グローバル・イルミネーション

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グローバル・イルミネーション (global illumination, 大域照明) は、拡散反射光を光学的・物理学的に正確に扱うレンダリング技法のことである。しばしばGIと省略される。 ローカル・イルミネーション (local illumination, 局所照明) の対義語となる。 非常に写実的、つまり物理的に正しい表現が可能である。

レンダリング方程式英語版が考え出された時点で、理論自体は存在していたともいえるが、当時[いつ?]の貧弱な計算能力や複雑な確率計算に用いるアルゴリズムの不備により、近年[いつ?]になるまで注目されなかった方法である。

局所照明との比較[編集]

局所照明 大域照明
局所照明
大域照明


上記のシーンでは、向かって左側に赤色の壁、また向かって右側に緑色の壁が配置されている(ただし右側の壁自体は視点からは裏面となっているので、レンダリングはされていない)。

局所照明(古典的レイトレーシング)によるレンダリングでは、透過・屈折や反射、また床への映り込み、光源形状(矩形)のハイライトなどは再現されているものの、奥の壁や天井にある照明ボックスのディテールがつぶれてしまっている。

一方、大域照明では、天井からの白色照明が右側の緑の壁に当たることで発生する「照り返しによる緑色の間接光」が奥の白い壁や手前の白い球体に反映されていることや、透明な球を光が透過・屈折した後で地面や壁に到達することによるコースティクス英語版集光模様)等が表現されていることが分かる。また、奥の壁の隅や天井の照明ボックスの隅など、奥まった部分には柔らかい影(アンビエントオクルージョン英語版環境遮蔽環境閉塞)が発生しており、局所照明ではつぶれてしまっていたディテールがきちんと立ち上げられている。

局所照明では、光源となりえるのはライトによる直接光だけであり、物体同士の相互反射などは考慮されないが、大域照明における光源は幅広く、間接光は壁や物体からの相互反射光として計算される。この相互反射光の計算法をラジオシティ法と呼ぶ。

意義・適用範囲[編集]

従来の、アーティストがライトを手作業で複数個配置して、地面や壁からの照り返しを再現するようなバッドノウハウともいえる手法に代わることが見込まれる。しかし、融通が効かないという批判もある[要出典]。以前はレンダリングに多くの計算機資源と時間を必要とするため、動画での使用は少数に留まっていた。

しかし近年(2010年頃~)では、コンピュータ(特にパーソナルコンピュータ)の急速な高速化・マルチコア化やメモリの大容量化が進み、またHDRIやイラディアンスキャッシュ、フォトンマップの計算方法の大幅な進歩により、逆に従来のレイトレーシング手法よりもはるかに高速にレンダリングが完了するようになった[要出典]。動画においても、一度光源を計算しシーン内に照度データを保存すれば、2フレーム目からは光の計算の必要がなくなるため、従来の方法よりはるかに有利になる。

手間やストレスの観点からも、手で光源の位置を操作し、何度もテストするといった手順が大幅に減るので、グローバルイルミネーションが優れている。

なお、映画産業で用いられるレンダリングソフトウェア(レンダラ)の代表格であるPIXAR RenderManなどでは、グローバルイルミネーションが標準搭載されている。Autodesk 3ds Max、Autodesk MayaNewTek英語版 LightWaveなどの統合型3DCGソフトウェアも、グローバルイルミネーション機能を備えている。

おもな実現方法[編集]

リアルタイム・グローバルイルミネーション[編集]

ゲームやシミュレーションの分野で用いられるリアルタイムコンピュータグラフィックスでは、映画やCM、静止画におけるプロダクション用途の非リアルタイムコンピュータグラフィックスよりも遥かに計算資源や処理時間上の制約が強く、陰影計算はローカルイルミネーションベースのものが主流だった。しかし、DirectX 9.0c世代のプログラマブルシェーダーを備えたPC用グラフィックスカードや、Xbox 360/PlayStation 3といった高性能のゲーム専用機が出現して以降、徐々にリアルタイム処理系でもグローバルイルミネーション技術が採用されつつある。

2015年現在、DirectX 11世代のPC用グラフィックスカードの普及や、Xbox One/PlayStation 4といったさらに高性能な次世代ゲーム専用機の登場を受けて、多くのハイエンド環境向けゲーム(AAAタイトル)は、グローバルイルミネーション手法を何らかの形で採用しており、グラフィックスの写実性や現実感を高めている。ただし、依然として計算資源や処理時間上の制約が存在するため、アルゴリズムを大胆に簡略化した疑似手法が用いられることが多い。

リアルタイム処理系向けには下記のような手法が考案されている。

  • Precomputed Radiance Transfer (事前計算済み放射輝度伝播、PRT) [2]
  • Image Space Photon Mapping (ISPM) [3]
  • Cascaded Light Propagation Volumes (Cascaded LPV) [4]
  • Sparse Voxel Octree GI (SVO-GI, SVOGI) [5]

採用例[編集]

脚注[編集]

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