名人 (小説)
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『名人』(めいじん)は、川端康成の小説。1938年に打たれた21世本因坊秀哉名人の引退碁の観戦記を元に、小説の形にまとめたもの。
家元制最後の本因坊であり、古い時代の権威の象徴であった秀哉の最後の対局の姿を新聞の観戦記者からの視点で描いた作品。川端の作品としては、女がほとんど出てこない点で、地味な感じを受けるが、碁という「静」の世界の激しさと静けさをこのように描けるのは、やはり日本の文豪ならではであろう。職業に勝負を選び、死ぬまで「不敗の名人」を演じきった人物の、人生の結末を的確に描いている。芥川龍之介の『枯野抄』にも通じる、円熟した作品。
目次 |
対局の概要 [編集]
秀哉名人の引退に当たり、東京日日新聞はその引退碁を企画し、リーグ戦で勝ち抜いた木谷實七段が対戦相手に選ばれた。時に、秀哉65歳、木谷29歳。木谷の先番で、6月26日に打ち始められ、途中、秀哉の体調不良による長期入院をはさんで、足かけ半年をかけて、12月4日に打ち終えた。勝負は木谷の5目勝ちであった。秀哉名人は、これを最後の対局として、翌年66歳で生涯を閉じた。
執筆過程 [編集]
川端はこの作品を1942年ごろから書き始めていたが一旦中絶し、1951年〜1953年にかけて「新潮」「世界」誌に分載する形でこの作品を発表している。本の刊行までには秀哉の死後20年近い歳月を要したことになる。観戦記他、囲碁に関連する諸作品は『川端康成全集 25巻』に収められている。
大竹七段 [編集]
この小説ではほぼ全員が実名で登場しているが、なぜか対局者の木谷だけ「大竹七段」と名前を変えられている。理由について川端は「呉清源棋談・名人」(文藝春秋)の1954年6月のあとがきにつぎのように書いている。
- 『「名人」は題名が示す通り主になった。相手の大竹七段は従である。作中、大竹七段と日日新聞の囲碁記者だけは仮名にした。大竹七段が木谷實七段(当時)なのはまぎれもない。名人を本名として相手の木谷七段は仮名としたのも、他意あってのことではないが、この小説が作中の対局を必然に虚構して、迷惑をおよぼすだろうという気持から、書きはじめた時に、故人の名人は本名のままにしたけれども、木谷七段は仮名を用い、その後これにしたがったまでである。』
木谷の弟子に大竹英雄がいるが、これは偶然である。このためある川端の研究者が「名人の対戦相手がまだ生存している」と聞いて、大竹の元を訪れてきたというエピソードがある。大竹英雄は、後にタイトル制の名人の座に就いている。
外国語版 [編集]
- Myeong In, Ming Byeong Son (閔丙山)訳, Shingu Munhwa Sa, Seoul, 1969
- The Master of Go, Edward G. Seidensticker訳, Alfred A. Knopf, New York, 1972
- Le Maître ou Le tournoi de Go, Sylvie Regnault-Gatier訳, Albin Michel, Paris, 1975
- Velemajstor (Velemajstor, Snežna zemljaの中), Ljiljana Đurović訳, Slovo ljubve, Beograd, 1981
- Mingren, Liu Hua Ting (劉華亭)訳, Xingguang Chubenshe, Taipei, 1985
- De meester van het go-spel, Annemarie van Frankenhuysen訳 (英語版からの重訳), Uitgeverij BZZToH, 's-Gravenhage, 1987
- Meidžin (Tanečnice z Izu a jine prózyの中), Vlasta Winkelhöferová 及び Miroslav Novák訳, Odeon, Praha, 1988
- Go ustasi, Belkıs Çorakçı (Dişbudak)訳 (英語版からの重訳), Remzi Kitabevi, İstanbul, 1992
- Il Maestro di Go, Cristina Ceci訳, Arnoldo Mondadori, Milano, 1995
- Mingren, Ye Wei Qu (葉渭渠)訳, Zhongguo Shehui Kexue Chubenshe, Beijing, 1996
- Meijin - Mistrz go, Henryk Lipszyc訳, Wydawnictwo Elay, Bielsko-Biała, 2004
- El Maestro de Go, Amalia Sato訳 (英語版からの重訳), Emecé Editores S.A., Buenos Aires, 2004
- Maestrul de Go, Flavius Florea訳, Humanitas Fiction, Bucuresti, 2007