伊藤穰一

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伊藤 穰一
(いとう じょういち)
生誕 1966年6月19日(47歳)
日本の旗 京都府京都市
出身校 タフツ大学コンピューターサイエンス専攻中退
シカゴ大学物理専攻中退
社会研究新学校(学士)
The New School 名誉博士(文学博士)
職業 MITメディアラボ所長、実業家、投資家
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伊藤 穰一(いとう じょういち、1966年昭和41年6月19日 - )は、日本ベンチャーキャピタリスト実業家で、MITメディアラボ所長[1]である。Joiを愛称としている。

経歴[編集]

生い立ち[編集]

1981年撮影

1966年6月19日京都府で生まれた後に一家でカナダへ、さらに3歳の頃アメリカミシガン州デトロイト郊外へ移住している。父親は研究者、母親は秘書としてEnergy Conversion Devices英語版(現在のOvonics社)で働いていた。同社の創業者Stanford Robert Ovshinsky英語版にとても目を掛けられ、当時のテクノロジーや社会情勢について教育を受け13歳で「もはや子どもではなかった」と語られている[2]。毎年の夏期は妹と共に日本の祖母宅で過ごし[3]古来日本文化に触れている。母親がEnergy Conversion Devices日本法人社長へ着任する時に14歳で日本へ帰国して西町インターナショナルスクール[4]アメリカンスクール・イン・ジャパン[5]に学び、福井謙一も母と親交のあるために幼少期より親しく化学や物理学への造詣を深めている。

1985年の通信改革以前にモデムを利用していた日本人の一人で、10代でThe Source英語版original MUD英語版を始め26歳まで自作MUDを使っていた。高校卒業後に再度渡米してタフツ大学で後のeBay創業者Pierre Omidyar英語版と出会う[6]も、専攻の堅苦しさとコンピューターを学校で「習う」ことに違和感を覚え、中途退学してOvonics社で働き始めるがStanford R. Ovshinskyに復学を勧められる。シカゴ大学物理専攻へ入学するも、物理を理解させることより実用的エンジニア育成を重視するカリキュラムに失望し、再び中途退学している。1985年秋にConnected Education英語版社のパイオニアプログラム・オンラインコース第1期生になり、New School for Social Research英語版で学士号を修得している。

シカゴナイトクラブThe Limelight英語版やThe Smart BarでDJを務め、Metasystems Design Groupと一緒に東京でネット共同体英語版を模索している。後にMetro Chicago英語版Joe Shanahan英語版に援助されて六本木でナイトクラブXY Relaxを運営し、インダストリアル・ロックレイブなど音楽文化をシカゴから日本へ持ち込む一助になる。

著書に「Emergent Democracy英語版[7]があり、慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科非常勤講師を務めたことがある。2013年5月に米国大学機構英語版より名誉博士号(文学博士)を受位[8]している。

現在は妻の伊藤瑞佳とボストンに居住している。文化人類学者の伊藤瑞子は妹で、ミュージシャンの小山田圭吾はとこである。

実業家[編集]

2008年 クリエイティブ・コモンズ・ジャパン パネルディスカッションにて

PSINet Japan、株式会社デジタルガレージInfoseek Japan、など多数のIT関連会社を起業している。デジタルガレージ[9]カルチュア・コンビニエンス・クラブ[10]ローソンマネックスグループソニー[11]、株式会社日本技芸、ニューヨーク・タイムズTucows[12]Mozilla FoundationWITNESSCreative Commons、The John S. and James L. Knight Foundation、マッカーサー基金[13]などのボードメンバーを務める。

個人投資家[編集]

ベンチャーキャピタリストだけでなくエンジェル投資家としても世界に知られている。売上が小さく非常に早い段階(アーリーステージ)でのベンチャー支援に積極的で、ブログやソーシャルサービス、マイクロファイナンスなど、インターネット時代を代表するユニークなビジネスの創出に貢献している。過去に、Twitter[14]Six ApartWikiaFlickrLast.fmFotonautsKickstarter[15]Pathloftwork[16]などへ投資している。創発民主制シェアリングエコノミーの提唱者でもある。

MITメディアラボ[編集]

2011年9月1日より日本人で初めてMITメディアラボ所長[17]を務める。ニューヨーク・タイムズは「2度の大学中退歴を持つ彼の就任は、非常に珍しいケースだ」と伝え、Calit2の所長ラリー・スマールは「選任はラディカルだが賢明だ」と評価[18]している。メディアラボの共同創業者で名誉議長のニコラス・ネグロポンテは「Joiがメディアを変えていくだろう」[19]と語っている。アジアン・サイエンティスト・マガジン誌のインタビューでは、MITメディアラボのビジョンを語った上で「教育」ではなく「学び」という言葉のほうがしっくりくる[20]と語っている。着任後にメディアラボの活動指針として「ユニーク、インパクト、マジック」を示し、「誰もやっていないことをやる、真似はしない(ユニーク)」「やるなら社会にインパクトを与える活動を目指す(インパクト)」「そしてそれは驚きや感動を与えるものであるべきだ(マジック)」という意味の3つのキーワードを提示している。

2013年にディレクターズ・フェロープログラムを創設し、ケニアの起業家Juliana Rotich、デトロイトの作家Shaka Senghor、マジシャンMarco Tempestなど、従来はメディアラボが接点を持ち難い人々を積極的に巻き込んでメディアラボの多様性に挑戦している。

交際[編集]

リード・ホフマンJ・J・エイブラムスローレンス・レッシグSeth Gordin坂本龍一山本コウタロー三枝成彰櫻井よしこ南場智子黒川清茂木健一郎ティモシー・リアリーなど文化人や経済人に交際範囲が広い。

趣味[編集]

ダイビングではPADI公認マスター・スクーバ・ダイバー、DAN公認インストラクター[21]で、写真ではライカのコレクターであり、200名以上の有名人を撮影した写真はクリエイティブ・コモンズ・ライセンスで提供されWikipediaなど様々な場面で利用されており、2011年に親交が深い296人のポートレイト写真を収録した写真集「FREESOULS: Captured and Released by Joi Ito」を出版[22]している。

ジャーナリズム[編集]

アジア版ウォールストリート・ジャーナル[23]ニューヨーク・タイムズ[24][25]など数々の雑誌や新聞へ寄稿[26]し、デイリー・ヨミウリ,マックワールドジャパンなどで連載している。ニューヨーク・タイムズオンライン[27]ビジネスウィーク[28]American Heritage[29]Wired[30]Forbes[31]BBC News[32]にインタビューが掲載され、村上龍との共著「『個』をめぐるダイアローグ」やクリストファー・アダムスとの共著「FREESOULS: Captured and Released by Joi Ito[33]など数多く著作や共著し、NHKスーパープレゼンテーション」でホストを務める。

受賞歴[編集]

1997年タイム「サイバーエリート」一員、2000年ビジネスウィーク「Antrepreneurs and Dealmakers」でアジアのスター50人[34]2001年世界経済フォーラム「明日のグローバルリーダー」[35]2005年ニューズウィーク"Leaders of The Pack (high technology industry)"[36]2007年2011年ヴァニティ・フェア「The Next Establishment」[37][38]2008年ビジネスウィーク「ウェブ業界で最も影響力のある人」[39]、2011年にForeign PolicyEthan ZuckermanTop Global Thinkersに、2011年と2012年日経ビジネス「次代を創る100人」に選出されている。2000年に総務省からIT分野への貢献を表彰[40]され、2011年7月22日にLifetime Achievement AwardでUniversity of Oxford Internet InstituteからWorld's leading advocates of Internet freedom[41]と評される。

脚注[編集]

  1. ^ Technology visionary, entrepreneur and Internet freedom advocate: Joichi Ito named director of the MIT Media Lab”. web.mit.edu (2011年4月25日). 2011年12月28日閲覧。
  2. ^ Fisher, Lawrence M. (August 2006). "The Ambassador from the Next Economy"
  3. ^ Kelly, Kevin and Rheingold, Howard (July/August 1993). "The Dragon Ate My Homework"
  4. ^ Rheingold, Howard (2000-11-01). The Virtual Community: Homesteading on the Electronic Frontier. The MIT Press. pp. 227
  5. ^ Interview (2004-08-18 to 2004-08-24). "The World Wide Blog". Ubiquity, Association for Computing Machinery 5
  6. ^ Ericsson, Henry M.. "Entrepreneurship: Assignment 1"
  7. ^ Ito, Joichi (June 28, 2003). "Emergent Democracy (Version 1.32)"
  8. ^ "Program: Electronic Media - Challenges and Opportunities" (PDF). Higher Colleges of Technology. Retrieved 2009-11-19.
  9. ^ "Digital Garage Corporate Information"
  10. ^ "CCC Board of Directors"
  11. ^ ソニー株式会社 役員人事”. 2013年6月21日閲覧。
  12. ^ "Tucows Board of Directors"
  13. ^ "MIT Media Lab Director Joi Ito to Serve on MacArthur Board"
  14. ^ "Twitter in Japan". Retrieved 2010-04-29.
  15. ^ "Kickstarter Fesses Up: The Crowd-Sourced Funding Startup Has Funding Too"
  16. ^ "株式会社ロフトワーク"
  17. ^ Kirsner, Scott (April 26, 2011). "MIT picks Joichi Ito, Japanese venture capitalist and entrepreneur, as new leader of the Media Lab". Boston.com (The Boston Globe) (The New York Times Company). Retrieved April 26, 2011.
  18. ^ Markoff, John (April 25, 2011). "M.I.T. Media Lab Names a New Director". The New York Times. Retrieved April 25, 2011.
  19. ^ [http://www.nytimes.com/2011/04/26/science/26lab.html "Joichi Ito named director of MIT Media Lab"]. MIT News (Massachusetts Institute of Technology). April 25, 2011. Retrieved April 25, 2011.
  20. ^ Chan, Juliana (May 2, 2011). "Newly Appointed MIT Media Lab Director, Joichi Ito, Talks To Asian Scientist". AsianScientist.com. Retrieved May 14, 2011.
  21. ^ "LinkedIn Has Value Preposition to Succeed in Japan, Digital Garage to Help | Penn Olson". penn-olson.com. 2011 [last update]. Retrieved 2 June 2011. "Joi"
  22. ^ "Joi Ito『Freesouls』"
  23. ^ "Japan Reform and Recovery". Joi Ito's Web (blog). April 7, 2002. Retrieved 2007-09-29.
  24. ^ Ito, Joichi (August 7, 2005). "An Anniversary to Forget". The New York Times. Retrieved 2007-09-27.
  25. ^ Ito, Joichi (September 18, 2007). "In Japan, Stagnation Wins Again"
  26. ^ "World of Warcrack". Wired. June 2006. Retrieved 2007-09-27.
  27. ^ Markoff, John (May 31, 2007). "For Jobs and Gates, a Night to Reminisce". New York Times. Retrieved 2007-09-27.
  28. ^ "Entrepreneurs for the Ages". BusinessWeek. Retrieved 2007-09-27.
  29. ^ "The Birth of EBay". AmericanHeritage.com. Retrieved 2007-09-27.
  30. ^ Schiffman, Betsy (November 6, 2008). "Twitter CEO on How the Company Will Make Money: Ummm". Wired News (CondéNet). Retrieved November 6, 2008
  31. ^ Griffiths, Daniel Nye (January 16, 2012). "It Takes Tweets to Tango - Murdoch, Kutcher, the ur-Jack and the dangers of Twitter". Forbes.com. Retrieved January 16, 2012.
  32. ^ Waters, Darren (April 24, 2008). "Stark warning for internet's future". BBC News. Retrieved 2008-04-28.
  33. ^ FREESOULS: Captured and Released by Joi Ito
  34. ^ "The Stars of Asia (int'l edition)". BusinessWeek. July 3, 2000. Retrieved 2007-09-16
  35. ^ "Economic Forum Entrepreneurs - Japanese put on list of world's 100 young leaders". Kyodo World News Service. February 3, 2002. Retrieved 2007-09-27.
  36. ^ "Leaders of The Pack (high technology industry)". Newsweek International. April 25, 2005. Retrieved 2007-09-27.
  37. ^ "Vanity Fair (Re) Discovers Tech". Vanity Fair. October 2007. Retrieved 2007-09-27.
  38. ^ "Vanity Fair Next Establishment 2011". October 2011. Retrieved 2012-09-22.
  39. ^ "The 25 Most Influential People on the Web: The Adviser: Joi Ito". BusinessWeek. September 29, 2008. Retrieved 2008-10-11.
  40. ^ "The Markets Are Stupid. The Current Internet Valuations Have Very Little to Do With the Actual Value of the Companies.". Joi Ito's Web. Retrieved 2007-09-27.
  41. ^ "Director of MIT Media Lab Joi Ito Receives Lifetime Achievement Award from the Oxford Internet Institute". July 22, 2011. Retrieved 2011-08-09.

外部リンク[編集]

公式サイト[編集]

インタビュー・対談[編集]