飛島 (山形県)

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飛島


飛島の空中写真。
この写真は上方が西北西方角である。1976年撮影の9枚を合成作成。国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成。


朱塗りが酒田市。北西の離島が飛島
飛島 (山形県)の位置(日本内)
飛島 (山形県)
飛島
所在地 日本の旗 日本 山形県酒田市
所在海域 日本海
座標 北緯39度11分40秒 東経139度33分0秒 / 北緯39.19444度 東経139.55000度 / 39.19444; 139.55000 (飛島)
面積 2.7 km²
海岸線長 10.2 km
最高標高 68 m
最高峰 高森山
人口 275人
プロジェクト 地形
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小物忌神社 境内

飛島(とびしま)は、日本海に浮かぶ山形県酒田市に属する。

地理

酒田港から北西39kmの沖合にある山形県唯一の有人島で、島の東側(本土に面した側)の勝浦、中村、北側の法木の計3ヶ所の集落によって構成される。

新潟県粟島佐渡島とは一直線に結ばれた海の道であり、古来より交流があった。

山形県に属するが、本土からの距離は秋田県のほうが近い。山形県で最も北に位置する。

  • 面積 - 2.7km²
  • 周囲 - 10.2km
  • 最高標高 - 68m(高森山)。島は標高約50メートルの平坦なテーブル状の地形を呈する。
  • 人口 - 226人(高齢化率67%)(2015年3月31日時点)[1]

歴史

  • 島の名称の由来には、鳥海山の山頂が噴火によって吹き飛んで島になったという伝説に基づくとする考えもあるが、古地図には海獣の名前を冠した「トド島」「トンド島」と表記する例もあり、決め難い。 なお、島内に祀られた小物忌神社は、鳥海山大物忌神社と対をなしている。
  • 島内では、縄文早期の終わりごろ(約6000年前)などの遺物を出土する葡萄崎遺跡が最古の人類居住の痕跡を残す。葡萄崎遺跡に近い蕨山遺跡からは、東北北部の円筒系の土器(円筒上層b式期)と、東北南部の大木系土器(大木7b式期)が共に出土した。島内の台地上には、縄文時代のほぼ全期間を通して人々が住んでいたことを示す遺跡が分布する。弥生時代・古墳時代の遺跡は見つかっておらず、この期間には、飛島は生活の舞台とはなっていなかったと考えられる。
  • 島の海岸に面した洞窟遺跡、「テキ穴」遺跡からは、9世紀から10世紀前半頃の平安時代の人骨や須恵器、土師器、赤焼土器、骨角器などが発見された。人骨は鶴岡市致道博物館に展示されている。
  • 平安時代には安部氏清原氏の支配下におかれた。
  • 15世紀には、羽後の豪族仁賀保氏の所領となる。戦国時代末期に仁賀保氏が常陸国武田へ移封されると最上氏の所領となった。最上氏、酒井氏が支配した近世には、特産のスルメを年貢として課されていた。
  • 江戸時代には庄内藩の所領であり、加茂港から島役人が派遣されていた。酒田港に出入りする北前船の潮待ち港や、水や食料の補給港として重要な位置を占めるようになった。
  • 幕末になると、ロシア船やイギリス船などの外国船がたびたび近辺を航行するようになり、庄内藩の沿岸警備の最前線となった。幕末の戊辰戦争では、明治元(1867)年11月に、佐幕側で戦う庄内藩を支援するため、松島湾から津軽海峡を廻り庄内に向かった、幕府軍の軍艦「長崎丸二番」と「千代田型」のうち、「長崎丸二番」(1862年、英国グラスゴーで建造。幕府が10万ドルで購入)が、荒天を避けて入港していた飛島勝浦港内で座礁し大破する事件も生じた。
  • 1909年明治42年)に、全国初の婦人消防団が誕生した。
  • 1933年昭和8年)に、東北大学八木秀次博士らによって開発された八木・宇田アンテナを使った初の公衆無線電話が、飛島 - 酒田間に開通。島内に「無線通信発祥の地」碑が立っている。
  • 古来より第2次世界大戦中の頃まで、漁業の労働力移入のため酒田周辺の貧農から「ナンキンコゾウ」と呼ばれる男子の養子(多くは寄留籍を置くのみ)を貰い、数え年21歳で解放するまで働かせる風習があった。その過酷な待遇は庄内地方の農村の間でも知られていたという。
  • 1950年(昭和25年)に飛島村が酒田市に編入。
  • 1963年(昭和38年)に島全域が国定公園鳥海国定公園)に指定される。

地形

飛島と本土の間には最上舟状海盆(水深約800メートル)がある。海底から飛島地塊が聳え立つ。飛島地塊は海面下130~140メートルで、南北44キロメートル、東西12キロメートルの台地状となり、この台地の最高部が僅かに海上に現れたのが飛島。飛島は飛島地塊の中央からやや南側にある。飛島の地形は、4つの段丘面と、干潮時に海岸線の周囲に現れる海食台の、合計5面に区分される。飛島には、新第三紀の地層と第四紀の段丘堆積物などが分布する。新第三紀前期中新世末期(約1700万年前)に相当する飛島層の凝灰質シルト岩部層からは、ウルシ、カエデ、ハコヤナギ、ヤナギなどの植物化石が産出する。これらは台島型植物群に属すると考えられる。この時期には、飛島は沿岸性の陸地のような環境にあり、その後、1350~900万年前に著しい沈降により完全に海面下に没し、900~200万年前に隆起や断裂、陥没により海盆や地塊が形成された。200~1万年前までに地塊は台地状になり、段丘が形成されたと考えられる。

気候

対馬海流のただ中にあり、年平均気温は約12℃以上に達する。山形県の最北端でありながら、山形県内で最も温暖。島内にはタブノキムベ、ヤブツバキモチノキ等の暖地系の植物が生い茂る。海底にはサンゴ類の群棲地があり、山形県の天然記念物としての指定を受けている。ムツサンゴについては日本最大の群棲地が存在し、オノミチキサンゴについては最北棲息地である。しばしば渇水に悩まされ(近年では2015年に渇水になっている[2])、は荒天により絶海の孤島となる。トビシマカンゾウなど、本島に自生する植物が標準標本となっているものもある。野鳥の種類は約270種。渡り鳥の中継地となっており季節により多くの鳥が見られる。御積島などと共にウミネコの繁殖地となっている。漁業が盛んで、釣り客も多い。

なお、地球温暖化に伴う栽培北限の北上を受けて山形県では2010年から飛島でスダチユズレモンなどの5種類の柑橘類の栽培適応性の調査を行っている[3]

交通

酒田市定期航路事業所旅客ターミナル(本土側)。ここから旅客船「とびしま」が発着する。

貨客船で230人が乗れるとびしまにより酒田市の酒田港と結ばれており、2010年平成22年)7月19日に、旧船「ニューとびしま」の老朽化に伴い就航した。所要時間は約1時間15分、運航頻度は1日1~3便(時季による)である。この船は自家用車を運ぶことは出来ない。とびしまのドック入り期間中は、羽幌沿海フェリー所有の高速旅客船「さんらいなぁ」と、粟島浦村漁業協同組合所有の貨物船「かもめ丸」をそれぞれ傭船し、運航を維持する。

飛島(勝浦)港には、旅客ターミナルとビジターセンターを兼ねた三角型の「飛島マリンプラザ」がある。1階が乗船券売場と待合室、2階が売店及び軽食・喫茶コーナー、3階は島についての展示スペース、4階が展望室。

他には中村の裏手に公共用ヘリポートがあり、緊急時には急患搬送が行われる。

冬になると海が荒れるため、とびしまが長いときで1週間以上欠航して絶海の孤島になることもあり、海上保安庁巡視船が渡海して物資を届けることがある。

島は歩いても移動できる程度の大きさだが、勝浦に自転車を貸してくれる食堂がある。島内では、東側海岸線と、台地上に道路があり、大部分が平坦であることから、自転車での移動は容易である。

島内に無線方位信号所があり、付近を航行する船舶に、安全航行のための位置信号を発信している。

生活

  • 行政機関 - 勝浦の飛島港旅客ターミナル内に酒田市役所飛島連絡所、中村に公民館体育館を兼ねたとびしま総合センターがある。他に酒田市営飛島葬祭場あり。
  • 警察 - 勝浦に酒田警察署飛島駐在所がある。
  • 学校 - 中村に飛島小中学校がある。標高54m。(Iターン者の移住により、小学校は2009年4月に9年振りに、中学校も2011年に再開[4])。校内に150人一週間分の食料備蓄を含む防災資機材庫を整備、2015年10月から運用予定[1]
  • 水道 - 島内に簡易水道を引いている。貯水池の整備と浄水場の数度の増槽により、渇水が当たり前だった時期に比べると供給量には余裕がある。トリハロメタンを除去する高度処理設備を導入したため、水質も向上した。
  • 電気 - 勝浦に東北電力飛島火力発電所があり、ここで島の電気を賄っている。重油を燃料とし、650kwの発電能力がある。
  • 医療機関 - 日本海総合病院酒田医療センター飛島診療所があり、急患はヘリコプターで同医療センターに搬送される。基本的に山形空港から山形県消防防災航空隊が飛んでくるが、時宜により山形県警察航空隊、海上保安庁新潟航空基地所属ヘリ、近傍派遣により新潟県消防防災航空隊ヘリが派遣されることもある。航空機が出動できない場合は、海上保安庁酒田海上保安部の巡視船艇が出動し、急患輸送を行う。
  • 金融機関 - 島内に銀行等の金融機関は存在しないが、飛島郵便局ATMを利用できる(ただし、ゆうちょ銀行以外のキャッシュカードでの入出金は所定の手数料がかかる金融機関が多い。また2010年4月の時点でホリデーサービスは実施されていない)。
  • 商店 - 勝浦に雑貨店・食堂・釣具店などがある。
  • 宿泊施設 - 旅館民宿は21軒
  • 電話 - 通じている。NTT酒田ビルから無線伝送を行い、島内の無線中継所から有線回線でサービス。
  • 携帯電話 - NTTドコモauSoftBank 3Gの携帯電話が使える。ウィルコムイー・モバイルは使用できない。
  • 放送 - 山形県の放送局は全て受信可能(鶴岡市高館山から)。隣県(秋田、新潟)の放送もほとんどの場所で受信可能。
  • 宅配便 - 各社とも荷物の受付は行っており、宛先は島内の住所で届くが、配送員による島内各戸への配達は行っていない。宅配便業者による配達は酒田港までであり、荷物は船で運ばれた後、飛島港預かりになる。港の荷捌業者から連絡を受けた島民が港まで取りに来る方式である。そのため、島民は通信販売の商品代引が受けられない。一方、郵便局員が配達を行っているゆうパックは本土と同じサービスが受けられる為、一部通信販売業者は、通常とは別料金になることをことわった上で、ゆうパックによる配送を行っている。
  • ガソリンスタンド - 無し。漁船や火力発電所に給油するために給油船が来航する。
  • ごみ・し尿 - 島外に搬出。島内に回収業者があり、定期的に回収船で酒田港に輸送。
  • 選挙 - 交通の便の問題から、選挙期間中に候補者が来島することは殆んど無い。投票は投票日の3日前までに終了し、2日前に、選挙管理員によりとびしまで酒田港に運ばれ、開票まで酒田市選挙管理委員会で封印される。投票箱の輸送の様子は、選挙のたびに地元ニュースで紹介されている。

名所

  • テキ穴遺跡 - 1964年(昭和39年)に平安時代の人骨と土器類が発見された洞窟遺跡。開口部は幅、高さ共に1.5メートルほどであるが、3つの洞により構成され、人骨や土器類が発見された第3洞は奥行きが23メートル、天井部の高いところで4メートル、幅広いところで5メートルある。報告書に拠れば、人骨は22体分あり、共に出土した土器類から9~10世紀の年代が考えられる。
  • 源氏盛・平家盛 - 源氏平家落ち武者が島に流れ着き、漁師となった際に刀剣を埋めたという伝承の塚。
  • 刻線刻画石
  • 賽の河原

名産品

出身者

飛島にゆかりのある人物

関連項目

脚注

外部リンク