尿路結石

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尿路結石
尿路結石の一例(腎結石)
概要
診療科 泌尿器科学, 腎臓学
分類および外部参照情報
ICD-10 N20.0
ICD-9-CM 592.0
DiseasesDB 11346
MedlinePlus 000458
eMedicine med/1600
Patient UK 尿路結石
MeSH D007669

尿路結石(にょうろけっせき)は、尿路系に沈着する結晶、もしくは、その石が詰まってしまう症状。

分類

部位による分類

日本人の場合、95%以上は腎結石または尿管結石である。

成分による分類

治療

尿路結石は、発症すると激痛を伴うことが多いので早急な対処が求められる。また、5mm以下の尿管結石では結石が尿管を通過するとそれまでの激痛が急激に消失する。検査で尿管結石が疑われた場合は、鎮痛剤や利尿剤を用いて自然排出されるまで経過観察することもある。

薬物療法

5mm以下の尿管結石が疑われる場合には、排石剤のウラジロガシエキス(日本新薬のウロカルン)、鎮痛剤のチキジウム臭化物(アボットジャパンのチアトンカプセル他、ジェネリック品あり)が投与される事がある。また尿をアルカリ性にして排石を促すために、ウラリット錠が処方されることもある。結石が5mm以上で自然排出が期待できない場合には有効な薬剤は存在しない。近年海外のガイドライン(EAU,AUA)に準じてα1ブロッカー(保険適応外使用。前立腺肥大症の排尿困難に用いられる薬剤)が使用される例も増えてきている。

薬草療法(古代イスラム医学)

アボカドの生葉を数枚入れたカップに湯を注ぎ、5分後にそのまま飲用する習慣を長期続ける事で、尿管結石を縮小・消滅させる民間療法がトルコに根付いている。[1]

体外衝撃波結石破砕術

体外衝撃波結石破砕術(ESWL)は、最も負担の少ない治療法の一つである。体外の装置によって造られた衝撃波(音波の一種)を結石にむけて集中させて結石を砕き、砂状にして尿と一緒に体外へと排出させる治療法である。その原理は、衝撃波を楕円の1つの焦点(体外)から発生させて、それを楕円状の反射鏡で収束させ、もう1つの焦点(破砕部位)を対象となる結石に合わせて、周囲との物質の音響インピーダンスの差[尿(液体)と結石(固体)の音の伝わり方の差]を利用して破砕するものである。

ドイツのドルニエ社によって1980年代に初めて製品化され、その後破砕装置が一般化したことにより患者の負担が大いに軽減された。一回は約30分~60分の治療時間で複数回行うこともあるが、体をメスで切らないで治療できる。日本では、1984年9月に、札幌市にある 三樹会病院で、丹田均らにより初めてESWL装置が導入され、治療が開始された。ESWL本邦第一号機であるドルニエ社HM-3は、三樹会病院に現存している。

膀胱尿管に尿を溜めて衝撃波を加えた方が効果的である。また、周辺の消化器にガスが溜まっていたり、肥満など脂肪によって衝撃が緩和され効果が下がる事もある。衝撃波を加えた直後には血尿が排泄されるが心配は無い。3~4日の入院が必要になる事もあるが、結石の種類や大きさによっては、一泊入院や日帰りでの体外衝撃波結石破砕術を行っている医療機関もあり、この治療方法の更なる普及が望まれている。この際、ガーゼ等で覆った蓄尿瓶を使って結石排出の有無を確認する。

現在この治療には健康保険が適用される。しかし費用は3割負担の場合でも8万円前後はかかり、また一箇所の結石破砕を何回行っても一回分の点数請求しかできない。また、保険会社によっては、当該手術を保険金支払除外手術としている所もある。

経尿道的尿管砕石術

経尿道的尿管砕石術(TUL)は、結石が比較的大きいために体外衝撃波結石破砕術(ESWL)では治療困難な場合などに行なわれる治療である。全身麻酔または脊椎麻酔下にて、尿道口から結石の直下までのワイヤーを留置し、そのワイヤーに沿って尿管鏡を挿入する。尿管鏡で結石を確認しながら、結石を鉗子衝撃波レーザーなどを用いて細かく破砕する。

手術療法

体外衝撃波結石破砕術登場以後は、その件数は激減している。

再発予防

食事に気をつけることで再発を予防することができる[2]クエン酸は尿をアルカリ性のほうへ傾け結石を溶けやすくさせるが、クエン酸を多く含む野菜や果物を増やすことは、同時に結石形成を促進するシュウ酸の摂取過剰となってしまう可能性があるため、以下の方法のほうが理にかなっている(ただし結石患者の緑黄色野菜の摂取量は不足傾向である)[2]

  • カルシウムを適度に摂取する(サプリメント等でも用法・容量を守り、決して過剰摂取しない)。
ビタミンCも代謝産物はシュウ酸であり、月余に渡る過剰摂取は結石のリスクを高める。
  • 炭水化物穀物を主として摂取し、尿中に排泄されるカルシウムの量を減らすため砂糖の過剰摂取は控える[2]
  • 動物性蛋白質、塩分を控えめにし尿中に排泄されるカルシウムの量を減らす[2]

またシュウ酸の摂取を控えめにすることで結石の主要成分であるシュウ酸カルシウムができるのを防ぐ。

腎臓・膀胱・尿路の結石については、再発防止には食事制限を伴う都合、体重管理について極めて困難な管理を伴う。このため、たとえばプロスポーツではプロボクシング競馬競艇などの様に厳しい体重制限と減量が付いて回る種目の場合、食事制限と減量の両立が困難になることで体重維持も極めて無理を伴う様になり、最終的に職業生命にも関わってくる場合がある[3]。同様に、体重に選手生命に致命的な問題がないスポーツでも、治療の制約が体重増加や体調変化の原因となり、選手活動の全盛期が終わってしまうということが起きてくる。

結石の核は微生物か

微生物が尿路結石の核となりうるかどうか、現在議論がある。その始まりは、1998年フィンランドの研究者らによって、ヒトの腎臓結石から「ナノバクテリア」と名付けた細菌を分離したという発表がされてからである。つづいて、2004年4月に、岡山大泌尿器科の教授と共同研究員らは、ヒトの尿路結石の中に、燐灰石(リン酸カルシウム)の殻を持つ微生物の存在を確認したと、発表した。これは、先のフィンランドの研究者らがおこなった実験を踏襲したものであり、再実験であった。議論になっていることは、実験手法についてや、微生物がいたから、それが結石の核になったかということである。

しかし、2008年、岡山大学の公文祐巳教授らは尿路結石などの原因となる微生物として注目を集めてきた物体の正体が実は生物ではないと結論づけた。この物体は大きさが数10ナノメートル~数百ナノメートルと小さく、本当に生物かどうか論争が続いていた。公文教授は尿路結石をすりつぶして血清で培養。培養液の殺菌に使うガンマ線を当てたところ、10ナノメートルぐらいの核となる部分に脂質が酸化して積み重なり、あたかも生物が自己増殖するように振る舞った。DNAは見つからなかった。

脚注

  1. ^ ドキュメンタリー「神秘の東洋医学」シリーズ 第5回『イスラム(前編)』(ヒストリーチャンネル
  2. ^ a b c d 再発予防ガイドライン」『尿路結石症診療ガイドライン 改訂版(2004年版)』、平成15-16年度厚生労働科学研究医療技術評価総合研究事業。(Minds 医療情報サービス
  3. ^ たとえば、JRA所属の元騎手である橋本広喜のケースなど。

関連

外部リンク


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