ブナ

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ブナ
ブナ (奥志賀 2007年8月撮影)
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
: ブナ目 Fagales
: ブナ科 Fagaceae
: ブナ属 Fagus
: ブナ F. crenata
学名
Fagus crenata Blume
シノニム

F. sieboldii
F. ferruginea

和名
ブナ
英名
Japanese Beech
イヌブナの黄葉 (丹沢三峰 2006年10月撮影)

ブナ山毛欅、学名: Fagus crenata)は、ブナ科ブナ属。落葉広葉樹で、温帯落葉広葉樹林の主要構成種。

中国語で「山毛欅」とは、本種ではなく中国ブナの一種を指す。「橅」は近年作られた日本文字で、一般に(日本)ブナの意味に使われている。「椈」も中国ではブナの意味は全く無く、の意味ならあるが、日本ではブナの意味に使われる事がある。

木材としてはビーチと呼ぶ。

特徴

温帯域に生育する落葉高木。大きいものは高さ30mにも達するものがある。樹皮は灰白色できめが細かく、よく地衣類などが着いて、独特の模様のように見える。葉は楕円形で、薄くてやや固め、縁は波打っていて、鋸歯と言うよりは葉脈のところで少しくぼんでいる感じになる。冬芽は褐色の鱗片に包まれ、茎が伸びた後もそれがぶら下がっている。

雌雄同株で、花は春につく。雄花は枝先からぶら下がった柄の先に数個着いて、全体としては房状になる。雌花は枝先からしっかりした柄の先につく。果実は総苞片に包まれて成熟し、それが割れて散布される。シイの実の表面を少しトゲトゲさせた感じである。出てきた果実は、断面が三角の痩せた小さなドングリといったところ。しかしながら、中の胚乳は渋みがなく脂肪分も豊富で美味であり、生のままで食べることもできる。なお、ブナの古名を「そばのき」、ブナの果実を「そばぐり」というのは、果実にソバ(稜角の意の古語)がある木、ソバのあるの意である。タデ科の作物ソバ(蕎麦)の古名を「そばむぎ」といったのと同様である。

ブナは生長するにしたがって、根から毒素を出していく。そのため、一定の範囲に一番元気なブナだけが残り、残りのブナは衰弱して枯れてしまう。ところが、一定の範囲に2本のブナが双子のように生えている場合がある。これは、一つの実の中に2つある同一の遺伝子を持った種から生長したブナである。

生育

日本では、低山の照葉樹林帯と、亜高山の針葉樹林帯の間にはブナ林が成立する。雪が多い日本海側の山地と、奥羽山脈の背稜近くでは、純林に近いブナ林が広範囲に広がっていたが、戦後大規模に伐採されてしまった。世界遺産に登録された白神山地のブナ林は、保護運動の抵抗により、まとまった天然林としては最後に残ったところである。太平洋側に降りると純林はあまり見られず、ミズナラなど他樹種との混交林をつくる。

本州中部では、ほぼ標高1000mから1500mまでの地域がブナ林となる。日本北限のブナ林は、一般的には北海道黒松内町のものが有名であるが、実は最北限のブナ林は隣町の寿都町にある。一方、南限のブナ林は鹿児島県高隈山にある。

白神山地以外の広範囲のブナ林としては、岐阜・石川・福井・富山にまたがる白山麓、福島県只見町周辺に、広大なブナ林を見る事が出来る。(坪田和人著、「ブナの山旅」「続・ブナの山旅」による)

ブナの果実は多くの哺乳類の餌として重要である。2003年ツキノワグマが多数里に出てきたことで知られるが、この年はブナの不作の年でもあった。

しかしブナは基本的に毎年不作であり、5~10年に一度豊作になるだけである。さらに、ブナがより不作だった2004年には出没例は2003年より少なく、全国的に過去に例がないほどのブナの豊作となった2005年にはクマの出没が増加した地域と減少した地域があった。以上から、ツキノワグマの出没とブナの豊不作は必ずしも相関が無いとの説もある。

用途

腐りやすい上に加工後に曲がって狂いやすい性質があり、20世紀の後葉まで用材としては好まれなかったが、薪炭材のほか、下等品のための需要はあった。平安時代後期から鎌倉・室町時代にかけては、上質のケヤキにかわるものとして、漆器の椀・皿の普及品の材料として欠かせないものであった[1]

加工需要が増えたのは、薬品処理と合板の出現のおかげである。それでも木材としては価値が低くみられ、日本ではブナの伐採後にスギが植えられてブナ林が縮小した。ただ、曲げに適しているため、家具の脚に好まれる。

家具材(主に脚物家具)、スキー板、ベニヤ材、玩具材、楽器の鍵盤、ブラシなど。

市町村の木に指定している自治体

近縁種

画像

脚注

  1. ^ 四柳嘉章『漆の文化史』(岩波書店、2009年、ISBN 978-4-00-431223-9)120頁。

関連項目

外部リンク