JR東海HC85系気動車

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JR東海HC85系気動車
HC85系D3編成(2022年7月)
基本情報
運用者 東海旅客鉄道
製造所 日本車輌製造
製造年 2019年(試験走行車)
2022年 -(量産車)
製造数 68両(予定、試験走行車含む)[1]
運用開始 2022年7月1日
主要諸元
編成 2両・4両編成
軌間 1,067 mm
設計最高速度 120 km/h
車両定員 クモロ85形:36名
クモハ85形:56名
モハ84形0番台:50名
モハ84形100番台:68名
車体長 21,300 mm
車体幅 2,918 mm
車体高 3,750 mm(先頭車)
3,640 mm(中間車)
床面高さ 1,230 mm
車体 ステンレス
機関 直噴式直列6気筒ディーゼルエンジン
機関出力 336 kW
発電機 永久磁石同期発電機 定格245kW
主電動機 永久磁石同期電動機
主電動機出力 145 kW
駆動方式 WN駆動方式
制御方式 VVVFインバータ制御
備考 特記なき限り試験走行車の値
出典:[2]
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HC85系気動車(HC85(エッチシーハチゴー)けいきどうしゃ)は、東海旅客鉄道(JR東海)のハイブリッド式特急形気動車である。

概要

製造から30年以上が経過し、老朽化したキハ85系の置き換え用として2022年7月1日特急ひだ」でデビューした車両で、JR東海では初めてのハイブリッド気動車である[3]

2017年に「次期特急車両」としてハイブリッド方式の車両を導入予定であることが発表され[4]2018年には内外装デザインと安全設備が[5]2019年には形式名やロゴデザインが発表された[6]。「HC85系」の「HC」は「Hybrid Car」の略で、形式名にはキハ85系から技術革新した車両であるとの意味合いがある[6]。形式の読みは「エッチシーハチゴー」である。

2019年に試験走行車4両編成1本(D1編成)が製造され[7]、長期試験を行った。その後当初の計画通り2022年に量産車の導入が開始された[8][9]。なお試験走行車は量産車仕様に改造の上で営業運転に使用される[1]

構造

走行装置

シリーズハイブリッド方式が採用され、1両あたりのエンジン数を1台とすることで燃費向上が見込まれている[3]。制御方式はVVVFインバータ制御である。

また、客用ドア開扉時にエンジンを停止するアイドリングストップ機構を搭載する[1]。快適性向上のため同社の313系と同様にセミアクティブサスペンションを使用している[10]ほか、量産車ではさらに揺れが加わる地点の位置情報から作動域を調節する「地点制御機能」の追加が予定されている[1]。走行機器類は東芝インフラシステムズが担当している[11]。ブレーキ装置、空調装置の製造は三菱電機が担当している[12]

新幹線の技術を応用し、各機器をリアルタイムで状態監視するシステムも気動車で初めて導入された[1]

なお、鉄道車両の運転には電車(甲種電気車運転免許)か気動車(甲種内燃車運転免許)によって運転免許が異なるが、この車両に関してはどちらか片方のみ保有していても新たにもう片方の免許を取得することなく、それぞれに必要な知識の講習と訓練を追加で受けた上で運転できるとしている[13]

内外装

外装は「漆器の持つまろやかさや艶のある質感」をテーマとし、前面窓から貫通扉にかけてを黒色としつつ前面下部から側面上部にかけて白とオレンジのラインを配している[14]。先頭車両の側面には飛騨・南紀の紅葉と海をイメージしたラインに「HYBRID」の文字を入れたロゴマークが貼付されている[6]

座席は車椅子区画を除き、全て2+2配列の回転リクライニングシートである。グリーン車の座席は「新緑」「川」「夕暮れの空」のイメージの3色をグラデーションで表現し、普通車の座席は紅葉と花火をイメージした赤系のモケットとされた[14]。通路扉上には停車駅案内のほか走行装置の使用状況を図示する案内表示器が設置されている[10]。デッキには沿線の工芸品を展示する「ナノミュージアム」が設けられる[10]

バリアフリー設備については、2022年令和4年)3月に改正された特急車両の新基準を踏まえ、車内には車椅子スペースが3席あるほか、トイレも車椅子に対応したものとされた[10][15]。また全席にコンセントが設置されているほか、フリーWi-Fiのサービスが提供される[14]

車内チャイムは「アルプスの牧場」で、演奏はスギテツが担当した[16]。観光案内放送の一部は岐阜県立岐阜高等学校の生徒が担当した[17]

形式・編成

系列名と異なり個別形式には「HC」が入らない一方で記号には電車と同じ「モ」を使用しており、以下の3形式7区分からなる[2]。いわゆる電動車のみが存在し、付随車は存在しない。

  • クモハ85形 - 普通車の先頭車で、0番台・100番台・200番台・300番台の4区分。
  • クモロ85形 - グリーン車の先頭車。
  • モハ84形 - 普通車の中間車で、0番台・100番台の2区分。

試験走行車および量産車第1編成は、クモハ85形0番台とクモロ85形にモハ84形0番台・100番台を1両ずつ挟んだ4両編成で落成した[18]。グリーン車を連結した4両編成のほか、モノクラスの4両編成も予定されている[18]

キハ85系とは異なり編成番号の設定があり、同系式のような1両単位での増解結はできない。


運用

2022年(令和4年)7月1日に特急「ひだ」2往復で運行を開始し、同年8月1日からは3往復に拡大されている[19]。なお、営業運転開始当初はJR東海管内で完結する名古屋駅 - 高山駅間での運行となる[20]が、同年12月1日よりJR西日本管内となる富山駅への乗り入れを開始する予定[21]。これにより、同社が運転する列車で左手ワンハンドル式マスコンの車両の運用がしなの以来、6年ぶりに復活する予定となっている。

今後の予定

2022年度中に「南紀」でも営業運転を開始する予定である。また、「ひだ」においてはJR西日本区間の大阪方面への運行も検討されている[20]

このほか環境負荷軽減のためにバイオ燃料ユーグレナの「サステオ」)を使用することが計画されており、2022年1月から試験が行われている[22]

脚注

注釈

出典

  1. ^ a b c d e “JR東海、在来線新型特急「HC85系」で何が変わる?”. 東洋経済オンライン. (2022年1月4日). https://toyokeizai.net/articles/-/476794?page=3 2022年5月25日閲覧。 
  2. ^ a b 東海旅客鉄道(株)殿向け HC85系”. 日本車輌製造. 2022年5月24日閲覧。
  3. ^ a b “JR東海が「HC85系」公開 ハイブリッドで国内最速” (日本語). 日本航空. (2021年8月4日). https://www.asahi.com/amp/articles/ASP8S5K1BP8ROIPE01K.html 2022年5月25日閲覧。 
  4. ^ “JR東海、キハ85系に代わる次期特急車両を新製 - 試験走行車は2019年度完成” (日本語). マイナビニュース. (2017年6月7日). https://news.mynavi.jp/article/20170607-a229/ 2022年5月25日閲覧。 
  5. ^ “JR東海、ハイブリッド方式の次期特急車両(試験走行車)デザイン公開” (日本語). マイナビニュース. (2018年12月12日). https://news.mynavi.jp/article/20181212-jrcentral/ 2022年5月25日閲覧。 
  6. ^ a b c "JR東海の次期特急形気動車はHC85系に 〜シンボルマークも決定〜" (Press release). 鉄道ファン. 28 October 2019. 2022年5月24日閲覧
  7. ^ “HC85系試験走行車が登場” (日本語). 鉄道ファン. (2019年12月5日). https://railf.jp/news/2019/12/05/160000.html 2022年5月25日閲覧。 
  8. ^ “JR東海、岐阜県内区間に変化の波 ハイブリッド特急や新型車両、ダイヤも改正”. 岐阜新聞 (岐阜新聞社). (2022年3月4日). オリジナルの2022年3月6日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20220306043418/https://www.gifu-np.co.jp/articles/-/49500 2022年3月6日閲覧。 
  9. ^ JR東海、7/1デビューの新型「HC85系」運行計画発表 | RailLab ニュース”. レイルラボ(RailLab). 2022年6月16日閲覧。
  10. ^ a b c d “新型HC85系「特急ひだ」に試乗 ハイブリッド車初の120km/h運転 "新感覚"あちこちに”. 乗りものニュース. (2022年5月24日). https://trafficnews.jp/post/118935/2 2022年5月25日閲覧。 
  11. ^ 東芝レビュー2021年3月「特集:2020年の技術成果」 (PDF)
  12. ^ 三菱電機技報2021年1月号一般論文 (PDF)
  13. ^ 「ハイブリッド列車」運転免許は電車か気動車か(東洋経済オンライン)2020年1月9日。2022年7月4日閲覧
  14. ^ a b c “JR東海、新型特急車両HC85系の試乗会 - 特急「ひだ」で7/1デビュー”. マイナビニュース. (2022年5月24日). https://news.mynavi.jp/article/20220524-hc85/ 2022年5月25日閲覧。 
  15. ^ 東海道新幹線N700Sの2次車両が導入されます!コンセントの位置を高くし、多目的室の窓も改善”. 認定NPO法人DPI日本会議 (2022年5月30日). 2022年6月8日閲覧。
  16. ^ 【音源あり】HC85系ひだ試乗 車内チャイムは2種類の「アルプスの牧場」”. 鉄道新聞 (2022年6月7日). 2022年6月27日閲覧。
  17. ^ 岐阜の高校生が、車内の案内放送に挑戦しました!”. 東海旅客鉄道 (2022年7月15日). 2022年10月4日閲覧。
  18. ^ a b “7月1日「ひだ」でデビュー! JR東海HC85系量産車はどこが変わった?”. 鉄道ホビダス. (2022年5月20日). https://rail.hobidas.com/feature/393752/ 2022年5月25日閲覧。 
  19. ^ JR東海、7/1デビューの新型「HC85系」運行計画発表”. レイルラボ (2022年5月25日). 2022年7月1日閲覧。
  20. ^ a b “特急車両「HC85系」を公開 JR東海、高山線で7月デビュー”. 岐阜新聞 (岐阜新聞社). (2022年5月20日). https://www.gifu-np.co.jp/articles/-/79012 2022年6月15日閲覧。 
  21. ^ 新型特急車両HC85系の追加投入について - 東海旅客鉄道(2022年8月22日)、2022年8月22日閲覧
  22. ^ “軽油と同じ取扱いが可能…JR東海が次世代バイオ燃料の試験 HC85系試験車で”. レスポンス. (2022年1月20日). https://s.response.jp/article/2022/01/20/353361.html 2022年5月25日閲覧。 

関連項目

外部リンク

  1. ^ 地球環境保全への貢献”. 東海旅客鉄道. 2023年11月29日閲覧。