クチナシ

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クチナシ
Gardenia jasminoides
クチナシの花(2008年6月13日、岐阜県八木山)
左側でキアゲハが吸蜜している
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : キク類 asterids
階級なし : 真正キク類I euasterids I
: リンドウ目 Gentianales
: アカネ科 Rubiaceae
亜科 : サンタンカ亜科 Ixoroideae
: クチナシ連 Gardenieae
: クチナシ属 Gardenia
: クチナシ G. jasminoides
学名
Gardenia jasminoides
Ellis[1][2]
英名
common gardenia
変種
  • G. j. var. grandiflora
  • G. j. var. jasminoides
  • G. j. var. ovalifolia
  • コクチナシ G. j. var. radicans

クチナシ(梔子、巵子、支子、学名: Gardenia jasminoides)は、アカネ科クチナシ属常緑低木である。庭先や鉢植えでよく見られる[3]。乾燥果実は、生薬漢方薬の原料(山梔子・梔子)となることをはじめ、様々な利用がある。

名称[編集]

和名クチナシの語源には諸説ある。果実が熟しても裂開しないため、口がない実の意味から「口無し」という説[3][4][5]。また、上部に残る萼を口(クチ)、細かい種子のある果実を(ナシ)とし、クチのある梨の意味であるとする説[3]。他にはクチナワナシ(クチナワ=ヘビ、ナシ=果実のなる木)、よってヘビくらいしか食べない果実をつける木という意味からクチナシに変化したという説もある。

漢名(中国植物名)は山梔(さんし)である[6]。日本では漢字で、ふつう「梔子」と書かれるが、「口無し」が正しいとする説もある[7]

別名、ガーデニアともよばれる[8]。花にはジャスミンに似た強い芳香があり[9]、学名の種名 jasminoides は「ジャスミンのような」という意味がある[8]

分布・生育地[編集]

東アジア中国台湾インドシナ半島に広く分布し[7]日本では本州静岡県以西・四国九州南西諸島森林に自生する[10]。野生では山地の低木として自生するが、むしろ園芸用として栽培されることが多い[10]

形態・生態[編集]

樹高2 - 3メートル (m) ほどの常緑の低木[3][10]対生で、時に三輪生となり、長楕円形で全縁、長さ5センチメートル (cm) から12 cm、皮質で表面に強いつやがある[10]。筒状の托葉をもつ。

花期は6 - 7月で、葉腋から短い柄を出し、一個ずつ芳香があるを咲かせる[10]。花の直径は5 - 8 cmで[8]、開花当初は白色だが、徐々に黄色がかるように変化していく[10][8]花冠の基部が筒状で、先は大きく6裂または、5 - 7片に分かれる[3][10]。花はふつう一重咲きであるが、八重咲きのものもある[7]

秋(10 - 11月)ごろに、赤黄色の果実をつける[3]。果実は液果で、長さ約2 cmの長楕円形[8]、側面にはっきりした5 -7本の稜が突き出ており、先端には6個の萼片が残り、開裂せず針状についている[10][11]。多肉の果皮の中に90 - 100個ほどの種子が入っており、形は卵形や広楕円形をしている[11]。液果は冬に熟す[11]。八重咲きの品種では、種子はできない[12]

スズメガに典型的な尻尾(尾角)をもつイモムシがつくが、これはオオスカシバ幼虫である[13]奄美大島以南の南西諸島に分布するイワカワシジミシジミチョウ科)の幼虫は、クチナシのつぼみや果実等を餌とする[14]。クチナシの果実に穴が開いていることがあるが、これはイワカワシジミの幼虫が中に生息している、または生息していた跡である。

栽培[編集]

温暖地でやや湿った半日陰を好む[10]。繁殖は梅雨時期に挿し木にて行われる[10]。冬期は、ビニール覆いをするなど、乾燥と寒さを防ぐ[10]。種蒔で繁殖する場合は、実を潰して種子を取り出し、春か秋に蒔く[10]

人家周辺に栽培されることが多いが、クチナシを植えるとアリが来るといって敬遠する例もある。品種改良によりバラのような八重咲き品種も作り出されている。

利用[編集]

果実にはカロテンイリノイド配糖体ゲニポシドゲニポシド酸フラボノイドガーデニンや、精油などを含んでいる[3]。カロテンはプロビタミンAとも呼ばれ、人間の体内で吸収されてビタミンAに変化する[15]。また、果実にはカロチノイドの一種・クロシンが含まれ、乾燥させた果実は古くから黄色の着色料として用いられた。また、同様に黄色の色素であるゲニピン米糠に含まれるアミノ酸と化学反応を起こして発酵させることによって青色の着色料にもなる。

薬用[編集]

果実を水で煮だしたエキスには、胆管腸管のせばまりを拡張させる作用があるといわれている[16]。 注:上記へ重要なリスク情報として、クチナシ(サンシシ)の生薬としての用量での利用を原因とするクチナシ由来ゲニピンによる腸間膜静脈硬化症との関連示唆がある。 このゲニピンはクチナシのゲニポシドの腸内細菌代謝により生成されるとされる。[17]

10 - 11月ころに熟した果実を採取し、天日または陰干しで乾燥処理したものは、山梔子(さんしし)または梔子(しし)とも称され、日本薬局方にも収録された生薬の一つである[3][6]。漢方では、消炎利尿止血鎮静鎮痙(痙攣を鎮める)の目的で処方に配剤されるが、単独で用いられることはない[3][10]。煎じて黄疸などに用いられる。黄連解毒湯竜胆瀉肝湯温清飲五淋散などの漢方方剤に使われる。民間療法では、1日量2 - 3グラムの乾燥果実を400 ccの水に入れて、とろ火で半量になるまで煎じて服用する用法が知られている[6]。ただし、妊婦や、胃腸が冷えやすい人への服用は禁忌とされている[18]

民間では、打撲捻挫腰痛などに、乾燥果実(山梔子)5 - 6個の粉末(サンシシ末)に、同量の小麦粉を混ぜてで練り、ガーゼなどに厚く塗って冷湿布し、乾いたら交換するようにしておくと、熱を抑えて炎症が和らぐと言われる[3][10]。これに、黄柏末(キハダ粉)を加えると、一層の効果があるとされる[3][10]ひびしもやけには、熟した果実の皮をむき、患部にすり込む[12]

着色料[編集]

乾燥果実の粉末は奈良時代から使われ、平安時代には十二単など衣装の染色で支子色と呼ばれた。江戸時代には「口無し」から不言色とも記されている。

現代でも無害の天然色素として[7]、正月料理の栗金団をはじめ、料理の着色料としても使われている[3][9]食品に用いられるものには、サツマイモ和菓子たくあんなどを黄色若しくは青色[19]に染めるのに用いられる。大分県郷土料理黄飯も色づけと香りづけにクチナシの実が利用される。また、繊維を染める染料にも用いられる。クチナシの果実に含まれる成分、クロシンはサフラン色素の成分でもある。一例として、インスタントラーメンの袋などの原材料名の記載欄に明記があれば、「クチナシ色素」と書かれている[5]

食用[編集]

・クチナシの花は食用にもでき、萼を取り除いて軽く茹で、三杯酢甘煮などに調理できる[3]

黄飯(きいはん、おうはん、きめし)は、クチナシの実で色を付けた黄色い郷土料理。

愛知県名古屋市周辺(きいはん)、大分県臼杵市(おうはん)、静岡県東伊豆町稲取(きめし)。

生け花[編集]

クチナシの花は、見た目の美しさと香りが抜群によいため、生け花の切り花として使われる[9]

文化[編集]

「三大芳香花」の一つに数えられる植物で、渡哲也のヒット曲『くちなしの花』で、その香りが歌われている[20]。多くの人が親しみを感じている植物であり、日本の多くの「市の花」に選ばれている[5]。埼玉県八潮市、静岡県湖西市、愛知県大府市、奈良県橿原市、沖縄県南城市などで「市の花」としている[5]

足つき将棋盤碁盤の足の造形は、クチナシの稜のある果実を象っている[4]。「打ち手は無言、第三者は勝負に口出し無用」、すなわち「口無し」という意味がこめられている[4][21]

  • 花言葉は、「幸せを運ぶ」「清潔」「私は幸せ」「胸に秘めた愛」。
  • 黒人ジャズ歌手のビリー・ホリデイは、しばしばクチナシの花を髪に飾って舞台に立った。

脚注[編集]

[脚注の使い方]
  1. ^ Flora of Japan”. 2014年1月23日閲覧。
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Gardenia jasminoides Ellis”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2014年1月23日閲覧。
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m 田中孝治 1995, p. 138.
  4. ^ a b c 辻井達一 2006, p. 196.
  5. ^ a b c d 田中修 2009, p. 128.
  6. ^ a b c 貝津好孝 1995, p. 28.
  7. ^ a b c d 平野隆久監修 1997, p. 96.
  8. ^ a b c d e 亀田龍吉 2013, p. 93.
  9. ^ a b c 辻井達一 2006, p. 198.
  10. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 馬場篤 1996, p. 48.
  11. ^ a b c 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2018, p. 90.
  12. ^ a b 川原勝征 2015, p. 99.
  13. ^ 森上信夫、林将之『昆虫の食草・食樹ハンドブック』文一総合出版、2007年、46頁。ISBN 978-4-8299-0026-0
  14. ^ 福田晴夫、二町一成「イワカワシジミ」『鹿児島県の絶滅のおそれのある野生動植物 : 鹿児島県レッドデータブック. 動物編』鹿児島県環境生活部環境保護課企画・編集、鹿児島県環境技術協会、2003年、225頁。ISBN 4-9901588-0-6
  15. ^ 馬場篤 1995, p. 138.
  16. ^ 田中孝 治 1995, p. 138.
  17. ^ 副作用モニター情報〈464〉 山梔子(サンシシ)含有漢方製剤の長期投与に伴う腸間膜静脈硬化症 – 全日本民医連”. www.min-iren.gr.jp. 2020年8月7日閲覧。
  18. ^ 貝津好孝 1995, p. 138.
  19. ^ ねとらぼ "青いひやむぎ爆誕"を参照のこと。なお、この冷麦の産地は兵庫県播州地方で「揖保乃糸」で知られている。
  20. ^ 田中修 2009, pp. 127–128.
  21. ^ 田中修 2009, pp. 128–129.

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]