スピルリナ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動
スピルリナ
Spirul3.jpg
Spirulina sp.
分類
ドメ
イン
: 真正細菌 Bacteria
: 藍色細菌門 Cyanobacteria
: ユレモ目 Oscillatoriales
: :Microcoleaceae
: アルスロスピラ(オルソスピラ)属 Arthrospira
Stitzenberger ex Gomont, 1892
和名
スピルリナ
英名
Spirulina
タブレット状のスピルリナ

スピルリナ(Spirulina)は、藍藻ユレモ目アルスロスピラ属の微細藻類の通称である。特にサプリメントとして採取・開発が進んだ A. platensisA. maximaの2種をしばしば指す。

スピルリナという名前は、ラテン語の“ねじれた”“らせん形の”を意味する “Spira”(英語ではSpiral)に由来する。本属は元来アルスロスピラ属として記載されていたが、1932年に近縁のスピルリナ属(Spirulina)に統合され[1]、長年通行して来たことにより、スピルリナという通称が定着した。しかし本属の藻は細胞隔壁を有する点においてスピルリナ属と異なる点が注目され、現在では元来のアルスロスピラ属とするのが定説となっている。[2]

生息環境[編集]

幅 5-8μm、長さ 300-500μm ほどのらせん形であり、水温30-35℃の無機塩類濃度の高いアルカリ性(pH9-11)の水を好み、陸上植物と同じように酸素発生型光合成を行い増殖する[3]熱帯地方の強アルカリ塩湖に好んで自生し、しばしばアオコをなしている。

フラミンゴ大地溝帯に点在する強いアルカリ性の湖に育つ種のものを主食としている。

スピルリナは、古来より農耕や牧畜に適さない地での住民の貴重な食糧源となった。現在は消滅寸前のチャド湖に自生していたA. platensisは、カネム・ボルヌ帝国などサハラ南縁の文明を支え、現在は消滅したテスココ湖に自生していたA. maximaはアステカ文明の揺籃となった。

食経験[編集]

フランスの P. Dangard らが、アフリカ中央部のチャド湖の東約50kmにある村の市場で、チャド湖で収穫されたスピルリナの乾燥物が「ダイエ」という名前で売られていることを、1940年に紹介し、世界の注目を集めた。1967年11月には、エチオピアで開かれた国際応用微生物会議で、「スピルリナはタンパク質が豊富であり、将来の食糧源として注目されるべきである」と報告された[3]

生産[編集]

食品としての工業的生産は、日本の大日本インキ化学工業(現DIC)が1978年にタイのバンコク郊外に人工池による培養プールを建設して販売したのが世界最初とされている[4]。現在は米国コロラド州に生産を移している。中国海南島など亜熱帯から熱帯地方の各国で培養・生産されている。すべて密封タンク内ではなく野外プールでの粗放培養である。培養液からの分離・濃縮工程では、スピルリナの大きさが0.3 - 0.5mmと大きいため、0.003 - 0.01mm程度のクロレラなどの生産で用いられる遠心分離機を使用する必要がない。簡単な網で昆虫 カエルなどを除去しスクリーンフィルター(ろ過)で脱水し、スラッジを乾燥させた後、機械で砕いて粉末にする。粉末状で瓶詰め、また打錠機により錠剤として販売する。[要出典] また粉末を温水で再溶解し濃縮液を凍結乾燥処理すると重量比で70%の粗製青色色素(DIC商品名 リナブルー)が得られる。冷菓やソーダ水等の色つけ用の天然青色色素として用いられる。

応用[編集]

乾燥したスピルリナは、タンパク質を約60%含み、ビタミン、ミネラル、多糖類(食物繊維)、クロロフィルなどを含む。中でもカロテノイド系色素のβ-カロテンゼアキサンチンを多く含み、その抗酸化作用が注目されており、スーパーフードとして商業的に販売されている[5][6]クロレラと比較し、β-カロテン含量が多く、消化吸収性が良いのが特徴である。なお、これを主食とするフラミンゴの体色が赤いのは沈着したβ-カロテンのためと言われている。同様に飼料に混ぜて観賞用錦鯉などの体色の改良(日本カーボン社特許)や養殖ニジマスの肉色の改良に使われたこともある。DIC社の安全性データーが飼料関係であるのはこのためである。

国立健康栄養研究所は、「ヒトでの有効性について充分なデータが見当たらない」としている[7]。下痢や鼓腸、胃のむかつき、浮腫などが起こることがある。妊娠中・授乳中の安全性については十分な情報がないため摂取は避けたほうがよい。スピルリナ類は細菌や重金属 (水銀、カドミウム、鉛、ヒ素)、放射性の2価または3価のイオンを含むことがある。またミクロシスチンを含むものは肝毒性があり過摂取は危険である。スピルリナ含有製品の健康被害として薬剤過敏症や細胞壁炎症を起こす報告が存在する[7]。フランス食品環境労働衛生安全庁からは、スピルリナを含むサプリメントに対して重篤なアレルギー症状例が報告されている[8]

橙黄色のカロテノイドのほか、緑色の葉緑素(クロロフィルa)、青色のフィコシアニンの3種の色素を含む。フィコシアニンは藍藻類の名前の由来ともなっている鮮やかな青色を呈するため、天然の食用色素として冷菓[9]・乳製品[10]・粉末ジュース・飲料・グミ[11] などに利用されている。

粉末状またはタブレット以外では、株式会社タベルモが独自に開発した、生食品質を担保する培養技術急速冷凍技術の二つを用いることで、日本で唯一、生食ができるタイプの商品を開発・販売している[12]

脚注[編集]

  1. ^ Siva Kiran, RR; Madhu GM; Satyanarayana SV (2016). “Spirulina in combating Protein Energy Malnutrition (PEM) and Protein Energy Wasting (PEW) - A review”. Journal of Nutrition Research. オリジナルの2016年3月2日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20160302154130/jnutres.com/index.php/jnr/article/view/JNR315/pdf 2016年2月20日閲覧。. 
  2. ^ Takatomo Fujisawa; Rei Narikawa; Shinobu Okamoto; Shigeki Ehira; Hidehisa Yoshimura; Iwane Suzuki; Tatsuru Masuda; Mari Mochimaru et al. (2010-03-04). “Genomic Structure of an Economically Important Cyanobacterium, Arthrospira (Spirulina) platensis NIES-39”. DNA Res. 17 (2): 85–103. doi:10.1093/dnares/dsq004. PMC: 2853384. PMID 20203057. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2853384/.  In its turn, it references: Castenholz R.W.; Rippka R.; Herdman M.; Wilmotte A. (2007). Boone D.R.. ed. Bergey's Manual of Systematic Bacteriology (2nd ed.). Springer: Berlin. pp. 542–3 
  3. ^ a b 世界で最も多く生産されている「藻類」スピルリナ” (日本語). DICライフテック株式会社. 2020年2月29日閲覧。
  4. ^ 世界一の印刷インキメーカーが、「食べられる藻」を40年以上前からつくり続ける理由 (4/6) - ITmedia ビジネスオンライン
  5. ^ 粗悪品には注意が必要! 今年流行るスーパーフード9選は? | 女性自身” (日本語). WEB女性自身. 2020年3月11日閲覧。
  6. ^ スピルリナ&クロレラ タブレット - スーパーフード|サンフード スーパーフーズ公式オンラインストア” (日本語). スピルリナ&クロレラ タブレット - スーパーフード|サンフード スーパーフーズ公式オンラインストア. 2020年3月11日閲覧。
  7. ^ a b スピルリナ - 「健康食品」の安全性・有効性情報(国立健康・栄養研究所
  8. ^ フランス食品環境労働衛生安全庁(ANSES)、スピルリナを含むサプリメントへアレルギーを示した患者に関する報告書を発表 - 内閣府 食品安全委員会
  9. ^ よくある質問|赤城乳業株式会社
  10. ^ 角10棒アイス | 株式会社 明治
  11. ^ ハンガリー製|三菱食品
  12. ^ 生スピルリナの研究開発とタベルモ事業の挑戦 生物工学会誌 第95巻 第2号 - 9502_project_bio.pdf
  13. ^ Link to USDA Database entry

外部リンク[編集]