バイキングエンジン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
バイキング 5C

バイキングエンジンはフランスのSEDP(現スネクマ)が当初、ヨーロッパⅢロケットの1段目に開発したロケットエンジンである。後にヨーロッパロケットの計画終了後、改良されアリアン1の1段目と真空中で作動するように改良され2段目に使用された。その後アリアン2,3,4にも使用された。更にインドでVikasとしてライセンス生産されPSLVGSLVロケットに使用された。

バイキングエンジンは2004年2月15日のフライト157まで使用された。25年間に亘って成功を収めた。この打ち上げはアリアン4の(最後となる)74回目の連続打ち上げ成功で9年間、連続で打ち上げに成功した。この比類なき成功はバイキングエンジンの賜物である。

アリアン1からアリアン4まで144機で計958基のバイキングエンジンが使用されそのうち2基のみが打ち上げ失敗の原因となった。最初の失敗は燃焼室に亀裂が入ったことによる物で2回目の失敗はパイプに布を置き去りにしたという人為的なものである。当初は全てのエンジンは発射台に取り付ける前に事前に試験を行った。信頼性が高いため1998年からは事前に試験をせずに使用する事になった。いくつかのエンジンは無作為に組み立てられそのつど試験された。これは稀な事例である。

技術[編集]

バイキングエンジンは自己着火性推進剤を燃料とする二液式のガス発生器サイクルのロケットエンジンである。当初、フランスは独力で開発しようとしたがこのような高度のノウハウを必要とする液体燃料ロケットエンジンの開発経験を持っていなかった為、開発は難航した。後にV2ロケットのエンジンを開発したドイツ人技術者の協力を得て開発に成功した。 アリアン1では酸化剤として四酸化二窒素と燃料として非対称ジメチルヒドラジンを使用した。アリアン1の2回目の打ち上げで不安定燃焼の原因は燃料をUH 25に切り替えた事が原因であると結論された。アリアン1から4まで通して酸化剤は変えられなかった。信頼性が高いのでアリアン2以降の機種でも使用された。ターボポンプを駆動するガス発生器では毎秒約1kgの酸化剤と1kgの燃料を燃焼して3000℃のガスを生成する。ガスタービンが破損しないように毎秒4ℓの水が噴射されガスタービンの温度は600℃下がる。タービンは毎分1万回転時に2500kwの出力で2基のターボポンプを駆動し、毎秒約275kgの酸化剤と燃料を燃焼室に送り込む。 燃焼室の温度は3000℃に達し、燃料を燃焼室内壁に沿って流し、蒸発熱により直接火炎が燃焼室壁面に接しないように冷却層を形成する。ノズルは積極的な冷却機構を持たないため赤熱する。

仕様諸元[編集]

バージョン バイキング 2 バイキング 2B バイキング 4 バイキング 4B バイキング 5C バイキング 6
全高 2,87 m 2,87 m 3,51 m 3,51 m 2,87 m 2,87 m
直径 0,99 m 0,99 m 1,70 m 1,70 m 0,99 m 0,99 m
重量  ?  ? 826 kg 826 kg 826 kg 826 kg
推進剤 四酸化二窒素UDMH 混合比 1,86:1 四酸化二窒素UH 25 混合比 1,70:1 四酸化二窒素UDMH 混合比 1,86:1 四酸化二窒素UH 25 混合比 1,70:1 四酸化二窒素UH 25 混合比 1,70:1 四酸化二窒素UH 25 混合比 1,71:1
燃料消費 ca. 275 kg/s ca. 275 kg/s ca. 275 kg/s ca. 275 kg/s ca. 275 kg/s ca. 275 kg/s
タービン出力 2500 kW/10.000 回転/分 2500 kW/10.000 回転/分 2500 kW/10.000 回転/分 2500 kW/10.000 回転/分 2500 kW/10.000 回転/分 2500 kW/10.000 回転/分
真空中での推力 690 kN  ? 713 kN 800 kN 758 kN 750 kN
地上での推力 611 kN 643 kN - - 678 kN  ?
搭載 アリアン1, GSLV アリアン2, 3 アリアン1, PSLV, GSLV アリアン2, 3, 4 アリアン4 PAL (アリアン4 液体燃料ブースター)

運用[編集]

アリアン1には4基のバイキング2エンジンが1段目、真空中での作動時に比推力が高くなるようにノズルの膨張比を高めた改良型のバイキング4エンジンが2段目に使用された。 バイキング2Bエンジンはアリアン2アリアン3に使用された。アリアン4にはバイキング5Cエンジンが使用された。真空中で作動する様に設計されたノズルが大きいバイキング4Bエンジンはアリアン2と3の第2段だけでなくアリアン4の第2段にも搭載された。バイキング6エンジンは小型のノズルでアリアン4の打ち上げ時に使用する液体燃料ブースターに使用された。原型のバイキング2から4はインドでVikasとしてライセンス生産されPSLVGSLVに使用された。

バイキングエンジンは信頼性が非常に高く、アリアンロケットでバイキングエンジンに起因する打ち上げの失敗は2度だけである。アリアン1の2回目の打ち上げでは第一段目のバイキングエンジンの不安定燃焼で燃焼室に亀裂が入り破壊に至った。2度目の失敗はフライトV36であるアリアン44Lでバイキング6の燃料供給系統に置き忘れた布が詰まった事が理由でバイキングエンジンに起因する物ではないが破壊された。

関連[編集]

出典[編集]