バリ語

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バリ語
Basa Bali
話される国 インドネシアの旗 インドネシア
地域 バリ島ペニダ島英語版ロンボク島ジャワ島
話者数 390万人
言語系統
表記体系 バリ文字ラテン文字
公的地位
公用語 インドネシア
統制機関 Pusat Bahasa
言語コード
ISO 639-1 -
ISO 639-2 ban
ISO 639-3 ban
Java languages.JPG
ジャワ島およびバリ島の言語分布
  バリ語
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バリ語(バリご、バリ語:Basa Bali: Balinese language)は、インドネシアバリ島で使用されている言語である。およそ、インドネシアの人口の2.1%にあたる380万人の話者を持つ。ジャワ島でも使われている。

バリ語はオーストロネシア語族のひとつであり、バリ・ササク諸語英語版に属する。バリ・ササク諸語にはバリ語以外に、ロンボク島ササク語スンバワ島スンバワ語をはじめバリ島の東に続くヌサ・トゥンガラ諸島のことばがあり、バリ語と関係が深い。

音韻[編集]

母音[編集]

6つの母音が存在する。

[a] 日本語の「ア」とほぼ同じ音。語末の-a,-aaと接頭辞 ma-などは曖昧母音 である[ə]の音で発音する。

[i] 日本語の「イ」とほぼ同じ音。

[u] 日本語の「ウ」よりも唇を丸めて前に突き出して発音する。

[e] 日本語の「エ」とほぼ同じ音。曖昧母音[ə]の発音をすることもある。

[o] 日本語の「オ」とほぼ同じ音。

[ə] 「ア」と「ウ」の中間ぐらいの曖昧な音で発音する。

子音[編集]

18の子音が存在し、大体はそのままローマ字読みでよい。そのうちf,q,v,x,zはバリ語を表す時には原則として用いず、外来語などの表記に使われる。 以下は発音に注意すべき子音である。[1]

[l] 英語の[l]とほぼ同じ音で舌先を上歯茎の裏にあてて発音する。

[r] 巻き舌の「ラ行」の音。

[n] 語頭・語中では「ナ行」の音で発音するが、語末では舌先を上歯茎の裏にあてて「ん」の発音をする。

[ng] 語頭・語中では鼻濁音の「ガ行」で発音し、語末では舌先をどこにも触れずに「ん」の発音をする。

文法[編集]

基本語順[編集]

 原則としてSVO であり、修飾語は基本的に名詞の後に置く。

時制[編集]

バリ語は時制によって動詞が変化することはなくibi(昨日)やbuin mani(明日)など時間を表す語句を添えることで「過去」や「未来」を表現する。

また以下の語を動詞の前におくことで「完了」「進行中」などの動作・状態を表す。[2]

  • <完了> Tiang suba mandus. (私はもう水浴びした。)
  • <未然> Tiang konden mandus. (私はまだ水浴びしていない。)
  • <未来・意志> Tiang lakar mandus. (私は水浴びするところだ。)
  • <進行中> Tiang sedeng mandus. (私は(今)水浴びしている。)
  • <継続> Tiang enu mandus. (私はまだ水浴びしている。)

その他[編集]

接辞を付けて様々な派生語を作る。[3]

<例>

  • 接尾辞 -ang: ageng (大きい)→ ageng-ang (大きくする)
  • 接頭辞 ma- : jalan (道)→ ma-jalan (歩く)


敬語[編集]

バリ語の大きな特徴は、敬語表現の存在である。これは、ジャワ語などの他のスンディク諸語にも見られる特徴であるが、同じスンディク諸語のひとつでもある、インドネシアの公用語のインドネシア語マレー語)にはない特徴である。

バリ語の敬語表現は、現代日本語のそれとはかなり異なる。現代日本語には、尊敬語謙譲語の2種があるが、さらにバリ語には、それぞれにいくつかのランクがある。また、敬語表現は主として動詞であって、名詞などは少ない。

日本語の場合、異なる単語を使わなければならない表現は、いらっしゃる⇔行く⇔参るなどであるが、それほど多くない。ところが、バリ語の場合には、バリ・ヒンドゥーによるカースト制度をもとに、話者と聞き手のそれぞれの身分に従って、異なる敬語表現が存在する。動詞に限らず名詞にも、全く異なる単語が多くあり、それらを使い分けなければならない。しかも、それを間違えると大変な失礼になるとされる。このため、バリ人であっても、普段接しない身分の相手とはバリ語で話すのを避けて、あえてインドネシア語を用いる。

また、以上のような敬語表現の煩雑さから若年層の間ではバリ語離れが進んでおり、その対策が州政府などによって政策的に行なわれてもいる。

文字[編集]

バリ語の表記には、ブラーフミー文字に起源を持つ独特のバリ文字を持つが、宗教関係や、インドネシア語に並記した住居表記や道路表記などを除けば現在ではほとんどローマ字を用いる。

道路名表示に見られるバリ文字(上はインドネシア語) シガラジャにて
寺院の看板(表札)に見られるバリ文字 ウブド郡クデワタン村にて

挨拶[編集]

  • Matur suksma マトゥール・スクスマ - ありがとうございます
  • Rahajeng semeng ラハジャン・スマン - おはようございます
  • Rahajeng wengi ラハジャン・ウンギ - こんばんは
  • Omswasti asutu オムスワスティアストゥ - 幸運を(身分を気にせず誰にでも使用できる無難な挨拶)

方角[編集]

地名に頻出する。なお、南北を表す kelod と kaja は、「海側」、「山側」の意味なので、南バリと北バリでは南北が逆になる。

  • kangin カンギン -
  • kauh カウ - 西
  • kelod クロッ - (南バリでは)、(北バリでは)北
  • kaja カジュ - (南バリでは)、(北バリでは)南

脚注[編集]

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  1. ^ クタ・アルダナ、鈴木理伊共著『クタ・アルダナのバリ語会話』(めこん,1998年) 19、20頁より
  2. ^ クタ・アルダナ、鈴木理伊共著『クタ・アルダナのバリ語会話』(めこん,1998年) 42、43頁より抜粋
  3. ^ 塩原朝子、原真由子共著『バリ文法・会話 バリ語研修テキスト1』(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所, 2002年) 153、154頁参照

参考文献[編集]

  • 塩原朝子、原真由子共著『バリ文法・会話 バリ語研修テキスト1』(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所, 2002年)
  • クタ・アルダナ、鈴木理伊共著『クタ・アルダナのバリ語会話』(めこん,1998年)

関連項目[編集]

外部リンク[編集]