GSLV

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GSLV
GSLV.svg
GSLVの全体図
基本データ
運用国 インドの旗 インド
開発者 ISRO
打ち上げ数 8(成功3)
物理的特徴
段数 3段
ブースター 4基
総質量 402 トン
全長 49 m
直径 2.8 m
軌道投入能力
低軌道 5.0 トン
静止移行軌道 2.2 トン
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GSLV英語: Geosynchronous Satellite Launch Vehicle, GSLV)とはインド宇宙研究機関(ISRO)が開発した使い捨て型の静止衛星打ち上げロケットである。PSLVをベースとして、液体燃料ブースターを追加し、上段を極低温エンジンに換装した3段式ロケットで、地球低軌道 (LEO)に5,000 kg静止トランスファー軌道 (GTO)に2,200 kgのペイロードを投入できる。

歴史[編集]

GSLV計画は1990年に静止衛星の打ち上げ能力の獲得を目的として開始された。インドはそれまではソビエト連邦に大型衛星の打ち上げを依存していた。 GSLVの主要な構成要素はS125/S139固体燃料ロケットブースターやヴィカース-4液体燃料エンジン等をPSLVから受け継いだ。最初のGSLV Mk I (GSLV-D1)の打ち上げは2001年4月18日だった。[1]

GSLV-MkIはロシア製の液体水素エンジンを第3段に搭載していたが、GSLV-MkIIはインドが開発したエンジンに換えられた。当初ロシアから液体水素エンジンに関する技術を導入する予定だったが、ミサイル技術管理レジーム(MTCR)に基づきアメリカ合衆国がロシアからのインドへの技術移転に異議を唱えた為、GSLV-MkIIへの技術導入は中止された。

2014年1月5日、国産の最新型極低温ロケットGSLV-MkIIで衛星打ち上げに成功した。インドは長年、独自の極低温液体燃料ロケットエンジンの開発に取り組んできた。このロケットは、地上約3万6000キロの高高度の軌道に重量がこれまでより大きい衛星を投入するように設計されている[2]

構成と諸元[編集]

GSLVはPSLVに高推力の液体燃料ロケットブースターと低温液体燃料ロケットの第三段を加える事で打ち上げ能力を向上させた。三段式のロケットで、第一段は固体燃料ロケットで第二段は自己着火性推進剤を使用する液体燃料ロケットである。これらはPSLVから流用された。初期のGSLVはロシアから供給された低温燃料エンジンを第三段に使用しており、ロシアから低温燃料ロケットエンジンの技術を購入する事による開発を目論んだが、アメリカから圧力がかかり実現しなかった。[3]その為ISROは独自に低温燃料ロケットエンジンを開発した。

GSLVは約5000 kg (11,000 lbm)を低軌道に投入する能力を有する。ロシア製の12KRB上段とKVD-1低温燃料ロケットエンジンを使用することによりGSLVは2200 kg (4,850 lbm)を傾斜角18°の静止トランスファー軌道に投入できる。

主要諸元一覧[編集]

GSLV 主要諸元一覧[4]
段数 ブースター(×4) 第1段 第2段 第3段
Mk I Mk II
使用エンジン L40H ヴィカース2 × 1 S139 × 1 GS2 ヴィカース4 × 1 KVD-1M(RD-56M) × 1 CE-7.5 × 1
推進薬 四酸化二窒素
非対称ジメチルヒドラジン

(N2O4/UDMH)
ポリブタジエン系
コンポジット固体推進薬

(HTPB)
四酸化二窒素
非対称ジメチルヒドラジン

(N2O4/UDMH)
液体酸素
液体水素
(LOX/LH2)
液体酸素
液体水素
(LOX/LH2)
推力 680 kN
(計2,720 kN)
4,700 kN 720 kN 73.5 kN 73.5 kN(標準)
82 kN(改良)
比推力 262 秒 166 秒 295 秒 460 秒 452 秒
有効燃焼時間 160 秒 100 秒 150 秒 720 秒 714.4秒
全長 49 m
外径 2.8 m
質量 402,000 kg
低軌道 (LEO) 5,000 kg
静止トランスファ軌道 (GTO) 2,500 kg
液体燃料ブースター
GSLVは第二段ロケットL37.5の改良型であるL40液体燃料ブースターを4基使用している。40トンの自己着火性推進剤非対称ジメチルヒドラジン四酸化二窒素でエンジンにポンプで供給され680 kN(150,000 lbf)の推力がある。推進剤は独立した直径2.1mのタンク内に貯蔵される。
第1段
S139 は直径2.8 mでM250高張力鋼でできている固体燃料ロケットである。推進剤は139tである。
第2段
2段目は直径2.8 mの液体燃料ロケットでヴィカースエンジンを動力とする。37.5 tの推進剤で720 kN(160,000 lbf)の推力を出す。燃料は非対称ジメチルヒドラジンと四酸化二窒素(N2O4)を酸化剤として使用する。2つのアルミニウム合金製の貯蔵タンクは共通の仕切りで区切られる。
第3段
Mk I型の3段目は直径2.8 mのロシア製液体燃料ロケットである。推進剤として液体水素液体酸素を12.5 t搭載する。ISROは国産の極低温エンジン開発を進め、Mk II型の3段目エンジンに用いた。しかし、このタイプでは初めてとなる2010年4月の打ち上げでは、まさにその国産エンジンが不調となり失敗に終わった。

型式[編集]

GSLV Mk I (a)[編集]

S-125を第1段として使用する。GTOに1,500 kgの打ち上げ能力を持つ。

GSLV Mk I (b)[編集]

S-139を第1段、L40Hを液体燃料ブースター、L37.5Hを第2段として使用する。これ以降、液体燃料ブースターと第2段の燃料がUH 25に変更された。GTOに1,900 kgの打ち上げ能力を持つ。

GSLV Mk I (c)[編集]

推進剤が15tに増量されたC15を第3段として使用する[5]

GSLV Mk II[編集]

国産極低温エンジンを搭載したCUS12を第3段として使用する[6]。GTOに2,200kgの打ち上げ能力を持つとされる[7]。以前(GSLV Mk.I)はロシア製の低温燃料エンジンを使用していた[8]

GSLV Mk IIA[編集]

国産極低温エンジンを搭載したCUS15を第3段として使用する[7]。GTOに2,350kgの打ち上げ能力を持つ[7]。開発中。

GSLV Mk IIC[編集]

PAM-Gを第4段として使用する[7]中軌道への測位衛星の打ち上げを想定しているが、静止軌道へ955kgの衛星を直接投入することも可能とされる[7]。開発中。

GSLV Mk III[編集]

2014年12月に試験機の打ち上げ、弾道飛行に成功。2017年6月には人工衛星の打ち上げにも成功。4500から5000kgのINSAT-4級の大型の静止通信衛星の打ち上げや有人打上げを目的としている。

打ち上げ実績[編集]

機体番号 型式 打ち上げ日時 発射台番号 ペイロード ペイロード重量 結果 備考
D1 GSLV Mk I (a) 2001年 4月18日
10:13
第1発射台 インドの旗 インドGSAT-1 1,540 kg 失敗 試験機。当初計画よりも低い軌道に投入されたが静止トランスファー軌道に自力で上がった。[9]しかしこれにより燃料を消費してしまい衛星は運用する予定の軌道には到達できなかったので最終的に打ち上げは失敗した。[10][11][12]
D2 GSLV Mk I (a) 2003年 5月8日
11:28
第1発射台 インドの旗 インドGSAT-2 1,825 kg 成功 試験機。[13]
F01 GSLV Mk I (b) 2004年 9月20日
10:31
第1発射台 インドの旗 インドEDUSAT 1,950 kg 成功 実機初飛行。[14]
F02 GSLV Mk I (b) 2006年 7月10日
12:08
第2発射台 インドの旗 インドINSAT-4C 2,168 kg 失敗 予定軌道から逸脱したためロケット・衛星の双方をベンガル湾上空で指令破壊。[15]
F04 GSLV Mk I (b) 2007年 9月2日
12:51
第2発射台 インドの旗 インドINSAT-4CR 2,160 kg 部分的失敗 ロケットの性能不足により予定していた軌道よりも低軌道に投入された。[11] [16]2,160kgのペイロードをGTOに投入。[17][18]軌道修正に燃料を消費した為に衛星の計画段階での寿命よりも5年縮まると報告されたが後にISROはこの報告を却下して反論した。[19]
D3 GSLV Mk II 2010年 4月15日
12:57
第2発射台 インドの旗 インドGSAT-4 2,220 kg 失敗 ISROが開発、製造した第3段エンジンを搭載した最初の機体。3段目エンジンが不調。機体は失速し、海面に落下した。[20]低温燃料ロケットエンジンの燃料ポンプの故障が原因[21]
F06 GSLV Mk I (c)[22] 2010年 12月25日[22] 第2発射台 インドの旗 インドGSAT-5P 2,130 kg 失敗 第1段エンジン燃焼中に液体ブースターが制御不能になりコースを外れる。打ち上げ47秒後に指令爆破された[23]
D5 GSLV Mk II[24] 2014年1月5日 第2発射台 インドの旗 インドGSAT-14 1,982kg 成功[25] 当初、2013年8月19日に打上げを予定していたが、打上げ直前に約750kgのUH25燃料が2段から漏れ出したため中止。2段と4基の液体ブースターは全て新しいものと交換することになった[26]
X1 GSLV Mk III X 2014年12月18日   インドの旗 インド
CARE(Crew Module Atomospheric Re-entry Experiment)
3,775kg 成功 GSLV Mk IIIの初の試験打上げ。弾道飛行。
打ち上げ予定

GSLV Mk-IIIの打上実績に関しては、試験機以降はGSLV-IIIを参照。

後継機種[編集]

GSLVをベースに、ロシアから技術移転を受けた極低温エンジンを利用したGSLV-IIを開発する予定だったが、ミサイル技術管理レジームに基づくアメリカからの抗議により、計画は中止された。結果的にISROは国産極低温エンジンを使用する形でGSLVをMk IIにバージョンアップした。さらに大型化したロケットとしてGSLV-Mk IIIを開発し、2014年12月に弾道試験に成功、2017年には初の軌道飛行に成功した。

競合するロケット[編集]

外部リンク[編集]

脚注[編集]

  1. ^ http://www.bharat-rakshak.com/SPACE/space-launchers-gslv.html
  2. ^ http://www.afpbb.com/articles/-/3006015
  3. ^ http://www.janes.com/aerospace/civil/news/misc/jsd010420_1_n.shtml
  4. ^ http://www.isro.org/Launchvehicles/GSLV/gslv.aspx
  5. ^ GSLV-F06”. ISRO. 2011年7月19日閲覧。
  6. ^ GSLV-D3”. ISRO. 2011年7月19日閲覧。
  7. ^ a b c d e S,Somanath (2010年9月7日). “‘Access to Space’ ISRO’s Current Launch Capabilities & Commercial Opportunities (PDF)”. ISRO. 2012年7月19日閲覧。
  8. ^ Clark, Stephen (2010年10月12日). “India may seek international help on cryogenic engine”. SPACEFLIGHT NOW. 2012年7月19日閲覧。 “Besides the new upper stage, the GSLV Mk.2 launched in April was nearly identical to previous versions of the booster.”
  9. ^ Press Brief on GSLV-D1/GSAT-1”. ISRO. 2010年4月16日閲覧。
  10. ^ Wade, Mark. “GSLV”. Encyclopedia Astronautica. 2010年4月4日閲覧。
  11. ^ a b Pradesh, Andhra (2010年4月15日). “Of six GSLV launches, only two were successes”. Sriharikota: Hindustan Times. 2010年4月16日閲覧。
  12. ^ http://www.isro.org/pressrelease/scripts/pressreleasein.aspx?Apr18_2001 GSLV-D1 Mission
  13. ^ http://www.isro.org/pressrelease/scripts/pressreleasein.aspx?May08_2003 GSLV-D2 Mission
  14. ^ http://www.isro.org/pressrelease/scripts/pressreleasein.aspx?Sep20_2004 EDUSAT mission
  15. ^ http://www.isro.org/pressrelease/scripts/pressreleasein.aspx?Jul10_2006 GSLV-F2 Misson
  16. ^ Clark, Stephen (2007年9月2日). “India's large satellite launcher returns to flight”. Spaceflight Now. 2007年9月2日閲覧。
  17. ^ INSAT-4CR successfully placed in orbit”. Times of India. 2010年4月16日閲覧。
  18. ^ GSLV-F04 Launch Successful - Places INSAT-4CR in orbit”. ISRO. 2010年4月16日閲覧。
  19. ^ ISRO refutes INSAT-4CR `disappearance' story”. Hindustan Times. 2010年4月16日閲覧。
  20. ^ http://www.spaceflightnow.com/news/n1004/15gslv/ Indian rocket tumbles back to Earth during test launch
  21. ^ GSLV-D3 Failure Analysis Report”. ISRO. 2010年4月16日閲覧。
  22. ^ a b Subramanian, T.S. (2010年4月16日). “GSLV-D3 failure will not affect Chandrayaan-2”. The Hindu. 2010年4月16日閲覧。
  23. ^ http://www.afpbb.com/article/disaster-accidents-crime/accidents/2780673/6610835 インド、通信衛星打ち上げに失敗(AFP.BB.NEWS 2010年12月26日)
  24. ^ “Indian space agency foresees GSLV test flights within year”. Spaceflightnow.com. http://spaceflightnow.com/news/n1205/01gslv/ 2012年5月3日閲覧。 
  25. ^ “GSLV-D5/GSAT-14 Mission”. ISRO. http://www.isro.org/gslv-d5/mission.aspx 2014年1月7日閲覧。 
  26. ^ “Restoration of GSLV-D5 Mission”. ISRO. (2013年8月29日). http://www.isro.org/pressrelease/scripts/pressreleasein.aspx?Aug29_2013 2013年9月4日閲覧。