炭酸水

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炭酸水の入ったグラス

炭酸水(たんさんすい、英:carbonated water、あるいはsoda water 等)とは、二酸化炭素炭酸ガス)の水溶液[1]。つまり二酸化炭素(炭酸ガス)が溶け込んだのこと。「ソーダ水」(あるいは単に「ソーダ」)とも言われる。

概説[編集]

炭酸水とは、「二酸化炭素の水溶液」であり、「炭酸ガスが溶け込んだ水」のことで、つまりは二酸化炭素(CO2)の気体が溶け込んだ水のことである。

もともと炭酸水は、天然で「二酸化炭素泉(にさんかたんそせん)」として産出していた[1]。炭酸水は、地中から湧き水温泉などの形で産出していたのである。飲用可能なものは、ヨーロッパなどで長らく「炭酸ガス入りミネラルウォーター」等の形で販売され親しまれてきた歴史があり、現在でもスーパー等で広く市販されており、ヨーロッパやアメリカのカフェレストランで「水」を注文する際は、「炭酸水」か「無炭酸の水」かを選んで注文する形式が一般的で、どちらか指定しないと どちらを出してよいかウェイターが戸惑うほどに炭酸水は普及している。

炭酸水は人工的に作ることも可能であり、耐圧容器の中に水と炭酸ガスを入れて加圧すればできる[1]

炭酸水は様々な目的で用いられている。例えば、薬として用いるため、「清涼飲料」を作るため、化学試験を行うためなどである[1]。(一般の日本人には炭酸飲料、清涼飲料の原料としての用い方が最もなじみ深い)。炭酸水を混ぜている飲料を炭酸飲料と言う。なお、バーなど 飲酒をする店では、アルコール飲料に炭酸水を混ぜることも広く行われている。[注 1]

なお、炭酸水を地中から取り出したり、耐圧容器の蓋を開けるなどして圧力が低くなると、炭酸水は徐々に水と炭酸ガスに分離し、炭酸ガスは水中で気泡の形で現れ、水面(上方)へと昇ってゆく。

\mathrm{H}_2\mathrm{O}+\mathrm{CO}_2 ~ \rightleftharpoons ~ \mathrm{H}_2\mathrm{CO}_3

作り方、製造法[編集]

耐圧容器内で水と炭酸ガスに圧力を加えて作る。水と炭酸ガスに圧力を加え炭酸(化学式:H2CO3)を製造するプロセスを炭酸飽和と呼ぶ。

工場での大量生産では、大型の耐圧容器(金属製、主としてステンレス製の容器、タンク)が用いられる。

炭酸水は家庭でも作ることが可能である。いくつかの方法がある。何らかの圧力を保てる容器(耐圧容器。例えば耐圧ペットボトル(炭酸飲料が入っていた 空のペットボトル)やガラス瓶など)を用意して、以下のいずれかを行って、蓋をしっかりと閉めて圧力を保ち、時間とともに二酸化炭素が水に溶け込むのを待つ、といった方法である。

  • 水とドライアイスを一緒に入れる。
  • 小さなボンベに入った炭酸ガスを入手(購入)して、それを水に混ぜる。
  • (若干余分な成分ができることを許容する場合は)空のペットボトル内に水とクエン酸重曹を入れる
  • (クエン酸と重曹を用いても、余分な成分は避け、純粋な炭酸水を作る場合は)ペットボトルを2つ用意して、2つの蓋を(しっかりと加工・接着させた)チューブやパイプで繋ぎ、双方に水を入れ、片方にだけクエン酸と重曹を入れ、二酸化炭素を発生させ、純粋な二酸化炭素をチューブ経由で、もう片方のペットボトルへと移動させ そこで水に溶け込ませる。

クエン酸や重曹を用いると、とても安価に炭酸水を作ることができる。

家庭で炭酸水を作るための専用の容器(小さな耐圧容器)も市販されており「ソーダサイフォン」「ソーダ製造機」等の名称で呼ばれている[2]

市販の「ソーダ水」は、純粋な炭酸水の場合もあるが、クエン酸ナトリウム炭酸水素ナトリウム炭酸水素カリウムクエン酸カリウム硫酸カリウムジナトリウムリン酸塩などを少量加える場合もあり、メーカーによって異なる。これらの添加物は、家庭で作ったソーダ水の若干の塩味を再現するために加えられている。

歴史[編集]

概説でも解説したように、もともと天然の炭酸水が炭酸泉として産出していた。

人工的に作られた炭酸水の起源や最初期のものに関しては、いくつかの説・逸話・記録などがある。

ひとつの説としては、最初の人工的な炭酸水はレモネード炭酸水素ナトリウムを加えた物だともされる。これは、化学的に言えばクエン酸炭酸水素ナトリウム化学反応によって炭酸ガスを作っていたことになる。 これとほぼ同様の方法として、大掛かりな高圧装置が普及するより早く大量生産されるようになっていた重曹を利用し、小さなに、水とクエン酸と重曹を封入することで、「家内工業レベル」でも容易に炭酸水を製造可能であり、化学反応の副産物であるナトリウム塩の風味を打ち消すため、レモネードのように果汁や甘味料、香料などで味付けされ、多様な炭酸飲料へと発展することになった。この名残で、元来 ナトリウム化合物を指す「ソーダ」という表現が、炭酸飲料の代名詞にもなっているのである。

1769年、イングランド人ジョゼフ・プリーストリーは、イングランドリーズにある醸造所で、ビールの大桶の上にの入ったボウルをつるしておくと水に二酸化炭素が溶け込むことを発見し、炭酸水を発明した[3]とも。ビールの発酵槽を覆っている空気は 'fixed air' と呼ばれ、そこにネズミを吊るしておくと死ぬことが知られていた。プリーストリーはそのようして出来た水が美味しいことに気づき、冷たく爽やかな飲み物として友人らにそれを提供した。1772年、プリーストリーは Impregnating Water with Fixed Air(fixed air を染み込ませた水)と題した論文を発表し、その中でチョーク硫酸をたらして二酸化炭素ガスを発生させ、そのガスをボウルの中の水を攪拌して溶かし込む方法を推奨していた[4]

また、1771年、スウェーデン化学の教授トルビョルン・ベリマンも独自に似たような炭酸水の製法を発明した。彼は虚弱であり、自然発生する沸騰を模倣することで、健康に役に立つと考えていた[5]マジャル人イェドリク・アーニョシュ(1800年 - 1895年)は、ソーダ水の大量生産法を発明した。また、ハンガリーブダペスト世界初の炭酸水工場を建設した[5]。その後ハンガリーで、ワインとソーダ水を混ぜたスプリッツァの一種 "fröccs" が作られるようになり、ヨーロッパ中に広まっていった。

現在では、大量生産の炭酸水は、炭酸ガスを加圧して作られる。この方法は可溶性を増加させる、つまり、自然界より多くのCO2を水の中に溶解させる。そしてボトルを開けるなどにより、圧力は少なくなり、ガスは特徴的な泡を作り、溶解が解かれる。

  • 1940年代

アメリカ合衆国では、第二次世界大戦まで「炭酸水 (carbonated water)」よりも「ソーダ水 (soda water)」の名称が一般的だった。世界恐慌のころには、ソーダ・ファウンテンで売られている最も安い飲み物ということで two cents plain とも呼ばれていた。1950年代には「sparkling water スパークリング・ウォーター」や「seltzer water セルツァー水」という呼称も使われるようになる。後者の呼称は本来は「ドイツSelters産の発泡ミネラルウォーター」の一種を指し、商標の普通名称化の一例である[6]

風味付けした炭酸水も販売されている。甘味は添加せず、風味だけを加えている点が、いわゆる「ソーダ」類とは異なる。レモンライムサクランボオレンジラズベリーといった果物の風味を加えたものが多い。

効果や影響[編集]

ここでは基本的に(純粋の、あるいはほぼ純粋の)炭酸水の効果や影響について解説する。

糖分を加えた飲料については、基本的に「炭酸飲料」や「清涼飲料水」の項目で解説するので、そちらを参照のこと。

肥満防止

(糖類を入れていない、純粋の)炭酸水はカロリーを摂取せずに満腹感を得ることができる。ニューヨーク州は近年、肥満や虫歯を防ぐために、糖分を含む飲料ではなく、水や炭酸水や低脂肪牛乳を飲むことを市民に推奨している[7]

歯への影響?

炭酸飲料等の酸性度の強い清涼飲料水に、歯を24時間以上浸しておくとカルシウム分が溶けることが知られている[8]。一方で、唾液を含めて生体内では炭酸脱水酵素が広く分布しているため、口にした瞬間、炭酸は速やかに気体二酸化炭素)とに分解されるので生体内では遊離型の炭酸の存在量は極めて少ない。したがって、自然界のような炭酸による影響は生体内ではほとんど現れない。

[注 2]

骨への影響?

炭酸飲料の摂取と骨折の危険性に関係は見られず、炭酸飲料の成分が体内のカルシウム量に与える影響は無視できる程度であり、炭酸水は通常の水と同程度に無害であるという研究もある[9]

炭酸飲料は酸味料としてリン酸を用いる場合が多く、リン酸の健康上の影響については様々な研究がある。コーラ系の清涼飲料水には354mlに対し41~70mgのリン酸が含まれている[10]。コーラを飲む習慣がある人の骨密度が低いことが観察され、ノンカフェインコーラでも同じような傾向が見られたため、コーラに含まれるリン酸がカルシウムの吸収を阻害し骨からカルシウムを流出させる原因ではないかと考えられている[11]

入浴時の効果(体温上昇、除痛効果)

炭酸泉として入浴した場合は、血管拡張作用[12]により体温を上昇させる。また、この体温上昇作用は炭酸濃度により変動する[13]。特に、温度41℃での高濃度人工炭酸水温浴は除痛効果が高い事が報告されている[14]


飲用と体温の関係

飲む場合は、体温を「低下させる」とする報告と「低下を抑制させる」という報告がある。

炭酸水の飲用および飲み込まず口腔内に入れ吐き出す偽飲 (Sham-feeding; SF) による口腔内刺激により、末梢体温の低下と一過性の心拍上昇が生じるとする報告がある[15]

一方、静岡県立大学食品栄養学部、渡辺らの研究によれば「炭酸水の飲用により体温の低下抑制が認められた[16]と報道された。

[17]

[18]

脚注・出典[編集]

  1. ^ なお、スパークリングワインも、できるまでの工程が(発酵過程ですでに二酸化炭素が溶け込んでいるという点で)異なりはするが、果汁とアルコールと炭酸ガスが溶け込んでおり、成分的言えば結局、飲む直前にアルコール飲料に炭酸水を混ぜたものとほぼ同じようなものになっている。
  2. ^ ただし、WHO/FAOによる2003年のレポートは、炭酸(「炭酸飲料」)の消費量が多い場合、が侵食されることを報告している。(Report of a Joint WHO/FAO Expert Consultation Diet, Nutrition and the Prevention of Chronic Diseases, 2003)。
出典
  1. ^ a b c d 広辞苑第六版「炭酸水」
  2. ^ 意匠分類定義カード(C5) 特許庁
  3. ^ Joseph Priestley - Discovery of Oxygen - Invention of Soda Water by Joseph Priestley”. Inventors.about.com (2009年9月16日). 2009年9月23日閲覧。
  4. ^ Priestly, Joseph (1772年). “Impregnating Water with Fixed Air, Page 7”. 2008年8月7日閲覧。
  5. ^ a b 三浦基弘『身近なモノ事始め事典』東京堂出版
  6. ^ Definition of seltzer - Merriam-Webster Online Dictionary”. 2007年11月7日閲覧。
  7. ^ Are You Pouring on the Pounds? (PDF)
  8. ^ 甲原玄秋、堀江弘 「清涼飲料水がおよぼす歯の脱灰作用」『千葉医学雑誌』77(3)、2001年6月1日、145-149頁。
  9. ^ Parry J, Shaw L, Arnaud MJ, Smith AJ (2001). “Investigation of mineral waters and soft drinks in relation to dental erosion”. Journal of oral rehab 28 (8): 766–72. PMID 11556958. 
  10. ^ 宮本賢一 (2009年3月). “注目されるミネラル・リン ~リンの過剰摂取が招く危険性と最新の代謝機構~ (PDF)”. 社団法人日本酪農乳業協会. 2014年6月26日閲覧。
  11. ^ 尾上佳子・泉龍大・太田博明「食習慣と骨粗鬆症」『臨床栄養』2009年5月、p. 484-489。
  12. ^ 人工炭酸浴に関する研究 (第1報) 炭酸泉の有効炭酸濃度について 日本温泉気候物理医学会雑誌 Vol. 47 (1983-1984) No. 3-4 p. 123-129
  13. ^ 高濃度炭酸水温浴の体温に及ぼす効果 (第1報) 高濃度炭酸水温浴における深部体温計と表面皮膚温の変化 日本温泉気候物理医学会雑誌 Vol. 64 (2000-2001) No. 2 p. 113-117
  14. ^ 高濃度人工炭酸水温浴による電流知覚閾値 (Current Perception Threshold: CPT) の変化 日本温泉気候物理医学会雑誌 Vol. 64 (2000-2001) No. 4 p. 191-198
  15. ^ 炭酸水による口腔への刺激が深部・末梢体温に及ぼす作用―Sham-feeding (偽飲) による口腔内刺激を用いた評価― 日本栄養・食糧学会誌 Vol. 67 (2014) No. 1 p. 19-25
  16. ^ 炭酸水で体温低下抑制 静岡新聞 2012年4月4日掲載 (PDF)
  17. ^ 炭酸飲料と血圧の関係は、この記事「炭酸水」ではなく、「炭酸飲料」の記事で解説すること。 セルビアベオグラード大学の Katarina Paunovic によれば、7~11歳の児童1113人(男児533人、女児580人)を対象とした調査で、炭酸飲料の1日当たりの摂取量とボディマス指数 (BMI) の関係及び血圧の傾向をみると、飲まない群はBMI 17.7、3杯以上の群はBMI 18.8で、更に炭酸飲料を1日に3杯以上飲む習慣のある児童は、収縮期血圧、拡張期血圧、BMIが有意に高かった(児童の炭酸飲料の多飲は血圧上昇を招く可能性:第21回欧州高血圧学会 日経メディカルオンライン 記事:2011/6/20 閲覧:2011/6/20)
  18. ^ [要出典]病気への影響? [誰?]消化管への刺激が強いため、消化性潰瘍・炎症性腸疾患などの消化器病の病状を悪化させる惧れがある。[要出典]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]