オペラ座の怪人

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オペラ座の怪人』(オペラざのかいじん、フランス語: Le Fantôme de l'Opéra)は、フランスの作家ガストン・ルルーによって1909年に発表された小説。これを原作として多数の映画、テレビ映画、ミュージカルなどが作られている。

日本語訳としては、最初の映画版邦題は「オペラの怪人」で、1930年(昭和5年)刊行の日本語訳(田中早苗訳)の書目は「オペラ座の怪[1]であった。しかしフランス語原題に含まれる“l'Opéra”は、単なる「オペラ」ではなく固有名詞の「オペラ座」を意味するとの解釈により、古い映画を除いて以後は「オペラ座の怪人」が使用されている。

概要[編集]

新聞記者でもあったルルーの取材談のような疑似ノンフィクションテイストで書かれている。ルルーは執筆にあたり、実際のオペラ座(ガルニエ宮)の構造や地下の広大な奈落、建築経過などを詳しく取材しており、かつオペラ座が建設された当時の実際の幽霊話や陰惨な事件などを用いて、虚構と現実が入り交じったミステリアスな怪奇ロマンとして執筆した。

物語前半は、謎の『天使の声』に導かれ歌手として頭角を現す女優クリスティーヌ・ダーエと、彼女が謎の声に魅了されている様子を見て悩み苦しむ恋人ラウル・シャニュイ子爵の葛藤を中心とし、後半は『ファントム=怪人』ことエリックの暴走と悲劇的な素性、そして彼の秘密を知るペルシャ人・ダロガの手記という形で描かれている(この手記を手に入れたルルーが本作を執筆したという仮想現実構造になっている)。特に終盤はダロガが事実上の主役級になっているのが、後のミュージカル版等との大きな相違である。

2011年8月現在、日本語訳は創元推理文庫(三輪秀彦訳)、ハヤカワ・ミステリ文庫(日影丈吉訳)、角川文庫(長島良三訳)が発売されている。それ以外にも児童書向けに書き換えられたものもある(集英社、村松定史訳など)。

あらすじ[編集]

19世紀末のパリオペラ座の若手女優クリスティーヌは、自分の楽屋の裏から聞こえる『天使の声』の指導で歌唱力を付け頭角を現すが、オペラ座には謎の怪人が住み着いており、月給2万フランと5番ボックス席の常時確保などを支配人に要求していた。クリスティーヌの恋人ラウル子爵は天使の声の主に嫉妬し謎を解こうとするが、その主こそ『怪人』であり、オペラ座の地下に広がる広大な水路の空間に住み着いた男エリックであった。エリックは生来の醜悪な人相に壊死した皮膚を持つ、見るもおぞましい異形の男であったが、投げ縄や奇術の天才であり、クリスティーヌに恋をしていた。エリックは遂にクリスティーヌを誘拐してオペラ座の地下深く消え、残されたラウルは元ダロガ(ペルシャ語で国家警察の長官という意味)の謎のペルシャ人と共にクリスティーヌを追ってオペラ座の地下へ潜入する。

映画化作品[編集]

1916年版[編集]

  • 原題:Das Phantom der Oper
  • サイレント モノクロ 上映時間76分 ドイツ映画 日本未公開
  • 監督=Ernst Matray
  • 出演者=Nils Olaf Chrisander
    Aud Egede Nissen

1925年版[編集]

オペラの怪人
The Phantom of the Opera
監督 ルパート・ジュリアン
脚本 エリオット・J・クローソン
レイモンド・L・シュロック
原作 ガストン・ルルー
製作 カール・レムリ(ノンクレジット)
出演者 ロン・チェイニー
メアリー・フィルビン
ノーマン・ケリー
製作会社 ユニバーサル・ピクチャーズ
配給 ユニバーサル・ピクチャーズ
公開 アメリカ合衆国の旗 1925年9月6日(ニューヨーク・プレミア上映)
日本の旗 1925年9月
上映時間 107分(最長版)
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 サイレント・英語中間字幕
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登場人物を必要最低限に減らした点と結末が異なる点以外は、原作に比較的忠実な映画化。エリックが「音楽と奇術に明るい、脱獄した猟奇犯罪者」に設定が変更されている。これ以降の映画版ではいずれもエリックが火事や事故などで醜悪な人相になったなどと、その原因を様々にアレンジして描いているが、本作は原作通り生来の醜さで、性格俳優ロン・チェイニーが特殊メイクを施して『ドクロのような人相のおぞましい化物』という描写をほぼ忠実に再現しているのが特徴。またエリックがクリスティーヌに向ける愛も、やはり原作通り身勝手でストーカーまがいの狂気じみたものであり、ミュージカル版で顕著になった三角関係という解釈はまだなく、純粋な怪奇映画の体裁を持っている。この映画のオペラ座のセットは、1943年版他、多くの映画でも使用され、今もユニバーサルスタジオに残る、世界最古の現役映画セットである。サイレント映画だが、トーキー映画が誕生した1929年にはセリフとBGMを加えたトーキー版が公開された。オリジナルは 仮面舞踏会他いくつかの場面を 2原色テクニカラーで撮影したパートカラー作品。息を呑むほど美しい色彩が評判を呼んだが、アメリカでも当時はカラーフィルムが高価だった為、全編モノクロ版も公開された。日本ではモノクロ版のみ公開された。1970年~1980年頃の8ミリ映画ブームの頃、仮面舞踏会のみ復元されたパートカラー版が 8mmや16mmフィルムで販売され、日本でも輸入販売された。アメリカではパートカラー版(仮面舞踏会のみ)とモノクロ版のDVDが販売されているが、日本ではモノクロ版のDVDが販売されている。

1943年版[編集]

オペラの怪人
Phantom of the Opera
監督 アーサー・ルービン
脚本 サミュエル・ホッフェンシュタイン
エリック・テイラー
原作 ガストン・ルルー
出演者 ネルソン・エディ
スザンナ・フォスター
クロード・レインズ
音楽 エドワード・ウォード
撮影 ハル・モーア
W・ハワード・グリーン
編集 ラッセル・F・シェーンガース
製作会社 ユニバーサル・ピクチャーズ
配給 ユニバーサル・ピクチャーズ
公開 アメリカ合衆国の旗 1943年8月12日(ロサンゼルス・プレミア上映)
日本の旗 1952年1月
上映時間 92分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
製作費 約1,500,000ドル
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  • 原題:Phantom of the Opera
  • 邦題:オペラの怪人
  • 監督:アーサー・ルービン
  • 出演:クロード・レインズ(エリック)、スザンナ・フォスター(クリスティーヌ)、エドガー・バリア(ラウル)、ネルソン・エディ(アナトール)
  • カラー 上映時間92分 ユニバーサル映画 アメリカ映画

テクニカラーで制作された作品で、常軌を逸する以前のエリックの悲劇を物語の前半に組み込むことで、彼を「怪物」扱いすることなしに、一人の人間として描き出そうという試みがみられる。エリックは長年オペラ座で演奏を続ける初老のバイオリニストだが、クリスティーヌの実の父であり、かつて音楽の仕事を追求するために幼い彼女と彼女の母親を捨てた作曲家であると設定された。ただこの部分は初めの台本から削除され、完成した映画では、暗にクリスティーヌと父娘の関係であることを匂わせるにとどめ、真相は曖昧なまま、彼女は最後まで自分とエリックが父娘であることには気付いていない。1943年度アカデミー撮影賞アカデミー色彩美術賞を受賞。

1962年版[編集]

役名 俳優 日本語吹替
ピートリー教授/怪人 ハーバート・ロム 川久保潔
クリスティーン・チャールズ ヘザー・シアーズ 武藤礼子
ハリー・ハンター エドワード・デ・スーザ 岡部政明
ラティマー ソーリー・ウォルターズ 田中信夫
アンブローズ・ダーシー卿 マイケル・ガフ 西田昭市
ロッシ マーティン・ミラー 永井一郎
マリア リアーヌ・オーキン 北浜晴子
ビル ハロルド・グッドウィン
傴僂の従者 イアン・ウィルソン
ネズミ捕りの男 パトリック・トラウトン

1988年版[編集]

  • 原題:Phantom of the Ritz
  • カラー 上映時間88分 アメリカ映画 日本未公開

1989年版[編集]

現代のニューヨークで、かつてエリックが作曲した「勝ち誇るドン・ジョヴァンニ」の楽譜を発見した女優クリスティーヌが100年前のパリにタイムスリップし、エリックと出会うというアレンジの作品。ファントムことエリックを「エルム街の悪夢」で主演したロバート・イングランドが演じ、ホラーテイストが強い作品となった。エリックは悪魔と契約して戯曲を完成させたことと引き替えに顔面の皮を剥がされた男という設定であるが、お馴染みの仮面を被らず、死体の皮を自らの顔面に縫いつけて行動するという猟奇的なキャラクターである。殺人場面も残酷で、カルロッタの首を斬り落とし調理して仮面舞踏会のディナーに出したり、犠牲者を吊し斬りにしたり内臓を掴み出したりなど、ファントムをジェイソンやフレディなどのシリアルキラーと同様の暴力的連続殺人鬼として描いた過激な場面が多い。クリスティーヌがエリックの本性を察知してからは恐怖の念しか持たない点では、原作のイメージに比較的近い作品である。

1991年版[編集]

  • 原題:The Phantom of the Opera 2
  • 邦題:オペラ座の怪人2
  • 監督:グレイドン・クラーク
  • 出演:ロバート・イングランド(エリック)
  • カラー 上映時間96分 アメリカ映画

1989年版の続編。

1998年版[編集]

イタリア・ホラー界の巨匠ダリオ・アルジェント監督の手による翻案映画化作品。ファントムは下水に捨てられた捨て子で、流れ着いた地下迷宮のネズミに育てられたという大胆な設定の背景を持たされている。そして何よりもファントムが美形の金髪青年という改編がなされており、従って仮面などを被って行動することはない。一方クリスティーヌを演じるのは監督の娘にして既にイタリアでも名声を得ていた実力派のアーシア・アルジェント。美形のファントムとクリスティーヌの官能的性愛描写が強い。音楽はエンニオ・モリコーネが担当し、後のミュージカル版に匹敵する高い完成度となった。一方ダリオ監督らしい惨劇風の殺戮描写も多く、1989年のロバート・イングランド主演版と同様、残酷描写の強さでは「オペラ座の怪人」全映像化作品中、最も過激なものの部類に入る。

2004年版[編集]

それまでの映像化作品と異なり、アンドリュー・ロイド・ウェバー版のミュージカルをベースにした作品。歌唱部分も吹き替え無しでそれぞれの役者が歌っている(カルロッタ役のミニー・ドライヴァーのみ吹き替えであったが、ドライヴァーも歌唱力を生かしてエンディング・テーマを歌った)。

怪人エリックは、醜さによって見世物小屋にいる少年が成長したものであり、各映画の中では1943年版に次ぐ高齢の設定である。

翻案映画化作品[編集]

ファントム・オブ・パラダイス[編集]

  • 原題:Phantom of the PARADISE
  • 監督:ブライアン・デ・パルマ
  • 出演:ウィリアム・フィンリー(ウィンスロー・リーチ)
  • カラー 上映時間92分 アメリカ映画

ブライアン・デ・パルマ監督が、舞台を現代に置き変えて映画化したロックミュージカル。ガストン・ルルーの名はクレジットされていない。大物のロックプロモーターに新作を盗まれた上、濡れ衣を着せられて刑務所に送られてしまった主人公が復讐のために脱獄するも、忍び込んだレコード会社でプレス機に挟まれて顔を潰されてしまう。以後彼は仮面を被りファントムとなって、プロモーターの経営するコンサート会場「パラダイス座」の楽屋に忍び込み復讐の機会を伺う。

夜半歌聲/逢いたくて、逢えなくて[編集]

1930年代の中国北京を舞台に移し、レスリー・チャン主演で描くロマンティック・ホラー。花形スターと富豪の娘との悲恋という『ロミオとジュリエット』的要素も加えた異色作。顔に掛けられた硫酸と劇場の大火事で醜くなってしまった青年が仮面を付ける。

テレビドラマ化作品[編集]

ミュージカル作品[編集]

ケン・ヒル版
アンドリュー・ロイド・ウェバー版
アーサー・コピット&モーリー・イェストン版

脚注[編集]

  1. ^ 平凡社刊「世界探偵小説全集」 第11巻、抄訳

関連項目[編集]

外部リンク[編集]