKVLA3DJYQ/2/|url=https://www.sankei.com/article/20150419-2UJW3DDEMBOY3NEIZKVLA3DJYQ/2/|date=2015-04-19|archivedate=2021-09-19|accessdate=2021-09-20|title=日本の議論「北口に出られない!」混雑、不便、人手不足・北陸新幹線で難題次々|page=2|publisher=[[産経新聞社]]}}</ref>。現在でも[[神戸電鉄]]の[[志染駅]]で発行されており、駅改札内の踏切を無料で通行できる。


=== 記念入場券 ===
=== 記念入場券 ===
駅の開業などを記念して記念入場券が発売されることがある<ref>[https://www.westjr.co.jp/press/article/2017/01/page_9829.html 京都駅開業140周年記念イベント開催(記念入場券の販売など)] </ref>。
駅の開業などを記念して記念入場券が発売されることがある<ref>[https://www.westjr.co.jp/press/article/2017/01/page_9829.html 京都駅開業140周年記念イベント開催(記念入場券の販売など)]JR西日本ニュースリリース(2017年1月26日)2022年8月24日閲覧</ref>。

=== 「縁起もの」としての入場券 ===
=== 「縁起」としての入場券 ===
鉄道の駅の中には、特に[[駅名]]の字面で[[縁起]]の良さを感じさせるものがあり、これらの駅では縁起物として入場券を発行しているところがある。この効果を狙って、命名を行った駅もある。[[無人駅]]も多く、この場合は近隣の有人駅で発売されている。
鉄道の駅の中には、特に[[駅名]]の字面で[[縁起#転用|縁起]]の良さを感じさせるものがあり、これらの駅では縁起物として入場券を発行しているところがある。この効果を狙って、命名を行った駅もある。[[無人駅]]も多く、この場合は近隣の有人駅で発売されている。


==== 駅名に因むもの ====
==== 駅名に因むもの ====
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* [[一勝地駅]](肥薩線)
* [[一勝地駅]](肥薩線)
*: 「必勝お守り記念入場券」を販売している。
*: 「必勝お守り記念入場券」を販売している。
* [[学駅]]([[徳島線]])[[学門駅]]([[紀州鉄道線]])[[学文路駅]]([[南海高野線]])
* [[学駅]]([[徳島線]])[[学門駅]]([[紀州鉄道線]])[[学文路駅]]([[南海高野線]])
*: [[受験]]縁起物として発売されている。学駅のそれは、5枚合わせて「'''ご入学'''」となる。
*: [[受験]]合格を願う縁起物として発売されている。学駅のそれは、5枚合わせて「'''ご入学'''」となる。
* [[銭函駅]]([[函館本線]])
* [[銭函駅]]([[函館本線]])
*: 金運のお守りとして人気が出た。
*: 金運のお守りとして人気が出た。
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* [[喜入駅]]([[指宿枕崎線]])
* [[喜入駅]]([[指宿枕崎線]])
* [[福渡駅]]([[津山線]])
* [[福渡駅]]([[津山線]])
*: 津山線には他にも[[金川駅]]、[[亀甲駅]]があり、また終点の津山駅には鶴山公園がある事から、津山線の快速には「ことぶき」という名前がついている。
*: 津山線には他にも[[金川駅]]、[[亀甲駅]]があり、また終点の津山駅には鶴山公園がある事から、津山線の[[快速列車]]には「ことぶき」という名前がついている。
* [[狭口駅]](旧[[蒲原鉄道線]])
* [[狭口駅]](旧[[蒲原鉄道線]])
*: 無人駅だったが「狭い口(=狭き門)」に「入る」ということから加茂駅、村松駅、五泉駅等の有人駅で発売されていた。
*: 無人駅だったが「狭い口(=狭き門)」に「入る」ということから[[加茂駅 (新潟県)#かつて存在した路線|加茂駅]][[村松駅 (新潟県)|村松駅]][[五泉駅#かつて存在した路線|五泉駅]]等の有人駅で発売されていた。
* [[初富駅]]([[新京成電鉄]][[新京成電鉄新京成線|新京成線]])
* [[初富駅]]([[新京成電鉄]][[新京成電鉄新京成線|新京成線]])
*: [[硬券]]入場券を新年に発売。また、[[北初富駅]]・[[三咲駅]]・[[五香駅]]の開運[[SKカード]]([[パスネット]])も発行されていた。
*: 硬券入場券を新年に発売。また、[[北初富駅]]・[[三咲駅]]・[[五香駅]]の開運[[SKカード]]([[パスネット]])も発行されていた。
* [[大宝駅]]([[関東鉄道]][[関東鉄道常総線|常総線]])
* [[大宝駅]]([[関東鉄道常総線]])
*: 大きい宝が入るとして人気がある。また、入場券が開運袋に入っているお守りのような「開運大宝入場券」も発売している。無人駅のため、常総線の有人各駅で販売している。
*: 大きい宝が入るとして人気がある。また、入場券が開運袋に入っている[[お守り]]のような「開運大宝入場券」も発売している。無人駅のため、常総線の有人各駅で販売している。


==== 人物に因むもの ====
==== 人物に因むもの ====
* [[小和田駅]]([[飯田線]])
* [[小和田駅]]([[飯田線]])
* [[愛子駅]]([[仙山線]])
* [[愛子駅]]([[仙山線]])
*: それぞれ、[[皇后雅子]]の旧姓「小和田」(ただし駅名は「こわだ」、苗字は「おわだ」)、[[愛子内親王|敬宮愛子内親王]](駅名は「あやし」、名前は「あいこ」)に因んだもの。小和田駅は無人駅であるが、[[皇太子徳仁親王]](現・今上天皇)の妃となった1993年には係員が出張して販売を行っていた。
*: それぞれ、[[皇后雅子]]の旧姓「小和田」(ただし駅名は「こわだ」、苗字は「おわだ」)、[[愛子内親王|敬宮愛子内親王]](駅名は「あやし」、名前は「あいこ」)に因んだもの。小和田駅は無人駅であるが、[[皇太子徳仁親王]]現・今上天皇の妃となった1993年には係員が出張して販売を行っていた。
なお、[[乗車券]]における例については[[乗車券#縁起物の乗車券|縁起物乗車券]]の欄を参照。
なお、[[乗車券]]における例については[[乗車券#縁起物の乗車券|縁起物乗車券]]の欄を参照。


=== 駅ナカ施設関係 ===
=== トイレや駅ナカ施設の利用時 ===
[[公衆便所|公衆トイレ]]が駅の改札内にしかない地区は珍しくない。『[[東京新聞]]』が[[首都圏 (日本)|首都圏]]の鉄道各社に取材したところ、トイレを使いたい場合の対応は以下の通りであった<ref>[https://www.tokyo-np.co.jp/article/194163 改札出た後、駅内のトイレ借りられる?JRなど「入場券購入を」首都圏の各社調査:駅係員判断で認める■「入場証」無料配布]『東京新聞』朝刊2022年8月11日6面(2022年8月24日閲覧)</ref>。
近年、大都市圏の主要駅では「[[駅ナカ]]」と呼ばれる改札内の飲食・商業施設が開業するケースが増えている<ref group="注釈">かつて、[[東海旅客鉄道|JR東海]]の[[名古屋駅]]では改札内の飲食店のみの利用客が非常に多く、入場券専用の[[自動券売機]]が設置されていたことがあった。</ref>。ほとんどの事業者では、改札内に立ち入るだけで入場券は必要となるが、[[小田急電鉄]]では商業施設やコインロッカーの利用が証明できれば入場料を払い戻している<ref>町田駅改札内のフードコンビニ「フー&ハート」にて「FC町田ゼルビア」応援キャンペーンを開催 [https://www.odakyu.jp/news/o5oaa10000005pi6-att/8416_5414087_.pdf (2016年4月27日)]</ref><ref>変わる駅の「入場券」 小田急は全駅で返金制度も導入 背景に何が[https://trafficnews.jp/post/79784 乗りものニュース 2018年3月12日)]</ref>。[[近畿日本鉄道|近鉄]]の[[大和西大寺駅]]では、券売機での購入時に入場券と割引券が発券され、店舗で割引券を提示すると入場券代金分の割引と、場合によっては差額分の返金が受けられる<ref>タイムズプレイス大和西大寺「Times Placeサービス券付」の入場券ご利用方法 [http://www.kintetsu-rs.com/pdf/tpschg.pdf](2018年8月29日閲覧)</ref>。また[[西日本旅客鉄道|JR西日本]][[新大阪駅]]では、入場後に入場券を構内の書店に呈示して割引券を受取り、500円以上の買い物をすると入場券分の代金が値引きされる<ref>入場券でお越しのお客様へ [https://www.ekimarushinosaka.com/information/] (2018年8月29日閲覧)</ref>。


;入場券を購入してもらう。
なお、入場券には不正乗車防止のため多くの場合時間制限(JR北海道・JR東日本・JR東海・JR西日本の全駅およびJR九州の小倉駅と博多駅の場合は発売から2時間。関西私鉄の一部でもほぼ同様の制度あり)があり、超過した場合は再度入場料金が加算される。<!--JRなどはこのことが券面に明記されており、駅によっては注意書きが掲示されることも多いが、鉄道事業者の中には券面に制限時間が明記されておらず、トラブルの元になることがある。←無出典-->
:JR東日本、[[東武鉄道]]、[[京成電鉄]]、[[京王電鉄]]、[[京浜急行電鉄]]


;原則的に入場券が必要だが、やむを得ないと駅係員が判断すれば入場券なしで利用を認めることもある。
== 世界各国の鉄道駅における入場券 ==
:[[西武鉄道]]、[[東急電鉄]]、[[相模鉄道]]
世界各国の鉄道駅で、入場券による駅構内への入場規制を行っている国は、イギリスやインド、パキスタンなどがある。


;自動改札機を通れる無料の「入場証」を渡す。
=== イギリスの鉄道駅における入場券 ===
:[[小田急電鉄]](2016年3月開始)
==== ナショナル・レール駅の入場券 ====

[[イギリス国鉄]]の駅では、20世紀中盤まで入場券(Platform ticket)が広く用いられ、民営化後に国鉄の路線網を引き継いだ[[ナショナル・レール]]でもほとんどの駅窓口で発券可能である。近年は大都市近郊や主要駅を中心に[[改札口]]が設けられており、その結果入場券に対する新たな需要が生まれている。なお、入場券は通常自動券売機では購入できず、出札窓口での購入となる。価格は1枚10ペンスで1時間有効の駅が多い。改札業務を行わない駅では入場券を購入する必要はない。
;入場券がなく、利用者を改札に近いトイレを案内する。
:[[東京メトロ]]

このほか大都市圏の主要駅では「[[駅ナカ]]」と呼ばれる改札内の飲食・商業施設が増えている<ref group="注釈">かつて、JR東海の[[名古屋駅]]では改札内の飲食店のみの利用客が非常に多く、入場券専用の[[自動券売機]]が設置されていたことがあった。</ref>。ほとんどの事業者では、改札内に立ち入るだけで入場券は必要となるが、小田急電鉄では商業施設やコインロッカーの利用が証明できれば入場料を払い戻している<ref>[https://www.odakyu.jp/news/o5oaa10000005pi6-att/8416_5414087_.pdf 町田駅改札内のフードコンビニ「フー&ハート」にて「FC町田ゼルビア」応援キャンペーンを開催] 小田急電鉄ニュースリリース(2016年4月27日)2022年8月24日閲覧</ref><ref>[https://trafficnews.jp/post/79784 変わる駅の「入場券」 小田急は全駅で返金制度も導入 背景に何が] 乗りものニュース(2018年3月12日)2022年8月24日閲覧</ref>。[[近畿日本鉄道|近鉄]]の[[大和西大寺駅]]では、券売機での購入時に入場券と割引券が発券され、店舗で割引券を提示すると入場券代金分の割引と、場合によっては差額分の返金が受けられる<ref>[http://www.kintetsu-rs.com/pdf/tpschg.pdf タイムズプレイス大和西大寺「Times Placeサービス券付」の入場券ご利用方法]{{リンク切れ|date=2022年8月}}(2018年8月29日閲覧)</ref>。また[[西日本旅客鉄道|JR西日本]][[新大阪駅]]では、入場後に入場券を構内の書店に呈示して割引券を受取り、500円以上の買い物をすると入場券分の代金が値引きされる<ref>[https://www.ekimarushinosaka.com/information/ 入場券でお越しのお客様へ] エキマルシェ新大阪(2022年8月24日閲覧)</ref>。

なお、入場券には不正乗車防止のため多くの場合時間制限([[北海道旅客鉄道|JR北海道]]・JR東日本・[[東海旅客鉄道|JR東海]]・JR西日本の全駅および[[九州旅客鉄道|JR九州]][[小倉駅_(福岡県)|小倉駅]][[博多駅]]の場合は発売から2時間。関西私鉄の一部でもほぼ同様の制度あり)があり、超過した場合は再度入場料金が加算される。<!--JRなどはこのことが券面に明記されており、駅によっては注意書きが掲示されることも多いが、鉄道事業者の中には券面に制限時間が明記されておらず、トラブルの元になることがある。←無出典-->

== 日本以外の鉄道駅入場券 ==
世界各国の鉄道駅で、入場券による駅構内への入場規制を行っている国は、[[イギリスの鉄道|イギリス]][[インドの鉄道|インド]][[パキスタンの鉄道|パキスタン]]などがある。

=== イギリス ===
==== ナショナル・レール ====
[[イギリス国鉄]]の駅では、20世紀中盤まで入場券(Platform ticket)が広く用いられ、民営化後に国鉄の路線網を引き継いだ[[ナショナル・レール]]でもほとんどの駅窓口で発券可能である。近年は大都市近郊や主要駅を中心に[[改札口]]が設けられており、その結果入場券に対する新たな需要が生まれている。なお、入場券は通常自動券売機では購入できず、出札窓口での購入となる。価格は1枚10[[ペニー#ポンド圏の補助通貨|ペンス]]で1時間有効の駅が多い。改札業務を行わない駅では入場券を購入する必要はない。


一部の列車運行会社は管轄下にある駅で入場券の発売を中止している。そのような駅で本来入場券を必要とする利用者は、改札係員に申し出、許可を得てから入場(無料)することになる。収集目的など実際に使用しない場合、出札係員の裁量により、無効であることを了解のうえで発売することもある。その一方で、発売を正式には中止していない会社の駅でも、係員が入場券の存在を知らないなどの理由で発売を拒否する場合があるなど、入場券の発売可否に関する方針は徹底されていない。
一部の列車運行会社は管轄下にある駅で入場券の発売を中止している。そのような駅で本来入場券を必要とする利用者は、改札係員に申し出、許可を得てから入場(無料)することになる。収集目的など実際に使用しない場合、出札係員の裁量により、無効であることを了解のうえで発売することもある。その一方で、発売を正式には中止していない会社の駅でも、係員が入場券の存在を知らないなどの理由で発売を拒否する場合があるなど、入場券の発売可否に関する方針は徹底されていない。
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[[ロンドン・ヴィクトリア駅]]、[[チャリングクロス駅]]、[[キャノンストリート駅]]、[[ユーストン駅]]、[[:en:Edinburgh Waverley railway station|エディンバラ・ウェイバリー駅]]
[[ロンドン・ヴィクトリア駅]]、[[チャリングクロス駅]]、[[キャノンストリート駅]]、[[ユーストン駅]]、[[:en:Edinburgh Waverley railway station|エディンバラ・ウェイバリー駅]]


==== ロンドン地下鉄駅の入場券 ====
==== ロンドン地下鉄 ====
[[ロンドン地下鉄]]の各駅では、全ての駅窓口で入場券を1枚1ポンド([[サザーク駅]]は20ペンス<ref>[http://www.london-se1.co.uk/news/view/4395 Southwark Station platform ticket cut to 20p for Waterloo East passengers]</ref>)で発売している。しかし駅構内へ入場する正当な理由がない場合、発売を拒否される場合がある。
[[ロンドン地下鉄]]の各駅では、全ての駅窓口で入場券を1枚1[[スターリングポンド|ポンド]]([[サザーク駅]]は20ペンス<ref>[http://www.london-se1.co.uk/news/view/4395 Southwark Station platform ticket cut to 20p for Waterloo East passengers]</ref>)で発売している。しかし駅構内へ入場する正当な理由がない場合、発売を拒否される場合がある。

=== パキスタン ===
[[ファイル:Platform ticket of Pakistan,Rawalpidi,Pakistan.JPG|thumb|200px|右|パキスタンの入場券。[[ラーワルピンディー駅]](2001年)。]]
[[ファイル:Platform ticket of Pakistan,Rawalpidi,Pakistan.JPG|thumb|200px|右|パキスタンの入場券。[[ラーワルピンディー駅]](2001年)。]]
=== パキスタンの鉄道における入場券 ===
イギリスの植民地であった[[パキスタンの鉄道]]においても入場券(Platform ticket)による駅構内への入場規制が行われている。
イギリスの植民地であった[[パキスタン]]においても入場券(Platform ticket)による駅構内への入場規制が行われている。


=== 韓国の鉄道駅における入場券 ===
=== 韓国 ===
[[韓国鉄道公社]](KORAIL)の駅([[広域電鉄]]除く)では、かつて入場券を有料にて売していた(発売当時500ウォン)。しかし[[信用乗車方式]]の導入などがあり発売が中止された後、現在は駅券売機にて無料で発券可能となっている。また、一部の駅において、記念入場券目的の入場券を発売している(1枚1,000ウォン)。
[[韓国鉄道公社]](KORAIL)の駅([[広域電鉄]]除く)では、かつて入場券を有料にて売していた(当時500[[大韓民国ウォン|ウォン]])。しかし[[信用乗車方式]]の導入などがあり発売が中止された後、現在は駅券売機にて無料で発券可能となっている。また、一部の駅において、記念入場券目的の入場券を発売している(1枚1,000ウォン)。


=== 台湾の鉄道駅における入場券 ===
=== 台湾 ===
[[台湾鉄路管理局]]では、かつて入場券を有料にて売していた(発売当時6元)。2013年6月1日に廃止され、身分証との交換で通行証を貸与する形式に変更された。
[[台湾鉄路管理局]]では、かつて入場券を有料にて売していた(当時6[[新台湾ドル|]])。2013年6月1日に廃止され、身分証との交換で通行証を貸与する形式に変更された。


== 道の駅記念きっぷ ==
== 道の駅記念きっぷ ==
[[画像:Roadstation-ticket washima.jpg|thumb|200px|道の駅記念きっぷ([[道の駅良寛の里わしま|良寛の里わしま]])]]
[[画像:Roadstation-ticket washima.jpg|thumb|200px|道の駅記念きっぷ([[道の駅良寛の里わしま|良寛の里わしま]])]]
多くの[[道の駅]]では来訪記念のお土産として鉄道の記念入場券にヒントを得た「記念きっぷ」を発売している。当初は「記念入場券」としていたが、改札やプラットホームの道の駅には入場という概念が存在しない事から、誤解を与えないよう現在の名称に改められた。
多くの[[道の駅]]では来訪記念のお土産として鉄道の記念入場券にヒントを得た「記念きっぷ」を発売している。当初は「記念入場券」としていたが、立ち寄りが自由な道の駅には入場という概念が存在しない事から、誤解を与えないよう現在の名称に改められた。料金は1枚180円(税込)。特定の駅で販売されるか、[[市町村合併]]記念や購入特典の無料配布などをして対応している

料金は1枚180円(税込)。特定の駅で販売されるか、[[市町村合併]]記念や購入特典の無料配布などをして対応している。


== 入場券が不要な施設 ==
== 入場券が不要な施設 ==
入場料が不要な施設では原則としては、入場券が不要である。鉄道の駅において改札口がない場合(例:フランス国鉄やタイ国鉄など)では入場券がなく、乗車を目的としない場合の駅構内への立ち入りは自由であるほか、日本の鉄道駅においても[[無人駅]]の場合、係員がおらず、基本は自動券売機でも入場券は売っていない<ref group="注釈">「[[#記念入場券]]」「[[#「縁起もの」としての入場券]]」で述べたようにコレクション用の入場券としては発売することがある。</ref>。扉付きの改札機のように入場を物理的に制御する機械もない場合がほとんどのため、駅構内やホーム上まで入場券を持たずに入ることが事実上黙認されている。ただし[[駅集中管理システム]]導入駅のように自動改札機が設置されている場合は、入場券を発売していることがある<ref>{{cite web|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210628044433/https://www.meitetsu.co.jp/train/guidance/control/|url=https://www.meitetsu.co.jp/train/guidance/control/|archivedate=2021-06-28|date=|accessdate=2021-09-23|title=駅集中管理システム・電車のご利用案内|publisher=[[名古屋鉄道]]}}</ref>。<!--しかし、呉線の小屋浦駅では有人駅時代の名残で自動券売機にて無人駅にも関わらず、入場券が発売されている。←無出典-->
入場料が不要な施設では原則としては、入場券が不要である。鉄道の駅において改札口がない場合(例:[[フランス国鉄]][[タイ国鉄]]など)では入場券がなく、乗車を目的としない場合の駅構内への立ち入りは自由である日本の鉄道駅においても無人駅の場合、係員がおらず、基本は自動券売機でも入場券は売っていない<ref group="注釈">「[[#記念入場券]]」「[[#「縁起もの」としての入場券]]」で述べたようにコレクション用の入場券としては発売することがある。</ref>。扉付きの改札機のように入場を物理的に制御する機械もない場合がほとんどのため、駅構内やホーム上まで入場券を持たずに入ることが事実上黙認されている。ただし[[駅集中管理システム]]導入駅のように自動改札機が設置されている場合は、入場券を発売していることがある<ref>{{cite web|archiveurl=https://web.archive.org/web/20210628044433/https://www.meitetsu.co.jp/train/guidance/control/|url=https://www.meitetsu.co.jp/train/guidance/control/|archivedate=2021-06-28|date=|accessdate=2021-09-23|title=駅集中管理システム・電車のご利用案内|publisher=[[名古屋鉄道]]}}</ref>。<!--しかし、呉線の小屋浦駅では有人駅時代の名残で自動券売機にて無人駅にも関わらず、入場券が発売されている。←無出典-->


また、遊園地においては、入場無料で入場券が不要であり、個々の遊戯施設に対する利用料金のみが発生する場合があ<ref>例:[http://my-hiyou.com/charge/amusement_park_cosmoworld.html よこはまコスモワールドの入場料]</ref>[[富士急ハイランド]]のように入場無料に切り替えた施設もある。
また、遊園地においては、入場自体は無料で入場券が不要であり、個々の[[アトラクション (遊園地)|遊戯施設]]に対する利用料金のみが発生する施設があ<ref>例:[http://my-hiyou.com/charge/amusement_park_cosmoworld.html よこはまコスモワールドの入場料]</ref>[[富士急ハイランド]]のように入場無料に切り替えた施設もある。


== 脚注 ==
== 脚注 ==

2022年8月24日 (水) 07:44時点における版

入場券(にゅうじょうけん)とは、入場に何らかの制限が加わっている施設や場所へ入るため必要となる券である。

本項では、鉄道駅に入場するための入場券と、鉄道駅以外の各種施設に入場するための入場券をそれぞれ説明する。

鉄道駅以外の入場券

有料施設等における入場券とは、利用入場料金証票、すなわち入場料金を支払ったことを証明する証票のことを言う。なお、無料の施設、催し物などにおいて入場に制限を加える場合においては、発行する整理券の類や招待状などを指す場合もあり、選挙投票所入場券などがある。

一般には劇場映画館コンサートホールスポーツ観戦などのものがあり、日本国内でも、英語のチケット(ticket)と呼ばれることも多い。美術館博物館などに入るための証票は入館券動物園植物園遊園地などに入るための証票は入園券茶席などに入るための証票は入室券などの呼称がある。公衆浴場温泉で入浴するための証票は入浴券と呼ばれる。

劇場や映画館、競技施設などの入場券は、ミシン目などによって二つの部分にちぎれるようになっているものが多い。こうして出来た券片を半券といい、座席の確認や、施設へ再入場する際に使われるほか、これが領収書代わりともなる。こうした券をもぎ取る行為やそれを行う係の者を「もぎり」という。確実に来場者の入場券から切り取られていることから、スタッフが1枚1枚券片を数えるのが一番正確かつ簡単に来場者数を把握できる方法としてこの入場券の存在は重宝されている[注釈 1][1]

近年では半券をもぎ取る従来式の入場券に代わって、極小ICチップを組み込んだICカードを用いたものも開発され、2005年の「愛・地球博」などから採用された。また、QRコードを使用するものも順次広まっている。これらは、スマートフォンに組み込むことによって、紙の入場券を発行しない場合もある。

入場券においては、複数回入場するための回数券が設定されている場合がある。

イベントの中止や施設の閉鎖が決定した場合は、入場券は払い戻しとなる。

日本の鉄道駅の入場券

マルス端末で発行した入場券 硬券入場券 軟券入場券
マルス端末で発行した入場券
硬券入場券
軟券入場券

鉄道においては、見送りなど、乗車船以外の目的で駅の改札内に入場する際に発行される。一般には、最低運賃と同額の場合が多い。しかし、最低運賃が異なる複数の会社・路線が同一改札内で利用できる駅(共同使用駅)には低い方の運賃に設定される場合や、各社の異なる料金で発行され、それぞれの収入として扱われながら効力が同一[注釈 2]という例がある。

なお、会社や駅によっては制限時間を設けているところもあり、その旨を説明する目的などから、券売機での発売をせず窓口でのみ入場券を発行する駅も地方の小規模駅を中心に存在する。かつては東急電鉄(旧・東京急行電鉄時代)、名古屋鉄道近畿日本鉄道京阪電気鉄道の全駅では、窓口でのみの発売であった。入場券自体を発売していない事業者(ほとんどの地下鉄西日本鉄道など)もあるが、便宜的に最低運賃の乗車券を入場券として利用させる場合もある[2]。過去に北海道地方では、最低運賃の乗車券と入場券が併記されている兼用の券も存在した。

中間改札口を有する駅で、それぞれの駅を管轄する事業者が異なる場合は、原則としてそれぞれの事業者が発行する入場券が必要である。ただし国鉄時代からの慣例として、新幹線在来線を管轄するJR旅客会社が異なる駅(東京駅など)は、いずれかの事業者が発行する入場券で新幹線・在来線とも入場できる。在来線が第三セクター鉄道に移管された駅では新幹線・在来線それぞれの入場券が必要である[注釈 3]

日本で初めて入場券販売を行ったのは、1897年明治30年)の山陽鉄道(後の山陽本線を敷設した私鉄)であったとされる。

素材により「硬券入場券」や「軟券入場券」と分けられる。改札の自動化が進んだ現在でも、一部の鉄道事業者では硬券入場券が窓口で販売されている。とりわけ硬券(厚紙を用いた券)によるものは記念品として発行されることが多く、鉄道ファンのみならず旅行客などにも珍重されている。変わった需要としては、年月日が数字並びの時(例:平成12年3月4日)に、特に硬券入場券が記念で多く買われる例がある。一方、新駅開業などで記念入場券も発行されており、切符の一分野でもあることから収集家も存在する。

JRにおいては、みどりの窓口でも入場券を発券している。「軟券」に部類されるが、超耐久感熱紙のため、硬券が廃止された現在でいつでも手に入る入場券としては券売機券よりも保存性に優れており、観光記念に購入する者もいる。ただし、感熱紙のため、いくら耐久性が高いとはいえ、用紙製造メーカーが品質保証しているのは7年間であり、保存状態によってはさらに短くなる。

一部の駅では定期券に類似した「定期入場券」も発行されている。これは表口と裏口を自由に行き来する通路を持たない駅で、頻繁に通り抜けする人を対象に発行されるものである[注釈 4]

駅構内への入場には「乗車船の目的」と「乗車船以外の目的」の二つに分けられる。前者は乗車券類、後者は入場券が必要となる。JRの旅客営業規則第294条には「次の各号に掲げる者が、乗車船以外の目的で乗降場に入場しようとする場合は、入場券を購入し、これを所持しなければならない。(後略)」と規定されている[注釈 5]

したがって、定期乗車券を入場券代わりに使用することはできない。定期乗車券は乗車券の一種であり、乗車券は乗車券類に含まれるため、「乗車船の目的」に限り使用でき、「乗車船以外の目的」(送迎等の入場目的)には使用できないからである。同規則第147条第6項には「乗車券類は、乗車船以外の目的で乗降場に入出する場合には、使用することができない。」という規定があり、他の多くの鉄道事業者においても同様の規定がある。

SuicaなどのICカード式乗車券についてもあくまで乗車券類であることから、原則として入場券代わりに使用することはできない。ただし、JR東日本では2021年3月13日から交通系ICカードを入場券と同等に扱うサービス「タッチでエキナカ」を開始した[6]

入場券に係る料金(入場料金)は、駅構内の秩序や安全に対する対価とされており、異常時の入場制限などへの配慮のため、また、車船内への立入禁止は、出発時のドア付近の混雑や誤乗防止のためとされている。なお古いタイプの券売機では乗車券と入場券の購入ボタンの区別が付きにくく、入場券を乗車券と間違えて購入して目的地までそのまま乗車してしまうケースも見受けられた。 厳密に規定を適用すると入場した駅から改めて運賃相当額を支払う必要がある。

経理面では、乗車券・定期乗車券・入場券のいずれも、鉄道会社の経常収入(売上高)のうちの「鉄道事業営業収益」に当たり、乗車券や定期乗車券は「旅客運輸収入」として、それぞれ「定期外運賃・料金」と「定期運賃・料金」に分類されるが、入場料金は「運輸雑収」のうちの「旅客雑収」として、乗車券払戻手数料金、携帯品一時預り料金、手回品料金等と同じく「旅客に係る諸料金」に分類される[7]

また、近くに踏切や通路がない、「開かずの踏切」となっているといった事情から、通行者の便宜を図るため「構内通行券」などと称した券を発行して駅改札内を通行させている場合もある。これは実質的な無料の入場券と言える。例えば北陸新幹線開業直後、高架化完成前の富山駅で在来線(あいの風とやま鉄道管理)を対象に実施された例がある[8]。現在でも神戸電鉄志染駅で発行されており、駅改札内の踏切を無料で通行できる。

記念入場券

駅の開業などを記念して記念入場券が発売されることがある[9]

「縁起物」としての入場券

鉄道の駅の中には、特に駅名の字面で縁起の良さを感じさせるものがあり、これらの駅では縁起物として入場券を発行しているところがある。この効果を狙って、命名を行った駅もある。無人駅も多く、この場合は近隣の有人駅で発売されている。

駅名に因むもの

人物に因むもの

なお、乗車券における例については「縁起物乗車券」の欄を参照。

トイレや駅ナカ施設の利用時

公衆トイレが駅の改札内にしかない地区は珍しくない。『東京新聞』が首都圏の鉄道各社に取材したところ、トイレを使いたい場合の対応は以下の通りであった[10]

入場券を購入してもらう。
JR東日本、東武鉄道京成電鉄京王電鉄京浜急行電鉄
原則的に入場券が必要だが、やむを得ないと駅係員が判断すれば入場券なしで利用を認めることもある。
西武鉄道東急電鉄相模鉄道
自動改札機を通れる無料の「入場証」を渡す。
小田急電鉄(2016年3月開始)
入場券がなく、利用者を改札に近いトイレを案内する。
東京メトロ

このほか大都市圏の主要駅では「駅ナカ」と呼ばれる改札内の飲食・商業施設が増えている[注釈 6]。ほとんどの事業者では、改札内に立ち入るだけで入場券は必要となるが、小田急電鉄では商業施設やコインロッカーの利用が証明できれば入場料を払い戻している[11][12]近鉄大和西大寺駅では、券売機での購入時に入場券と割引券が発券され、店舗で割引券を提示すると入場券代金分の割引と、場合によっては差額分の返金が受けられる[13]。またJR西日本新大阪駅では、入場後に入場券を構内の書店に呈示して割引券を受取り、500円以上の買い物をすると入場券分の代金が値引きされる[14]

なお、入場券には不正乗車防止のため多くの場合、時間制限(JR北海道・JR東日本・JR東海・JR西日本の全駅およびJR九州小倉駅博多駅の場合は発売から2時間。関西私鉄の一部でもほぼ同様の制度あり)があり、超過した場合は再度入場料金が加算される。

日本以外の鉄道駅の入場券 

世界各国の鉄道駅で、入場券による駅構内への入場規制を行っている国は、イギリスインドパキスタンなどがある。

イギリス

ナショナル・レール

イギリス国鉄の駅では、20世紀中盤まで入場券(Platform ticket)が広く用いられ、民営化後に国鉄の路線網を引き継いだナショナル・レールでもほとんどの駅窓口で発券可能である。近年は大都市近郊や主要駅を中心に改札口が設けられており、その結果入場券に対する新たな需要が生まれている。なお、入場券は通常自動券売機では購入できず、出札窓口での購入となる。価格は1枚10ペンスで1時間有効の駅が多い。改札業務を行わない駅では入場券を購入する必要はない。

一部の列車運行会社は管轄下にある駅で入場券の発売を中止している。そのような駅で本来入場券を必要とする利用者は、改札係員に申し出、許可を得てから入場(無料)することになる。収集目的など実際に使用しない場合、出札係員の裁量により、無効であることを了解のうえで発売することもある。その一方で、発売を正式には中止していない会社の駅でも、係員が入場券の存在を知らないなどの理由で発売を拒否する場合があるなど、入場券の発売可否に関する方針は徹底されていない。

  • 管轄下にある駅で入場券を発売する列車運行会社

イースト・コーストイースト・ミッドランズ・トレインズノーザン・レールファースト・スコットレールサウスイースタンサザンヴァージン・トレインズ

  • 入場券の発売を中止した列車運行会社

アリーヴァ・トレインズ・ウェールズファースト・グレート・ウエスタングレーター・アングリアサウスウェスト・トレインズ

  • 上記にかかわらず発売しない駅

ロンドン・ヴィクトリア駅チャリングクロス駅キャノンストリート駅ユーストン駅エディンバラ・ウェイバリー駅

ロンドン地下鉄

ロンドン地下鉄の各駅では、全ての駅窓口で入場券を1枚1ポンドサザーク駅は20ペンス[15])で発売している。しかし駅構内へ入場する正当な理由がない場合、発売を拒否される場合がある。

パキスタン

パキスタンの入場券。ラーワルピンディー駅(2001年)。

イギリスの植民地であったパキスタンの鉄道においても入場券(Platform ticket)による駅構内への入場規制が行われている。

韓国

韓国鉄道公社(KORAIL)の駅(広域電鉄除く)では、かつて入場券を有料にて販売していた(当時500ウォン)。しかし信用乗車方式の導入などがあり発売が中止された後、現在は駅券売機にて無料で発券可能となっている。また、一部の駅において、記念入場券目的の入場券を発売している(1枚1,000ウォン)。

台湾

台湾鉄路管理局では、かつて入場券を有料にて販売していた(当時6)。2013年6月1日に廃止され、身分証との交換で通行証を貸与する形式に変更された。

道の駅記念きっぷ

道の駅記念きっぷ(良寛の里わしま

多くの道の駅では来訪記念のお土産として、鉄道の記念入場券にヒントを得た「記念きっぷ」を発売している。当初は「記念入場券」としていたが、立ち寄りが自由な道の駅には「入場」という概念が存在しない事から、誤解を与えないよう現在の名称に改められた。料金は1枚180円(税込)。特定の駅で販売されるか、市町村合併記念や購入特典の無料配布などをして対応している。

入場券が不要な施設

入場料が不要な施設では原則としては、入場券が不要である。鉄道の駅において改札口がない場合(例:フランス国鉄タイ国鉄など)では入場券がなく、乗車を目的としない場合の駅構内への立ち入りは自由である。日本の鉄道駅においても無人駅の場合、係員がおらず、基本は自動券売機でも入場券は売っていない[注釈 7]。扉付きの改札機のように入場を物理的に制御する機械もない場合がほとんどのため、駅構内やホーム上まで入場券を持たずに入ることが事実上黙認されている。ただし駅集中管理システム導入駅のように自動改札機が設置されている場合は、入場券を発売していることがある[16]

また、遊園地においては、入場自体は無料で入場券が不要であり、個々の遊戯施設に対する利用料金のみが発生する施設がある[17]富士急ハイランドのように入場無料に切り替えた施設もある。

脚注

注釈

  1. ^ かつては主催者がこの半券を税務調査のために取っておく必要があり、主にクラシックコンサートの主催者がこれを行なっていた。半券そのものに入場券の値段が書いてあることから、それを枚数と掛け合わせることによって当日のコンサートの収益がわかる仕組みだったため、合理性を求める上では必要不可欠なものであった。
  2. ^ 改札分離前の和歌山市駅の場合、窓口では業務を受託していた南海電気鉄道の様式ながらJR西日本の料金で発売された一方、自動券売機では南海電気鉄道により同社の料金で発売され、それぞれの収入として扱われていた。
  3. ^ 2021年時点、新幹線がJR旅客鉄道会社の管轄、在来線が第三セクター鉄道会社の管轄である駅において、新幹線・在来線それぞれの改札内を直接接続する連絡改札口が設置されている駅は存在しない。例えば、八戸駅にはかつて連絡改札口が設置されていたが[3]、在来線の青い森鉄道移管に伴い閉鎖されている[4]。例外的に在来線がJR西日本管轄である金沢駅IRいしかわ鉄道も入場券を発売しているが、この入場券で新幹線改札内には入ることはできない[5]
  4. ^ 改札内店舗の従業員が購入し利用することも見られたが、近年では自社の従業員証での入場を認めることが多い。
  5. ^ JR四国では、例年10月の鉄道の日前後に開催される多度津工場の一般公開イベントで、来場者のアクセスとして多度津駅から工場内に直通するシャトル列車を運行しているが、多度津駅からの乗車の場合は多度津駅の入場券での乗車を便宜的に認めている(多度津工場は多度津駅の構内とみなす。多度津以外の駅からの利用の場合は多度津駅発着の乗車券で乗車可能)。
  6. ^ かつて、JR東海の名古屋駅では改札内の飲食店のみの利用客が非常に多く、入場券専用の自動券売機が設置されていたことがあった。
  7. ^ #記念入場券」「#「縁起もの」としての入場券」で述べたようにコレクション用の入場券としては発売することがある。

出典

  1. ^ “クラシックコンサートのチケット、“半券”はなんのためにある?意外に重要な役割が…”. Business Journal. (2020年8月8日). https://biz-journal.jp/2020/08/post_172928.html 2020年8月10日閲覧。 
  2. ^ 市営地下鉄に、見送りなどで入場したい場合にはどうすればいいですか”. 横浜市. 2016年8月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年7月5日閲覧。
  3. ^ 八戸駅構内図”. 東日本旅客鉄道 (2008年6月). 2008年6月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年9月18日閲覧。
  4. ^ 八戸駅構内図”. 東日本旅客鉄道 (2010年12月). 2011年3月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年9月18日閲覧。
  5. ^ きっぷの取扱い・購入方法”. IRいしかわ鉄道. 2020年6月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年7月6日閲覧。 - 「入場券」の節参照。
  6. ^ "IC入場サービス「タッチでエキナカ」の開始について" (PDF) (Press release). 東日本旅客鉄道. 19 January 2021. 2021年1月19日閲覧
  7. ^ 「鉄道事業会計規則」(昭和62年2月20日運輸省令第7号)第5条別表第一
  8. ^ 日本の議論「北口に出られない!」混雑、不便、人手不足・北陸新幹線で難題次々”. 産経新聞社. p. 2 (2015年4月19日). 2021年9月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年9月20日閲覧。
  9. ^ 京都駅開業140周年記念イベント開催(記念入場券の販売など)JR西日本ニュースリリース(2017年1月26日)2022年8月24日閲覧
  10. ^ 改札出た後、駅内のトイレ借りられる?JRなど「入場券購入を」首都圏の各社調査:駅係員判断で認める■「入場証」無料配布『東京新聞』朝刊2022年8月11日6面(2022年8月24日閲覧)
  11. ^ 町田駅改札内のフードコンビニ「フー&ハート」にて「FC町田ゼルビア」応援キャンペーンを開催 小田急電鉄ニュースリリース(2016年4月27日)2022年8月24日閲覧
  12. ^ 変わる駅の「入場券」 小田急は全駅で返金制度も導入 背景に何が 乗りものニュース(2018年3月12日)2022年8月24日閲覧
  13. ^ タイムズプレイス大和西大寺「Times Placeサービス券付」の入場券ご利用方法[リンク切れ](2018年8月29日閲覧)
  14. ^ 入場券でお越しのお客様へ エキマルシェ新大阪(2022年8月24日閲覧)
  15. ^ Southwark Station platform ticket cut to 20p for Waterloo East passengers
  16. ^ 駅集中管理システム・電車のご利用案内”. 名古屋鉄道. 2021年6月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年9月23日閲覧。
  17. ^ 例:よこはまコスモワールドの入場料

外部リンク