正月

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門松

正月(しょうがつ)は、各暦の年初のことである。文化的には旧年が無事に終わったことと新年を祝う行事である。正月飾りをし、正月行事を行ったり御節料理を食べたりして、盛大に祝う。

日本では、1月1日の元日のみを国民の祝日としているが、少なくとも3日までの三箇日は事実上の祝日となる。

かつての正月は、お盆と同じく、祖先の霊を呼び、慰霊する行事だった。それが次第に分化し、新年のお祝いと、一年の無病息災を願うものに変わっていった。

日本の正月

御節料理
鏡餅
年賀状
2012年新年一般参賀

正月の期間

「正月」とは、本来は旧暦1月の別名である。改暦後は新暦1月を意味する。

現在は「三元日」(さんがにち)または「松の内」という意味で使用することがある。

松の内は元々は1月15日までだったが、現在は1月7日までに短縮している。寛文2年1月6日 (旧暦)、江戸幕府により1月7日 (旧暦)を以ての飾り納めが指示される。最初の通達が江戸の城下に町触として発せられており、それに倣った風習が徐々に関東を中心に広まったと考えられる。幕末の考証家である喜田川守貞は、この時同時に左義長も禁止されていることから、松の内短縮発令の理由をこの火祭りによる火災の予防の一環だとしている。

松の内の明けた1月8日を「正月事始め」と称して、正月準備が始まる。

1月15日を小正月(こしょうがつ)と呼ぶ。小正月に対しては通常の正月(元日)を「大正月」(おおしょうがつ)という。大正月はまた大年(おおどし)、男の正月と呼ぶのに対して、小正月を小年(こどし)、女の正月と言うところもある。

1月20日までを正月とすることもあり、1月20日を「二十日正月」(はつかしょうがつ)と呼ぶ。地方によっては1月30日を「三十日正月」(みそかしょうがつ)という。

正月休み

1月1日は「元日」と命名された国民の祝日である[1]

行政機関は、行政機関の休日に関する法律第1条第1項第3号の規定により、12月29日から1月3日までを休日としており[注釈 1]、一般企業でもこれに準じることが多い。銀行などの金融機関は、銀行法施行令第5条第1項第2号の規定により、12月31日から1月3日までを休日とすることが多く、システムメンテナンスを行うため長くなる事もある。公共交通機関はこの期間中は平日であっても休日ダイヤで運行する傾向にある。

一方、小売業では、1980年代前半までは松の内の頃まで休業していた店が多く、1980年頃まで百貨店スーパーマーケットなどの大型店ですら正月三が日は休業していた。しかし、24時間営業のコンビニエンスストアの登場などの生活様式の変化により、開店日は早くなり、1990年代以降は元日のみ休業し、翌2日から短時間体制での営業を始める店が多い。大型店など店舗によっては、短時間体制ながらも元日も営業することも多くなった。2017年以降、国が推進する「働き方改革」や小売業の慢性的な人手不足を背景に、大手百貨店や飲食チェーンの一部に元日営業を見直す動きも見られるようになった。ほとんどの店舗の場合は4日ごろから平常営業に戻る。

正月の習慣

正月には前年お世話になった人や知人などに年賀状を送る習慣があり、お年玉つき年賀はがきの抽選日までを正月とする習慣も多い。元来は年の初めに「お年始」として家に挨拶に行ったり人が訪れて来たりするはずのものが簡素化されたものとも言える。1990年代末頃から携帯電話が普及して、年賀状でなくメールなどで済まされることが多くなり、スマートフォンの普及においては、SNSでメッセージングすることがある。また、新年最初に会った人とは、「あけましておめでとう」という挨拶が交わされる場合が多い。[注釈 2]これは、英語圏の「ハッピー・ニューイヤー」が主に年末に言われるのとは異なり、新年になってからでなければ言われない。年末に、来年になるまで会わないだろう人とは、「よいお年を」という挨拶がよく交わされる。

かつてはと対応して、半年ごとに先祖を祀る行事であった。しかし、仏教の影響が強くなるにつれ、盆は仏教行事の盂蘭盆会と習合して先祖供養の行事とし、対する正月は年神を迎えてその年の豊作を祈る「神祭り」として位置付けられるようになった。

数え年では1月1日に歳を1つ加えていたことから、正月は無事に歳を重ねられたことを祝うものでもあった。満年齢を使うようになってからはそのような意味合いはなくなっていき、単に年が変わったことを祝う行事となっている。

に服している場合は正月を行わない風習があり、この場合、事前に喪中欠礼の葉書を送った上で、年賀状を送ったり受けたりすることもなくなる。

正月に初詣などの出掛けを行わずただ寝て過ごすことを寝正月と呼ぶ。

正月の儀式

正月の儀式はすべて、死霊のためにある。

華々しいお祝いの行事に見えて、その主役は「霊」である。この霊こそ、新年の始まりに、家々に訪れると言われる「歳神様」だ。地方によって言い伝えはさまざまだが、祖先の霊であるとされるところが多いようだ。

霊すなわち歳神様を迎えるために、家を掃除して清め、飾り立てる。家族や親戚が揃い正装になる。そして歳棚という正月用の神棚に対して祈る。

正月の歴史

シアトル中華街における春節獅子舞

中国の“正月”は太陰暦の1月を指す。

古代ローマでは1年は10か月で Martius が初月、Kalendae Martiae が正月であった。

紀元前713年頃、ヌマ・ポンピリウスにより Ianuarius と Februarius が加えられ、Kalendae Ianuariae が正月になったが、執政官には紀元前153年まで使われなかった。

紀元前45年ガイウス・ユリウス・カエサルユリウス暦を導入、Kalendae Ianuariae が新暦同様、正月になった。

古代のローマ暦の Kalendae Martiae を正月とする暦は、ヴェネツィア共和国1797年まで、ロシア988年 - 15世紀の終わりまで用いられていた。ロシアでは15世紀の終わりから1700年西暦導入まで、9月1日が正月だった。

カトリック教会典礼暦では待降節初日が一年の始まりとされてきた。

フランス共和暦では、秋分を正月とした。

中国では「正月」は太陰暦の1月を指す。日本での正月は中国では「正月初一」または「大年初一」いわゆる春節である。

日本の旧正月

旧暦1月1日立春前後、新暦での2月頃}は旧正月と呼ばれる。中国台湾韓国ベトナムなどでは、新暦の正月よりも旧正月の方が重視され、お年玉もこの日に渡される。中国では「春節」、「過年」、「農暦新年」といい、ベトナムでは「テト」といわれる[2]。テトは「節」という漢字ベトナム語読みに相当する。また、旧暦1月のことを「正月」と呼び、旧正月を「正旦」ともいう。日本でも沖縄県鹿児島県奄美群島などの一部地域には旧正月を祝う地方がある[3]

正月に関する言葉

  • 正月買い
  • 一年の計は元旦にあり
  • 一富士二鷹三茄子

脚注

注釈

  1. ^ 土日は休業日となるため、年によっては12月28日から1月5日、もしくは12月27日から1月4日まで休みとなるケースがある。
  2. ^ ちなみに、正月に家族皆でおせちを食べたり神棚に新年のあいさつをしたりして縁起を担ぐのは、「年の初めに3日間なら3日間、7日間なら7日間縁起の良いことをしていれば、家族はその一年幸運になる」という考えからきている。

出典

  1. ^ 国民の祝日について - 内閣府”. www8.cao.go.jp. 2019年12月16日閲覧。
  2. ^ 日本国語大辞典, デジタル大辞泉,大辞林 第三版,精選版. “テトとは”. コトバンク. 2019年12月16日閲覧。
  3. ^ 沖縄県民が今も「旧暦」を使い続ける歴史背景 | 読書”. 東洋経済オンライン (2019年2月20日). 2019年12月16日閲覧。

参考文献

火田, 博文 (2019). 本当は怖い日本のしきたり オーディオブック. Pan roringu (Hatsubai). http://worldcat.org/oclc/1108314699 

関連項目