ワールドカウンシルフォーヘルス

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』
ワールドカウンシルフォーヘルス
団体種類 非営利
設立 2021年9月 (2年前) (2021-09)
所在地 バース (イングランド)
ウェブサイト https://worldcouncilforhealth.org/
テンプレートを表示

ワールドカウンシルフォーヘルス（英語: World Council for Health、WCH、世界保健協議会）は、反ワクチン派の偽医療組織であり、COVID-19ワクチン接種を阻止するために誤った情報を広め、偽のCOVID-19治療法を宣伝することに専念している[1][2][3]。

この団体のオンライン上の体裁は、主流の保健組織であるかのような印象を与える[2]。2021年9月、WCHはジェニファー・ヒバードと、産婦人科医でCOVID-19治療薬としてイベルメクチンを誤って宣伝する「BIRDグループ」の創設者テス・ローリー[4][5]によって設立された[6][7]。公表されている指導者には、オーストラリアAP通信のファクトチェックで「根拠のない陰謀論を広めている」とされた人物が含まれている[8]。

WCHは、ロバート・ケネディ・ジュニアが率いる反ワクチン団体「Children's Health Defense」や、反ワクチン派の独立組織「World Doctors Alliance」、イベルメクチン推進団体である「FLCCC」などアメリカの複数の団体と連携する[7][9]。

日本からは「全国有志医師の会」、「こどもコロナプラットフォーム」、オーガニック給食推進団体の「ママエンジェルス[10]」、「日本オーソモレキュラー医学会」の4団体が参加している[11][12][PR 1]。2023年、日本において支部「ワールドカウンシルフォーヘルスジャパン（WCHJ）」と、超党派の議員連盟が発足した[13][14]。

活動[編集]

「イベルメクチン#誤った情報と混乱」および「ターボ癌」も参照
  • 2021年9月、WCHは、「BIRD（英国イベルメクチン推奨開発）グループ」の創設者テス・ローリーらによって設立された[6][15][16][17]。テス・ローリーは、当初、イベルメクチンがCOVID-19の安価で安全な治療薬だと信じることから出発したが[4]、疑似科学に傾倒し、2023年1月時点は、イベルメクチンでがんが治ると宣伝している[17][16]。
  • WCHは、COVID-19ワクチン接種と死亡を結びつける誤った情報を広めている[8][18]。2021年、同団体はSNS上で、根拠の乏しい「ワクチン接種後症候群」と呼ばれる「多系統の炎症状態」を主張した[8][18]。しかし、この症状は医学的には認められておらず、ワクチン接種によってそのような症状が引き起こされたという証拠もない[8][18]。
  • 2022年5月、WCHはイギリスのバースで開催された会議に参加し、『Vice World News』はこの会議を「世界的な反ワクチンおよびCOVID-19の陰謀シーンにおける大物たちによる会議」と評した[6]。WCHがCOVID-19ワクチンが安全ではないと偽った広報を行ったため、地元当局は会場の使用許可を取り消した[6]。
  • 2022年7月、WCHの要請により、反ワクチン論者のピーター・A・マッカロー医師が、世界中で4万人以上が死亡したためワクチンが世界的に回収されたと虚偽の主張をした[19]。しかし、WHOやEMA、CDCなどの公衆衛生機関も製造業者も、認可されたCOVID-19ワクチンを回収していない[19]。
  • 2022年9月、WCHの記者会見で、心臓専門医アシーム・マルホトラは、「COVID-19による入院リスクよりも、COVID-19ワクチンによる重篤な有害事象のリスクが高い」として、「ワクチンの即時かつ完全な中止」 を求めた[18][20]。マルホトラは、Journal of Insulin resistance誌に寄稿した総説でも、同様の結論を述べた[18][20][21]。しかし、同氏の結論はエピソード的な証拠、質の低い研究、論文の偏った選択に基づくものであり、AFPのファクトチェックは彼の主張に警告を発した[18][21][20]。
  • WCHは、イベルメクチンをCOVID-19の治療薬として宣伝しているが[3]、研究の結果、この目的には効果がないことが分かっている[3][22][23][24][4]。
  • WCHは、世界保健機関（WHO）加盟国が進める「パンデミック条約[25][26]」によって国家主権が奪われワクチン接種が強制になると主張している[13][14]。しかし、この条約は通常の条約と同様に、主権は国家にあることが明記されており、WHOに命令する権利はなく、接種等を強制する文言もない[27][28][29][30]。
  • WCHのテーマソング『We Are Warriors』は、歌詞の中で「我らは光の戦士」と歌っている[PR 2][PR 3]。

日本[編集]

  • 2021年7月、イベルメクチンの開発でノーベル賞を受賞した大村智が、WCHの開催する「世界イベルメクチン・デー[PR 4]」と呼ばれる国際オンライン会議に出演した[31][PR 5][32]。このイベントには、イベルメクチンを賞賛し、誤情報を広めたとして非難されている団体「FLCCC」の医師や、英国の「BIRD」など関連する国際グループが参加した[5][33]。
  • 2022年11月23日、全国有志医師の会が「生後6ヵ月 - 4歳以下の乳幼児への新型コロナワクチン接種」に反対する緊急記者会見を開催し、WCHの代表であるテス・ローリーのメッセージ動画が流された[34]。南出賢一泉大津市長や立憲民主党の川田龍平参院議員も、この会見に参加した[34]。
  • 2023年7月、WCHの日本支部「ワールドカウンシルフォーヘルスジャパン（WCHJ）」が発足した[PR 6][PR 7]。WCHJの発起人は、日本オーソモレキュラー医学会会長の柳沢厚生や肛門科専門医の佐々木みのりなどであり[PR 6][PR 7]、立憲民主党の原口一博衆議院議員と南出賢一泉大津市長[14]がアドバイザーを務めている[12][PR 8]。2023年10月14日、大阪で行われた集会には、幸福の科学の及川幸久外務局長や長尾和宏医師などが出演した[PR 9][35]。
日本ラエリアン・ムーブメントのマスコットキャラクター[36]

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ “Correction: Ivermectin Prophylaxis Used for COVID-19: A Citywide, Prospective, Observational Study of 223,128 Subjects Using Propensity Score Matching”. Cureus 14 (3): c61. (March 2022). doi:10.7759/cureus.c61. PMC 8947948. PMID 35371877. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8947948/ 2023年12月26日閲覧。. 
  2. ^ a b “Mysterious Medical Organizations Are Calling for an End to COVID Vaccines”. Vice (2022年2月22日). 2023年12月26日閲覧。
  3. ^ a b c “Anti-Vaxxers Pivot to 'Treating' Long COVID”. Vice (17 June 2022b). 2023年12月26日閲覧。
  4. ^ a b c {{Cite web |url=https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-58838971 |title=イベルメクチン、 誤った科学が生んだ新型ウイルス「特効薬」 |publisher =[[BBC] |date=2021-10-09 |accessdate=2024-01-31}}
  5. ^ a b “The regrettable story of the “Covid Kit” and the “Early Treatment of Covid-19” in Brazil”. The Lancet (2021年10月5日). 2022年7月24日閲覧。
  6. ^ a b c d “The Davos of COVID Conspiracy Theorists Is Happening in a UK Town Right Now”. Vice (2022年5月20日). 2023年12月26日閲覧。
  7. ^ a b “Anti-Vaxxers Are Making a Play for the Hearts, Minds, and Wombs of Young Women”. Vice (2021年10月26日). 2023年12月26日閲覧。
  8. ^ a b c d “Post COVID-19 injection syndrome is only 'garbled misinformation'”. AAP FactCheck (2021年10月22日). 2023年12月26日閲覧。
  9. ^ “Group that spread false Covid claims doubled Facebook interactions in six months” (英語). the Guardian (2021年10月21日). 2021年11月9日閲覧。
  10. ^ “第41回「誤報と偽情報」が世界のリスク第一位になった2024年に思うこと【分断をこえてゆけ　有機と慣行の向こう側】”. AGRI FACT (2024年1月26日). 2024年2月5日閲覧。
  11. ^ “Coalition Partners”. World Council For Health. 2023年8月25日閲覧。
  12. ^ a b “全国有志医師の会ニュースレター バックナンバー Vol.40（9月20日号）”. 全国有志医師の会 (2023年10月25日). 2023年12月25日閲覧。
  13. ^ a b c d e f 藤倉善郎 (2024年1月17日). “動画あり・Jアノンなどが反WHOデモ、池田としえ日野市議絶叫「ワクチンは日本殲滅大作戦！！！」「ビル・ゲイツ！」”. やや日刊カルト新聞. 2024年1月26日閲覧。
  14. ^ a b c d e f g h “WHOに対抗？ WCHジャパン 議連発足に 絡む「ラエリアン・ムーブメント」ってなんだ？”. 示現舎 (2023年11月20日). 2023年12月27日閲覧。
  15. ^ “The Pandata File”. COUNTER DISINFORMATION PROJECT (2022年7月23日). 2023年8月25日閲覧。
  16. ^ a b “Ivermectin booster Dr. Tess Lawrie goes all-in for homeopathy for COVID and long COVID”. Science-Based Medicine (2023年3月6日). 2023年8月25日閲覧。
  17. ^ a b “Tess Lawrie: Ivermectin isn’t just for COVID-19 but cures cancer too!”. Science-Based Medicine (2023年1月23日). 2023年8月25日閲覧。
  18. ^ a b c d e f “Article by cardiologist Aseem Malhotra made unsupported claims about the benefits and risks of COVID-19 vaccination”. Health Feedback (2022年10月6日). 2023年12月26日閲覧。
  19. ^ a b “US cardiologist falsely promotes Covid-19 vaccine recall” (英語). AFP Fact Check (2022年7月26日). 2023年8月4日閲覧。
  20. ^ a b c “UK cardiologist misleads on Covid-19 vaccine safety” (英語). AFP Fact Check (2022年10月14日). 2023年8月4日閲覧。
  21. ^ a b Malhotra, Aseem (26 September 2022). “Curing the pandemic of misinformation on COVID-19 mRNA vaccines through real evidence-based medicine - Part 1”. Journal of Insulin Resistance 5 (1). doi:10.4102/jir.v5i1.71. 
  22. ^ “Ivermectin for preventing and treating COVID-19”. Cochrane Database Syst Rev 2022 (6): CD015017. (June 2022). doi:10.1002/14651858.CD015017.pub3. PMC 9215332. PMID 35726131. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9215332/. 
  23. ^ “Randomized Trial of Metformin, Ivermectin, and Fluvoxamine for Covid-19”. The New England Journal of Medicine (NEJM) (2022年8月18日). 2022年10月14日閲覧。
  24. ^ “Effect of Higher-Dose Ivermectin for 6 Days vs Placebo on Time to Sustained Recovery in Outpatients With COVID-19”. jamanetwork (2023年2月20日). 2023年6月10日閲覧。
  25. ^ “世界保健機関（WHO） パンデミックの予防、備え及び対応（PPR）に関するWHOの新たな法的文書 （いわゆる「パンデミック条約」）の交渉”. 外務省 (2024年4月10日). 2024年4月21日閲覧。
  26. ^ “パンデミック条約 リンク集”. 東北大学国際法政策センター. 2024年4月21日閲覧。
  27. ^ “Bureau’s text of the WHO convention, agreement or other international instrument on pandemic prevention, preparedness and response (WHO CA+)” (PDF). WHO (2023年6月2日). 2024年1月29日閲覧。
  28. ^ “Article-by-Article Compilation of Proposed Amendments to the International Health Regulations (2005) submitted in accordance with decision WHA75(9) (2022)” (PDF). WHO. 2024年1月29日閲覧。
  29. ^ “国際保健規則（2005）（仮訳）” (PDF). 厚生労働省. 2024年1月27日閲覧。
  30. ^ “ンデミック条約の交渉テキスト概要（和文）” (PDF). 外務省（2023年12月）. 2024年4月21日閲覧。
  31. ^ “World Ivermectin Day: News, Views and More #1”. TrialSiteNews (2021年7月24日). 2022年7月24日閲覧。
  32. ^ “「世界イベルメクチン・デー制定記念」大村智博士　岡山大学名誉博士称号授与式・記念講演会”. 岡山大学 (2022年1月21日). 2022年7月24日閲覧。
  33. ^ “Who are the BIRD Group?”. BIRD. 2022年7月24日閲覧。
  34. ^ a b “「生後6ヵ月～4歳以下の乳幼児への新型コロナワクチン接種」に対する 緊急記者会見”. 全国有志医師の会 (2022年11月23日). 2023年12月25日閲覧。
  35. ^ “マイドーム大阪「WCH-J(ワールドカウンシルフォーヘルスジャパン）シンポジウム」〜10/15【追記】”. ASKA Official Web Site 「Fellows」 (2023年10月14日). 2024年1月21日閲覧。
  36. ^ 日本ラエリアン・ムーブメント公式フェイスブック 2012年11月15日
  37. ^ “宇宙人向けの大使館開設を目指すラエリアン・ムーブメントの会議”. Vice (2016年5月2日). 2024年1月31日閲覧。
  38. ^ “WHOの「パンデミック条約」は人権侵害の可能性”. 日本ラエリアン・ムーブメント (2023年10月20日). 2024年4月20日閲覧。
  39. ^ a b “ＷＨＯの「パンデミック条約」に、断固反対します！ 日本政府に、パンデミック条約に調印しないことを求めます！ ～「日本国憲法」・「基本的人権」・「自由」を守るための署名運動～”. オンライン署名＆クラウドファンディング. 2024年1月24日閲覧。
  40. ^ “パンデミック条約反対でデモ―東京・池袋”. 時事通信社 (2024年4月13日). 2024年4月14日閲覧。
  41. ^ a b “令和6年4月13日（土）決起集会・デモ行進”. 株式会社メディエーションズ. 2024年4月14日閲覧。
  42. ^ 鈴木エイト (2024年4月21日). “共通の“敵”を攻撃…反ワクチンデモに透ける「承認欲求」”. 日刊ゲンダイ. 2024年4月20日閲覧。
  43. ^ “「パンデミック条約」反対会見開く”. 統一日報 (2024年4月9日). 2024年4月14日閲覧。
  44. ^ “知らなかったではすまされないWHOの条約改正　日本人の選択は何処へ”. 大紀元 (2024年4月9日). 2024年4月14日閲覧。

記事主題の関係者による情報源[編集]

  1. ^ “「ワールドカウンシルフォーヘルスジャパン　キックオフセミナー」～パンデミックが起こした世界の変化とは　日本人がアフターコロナを生き抜くには　今　何をすべきか～”. Peatix (2023年9月9日). 2024年1月21日閲覧。
  2. ^ “WCHテーマソング。日本語字幕入り完成です。素晴らしい歌唱力に支えられた、素晴らしい出来栄えの歌です”. 日野市議会議員・池田としえ - X (2023年11月18日). 2024年1月31日閲覧。
  3. ^ “We Are Warriors 日本語字幕版”. Vimeo（ワールドカウンシルフォーヘルスジャパン）. 2024年1月31日閲覧。
  4. ^ “World Ivermectin Day 24 July 2021: Covid is treatable with ivermectin and can end the pandemic”. World Ivermectin Day (2021年7月21日). 2022年7月24日閲覧。
  5. ^ “Ivermectin Inventor Dr Satoshi Ōmura World Ivermectin Day 2021”. YouTube (2021年7月27日). 2022年7月24日閲覧。
  6. ^ a b “ワールドカウンシルフォーヘルス（WCH）とは”. ワールドカウンシルフォーヘルスジャパン. 2023年8月25日閲覧。
  7. ^ a b “World Council for Health（WCH）の日本支部を立ち上げました！”. 大腸肛門科診療所女医・副医院長　佐々木みのり (2023年7月27日). 2023年8月25日閲覧。
  8. ^ “ワールドカウンシルフォーヘルス（WCH）とは”. ワールドカウンシルフォーヘルス（WCH）. 2023年12月27日閲覧。
  9. ^ “愛・正義・家族・自由をを破壊するWHOの悪行を許さない!　今!本気で立ち上がる時が来たのだ!”. Peatix (2023年10月14日). 2024年1月21日閲覧。
  10. ^ “WCH Asia Presents the First Asia Symposium”. World Council for Health. 2023年12月31日閲覧。
  11. ^ “ワールドカウンシルフォーヘルスアジアが発足”. World Council for Health Japan (2023年10月23日). 2023年12月31日閲覧。
  12. ^ “日本を守るために行動しよう！私たちにできる3つのアクション” (PDF). 超党派WCH議員連盟を支援する有志の会. 2024年1月21日閲覧。
  13. ^ “超党派WCH議連（仮称）とWHOパンデミック条約、世界保健規則改定などについて議論いたします。”. 原口一博 - X (2023年11月22日). 2024年1月27日閲覧。
  14. ^ “超党派WCH議員連盟の設立総会”. 選挙ドットコム（さとうゆういち） (2023年11月15日). 2024年1月21日閲覧。
  15. ^ “超党派WCH議員連盟設立総会にZOOM参加しました。”. 選挙ドットコム（中村ひとし） (2023年11月15日). 2024年1月21日閲覧。
  16. ^ “超党派WCH議員連盟設立総会”. 西田昌司事務所 (2023年11月16日). 2024年1月21日閲覧。
  17. ^ “議会報告 市民の身を守る意識を 小田原市議会議員　城戸（島田）さわこ”. タウンニュース小田原・箱根・湯河原・真鶴版 (2023年12月16日). 2024年1月21日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

スタブアイコン

この項目は、薬学に関連した書きかけの項目です。この項目を加筆・訂正などしてくださる協力者を求めています（プロジェクト:薬学／Portal:医学と医療/Portal:化学）。

新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)
SARSコロナウイルス2
疾患と症状
変異株
感染
治療
検査
ワクチン
一覧
治療薬
抗ウイルス薬
抗体カクテル
(モノクローナル抗体)
治療法
研究
感染拡大
影響（コロナ禍）
社会
文化
経済
社会の対応
感染対策
ワクチン接種
感染予防
有事発令
都市および
国境封鎖
感染者管理
その他
経済政策
組織
その他関連項目
カテゴリ カテゴリ
「https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=ワールドカウンシルフォーヘルス&oldid=100090328」から取得