エレクトロン (ロケット)

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エレクトロン
(Electron)
Electron Orthographic.png
エレクトロン
基本データ
運用国  ニュージーランド
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
開発者 Rocket Lab
運用機関 Rocket Lab
使用期間 2017年 - 現役
射場 Rocket Lab LC 1英語版
KSC LC-39C
打ち上げ数 7回(成功6回)
打ち上げ費用 490万ドル
公式ページ Electron
物理的特徴
段数 2段
ブースター なし
総質量 10,500 kg (23,000 lb)
全長 17 m (56 ft)
直径 1.2 m (3 ft 11 in)
軌道投入能力
太陽同期軌道 150 - 225 kg
500 km
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エレクトロン (Electron) は、アメリカニュージーランドの企業であるRocket Labが開発した人工衛星打ち上げ用の小型液体燃料ロケットである。軌道に110kgのペイロードを投入する能力を有し、1回の打ち上げ費用は500万米ドル未満にする予定である[1]

仕様[編集]

軽量化のため、ロケット本体は炭素繊維強化プラスチック (CFRP) で製作されている。基本仕様では低軌道へ400kg、高度500kmの太陽同期軌道へ100kgまでのペイロードを投入する能力を有する[2]

独自技術にも力を入れており、エンジンなどは専用の3Dプリンターで作られている[3]ラザフォードエンジンは電動ポンプサイクルを採用しておりリチウムイオンバッテリーから供給される電力で直流ブラシレスモータを回転してターボポンプを駆動して推進剤であるケロシン液体酸素をエンジンに供給する。

計画[編集]

ニュージーランドのRocket Lab第1発射施設英語版

当初、エレクトロンの最初の打ち上げは2015年末が予定され[4]、商業的な運用は2016年に開始予定とされた[2]。また、Rocket Labはニュージーランドにおけるロケット射場としてカンタベリー地方のBirdling's Flatを選定した。この場所はカンタベリー地方の中心都市クライストチャーチから44kmの位置にある。アメリカ合衆国ではケネディ宇宙センターからの打ち上げが検討されている[2]Rocket Labの本社はフロリダ州にあるが大部分はニュージーランドで製造される。2015年には87回の燃焼試験を実施した。

打上げ記録[編集]

2017年5月25日にペイロードなしの"It's a Test"と名付けられた試験機の初打ち上げが行われた。ロケットの上段は衛星軌道に乗らず弾道飛行に終わったものの、それ以外の技術的な実証はすべて成功に終わり、今後の進展に向けて充分な結果が得られた[5]。予定された軌道は近地点300km、遠地点500km、軌道傾斜角83°の楕円軌道だった。失敗原因の究明には約2か月が費やされた。発表によれば、高度224 km時点で地上設備のミスによりテレメトリ異常が検出されたため、安全のために飛行を中断したという。これはソフトウエアで容易に修正可能な問題であり、2号機以降に生かされることになった[6]

No 打上日時 (UTC) 軌道 ペイロード 成否 備考
1 2017年5月25日
04:20[7]
LEO 試験飛行
模擬重量物と機器
部分的失敗 ロケットは成功裏に打ち上げられ、第一段とフェアリングの切り離しを達成したが、意図した軌道には届かず、最大高度およそ155 mi (249 km)に達したのみ[8][9][10][11]
2 2018年1月21日
01:43
LEO CubeSats 3機 成功
3 2018年11月11日
03:51
LEO CubeSats等 成功
4 2018年12月16日
06:33
LEO CubeSats等 成功
5 2019年3月28日
23:27
LEO DARPA R3D2 成功
6 2019年5月5日
06:00
LEO Harbinger
FalconODE
SPARC-1
成功 後二者はキューブサットで、3機の総重量は過去最大の180 kg[12]
7 2019年6月29日
04:30
LEO 小型人工衛星7基 成功 BlackSky Global-3 (BlackSky)、Prometheus×2基(アメリカ特殊作戦軍)、ACRUX-1(オーストラリアの学生によるキューブサット)などで、合計重量80 kg[13]

再使用[編集]

エレクトロンは使い捨て型ロケットとして開発されたが、2019年8月には将来的に1段目の回収・再使用を行う計画が発表されている。この計画では、打ち上げ後の1段目はそのまま自由落下した後、パラフォイルを展開。減速したところをヘリコプターで空中回収する。Rocket Labでは、再使用を打ち上げコストの削減ではなく、打ち上げ頻度を向上させる目的で行うとしている。[14]

脚注[編集]

  1. ^ NZ to get its own space programme by 2015”. 23 de agosto de 2014閲覧。
  2. ^ a b c Electron”. Gunter's Space Page. 17 de abril de 2015閲覧。
  3. ^ エンジンを3Dプリンターで出力した小型・軽量ロケットの打ち上げ試験に民間ロケット会社「Rocket Lab」が成功” (2017年5月25日). 2017年5月26日閲覧。
  4. ^ Rocket Lab Announces New Small Satellite Launcher”. Parabolic Arc. 23 de agosto de 2014閲覧。
  5. ^ 塚本直樹 (2017年5月26日). “ロケットラボ「エレクトロン」初打ち上げ 軌道到達以外は成功 月面探査レースに刺激”. http://sorae.info/030201/2017_05_25_ele.html 2017年5月26日閲覧。 
  6. ^ エレクトロンロケット初号機の問題は究明される”. 宇宙技術開発株式会社 (2017年8月10日). 2017年8月18日閲覧。
  7. ^ Clark, Stephen (2017年5月25日). “Maiden flight of Rocket Lab’s small satellite launcher reaches space”. Spaceflight Now. https://spaceflightnow.com/2017/05/25/maiden-flight-of-rocket-labs-small-satellite-launcher-reaches-space/ 2017年5月25日閲覧。 
  8. ^ “New Zealand test rocket makes it to space but not into orbit”. Independent.ie. Associated Press. (2017年5月25日). http://www.independent.ie/world-news/new-zealand-test-rocket-makes-it-to-space-but-not-into-orbit-35753899.html 2017年5月25日閲覧。 
  9. ^ Rocket Lab successfully makes it to space”. Rocket Lab (2017年5月25日). 2017年5月27日閲覧。
  10. ^ Foust, Jeff (2017年5月25日). “Rocket Lab reaches space, but not orbit, on first Electron launch”. SpaceNews. http://spacenews.com/rocket-lab-reaches-space-but-not-orbit-on-first-electron-launch/ 2017年5月27日閲覧。 
  11. ^ Masunaga, Samantha (2017年5月25日). “Rocket Lab's Electron rocket reaches space, but not orbit, in first test flight”. Los Angeles Times. http://www.latimes.com/business/la-fi-rocket-lab-test-20170524-story.html 2017年5月26日閲覧。 
  12. ^ ロケット・ラボ、実験衛星打ち上げ成功 エレクトロン・ロケット使用”. sorae.jp (2019年5月8日). 2019年5月10日閲覧。
  13. ^ ロケット・ラボ、小型人工衛星の打ち上げを実施”. sorae.jp (2019年6月30日). 2019年7月6日閲覧。
  14. ^ 米ロケット・ラボ、「エレクトロン」ロケットを再使用する計画を発表”. マイナビニュース (2019年8月19日). 2019年8月21日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]