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ハワイ語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ハワイ語
ʻōlelo Hawaiʻi
話される国 アメリカ
地域 ハワイ州
話者数 約300人(母語話者)
約24,000人(流暢な話者、L2含む)
話者数の順位 100位以下
言語系統
表記体系 ラテン文字
公的地位
公用語 ハワイ州の旗 ハワイ州
言語コード
ISO 639-2 haw
ISO 639-3 haw
消滅危険度評価
Critically endangered (Moseley 2010)
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ハワイ語(ハワイご、ハワイ語: ʻōlelo Hawaiʻi)は、オーストロネシア語族に属し、ハワイ諸島先住民のポリネシア人であるハワイ人の先祖代々の言語である。英語とともにハワイ州の公用語に指定されている。特徴として、他の多くのポリネシア諸語(タヒチ語、サモア語など)における /t/ の音が、ハワイ語では /k/ の音に対応する点が挙げられる(例:タヒチ語の tapu → ハワイ語の kapu)。このため、英語の「Wikipedia」が「Wikipikia」のように借用される。近縁のポリネシア語と同様に、用いられる音素が非常に少ないことである(後述する#音声体系とアルファベットの章を参照のこと)。ISO言語コードは haw 。

ハワイ語は、サモア語マオリ語などのポリネシア語とごく近い関係にあり、マレー諸島マダガスカルフィリピンの言語などともやや遠いが、「親類関係」にあたる。

ハワイアン・クレオールとも呼ばれるハワイの混成語はここで述べるハワイ語とは異なる。こちらは、英語を基にした地域言語であり、ハワイ語や、製糖パイナップル栽培等の為に雇われた日本人中国人を主とする移住民が持ち込んだ、アジアの言語からも一部の語彙を借用している。

歴史

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マルキーズ諸島やタヒチからの移住者が言語を持ち込み、ハワイ諸島で独自の発展を遂げた。1820年代のアメリカ人宣教師によるアルファベットの考案(ka pīʻāpā)と標準化により識字率が急速に向上し、聖書の翻訳やハワイ語新聞が発行された。1893年のハワイ王国転覆後、1896年にハワイ共和国政府が制定した法律(Act 57)により、公教育の教授言語が英語のみとされ、学校でのハワイ語使用が事実上禁止された。20世紀を通じてハワイ語母語話者数が激減し、ニイハウ島を除いて日常言語としてはほぼ消滅状態となった。1970年代以降のハワイ文化復興運動の中で、言語復興運動が活発化した。1978年にハワイ州の公用語に指定された。「プーナナ・レオ」(ハワイ語イマージョン幼稚園)の設立(1984年)や、公立学校でのイマージョン教育(カイアプニ・スクール)の導入、ハワイ大学ヒロ校のハワイ語学部(Ka Haka ʻUla O Keʻelikōlani)の設立など、現代では教育・復興の取り組みがなされている。

現状と復興

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現在の危機的状況

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現在ハワイ語は消滅危機言語である。19世紀ハワイ王国を経て現在アメリカ国内となったハワイ諸島のほとんどの地域では、ハワイ語は英語にとってかわられており、日常会話にはもはや殆ど使われてはいない。例外的に、ニイハウ島ではいまだ日常会話にもハワイ語を使っているが、それはニイハウ島が個人的に所有されている島であり、外部からの訪問を厳しく制限しているためである。

さまざまな理由により、ハワイ語を話す者の数は1900年ごろの約3万7千人から2000年代初頭の時点で約1千人にまで減少した。さらに減少は進み、2007年の推計では母語話者は約300人となった。一方で、1970年代以降の復興運動により第二言語としての学習者が増加しており、2010年代には流暢な話者(L2含む)が24,000人に達するという推計もある。現在生存するハワイ語を母語とする話者の半分は、1920年代から1930年代までに生まれた世代であり、その多くが寿命を迎える世代であることから、ハワイ語の話者の減少に拍車がかかっている。

ハワイ語復興運動

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ダニエル・K・イノウエ国際空港旅客ターミナル内のハワイ語と英語の2か国語表記

ハワイ語はハワイ州公用語の一つとされている。伝統あるハワイ語を復興しようとするハワイ先住民の努力は、ハワイ文化復興運動」の中で1990年代半ばごろから活発になってきている。

先住民系のハワイ人は第二言語としてハワイ語の学習を行っているが、モデルとする母語話者がおらず、第二言語としてハワイ語を学習する者の中には、英語の音韻や語順の干渉を受ける例も見られる。また、19世紀初期まで話されていた純粋なハワイ語を復活させようという人々と、英語や混成語との100年以上にわたる接触によって形作られたハワイ語で育った人々との緊張関係も見られる。

ハワイ語を次の世代に残そうとする家族子供たちのために、現在、ハワイ語による没入法イマージョン教育)は、幼稚園「プーナナ・レオ」や、公立学校のイマージョン・プログラムである「カイアプニ・スクール」などを中心に行われている。また、ハワイ先住民のための私立学校である「カメハメハ・スクール」においても、ハワイ語教育が重視されている。また1970年代に公民権運動が盛んになったころから、日本人ハワイ人混血のラリー・キムラが力を注いだのハワイ語による幼児教育プーナナ・レオや初等中等教育校でのハワイ語のみのクラスのカイアプニ・スクール(Kaiapuni school)ができて[1][2]、例えばハワイ島ヒロでは通称「ナーヴァヒー校」(Nāwahī School)もできて、ハワイ語で幼稚園から高校まで600人を教育しているような例もある[3]。また、ハワイ大学ヒロ校のハワイ語学部( Ka Haka ʻUla O Keʻelikōlani)も開部した。

また、ナショナル・パブリック・ラジオのハワイ公共ラジオ(Hawaii Public Radio)は「きょうのハワイ語」(Hawaiian word of the day)という番組を毎日放送しているほか、ホノルルダニエル・K・イノウエ国際空港ではアナウンスや公式表記に使用されている。

方言

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ハワイ語にはかつて島ごとに方言差が存在したが、現在主に言及されるのは、消滅を免れたニイハウ島で話される方言(ʻŌlelo Niʻihau)と、それ以外の島々で復興が進められている標準的なハワイ語である。

ニイハウ島方言は、標準ハワイ語(特に19世紀に標準化された書き言葉)といくつかの顕著な違いを持つ。

/k/ と [t] の使い分け
標準ハワイ語では /k/ に統一された音素が、ニイハウ島方言では [t] と [k] の異音として現存する。一般に、[t] は語頭や特定の母音の前で使われる傾向がある(例:標準語 kahi「一つ」 → ニイハウ方言 tahi)。
音声の脱落
標準語よりも早い発話速度で話されることが多く、音節や母音が脱落する傾向がある。
語彙の違い
一部の語彙が異なる。

復興運動の中で教育されている「標準ハワイ語」は、主に19世紀に宣教師によって成文化されたハワイ島の方言に基づいている。

音声体系とアルファベット

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一般にポリネシアの言語の音声体系はシンプルである。以下のような特徴が一般的である。

  • 母音は a, e, i, o, u の5種類で、それぞれに長短の区別がある。
  • 子音音素の数は少なめで、8 - 11個程度である。
  • 音節末に子音が来ない。2重子音は存在しない。母音、子音をそれぞれ V, C とすると、音節は V または CV の形のみ。

ハワイ語も上記特徴にもれない。 表記系においては、サモア語タヒチ語などと同様、音素とアルファベットがほぼ完全に一対一対応している。 ハワイ語に用いるアルファベット(ka pīʻāpā Hawaiʻi ; カピーッアーパーハワイッイ)は以下の13字[4]。 長母音はマクロン(ハワイ語: kahakō ; カハコー)を使って表す。

これらの音価はおおむね字のとおりである。アポストロフィに似た文字「ʻ」は、オキナ(ʻokina)と呼ばれる声門閉鎖音 [ʔ] である。たとえば、「ハワイ」「オアフ」の本来の発音はそれぞれ [ha.ˈvai.ʔi][o.ˈʔa.hu]IPA)であるが、これをそれぞれ HawaiʻiOʻahu のように綴る。ユニコードなどでは正式には「ʻ」(U+02BB)を用いるが、シングルクォートの開き「‘」(U+2018)が妥協案として使われる場合もある。

マクロンは長母音を現わし、母音の上に置かれて、「ā ē ī ō ū Ā Ē Ī Ō Ū」のように表現する。1821年ごろ、宣教師ハイラム・ビンガム(Hiram Bingham I)などがハワイ語の書き言葉を作った時に、出身地のボストンにこうした文字フォントをリクエストしたが作ってくれず、その後オキナやマクロンがないテキストが横行した。長音には必ずアクセントが置かれる。長さによって母音の音色が変わることはない。

これらは意味を弁別するために不可欠な正式な文字であり、pau (終わる) vs paʻu (煤) vs paʻū (湿った) のようなミニマル・ペアが存在する。

音素の少なさから多くの異音が許されている。方言にもよるが、たとえば /k/前舌母音の前で [t] に調音されることがある。/w/ は、i, e の後で顕著に[v] であり、o, u の後は [w]であり、a の後や語頭では両方あり得る。

ハワイ語は、言語類型論において「摩擦音が1つしかない言語ではその摩擦音は [s] である」という説の反証でもある(ハワイ語唯一の摩擦音は [h] )。

借用語の音韻

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ハワイ語は音素が少ないため、英語や他の言語からの借用語を取り入れる際、ハワイ語の音韻体系に合わせて大幅な変更が加えられる。

/s/, /t/, /d/, /g/, /r/, /b/ など、ハワイ語にない子音は、最も近い音に置き換えられるか、脱落する。

  • /s/ → /k/ (例: Christmas → Kalikimaka)
  • /t/, /d/ → /k/ (例: dollars → kālā)
  • /r/ → /l/ (例: Mary → Mele)
  • /b/ → /p/ (例: Bible → Paipala)

音節末の子音は許されないため、母音が挿入されるか、子音が脱落する。

  • 例: school → kula

アクセント

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ハワイ語の単語のアクセント(強勢)は、通常、最後から2番目のモーラに置かれる。

例: aloha (アハ), wahine (ワネ)

歴史的音韻変化

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ポリネシア祖語において *t と *k の両方を持っていた言語(例:トンガ語)に対し、東ポリネシア諸語の多く(例:タヒチ語、マオリ語)ではこれらが合流して /t/ となった。

一方、ハワイ語ではさらに複雑な変化が起きた。

  • ポリネシア祖語の *t は、ハワイ語では /k/ に変化した。(例:祖語 *tapu → タヒチ語 tapu → ハワイ語 kapu)
  • ポリネシア祖語の *k は、ハワイ語では声門閉鎖音 /ʔ/ (オキナ)に変化した。(例:祖語 *haka → マオリ語 whaka- → ハワイ語 hoʻo-)

このため、ハワイ語の /k/ は他の多くのポリネシア諸語の /t/ に対応し、ハワイ語の /ʔ/ は他のポリネシア諸語の /k/ に対応することが多い。

なお、かつてハワイ諸島の一部(特にカウアイ島)では、標準的な /k/ の代わりに [t] の音([t]方言)が保持されていた。ニイハウ島方言では、他の島々で /k/ に合流したポリネシア祖語の *t の音が、[t] として部分的に保持されている。

文法

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語順

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ハワイ語の基本語順はVSO(動詞-主語-目的語)型である。

  • 例: Ua ʻai ʻo ia i ka iʻa. (完了 食べる [主格] 彼/彼女 [目的格] その 魚) → 彼/彼女は魚を食べた。

修飾語は原則として被修飾語(主要部)の後に置かれる。

  • 名詞句: ka hale nui (その 家 大きい) → その大きな家
  • 動詞句: holo wikiwiki (走る 速く) → 速く走る

名詞句

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冠詞

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  • ka (定冠詞・単数): k, e, a, o 以外の音(h, i, l, m, n, p, u, w, ʻ)で始まる名詞に付く。(例: ka hale「その家」)
  • ke (定冠詞・単数): k, e, a, o で始まる名詞に付く。(例: ke kanaka「その人」、ke ola「その命」)
  • nā (定冠詞・複数): (例: nā hale「それらの家」)
  • he (不定冠詞・単数): (例: he hale「ある家」)

なお、この ka/ke の使い分けにはいくつかの例外があり、k, e, a, o 以外で始まっていても ke を取る名詞が存在する(例: ke kai「その海」、ke kino「その体」、ke pa「その皿」)。

格標識・前置詞

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文中での名詞句の文法的な役割は、前置される標識によって示される。

ʻo
固有名詞や代名詞が主語になることを示す。なお、主語が一般名詞の場合は、主格マーカー ʻo を伴わない。
  • 例: Ua holo ʻo au. (私は走った)
  • (比較): Ua holo ke kanaka. (その人は走った)
o / a
「〜の」を示す。後述する所有表現の区別(o類とa類)がある。
  • 例: o ka mōʻī「王の」
i
動作の目的語、方向・場所(〜へ、〜に)、時間(〜に)を示す。一般名詞に用いられる。
  • 例: Hele ʻo ia i Maui. (彼/彼女はマウイへ行く)
  • 例: i ka pō. (夜に)
i と同様の機能を持つが、目的語や場所を示す対象が固有名詞または代名詞である場合に用いられる。
  • 例: Ua ʻike au iā ia. (私は彼/彼女を見た)
  • 例: Aia ʻo ia iā Maui. (彼/彼女はマウイにいる)
ma
静的な場所・位置(〜に、〜において)、手段(〜で)を示す。
  • 例: Aia ʻo ia ma ka hale. (彼/彼女は家にいる)
me
「〜と一緒に」(共格)、手段(〜を使って)を示す。
  • 例: E ʻai me ka lima. (手で食べなさい)
mai
起点(〜から)を示す。
  • 例: mai Honolulu (ホノルルから)
no / na
「〜のために」(受益)、所有(o/a と同様の使い分け)を示す。
  • 例: He makana kēia naʻu. (これは私のためのプレゼントだ)

代名詞

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ハワイ語の代名詞は、数(単数・双数・複数)を区別し、さらに一人称では聞き手を含むか含まないか(包括形・除外形)を厳密に区別する。

単数 (Singular) 双数 (Dual) 複数 (Plural)
一人称 (包括) kāua (私たち2人) kākou (私たちみんな)
一人称 (除外) au (私) māua (私たち2人) mākou (私たち)
二人称 ʻoe (あなた) ʻolua (あなたたち2人) ʻoukou (あなたたち)
三人称 ia (彼/彼女) lāua (彼/彼女ら2人) lākou (彼/彼女ら)

指示詞

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ハワイ語の指示詞は、話し手と聞き手からの距離に基づき、3つの空間的区別を持つ。

  • kēia (これ、この): 話し手に近い (近称)
  • kēnā (それ、その): 聞き手に近い (中称)
  • kēlā (あれ、あの): 両者から遠い (遠称)
  • 例: He puke kēia. (これは本だ)
  • 例: Nani kēlā hale. (あの家は美しい)

複合指示詞

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kēia などとは別に、ua と場所を示す小辞 nei(近称)または lā(遠称)で名詞を挟むことで、「今話題の〜」「例の〜」といった文脈上の指示を示す用法がある。

  • ua (名詞) nei: (今ここにある) この〜
  • 例: ua puke nei (この本)
  • ua (名詞) lā: (例の) あの〜
  • 例: ua kanaka lā (あの人)

疑問詞

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疑問詞を用いた疑問文は、通常、疑問詞が文頭に来る。

  • wai (誰): ʻO wai kou inoa? (あなたの名前は誰(何)ですか?)
  • hea (どこ): Aia i hea ʻoe? (あなたはどこにいますか?)
  • he aha (何): He aha kēlā? (あれは何ですか?)
  • ʻehia (いくつ): 数量を尋ねる。この疑問詞文、および数詞で答える文では、所有を示す代名詞は語頭の k- が脱落した形(k-less possessives)を取る。
  • 例: ʻEhia ou makahiki? (あなたは何歳ですか?) (kou ではなく ou)
  • 返答例: He ʻumi oʻu makahiki. (私は10歳です) (koʻu ではなく oʻu)

数詞

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基数詞

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  • 1: (ʻe)kahi
  • 2: (ʻe)lua
  • 3: (ʻe)kolu
  • 4: (ʻe)hā
  • 5: (ʻe)lima
  • 6: (ʻe)ono
  • 7: (ʻe)hiku
  • 8: (ʻe)walu
  • 9: (ʻe)iwa
  • 10: ʻumi

11から19は ʻumi kumamā (10 とさらに) の後に1桁の数を続ける (例: 11は ʻumi kumamā kahi)。 20は iwakālua、30は kanakolu と続く。

序数詞

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序数詞は通常、基数詞に定冠詞 ka/ke を付けて形成する。

  • 2番目: ka lua
  • 3番目: ke kolu
  • 4番目: ka hā

ただし、「1番目」は ka mua となる。

所有表現

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ハワイ語の所有表現は、名詞句の中で所有者を示す語句が被所有者(名詞)の前に来るか(前置)、後に来るか(後置)によって形態が異なる。

後置所有
被所有者の後に、格標識 o または a を伴って所有者(名詞または代名詞)が置かれる。
  • 例: ka hale o ka mōʻī (その王家)
  • 例: ka meaʻai a ke keiki (その子供食べ物)
前置所有
被所有者の前に、所有代名詞(koʻu, kaʻu など)が置かれる。
  • 例: koʻu hale (私の家)
  • 例: kāu meaʻai (あなたの食べ物)

所有者が一般名詞の場合でも、所有代名詞の k- に相当する部分を使い、k- を o/a に置き換えた形で前置所有を表現できる。

  • 例: ko ke aliʻi hale (その王の家) (ka hale o ke aliʻi と同義)
  • 例: ke keiki meaʻai (その子供の食べ物) (ka meaʻai a ke keiki と同義)

ハワイ語を含む多くのポリネシア諸語の所有表現には、「O類(kino ʻō)」と「A類(kino ʻā)」という二つの文法的な区別が存在する。これは、所有者と所有物の関係性に基づいている。

O類 (kino ʻō)
所有者がその関係を制御できない、生来的・受動的な所有を示す。
  • 例: 体の部位 (koʻu lima - 私の手)、親族(特に目上) (koʻu makuakāne - 私の父)、名前 (koʻu inoa - 私の名前)、家 (kona hale - 彼の家)、感情 (koʻu aloha - 私の愛)、交通手段 (kona kaʻa - 彼の車)、衣服。
A類 (kino ʻā)
所有者がその関係を制御できる、能動的・後天的な所有を示す。
  • 例: 食べ物・飲み物 (kaʻu meaʻai - 私の食べ物)、道具 (kāu pahi - 君のナイフ)、配偶者 (kāna wahine - 彼の妻)、子孫 (kāna keiki - 彼の子供)、自分が生み出したもの (kāu hana - 君の仕事)。

このO類/A類の区別は、所有を示す格標識 (o/a)、受益を示す前置詞 (no/na)、および所有代名詞(koʻu/kaʻu, kou/kāu など)の形態に直接反映される。

所有代名詞

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所有表現は、所有者を示す代名詞にも反映され、o類とa類で形態が異なる。これらは名詞の前に置かれる。

o類 (制御不可) a類 (制御可)
一人称単数 (私の) koʻu kaʻu
二人称単数 (あなたの) kou kāu
三人称単数 (彼の/彼女の) kona kāna
一人称双数 (包括) kō kāua kā kāua
一人称双数 (除外) kō māua kā māua
二人称双数 kō ʻolua kā ʻolua
三人称双数 kō lāua kā lāua
一人称複数 (包括) kō kākou kā kākou
一人称複数 (除外) kō mākou kā mākou
二人称複数 kō ʻoukou kā ʻoukou
三人称複数 kō lākou kā lākou

形容詞

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ハワイ語の形容詞は、文脈によって動詞(状態動詞)としても機能する。

叙述用法と限定用法

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叙述用法: 「Aは(形容詞)だ」という場合、形容詞(状態動詞)が文頭に来る。

  • 例: Nani ka pua. (その花は美しい)
  • 例: Maikaʻi kēlā. (あれは良い)

限定用法: 「(形容詞)なA」という場合、形容詞は修飾する名詞の直後に置かれる。

  • 例: ka pua nani (その美しい花)
  • 例: kēlā mea maikaʻi (あの良いもの)

比較表現

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比較級: 形容詞の後に aʻe を置くことで「より〜だ」という比較を示す。

  • 例: Nani aʻe kēia pua. (この花はより美しい)

最上級: 形容詞の後に loa を置くことで「最も〜だ」という強調・最上級を示す。

  • 例: Nani loa kēia pua. (この花は最も美しい / とても美しい)

時制・相・法 (TAM)

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ハワイ語は動詞そのものは活用せず、文頭に置かれる小辞(マーカー)によって時制、相、法を示す。

ua (完了相)
動作が完了したこと、または状態が始まったことを示す(過去形のように訳されることが多い)。
  • 例: Ua holo ʻo ia.「彼/彼女は走った」
e (非完了相・命令・不定詞)
未来の動作、または命令を示す。また、動詞の後に置かれ、目的や不定詞的な用法(〜すること)を示すこともある。
  • 例: E holo ʻo ia.「彼/彼女は走るだろう」
  • 例: E holo!「走れ!」
  • 例: Makemake au e ʻai. (私は食べることを望む)
e ... ana (進行相・未完了相)
過去または未来の進行中の動作。
  • 例: E holo ana ʻo ia.「彼/彼女は走っていた/走っているだろう」
ke ... nei (現在進行相)
現在進行中の動作。
  • 例: Ke holo nei ʻo ia.「彼/彼女は今走っている」
i (単純過去相)
過去に起こった単純な出来事や動作を示す。ua が動作の完了や状態の開始(結果の存続)に焦点を当てるのに対し、i は過去のある時点で行われた単純な動作や出来事そのものを記述する際に用いられる傾向がある。
  • 例: I holo ʻo ia.「彼/彼女は走った」
(マーカーなし)
一般的な叙述や状態。
  • 例: Nani ka pua.「花は美しい」
mai (否定命令)
「〜するな」という禁止を示す。
  • 例: Mai holo! (走るな!)
ina (条件法)
「もし〜ならば」という条件節を作る。
  • 例: Ina ua hele ʻo ia (もし彼/彼女が行っていたら)
ua ... e (過去完了相)
既に完了した過去の出来事を示す。「〜してしまっていた」。
  • 例: Ua holo e ʻo ia.「彼/彼女は(その時すでに)走ってしまっていた」
e ... e (未来完了相)
未来のある時点において完了しているであろう動作を示す。「〜してしまっているだろう」。
  • 例: E holo e ʻo ia.「彼/彼女は(その時までには)走ってしまっているだろう」

法助動詞的表現

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hiki(できる)や pono(すべきである)、makemake(したい)といった語は、他の動詞(不定詞)を伴い、法助動詞のように機能する。これらの構文では、主語(動作主)の示し方が特殊である。

hiki
「〜できる」(可能)
構文: Hiki (i 動作主) ke (動詞).
動作主は、一般名詞の場合は i、代名詞または固有名詞の場合は iā で示される。
  • 例: Hiki iaʻu ke ʻōlelo Hawaiʻi. (私にはハワイ語を話すことができる)
  • 例: Hiki i ke kanaka ke holo. (その人は走ることができる)
pono
「〜すべきだ」「〜しなければならない」(義務・必要)
構文: Pono (動作主) e (動詞).
動作主は代名詞の場合は ʻo を伴わず、一般名詞の場合は ka/ke などを伴う。
  • 例: Pono ʻoe e hele. (あなたは行くべきだ)
  • 例: Pono ke kumu e aʻo. (先生は教えるべきだ)
makemake
「〜したい」(願望)
構文: Makemake (動作主) e (動詞).
動作主は pono と同様。
  • 例: Makemake au e ʻai. (私は食べたい)

方向詞

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動詞の直後には、動作の物理的な方向性や心理的な向きを示す小辞(方向詞)が付加されることが非常に多い。

  • mai: 話し手に向かう方向(〜こちらへ来る)。
  • 例: Hele mai! (来て!)
  • aku: 話し手から離れる方向(〜あちらへ行く)。
  • 例: Hele aku! (行って!)
  • iho: 下方向、または内省的な動作。
  • 例: Noho iho. (座る。)
  • aʻe: 上方向、または隣への移動。
  • 例: Piʻi aʻe. (登る。)

否定

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否定は、文頭に否定辞 ʻAʻole を置いて表現する。否定文の語順は特徴的であり、通常のVSO型とは異なる。

主語が代名詞の場合
語順は (ʻAʻole 主語代名詞 [TAM] 動詞) となる。主語が動詞の前に来る(VSOの倒置が起こる)。このとき用いられる代名詞 (au, ʻoe, ia など) は、主格マーカー ʻo を伴わない、否定文特有の形態である。
  • 例: ʻAʻole au i holo. (ない 私 [過去] 走る) → 私は走らなかった。
  • (比較: Ua holo au. → 私は走った。)
主語が代名詞でない場合
語順は (ʻAʻole [TAM] 動詞 主語名詞句) となる。
  • 例: ʻAʻole i holo ke kanaka. (ない [過去] 走る その 人) → その人は走らなかった。

また、否定文では一部のTAMマーカーが変化する。特に、現在進行を示す ke ... nei は、否定文では ʻaʻole ... e ... nei という形を取る。

  • 肯定文: Ke holo nei ʻo ia. (彼は今走っている)
  • 否定文: ʻAʻole ʻo ia e holo nei. (彼は今走っていない)

文の種類

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ハワイ語にはコピュラが存在しない。状態、性質、同一性、存在は以下の構文で表現される。

状態・性質の叙述

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「AはB(形容詞)だ」という文は、形容詞(より正確には状態動詞)を文頭に置くことで表現する。

  • 例: Nani ka pua. (美しい その 花) → その花は美しい。
  • 例: Maikaʻi au. (良い 私) → 私は元気だ。

同一性・分類の叙述

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「AはB(名詞)だ」という文は、不定冠詞 he を文頭に置いて表現する。

  • 例: He kumu au. (ある 教師 私) → 私は教師だ。
  • 例: He puke kēia. (ある 本 これ) → これは本だ。

存在・場所の叙述

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「Aは(場所に)いる・ある」という存在や場所を示す文は、存在マーカー Aia を文頭に置いて表現する。

  • 例: Aia ka puke ma luna o ke pākaukau. (存在する その 本 [場所] 上 の その 机) → 本は机の上にある。
  • 例: Aia ʻo ia i Honolulu. (存在する [固有名] 彼/彼女 [場所] ホノルル) → 彼/彼女はホノルルにいる。

所有表現

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「持つ」にあたる動詞は存在せず、不定冠詞 he と所有代名詞(o類/a類)を組み合わせた構文で表現する。

構文: He (名詞) kō/kā (所有者).
  • 例: He kaʻa koʻu. (ある 車 私の(o類)) → 私は車を持っている。
  • 例: He keiki kā lāua. (ある 子供 彼ら2人の(a類)) → 彼ら2人には子供がいる。

語形成

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ハワイ語は、既存の語から新しい語を派生させるために、主に重複と接辞(接頭辞・接尾辞)を用いる。

重複

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重複は、語の意味を強めたり、反復的な動作を示したり、品詞を変化させたりする機能を持つ。語全体の重複と部分的な重複がある。

  • holo (走る) → holoholo (散歩する、走り回る)
  • wai (水) → waiwai (裕福な、豊富な)
  • mālama (世話をする) → mālamalama (知識の光、啓蒙する)

接辞による語形成

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ハワイ語の接辞として以下のものがある。

hoʻo- (使役)
接頭辞 hoʻo- は、動詞や形容詞に付加され、「〜させる」「〜にする」「〜のように振る舞う」といった使役・作為・他動の意味を加える。
  • 例: nani (美しい) → hoʻonani (美しくする、飾る)
  • 例: pono (正しい) → hoʻoponopono (正す、修正する)
-ʻia (受動態)
接尾辞 -ʻiaは、動詞の語幹に付加され、受動態(「〜される」)を作る。
  • 例: ʻai (食べる) → ʻaiʻia (食べられる)
  • 例: hiki (できる) → hikiʻia (なされる、達成される)
-na (名詞化)
接尾辞 -naは動詞や形容詞に付加され、動作や状態、場所を表す名詞を形成する。
  • 例: ʻai (食べる) → ʻaina (食事、食べる場所)
  • 例: noho (住む) → nohona (生活、住居)

ハワイ語の語句の例

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ハワイ語はフラハワイの音楽、その他ハワイ独特の文化に関してから、学術用語(アア溶岩パホイホイ溶岩キプカなど)にまで、世界的によく知られるようになった。

広く知られた語句

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英語の中でもよく使われる語句

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公園の英語案内板にハワイ語の「Aloha」(こんにちは!)、「Kokua」(協力)などのハワイ語を混ぜる(カイルア・コナ旧コナ空港州立リクリエーションエリアで)

ハワイに住む人たちは、たとえ英語を使う人であってもよくハワイ語の語句を使う。

  • ケイキ(Keiki) - 子供。例えば私的道路標識で、“Keiki at Play”「子供の飛び出し注意」
  • カネ(Kane)とワヒネ(Wahine) - 男性女性トイレの入口で、これらの言葉も併記されている。
  • マカイ(Makai) - 海側、マウカ(Mauka) - 山側。すべて島に住んでいるので、海側にいるか、山側(内陸側)にいるか、いつも意識の中にある。
  • オハナ(ʻOhana) - 家族を意味する。ただし広い意味で使われる。
  • コクア(Kōkua) - 協力。
  • カマアイナ (Kamaʻāina) - ハワイ地元の人(ハワイ州運転免許証を持っている人)で、地元の人への割引対象。
  • ハレ (Hale) - 家、ビルの意味で、ハレ・ホノルルなど。
  • ラニ (lani)[6] - 天国という意味。ハレクラニなど。

他、ハワイ諸島全島の島名、およびそれら各島の地名のほとんどはハワイ語である。かつては北西ハワイ諸島の各島にもハワイ語名があった。

ハワイ語の挨拶表現

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  • Aloha. - こんにちは、さようなら。
  • Aloha kakahiaka. - おはよう。
  • Aloha awakea. - こんにちは。
  • Aloha ahiahi. - こんばんは。
  • Maikaʻi. - 元気です。
  • Mahalo. - ありがとう。
  • Mahalo nui loa. - 本当にありがとう。
  • E komo mai. - いらっしゃい、ようこそ。
  • Mele Kalikimaka. - メリー・クリスマス
  • Hauʻoli makahiki hou. - 新年あけましておめでとう。
  • Hauʻoli lā hānau. - 誕生日おめでとう。
  • Hauʻoli lā aloha. - ハッピー・バレンタインデー

例文

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  • こんにちは。

Aloha.

  • 今、私はハワイ語を話しています。

I kēia manawa ʻōlelo Hawaiʻi wau.

書籍

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脚注

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  1. ^ Kaiapuni schools — Hawaiian language immersion (Hawaiʻi State Department of Education)
  2. ^ 松原好次「ハワイ語再活性化運動の現況 ─ ナーヴァヒー校卒業生に対する追跡調査報告」『電気通信大学紀要』第19巻第1-2号、電気通信大学、2006年12月、117-128頁、ISSN 0915-0935CRID 1050282677899796864 
  3. ^ 朝日新聞日曜版 The Asahi Shimbun GLOBE(2014年4月12日):後藤絵里著「E ola ka 'ōlelo Hawai'i. ハワイ語は生き続ける」
  4. ^ ニューギニアロトカス語(11文字)、ピラハー語(10文字)などとともに、最も構成字種数の少ない表記系のひとつであるとされる。
  5. ^ ハワイでホロホロ(楽しいお散歩)
  6. ^ タガログ語インドネシア語などの langit やマオリ語などの rangi と同じ意味である。本言語は ng 音 が n 音に変化する。

関連項目

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外部リンク

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