Unreal Engine

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Unreal Engine
開発元 Epic Games
初版 UE1: 1998年5月 (25年前) (1998-05)
UE2: 2001年1月 (23年前) (2001-01)
UE3: 2004年3月 (20年前) (2004-03)
UDK: 2009年11月 (14年前) (2009-11)
UE4: 2012年5月 (11年前) (2012-05)
最新版
Unreal Engine 4.10 / 2015年11月11日
プログラミング
言語
C++, C#, UnrealScript, HLSL, GLSL, Cg
対応OS クロスプラットホーム
対応言語 英語
種別 ゲームエンジン
ライセンス プロプライエタリ - UDK 非商用使用に限り無料[1][2]
公式サイト www.unrealengine.com
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Unreal Engine(アンリアルエンジン)は、Epic Gamesより開発されたゲームエンジンである。1998年ファーストパーソン・シューティングゲーム (FPS) である『Unreal』で初めて実装された。

特徴

Unreal Engineはエピックゲームズが自社で開発した『Unreal』、『Unreal Tournament』シリーズ、『Gears of War』シリーズおよび『Infinity Blade』はもちろんの事、同業他社が開発した『レインボーシックス』シリーズ(3以降)、『レッドスティール』、『バイオショック』および『ミラーズエッジ』など多くのゲームで採用された。主にFPS向けに開発されたが、TPSの『スプリンターセルシリーズ』やMMORPGの『Vanguard: Saga of Heroes』、アクションゲームの『バットマン アーカム・アサイラム』や『アスラズ ラース』、ロールプレイングゲームロストオデッセイ』『ラストレムナント』、アクションアドベンチャーゲームの『SILENT HILL: DOWNPOUR』など様々なジャンルで使用され、成功を収めている。

Unreal Engineのコア部分はC++で記述されている。Unreal Engineは高レベルの移植性という特徴があり、PC/AT互換機 (Microsoft Windows, Linux)、Macintosh (Mac OS, Mac OS X)、iOS、および多くのゲーム機ドリームキャストXboxXbox 360PlayStation 2PlayStation 3ニンテンドーゲームキューブWii)をサポートしている。

多くのゲームコードはC++やプロプライエタリなスクリプト言語であるUnrealScriptで記述され、ゲームの大部分はエンジン内部を深く探求せずに改良することができる。加えて、他のミドルウェアと共に使用するとき、コンテント作成においてゲームデザイナーとアーティストの両方を支援する様々なツールも提供している。

バージョン

Unreal Engine 1

1998年に誕生し、第1世代Unreal Engineはレンダリング、コリジョン探索、AI、グラフィック、ネットワーク、ファイルシステム管理を1つの完全なエンジンに統合した。統合レベルの使用に応じて、いくつかのトレードオフはその時に使用できるハードウェアで性能を維持するために必要である。例えば、Epic Gamesはプレイできるフレームレートを維持するために円柱コリジョン探索を使用することに決定した。Epic Gamesはこのエンジンを『Unreal』と『Unreal Tournament』に使用した。

Unreal Engine 2

Killing Floor - Unreal Engine 2.

第2世代Unreal Engineは『Unreal Tournament 2003』向けに開発された。このエンジンはコアコードとレンダリングエンジンがUnrealEd 3によって完全に書き換えられた。また、『Unreal Tournament 2004』の乗り物を強化したKarma physics SDKも統合した。他の多くの要素も更新、改良されPlayStation 2、ニンテンドー ゲームキューブ、およびXboxをサポートした。UE2Xと呼ばれるUE2の特別バージョン(『Unreal Championship 2』で使用)はXboxに最適化された仕様が特徴である。またこのエンジンはUnrealの後継である『Unreal II The Awaking』にも使用されている(バージョンは『UT2003』のものと同等)。

Unreal Engine 3

第3世代であり、今世代のUnreal Engine 3 (UE3) はDirectX(Windows、Xbox 360のバージョン9-11)に準拠している。同様にPlayStation 3やMac OS X、Linux、そしてiOSAndroidAdobe Flash Player 11のStage 3D、PlayStation VitaWii Uなどで使われているOpenGLも使用している[3]。レンダラーはHDRRやパーピクセルライティング、ダイナミックシャドウなどの高度な技術に対応している。また、以前のバージョンで利用できたツールでもビルドでき、Stage 3DのハードウェアアクセラレートAPIを利用しAdobe Flash Player 11に対応し、移植された。エピックゲームズは今バージョンのエンジンを自社のゲームに使った。積極的なライセンス交付を繰り返し、多くの優秀なライセンサーからたくさんの支援を集めた。エピックゲームズはUnreal Engine 3がWindows 8およびWindows RTの両方で動作することを発表した[4]

略歴

エンジンが開発されてから18ヶ月も経過した[5]2004年にUnreal Engine 3のスクリーンショットが公開された[6]。固定関数のパイプラインがいまだにサポートされていたUnreal Engine 2とは違い、Unreal Engine 3は完全にプログラムで制御できるシェーダーハードウェア(DirectX 9の時期にシェーダーモデル3.0を要求していた)を利用するように設計されていた。全ての光源計算が1バーテックス単位の代わりに1ピクセル単位でされた。レンダリングの側ではUnreal Engine 3にはガンマ補正ハイダイナミックレンジレンダラーへの対応も提供されていた。Id TECH4CryENGINEに類似しており、UE3はコンテンツが高/低スペックのどちらでもかけ、ランタイムで整えられるように作られた。ゲームコンテンツを直接設計する前世代との代表的な相違点である。

コンシューマーゲームで初めに発売されたUnreal Engine 3を使用したゲームはGears of Warであり、初めに発売されたPCゲームはRoboBlitzであった。はじめはUnreal Engine 3はWindows、Xbox 360、PlayStation 3のプラットフォームにしか対応していなかったが、その後2010年にAndroidとiOSが追加された(初めのiOSタイトルはInfinity Bladeで、初めのAndroidタイトルはDungeon Defendersだった)。Mac OS Xへの対応は2011年に追加された[7]

以下に、UE3の生涯で特に重要な更新をまとめる:

  • Epic Gamesは2009年のGame Developers Conference (GDC) でUnreal Engine 3になされたいくつかの改善点を発表した。詳細は以下にあげる[8]
  • 2009年12月、エピックゲームズはアップルの第3世代iPod touch上でUE3を動かすデモンストレーションを行った。その際iPhone 3GSにはもちろん、2010年のCESでHP webOSとあかされた未確認のモバイルプラットフォームにも対応していると発言した[9]。これまでにそれはPowerVRのSGXチップで動作するPalmのwebOSやNvidiaのTegraプラットフォーム上のものだと明かされた。
  • 2010年3月、Steamworksがソフトウェアに統合され、ライセンスを受けた[10]
  • 2010年6月、エピックゲームズはEpic Citadel(iOSのデバイス(iPhoneやiPod touch、iPadなどのデバイス)上でUnreal Engine 3動かすテックデモ)を公開した。
  • 2010年6月、E3 2010の間マーク・レイン(Epic Games副社長)はTriOviz for Games Technologyの技術でXbox 360上で動く立体視のGears of War 2のテックデモを展示した。レインは次のようにComputer and Video Gamesにコメントした。「この技術は偉大だ。ただのHDTVで非常にハイエンドな3Dテレビと同じように動くのだから。我々はこれを3Dで再発売しようとは考えていないよ――マイクロソフトがそう望まなければ、ね――だが、その技術を我々のパートナーが作ったゲームで利用できるようにすることはやってみたいと思っている。」[11]
  • 2010年11月、TriOviz for Games Technologyが公式にUnreal Engine 3に統合されることとなり[12][13]、立体視に変換することが容易くできるようになった。莫大な数の新旧のゲームがこのエンジンを用いてPS3やXbox 360用に開発された。
  • 2011年3月現在、Unreal Engine 3はDirectX 11に対応している。Epic Gamesは「サマリアン」と題されたリアルタイムのデモンストレーションビデオでそれのプレゼンテーションを行った[14]。テッセレーションやディスプレースメントマッピング、MSAAを使った高度な髪のレンダリング、MSAAを使った遅延シェーディング、スクリーンスペースサブサーフェイス・スキャタリング、イメージベースドライティング(画像による光源演出)、看板の反射、光沢のある反射、反射した光の陰、ポイント・ライト・リフレクション(街灯やヘッドライトの反射)、ボケ被写界深度などに対応した[15]
  • 2011年7月、Geomericsは彼らのリアルタイム・グローバル・イルミネーションの手法[16]Enlightenが現在Unreal Engine 3に組み込まれ、ライセンスが使用可能であると発表した[17]
  • 2011年11月、エピックゲームズはエンジンの今バージョンからAdobe Flash Playerに対応したと声明を出した[18]
  • 2012年5月、UE3にRealDの立体視技術への対応が追加された[19]

Unreal Development Kit

Unreal Engine 3はモッダーが利用するには完全にオープンな仕様になったが、同時にエンジンのライセンサーはUE3を使って作られたゲームを発売し販売する機能を制限された。けれど、2009年12月、エピックゲームズはUnreal Development Kit (UDK) と呼称される、フリーのUE3のSDKをリリースした。これは一般に広く利用可能である。現在のEULAによれば、ゲームの開発者はEpicに99米ドルの料金と、UDKを利用したゲームまたは商業アプリケーションによる収入が50,000ドルを超えている場合、そこから25%のロイヤリティーを支払うことで自分のゲームを販売することができる[20]。2010年12月のUDKのリリースでiOSゲームの作成機能がサポートされた。2011年12月のリリースの時点で、iOSとMac OS XとWindowsのプラットフォームすべてでUDKで作成されたゲームがサポートされている。

ゲーム以外での使用例

ゲーム産業以外に、UE3は多くの非ゲームのプロジェクトにも採用されている。例えば:

  • ジェイス・ホールアレックス・パルディーのシュールな作品、Chadamを活気づけようと思いコンピュータゲームエンジンUE3を利用した伝統的な映像制作に懸命に取り組んだ[21]
  • 人気のある子供向けテレビ番組レイジータウングリーンスクリーンの前で演技をしている俳優や人形の映像と仮想のセットを合成するときにUE3を使用した[22]
  • 現時点ではβの段階であるアニメーションソフトウェア「Muvizu 3D」はUE3を利用している[23]
  • 2012年3月、FBIはエピックゲームズのUnreal Development Kitにトレーニング用のシミュレーターとして利用する許可を与えた。

Unreal Engine 4

2005年8月18日、Epic Gamesの副社長マーク・レインはUnreal Engine 4が2003年から開発されていることを明らかにした[24]。2008年半ばまで、開発はエピックゲームズの技術ディレクターであり創設者のティム・スウィーニー1人だけで行われていた[25]。このエンジンはPCハードウェアとコンソールの第8世代を主軸に置いている。

2012年2月、マーク・レインは「今年以降、皆さんがUnreal Engine 4を見ればショックを受けるだろう。」といった[26]。Unreal Engine 4は来たる2012年のGame Developers Conferenceで限られた出席者にそのベールを脱ぎ[27]、開発者のアラン・ウィラードがデモンストレーションを行ったエンジンの動画は2012年6月7日にGameTrailers TVを経由し一般に公開された[28][29]。このデモの動画はGeforce GTX 580が取り付けられたPC上で作成され、同じくGeforce GTX 680が取り付けられたPCで動かすことができる[30]

UE4の主要な特徴の一つに事前に光源を計算する必要がなくなるボクセル・コーン・トレーシングを使用したリアルタイムのグローバル・イルミネーションがある[31]。UE4はイテレーションの回数を減らし、C++のコードの直接的にアップデートできるようにするという特徴で新規の開発者を呼び込もうとしている。新しい「Kismet」デバッギングエンジンの特徴は開発者がコードをテスト中に直接映像にできることだ。その後開発者はソースコードに飛び、Visual Studioで編集することができる[32]。ゲーム中の要素はゲーム世界をさらに容易に変化させられるように直接クリックすることができる。これは究極的には技術的アーティストとデザイナーとプログラマーの分水嶺があいまいになるということでもある。このことによってコードの編集が効率化し、ゲームのクリエイター達は同時進行で設定を調節することができるようになるだろう[33]

「『もっと昔のエンジンでは』、武器のダメージとどれくらいの距離だとクリーチャーを殺すことが有効なのかの間の関係を変えたければイテレーションに一両日かかったかもしれない。しかし、毎回ビルドが終わるまで長い間待たなければならないのなら、コンパイルが完了しゲームをプレイしテストできるポイントにいき、テストをしてゲームを終了し変更しコンパイルして…現在までの15分間待っている間、代わりに別のことを話しているだろう。だがそんなことは全部ツールでぱっと手早く終えられるんだから、変更を加えてコンパイルしつつプレイし、それが終わり、男を撃ちそして逃げ、また変更を加えてプレイする…と。イテレーションの時間は15分から30秒にダウンだよ。まあ大体ゲームのプレイしきり方を通して確認するための能力がさらに早まったというわけさ。」[33]

脚注

  1. ^ Unreal Engine Licensing FAQ”. Epic Games. 2009年11月8日閲覧。
  2. ^ UDK Licensing”. Epic Games. 2009年11月8日閲覧。
  3. ^ Unreal Technology”. 2012年11月20日閲覧。
  4. ^ Unreal Engine 3 now on Windows 8 and Windows RT”. 2012年11月20日閲覧。
  5. ^ Unreal Engine 3 Interview”. 2012年11月20日閲覧。
  6. ^ First Look: Unreal Engine 3.0”. 2012年11月20日閲覧。
  7. ^ Unreal Engine 3 comes to Mac OS X, courtesy of September UDK release”. 2012年11月20日閲覧。
  8. ^ Epic Games to show off new Unreal Engine 3 features at GDC”. 2012年11月20日閲覧。
  9. ^ Epic Demonstrates Unreal Engine 3 for the iPod Touch, iPhone 3GS”. 2012年11月20日閲覧。
  10. ^ Steamworks Integration Now Available to Unreal Engine 3 Licensees”. Epic Games (2010年3月11日). 2012年11月20日閲覧。
  11. ^ E3 2010: Epic makes 3D Gears Of War 2 - We've seen it. It's mega. But retail release not planned”. Computer and Video Games (2010年6月17日). 2012年11月20日閲覧。
  12. ^ TriOviz for Games Technology Brings 3D Capabilities to Unreal Engine 3”. Epic Games. 2012年11月20日閲覧。
  13. ^ Epic's Mark Rein goes in-depth with Unreal Engine 3's TriOviz 3D”. Joystiq. 2012年11月20日閲覧。
  14. ^ UDK March 2011 Release”. 2012年11月20日閲覧。
  15. ^ Slide 1” (PDF). 2011年8月2日閲覧。
  16. ^ Geomerics Enlighten”. 2012年11月20日閲覧。
  17. ^ Geomerics Announces New Enlighten Integration with Unreal Engine 3”. 2012年11月20日閲覧。
  18. ^ Unreal Engine 3 Now Works in Flash”. Kotaku. 2012年11月20日閲覧。
  19. ^ RealD Joins Epic Games' Unreal Engine 3 Integrated Partners Program”. 2012年6月13日閲覧。
  20. ^ Licensing - Epic UDK”. 2012年11月20日閲覧。
  21. ^ Hsu, Jeremy (2011年4月13日). “Gaming Software Offers Cheap Alternative to Hollywood Animation Tools”. InnovationNewsDaily. 2012年11月20日閲覧。
  22. ^ Unreal Engine 3 Powers Critical and Commercial Success LazyTown”. Epic Games. 2011年2月8日閲覧。
  23. ^ Muvizu 3D web site”. 2012年11月20日閲覧。
  24. ^ Houlihan, John. “Rein: We've been working on Unreal Engine 4 for two years”. ComputerAndVideoGames.com. Future Publishing Limited. 2005年8月19日閲覧。
  25. ^ Valich, Theo (2008年3月12日). “Tim Sweeney, Part 3: Unreal Engine 4.0 aims at next-gen console war”. TG Daily. Tigervision Media. 2008年3月13日閲覧。
  26. ^ Kevin Parrish (2012年2月11日). “Epic Revealing Unreal Engine 4 Later This Year”. Tom's Hardware. 2012年3月1日閲覧。
  27. ^ Patrick Shaw (2012年2月27日). “Unreal Engine 4 Behind Closed Doors at GDC”. Wired. http://www.wired.com/gamelife/2012/02/unreal-engine-4-gdc/ 2012年3月6日閲覧。 
  28. ^ Samit Sarker (2012年6月8日). “Epic Games debuts Unreal Engine 4”. Destructoid. 2012年6月10日閲覧。
  29. ^ Casey Lynch (2012年6月8日). “Epic’s Unreal Engine 4 ‘Elemental’ Demo Lights Up the Uncanny Valley”. IGN. 2012年6月10日閲覧。
  30. ^ Woo-cheol, Jeong (2012年7月12日). “The future of game development is in UE4.”. Thisisgame (Korea). http://www.thisisgame.com/board/view.php?id=1242237&category=117 2012年7月18日閲覧。 
  31. ^ Andre Burnes (2012年6月8日). “Epic Reveals Stunning Elemental Demo, & Tim Sweeney On Unreal Engine 4”. NVIDIA. 2012年6月12日閲覧。
  32. ^ http://www.unrealengine.com/unreal_engine_4/
  33. ^ a b How Unreal Engine 4 Will Change The Next Games You Play”. 2012年10月22日閲覧。

関連項目

外部リンク