マイライン

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マイラインとはNTT東日本またはNTT西日本の一般固定電話において、電話番号の前に事業者識別番号を付けなくても利用者が使いたい通信事業者を優先的に使えるようにするサービスである。

アメリカでの状況

アメリカではかつて国内電話事業を独占的に行い世界最大規模へ肥大化していたベル電話会社の後継であるAT&Tが独占市場による解体で地域ベル電話会社と長距離電話のAT&Tへ分割される際に、MCIワールドコムなど新興の長距離通信事業者(日本の新電電相当)と分割後のAT&Tの間で電話番号の前の識別番号を付加する必要の有無で不公平を与えさせないため1984年に事業者事前登録制度が導入された。

他国での状況

各国の導入年[1]

マイライン導入時の背景

日本では1980年代新電電が市外電話分野に参入し、旧NTTと通話料に対して価格競争が行われてきた。しかしLCRを付けていない固定電話回線で新電電を利用する場合、00XXなどの新電電事業者識別番号を電話番号の前に付け加えなければNTT網で接続されることとなる。1999年7月の東西NTT・NTTコムへの固定通信事業分社化後も、0033などのNTTグループ識別番号を付け加えなくても従来通りNTT網に接続される事(優先接続)で消費者の通信事業者選択の上での弊害とされた。このため、1984年にアメリカを皮切りに諸外国で開始された優先接続制度を参考にNTT優先接続を是正させ固定通信事業者間での競争を促す目的で1998年3月に郵政省で「優先接続に関する研究会」が設置され、10月に制度導入が望ましい答申を発表。「優先接続導入準備委員会」が設置された。NTTと電気通信事業協会における協議を経て、2000年3月に固定電話回線を提供する東西NTTが運営主体となる事や2001年5月に通信事業者選択(優先接続)サービスを開始させることが最終的に策定された。2000年4月にNTT東日本を幹事として電気通信事業協会が運営する「優先接続関係事業者連絡会」が発足し、電器店や東西NTTのDMリーフレット配布などで徐々にマイラインに関する周知がなされるようになる。

なお、1998年国際電話の事業者自由化や1999年のNTT分社化に加わった形で進められた郵政省の規制緩和政策により黒船と言われるような海外の通信事業者の新規参入も予想されたが、ドイツテレコムのみに留まっている。

概略

電話をかける際、明示的に通信事業者を指定しなかった場合に使用される通信事業者を予め登録するもの。2001年5月1日開始。マイライン(プラス)登録後は国内について通常のダイヤル操作を行うと登録した通信事業者の回線を使用し、国際電話は010-国番号-相手先国内番号の操作を行うことで登録通信事業者の回線を経由する。

登録以外の通信事業者にでも電話番号の頭に他の事業者コードを付ければ簡単に切り替えることのできる「マイライン」と、通信事業者を特定の一社に固定してしまう「マイラインプラス」の2種類がある。「マイラインプラス」でも頭に識別番号「122」と事業者コードを付ければ、登録以外の通信事業者を利用しての通話が可能である。

サービス開始当時に明示的に申し込みがなかった回線については市内と県内市外への通話は地域によりNTT東日本またはNTT西日本、県外への通話はNTTコミュニケーションズが自動的に「マイライン」で登録される。「マイラインプラス」での登録を希望する場合は、申し込みが必要である。

国際電話には国内電話のようにNTTグループへの暗黙的な接続制度はなく事業者識別番号のダイヤルまたは「マイライン」の登録、あるいは「マイラインプラス」の登録のいずれかが必要となる。通信事業者を指定して通話するには事業者識別番号-010-国番号-相手先国内番号のダイヤル操作となる。

しかし、実際には通信事業者のユーザー囲い込み用の営業ツール[2]として利用されている面が大きい。かつて利用に登録が必要であったNTTグループ以外の他社に以前登録のために提出されたデータを元にした「マイラインプラス」が勝手に登録されていたケース[3]や「マイラインプラス」で4区分全て民間の通信事業者を登録した後、海外に転勤となりNTTの固定電話を利用休止し帰国後、NTTの固定電話を利用再開したら「マイラインプラス」が4区分全てNTTグループに勝手に変更されていたケースもあり苦情がたえない。

当初の受け付けを開始した2001年1月10日から9月30日まではマイラインやマイラインプラス共に登録や事業者の変更手続き(再登録)は無料であったが、10月1日より840円(税込)の登録変更手数料がかかるように制度化された(2014年4月より税込864円)。手数料は、サービス提供者であるNTT東日本またはNTT西日本からの請求となる。4区分のうち、1区分のみを登録済みの通信事業者を変更したりマイラインをマイラインプラスに変えたりするだけでも一律840円(税込)の登録変更手数料がかかる(2014年4月より税込864円)。

通話区分

通話区分は市内、同一都道府県内の市外(県内市外)、他都道府県(県外)、国際の4区分である。なお、ここでいう市(町村)および都道府県の区分はそれぞれNTT東日本またはNTT西日本が料金区域 (MA) および事業地域として設定している市町村および都道府県の区分であり、それぞれ行政上の市町村および都道府県とは一部異なる地域がある。例としては次のようなものがある。

対象外

  • 110警察)、118海上保安庁)、119消防)、117(時報)、0120(フリーダイヤル)、0570(ナビダイヤル)、0990(ダイヤルQ2)、0180(テレゴングテレドーム、データドーム)、0170(伝言ダイヤル)などの特殊な番号への通話、携帯電話PHSへの通話、公衆電話からの通話は対象外である。特殊番号への通話については、常にNTTグループが利用される。
  • 携帯電話への通話については通常通りにダイヤルすると携帯電話オペレータが設定した通話料金がかかるが、一部の固定電話キャリアが割安な中継サービスを開始した。ただし、携帯電話への通話については「マイライン」や「マイラインプラス」の登録対象となっていないので中継サービスを利用する際は
    00xx(事業者識別番号)-090-yyyy-zzzz
    00xx(事業者識別番号)-080-yyyy-zzzz
    00xx(事業者識別番号)-070-yyyy-zzzz
    とダイヤルする必要がある。
    • 携帯電話宛であっても、ひかり電話回線の場合はこの事業者識別番号をつけた通話は不可だが、NTT東日本地域のひかり電話から掛けた場合の通話料は、加入電話で0036をつけた場合と同額に設定されている。
    • 2013年11月1日より、070から始まる携帯電話[4]も対象となった。同じ070でもPHS[5]については、事業者により対応が分かれている(詳細はマイライン参加企業と事業者識別番号参照)[6]
  • LCRが機能しているとマイラインの場合は、マイライン登録通信事業者よりもLCRが選択した通信事業者が優先される。マイラインプラスの場合はLCRは解除特番122を付加しないためLCRの影響はないが、マイラインプラス登録通信事業者とLCR装置が選択した通信事業者が違っている場合は電話をかけるたびに毎回「○○○○(登録した通信事業者名)でおつなぎしております」といった内容の音声ガイダンスが流れてから相手先につながる。この音声ガイダンスを流さないようにするにはマイラインプラス登録通信事業者とLCR装置が選択する通信事業者を同じにするか、あるいはLCRをOFFにするかどちらかの対応が必要となる。

NTT以外の直収電話、中継電話および相互接続の問題

マイラインはNTT東日本・NTT西日本が提供する固定電話加入電話INSネット64)回線上から発信する際の中継電話会社の選択サービス(優先接続)であり、直収電話(直加入電話)、0AB-J番号のIP電話およびNTT東西がフレッツ光上で提供するひかり電話とは別物である。直収電話から発信する場合には、マイラインは無関係である。

NTT東日本やNTT西日本の固定電話から発信し直収電話の固定電話に着信できるか否かはNTT東日本やNTT西日本と当該直収電話のサービスを提供している通信事業者との間で、相互接続が行われているか否かに依存する(基本的には、殆ど全ての直収通信事業者と相互接続しているものと考えられる)。ただしNTT東日本やNTT西日本の固定電話から直収電話にかけた場合はNTT東日本やNTT西日本の通話料金割引サービスは一切適用されないので、注意が必要(現在、直収電話から発信して中継電話を経由するようなパターンは存在しないものと思われる)。

050番号のIP電話への接続については現状ではマイライン(優先接続)も中継電話による選択中継制も存在しないため、関係はない。

なお、ひかり電話利用時の国際電話については、グループ会社であるNTTコミュニケーションズではなく、ティー・システムズジャパン経由で提供される。[要出典]

マイライン参加企業と事業者識別番号

電気通信事業者 マイライン区分[7] マイライン
対象外[8]
登録 登録
可能
区域
備考
市内 同一
県内
市外
県外 国際 携帯
PHS
NTTグループ NTTコミュニケーションズ 0033 不要 全国 プラチナ・ライン、世界割などの加入と4区分全てをNTTコミュニケーションズにマイラインプラス登録することを条件に通話料割引を行っている。プラチナ・ライン、世界割の加入のみでマイラインプラス登録をしていない場合は割引は適用されず通常の通話料金が適用される。PHSは2013年11月1日より対応、通話料は一律10円/1通話+10円/1分(税抜)[9][10]
NTT東日本 0036 × 0036 東日本地域 同一県内市外はエリアプラス契約で対象の隣接MA地区が県外の場合のみ、NTTコミュニケーションズの電話回線を利用してサービスを行っている。PHSは2014年10月1日より対応、通話料はひかり電話からPHSに掛ける場合と同一料金[11][12]
NTT西日本 0039 × 0039 西日本地域
NTTぷらら 009191 × 必要 小笠原地区以外の全国 法人契約のみ新規受付
KDDI 0077 001 0077 不要 全国 PiPitを含む全国のトヨタディーラー各店でも新規受付が可能
ソフトバンク ソフトバンク(旧日本テレコム) 0088 0041

0061
0088 国際の0041は新規受付停止。現在は0061で受付
旧ケーブル・アンド・ワイヤレスIDC × 0061

×
× 0061 必要 全国 新規受付停止。当番号は国際電話用へ転用
旧平成電電コミュニケーションズ 0083 00847 新規受付停止
楽天コミュニケーションズ 楽天コミュニケーションズ 0038 必要 全国 県外をマイライン登録、あるいはマイラインプラス登録すると3分8.4円という他社よりも安い市内通話料金で利用可能
東京電話 0081 0082 0081 必要 関東地区と山梨県と静岡県富士川以東(離島を除く) 新規受付停止
九州電話 0086 × 0086 不要 離島と沖縄県を除く九州地区 PHSは2014年10月1日より対応[13]
アルテリア・ネットワークス 0060 必要 18都道府県[14] PHSは2013年11月1日より対応
ドイツテレコム ティー・システムズジャパン × 0080 × 必要 全国 新規受付停止

※個人向け、音声通話モードの場合のみ考慮。法人向けやデータ通信モードについては料金が異なるなど各事業者に確認のこと。

脚注

  1. ^ “マイライン争奪戦NTTを苦しめる値引き合戦の行く末(2001年)”. 東レ経営研究所. (2001-00-00). http://www.jmrlsi.co.jp/membership/premium/scto/case/2001/myline_1.pdf. 
  2. ^ 特定の事業者を「マイラインプラス」登録すると割引サービス等の使用料の一定額割引や無料化、割引サービスの割引率が自動的に5 - 15%アップ、通信事業者がサービス提供しているプロバイダの基本料金割引などの特典がある。
  3. ^ 米国ではスラミングと言う。
  4. ^ 携帯電話の電話番号帯は「090-XXXX」、「080-XXXX」、「070-AXXX」(A=1〜4、7〜9)。
  5. ^ PHSの電話番号帯は「070-AXXX」(A=0・5・6)。
  6. ^ なお、携帯電話に「070-AXXX」(A=1〜4、7〜9) 番号が割り当てられると共に、携帯電話とPHSの間での番号ポータビリティも開始されているため、電話番号だけでは必ずしも判別できない。このためPHSに掛かった場合には特別な呼び出し音が鳴るようになっている。“携帯電話の電話番号への070の追加について”. 総務省. (2013-11-1). http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/top/tel_number/070keitai.html. 
  7. ^ 優先接続。
  8. ^ 選択中継制による中継電話
  9. ^ なお、同一区域内の深夜(23時〜翌8時)のみ、事業者番号無指定の場合“その他の通信料”. Y!mobile. http://www.ymobile.jp/plan/others/tld/charge/index.html. よりも高くなる。
  10. ^ “固定電話から携帯電話へお得に通話できる「0033モバイル」の「070」番号から始まる携帯電話およびPHSへの接続開始について”. NTTコミュニケーションズ. (2013-10-31). http://www.ntt.com/release/monthNEWS/detail/20131031.html. 
  11. ^ “固定電話からPHSへの通話サービスの提供開始について”. NTT東日本. (2014-9-1). https://www.ntt-east.co.jp/release/detail/20140901_01.html. 
  12. ^ “固定電話からPHSへの通話サービスの提供開始について”. NTT西日本. (2014-9-1). https://www.ntt-west.co.jp/news/1409/140901a.html. 
  13. ^ “0086deケータイ”. 九州電話. http://www.qtnet.co.jp/denwa/0086_de_keitai.html. 
  14. ^ 北海道(札幌、千歳、夕張、栗山、芦別、滝川、岩見沢、当別、石狩、小樽、余市、岩内、倶知安、寿都、伊達、室蘭、苫小牧、早来、鵡川、門別富川、浦河、静内、えりも地域)、宮城県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都(離島を除く)、神奈川県、愛知県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、広島県、福岡県。

関連項目

外部リンク