巡視船
巡視船(じゅんしせん)は、広義では、国土交通省の外局である海上保安庁が所有する、海上における法令の励行、海難救助、海洋汚染及び海上災害の防止、海上における犯罪の予防及び鎮圧、海上における犯人の捜査及び逮捕、その他海上の安全の確保に関する事務に従事する船舶のことであり、狭義ではこの内の大型船舶のこと(小型船舶は「巡視艇」と呼称する)。
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[編集] 任務と能力
巡視船が海上警備の任務を遂行するためには、巡視船に、十分な速力、航続力、探知能力、指揮・通信能力、適切な武装/装備が必要である。また、海難救助の任務を遂行するためには、荒れた海でも活動可能な良好な航洋性、ヘリコプターによる迅速な輸送力、救急救命処置が可能な人員と装備が必要である。 消防活動や海洋汚染対策の任務を遂行するためには、消火機能や油防除などの特に特別な機能を持った巡視船が必要である。
[編集] 状況
日本では他国の沿岸警備隊とは違い、海上保安庁が軍事組織でないことを法律(海上保安庁法第二十五条)で明示しており、巡視船は軍艦ではなく、乗員も軍人ではない。このため海上保安庁の船舶は「"艦"艇」ではなく「"船"艇」と呼称される。「巡視船」は警備救難業務で使用される海上保安庁の船舶を総称する語句として使われる場合もあるが、海上保安庁では比較的大型の船舶を「巡視船」、小型の船舶を「巡視艇」と正式に区分している。
かつて、アメリカ海軍の艦艇の分類では1500トン以上で20ノット以上の速力を有するならば「FF:フリゲート」に分類され、20ノット以下であれば「PS:哨戒艦」に分類されていた。海上保安庁はGHQの指示を受け、巡視船が軍事用ではないと明示するため最高速力を20ノットに制限していたため、新型船舶への代替が始まる昭和50年頃まで高速巡視船を保有することができず、不審船、密漁船、密航船、密輸者の追跡は能力的に不可能であった。現在では高速巡視船を増強し検挙を効果的に行うことができるようになっている。
また、日本では海上警備行動が発令されない限り軍事組織である海上自衛隊が領海を警備できないという世界的に見ても特異な法体系になっているため、海上保安庁の巡視船にとって領海警備は最重要任務のひとつであり、中国が領有権を主張している尖閣諸島の領海周辺を常時複数隻体制で警備している。
海上保安庁は、特定の知識・技量に特化した救難強化巡視船、潜水指定船、防災巡視船、警備実施強化巡視船、海上環境指定巡視船、鑑識業務指定巡視船、港長業務指定船を指定し能力向上に努めている。また、管区本部独自の指定制度を設けているところもあり、射撃強化巡視船、特捜巡視船、捕捉強化巡視船などがある。
2008年の元旦より、全国の保安部署のPC級以下の巡視艇に限って、「複数クルー制」を実施している。「複数クルー制」とは、ある巡視艇の乗組員が休暇や訓練等のために任務に就くことができなくても、代わりの乗組員が任務に就く制度である。同制度により、巡視艇においては稼働率が向上し、事件・事故の初動への対応が容易となった。
[編集] 型式
詳細は各型の記事及び海上保安庁船艇一覧を参照のこと。
- PLH型
PLH型(Patrol Vessel Large With Helicopter、ヘリコプター付大型巡視船)は700トン型以上の巡視船。遠方海域での捜索救難を目的に建造されており、今日では警備救難現場海域での指揮・宿泊・空輸等総合拠点的任務を行なうことが多い。各管区海上保安本部に1 - 2隻ずつ配備され、搭載ヘリはベル 212(重量約5.0t)または、AS332L1(重量約8.6t)である。現在13隻。
- ヘリコプター1機搭載型
- ヘリコプター2機搭載型
- PL型
PL型(Patrol Vessel Large)は700トン型以上の大型巡視船。近年、ヘリとの連携強化、部隊の迅速移動等が要求される事案が多いことから、ヘリ甲板を設けた巡視船が増えつつある。現在主力のしれとこ型の多くが1978年 - 1982年に建造されたため、30年近く経過している船が多く、今後ははてるま型と新1000トン型により順次更新されていく見通し。現在38隻。
- 3500トン型
- いず(PL31):災害対応型、救難強化指定船に指定されている。
- 3000トン型
- 2000トン型
- ひだ型(PL51-53):九州南西海域工作船事件を受けて建造されたヘリ甲板付高速高機能大型巡視船。
- 1000トン型
- PM型
PM型(Patrol Vessel Medium)は350トン型以上の中型巡視船。500トン型、特350トン型、350トン型がある。現在38隻
- PS型
PS型(Patrol Vessel Small)は350トン型以下の小型巡視船。高速特殊警備船(つるぎ型、220トン)、180トン型、特130トン型がある。現在27隻
- 180トン型
- 特130トン型
- 高速特殊警備船
- つるぎ型 (PS201-206)
[編集] 船名の由来
基本的に下記の原則に基づいて、配備された地域に関係深い名前がつけられる。船名は、平仮名表記であるが、漢字表記へ変更する要望も出されている。例としては巡視船「やしま」が八島なのか屋島か分からない事例がある。また、海上自衛隊の護衛艦と共通する船名は、採用されないようになりつつある。
- PLH ヘリ2機搭載型 - 日本の旧国名
- PLH ヘリ1機搭載型 - 海峡・水道・山等
- PL型 - 半島・岬・湾・島等
- PM型 - 河川・島
- PS型 - 山
ただし建造時の社会情勢により原則どおりでない場合もある。また配属替えに伴い船名の変更がある。
[編集] 船体表示
従来白色船体に黒字船名、煙突は濃紺に白色コンパスマークのみであったが、1984年「Sマーク」が採用され、 船首付近に記載されることになった。また、2000年に英文名称が「Japanese Maritime Safety Agency」から「JAPAN COAST GUARD」に変更されたのを機に船体中央付近に記載されるようになった。また、船名も黒字から 濃紺字に変更された。
[編集] 出演作品
[編集] 他国の巡視船に相当する船舶
日本以外の国では、洋上で警備・救難活動を行なう艦船については、大小にかかわらず、一括して哨戒艦艇(OPV: Offshore Patrol Vessel)と称される。
[編集] アメリカ
アメリカ沿岸警備隊では、日本の巡視船あるいは巡視艇に相当するものを「カッター」と称している。
外洋で使用される長距離カッター(WHEC)および中距離カッター(WMEC)は、海上保安庁の大型巡視船(PL/PLH)に相当するものであり、長距離カッターとしてはハミルトン級カッターおよびバーソルフ級カッター、中距離カッターとしてはリライアンス級カッターおよびベア級カッターが運用されている。これらは、海上保安庁の大型巡視船よりも大口径の砲および電子装備を搭載しており、やや重武装である。ただし、冷戦中に装備していた魚雷やミサイルなどの重装備は撤去された。
やや小型の即応カッター(FRP)であるセンチネル型カッターは、海上保安庁の中型巡視船(PM)ないし小型巡視船(PS)にほぼ相当するもので、武装もほぼ同程度である。
一方、近海で使用される比較的小型のカッター(WPB: Patrol Boat)は、おおむね巡視艇に相当する。
[編集] ロシア
ロシアにおいては、準軍事組織であるロシア国境軍(ПВ)が国境警備隊および沿岸警備隊の業務を実施しており、洋上での警備救難用に国境警備艦(ПСКР)を保有している。ロシア国境軍でもっとも大型の国境警備艦である11351型国境警備艦は、100ミリ艦砲や個艦防空ミサイル、魚雷や対潜ロケット弾など、海上自衛隊の乙型護衛艦(DE)を凌ぐ重武装を備えていることから、NATOコードネームでは軍艦と見なされてフリゲートと称されている。
[編集] 中国
中華人民共和国には複数の海事組織があり、日本の海上保安庁や各国の沿岸警備隊が担っている任務を複数の機関が分担して所掌している。
最も沿岸警備隊的性格を有するのは公安部辺防管理局(Border Control Department of Ministry of Public Safety)が所管する中国公安辺防海警部隊(CHINA COAST GUARD、略称「中国海警」)であり、主に海上警備のみを担当し、中国国内の分類で武装警察の一つとされ国際的にも準軍事組織として通っている。隊員の制服は迷彩色で、中国人民解放軍海軍の江滬型フリゲートの改装型などの武装した巡視船を運用している。船体表示は「中国海警」である。
交通部海事局(MSA)は捜索救助、海洋汚染への対応、水路業務などを担当しており、基本的に非武装である。所有巡視船の船体表示は「海巡」である。また交通部には捜索救助を専門とする救助打捞(救助サルベージ)局が存在する。所有船舶の船体表示は「中国救助」である。
国土資源部国家海洋局が所管する海監総隊は海洋鉱物資源を担当しており、所有船舶の船体表示は「海監」である。
農業部漁業局は漁業資源を担当しており、所有船舶の船体表示は「漁政」である。これは日本の水産庁の漁業取り締まり船に相当する。
このうち「海監」と「漁政」は正確には巡視船とはいえないが、尖閣諸島や南沙諸島や西沙諸島周辺海域を徘徊することで、当該海域の主権を主張し海洋権益を獲得する巡視船的役割を担っており、尖閣諸島中国漁船衝突事件では海上保安庁の巡視船と対峙して日本の報道で頻繁に登場した。
[編集] 関連項目
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