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*第59条
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*:未成年者は、独立して賃金を請求することができる。親権者や後見人が代理として受け取ってはならない。
*:未成年者は、独立して賃金を請求することができる。親権者や後見人が代理として受け取ってはならない。
*第61条(深夜業)
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*:満18歳に満たない者を22時~5時までの間は使用してはならない。
*:満18歳に満たない者を22時~5時までの間は使用してはならない。
*:厚生労働大臣が認めた場合のみ、地域や期間限定で、23時~6時までとすることができる。
*:厚生労働大臣が認めた場合のみ、地域や期間限定で、23時~6時までとすることができる。
*:満13歳に満たない[[児童]]については20時~5時までの間は使用してはならない。
*:満13歳に満たない[[児童]]については20時~5時までの間は使用してはならない。
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*第62条(危険有害業務の就業制限)
*第62条(危険有害業務の就業制限)
*:使用者は、満18歳に満たない者を、一定の危険な業務に就かせ、又は一定の重量物を取り扱う業務に就かせてはならない。
*:使用者は、満18歳に満たない者を、一定の危険な業務に就かせ、又は一定の重量物を取り扱う業務に就かせてはならない。
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*::都道府県労働局長の許可を受けた使用者は、認定職業訓練の訓練生に技能を習得させるために必要がある場合においては、'''満16歳以上の男性'''である訓練生を坑内労働に就かせることができる(労働基準法施行規則第34条の3)。
*::都道府県労働局長の許可を受けた使用者は、認定職業訓練の訓練生に技能を習得させるために必要がある場合においては、'''満16歳以上の男性'''である訓練生を坑内労働に就かせることができる(労働基準法施行規則第34条の3)。
*第64条(帰郷旅費)
*第64条(帰郷旅費)
*:満18才に満たない者が解雇の日から14日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。ただし、満18才に満たない者がその責めに帰すべき事由に基づいて解雇され、使用者がその事由について行政官庁の認定を受けたときは、この限りでない。
*:満18才に満たない者が解雇の日から14日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。ただし、満18才に満たない者がその責めに帰すべき事由に基づいて解雇され、使用者がその事由について行政官庁の認定を受けたときは、この限りでない。

=== 第6章の2 妊産婦等 ===
=== 第6章の2 妊産婦等 ===
女性特有の身体状況に対する特則を定める。「妊産婦」とは、'''妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性'''をいう。
女性特有の身体状況に対する特則を定める。「妊産婦」とは、'''妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性'''をいう。

2013年2月23日 (土) 04:37時点における版

労働基準法
日本国政府国章(準)
日本の法令
通称・略称 労基法
法令番号 昭和22年4月7日法律第49号
種類 労働法
効力 現行法
成立 1947年3月27日
公布 1947年4月7日
施行 1947年9月1日
主な内容 労働条件
関連法令 労働安全衛生法労働関係調整法
労働組合法男女雇用機会均等法
日本国憲法民法
条文リンク 総務省法令データ提供システム
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労働基準法(ろうどうきじゅんほう、昭和22年4月7日法律第49号)は、労働に関する規制等を定める日本の法律である。労働組合法労働関係調整法と共に、いわゆる労働三法の一つである。

概説

日本国憲法第27条2項は、「賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」とし、これを受けて1947年(昭和22年)に制定される。1985年女子差別撤廃条約批准に伴う国内法整備の為に改正され、女子の保護規定(深夜勤務の原則禁止や時間外勤務の上限など)が削除された(ただし坑内労働の禁止や生理、妊娠、出産時期など女性特有の規制はある)。その後1987年改正で、週40時間労働制、変形労働時間制裁量労働制フレックスタイム制などを導入する。

2008年に労働契約法が制定され、解雇権濫用法理の条文は削除された。 2010年4月から中小企業を除き、割増賃金の割増率の増加、時間単位年休の制度等が追加された。

労働基準法における基準は最低限の基準であり、この基準での労働条件の実効性を確保するために、労働基準法が適用される事業場では独自の制度を設けているところがある。労働基準法に違反した場合、一部の条文には刑事罰が予定されている為、刑罰法規としての側面を持つ。もっともブラック企業が無数に存在している事から、実際と法との乖離が問題視されている。

構成

第1章 総則

  • 第1条(労働条件の原則)
    労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。(第1項)
    この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労使関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。(第2項)
    労働基準法の基準を理由に労働条件を引き下げることは、たとえ労使の合意に基づくものであっても違反行為であるが、社会経済情勢の変動等他に決定的な理由がある場合には本条に抵触しない。
  • 第2条(労働条件の決定)
    労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである。(第1項)
    労働者及び使用者は、労働協約就業規則及び労働契約を遵守し、誠実に各々その義務を履行しなければならない。(第2項)
  • 第3条(均等待遇)
    使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。
    「国籍、信条、社会的身分」は限定列挙と解され、これら以外の理由で差別的取り扱いをすることは本条違反ではない。また、正社員と臨時社員とのように職制上の地位によって待遇に差を設けることは本条違反ではない。
    「差別的取扱」には、不利に取扱うのみならず、有利に取扱う場合も含まれる。
  • 第4条(男女同一賃金の原則)
    使用者は、労働者が女性であることを理由として、賃金について、男性と差別的取扱いをしてはならない。
    ここでいう「賃金」は、賃金額だけでなく賃金体系、賃金形態等も含む。賃金以外の労働条件について女性を差別することは男女雇用機会均等法で禁止される。
  • 第5条(強制労働の禁止)
    使用者は、暴行脅迫監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、労働者の意志に反して労働を強制してはならない
    「労働者の意思に反して労働を強制」とは、不当な手段を用いることにより労働者の意識ある意思を抑圧し、その自由な発現を妨げ、労働すべく強要することをいい、必ずしも現実に労働することを要しない
    本条違反には、1年以上10年以下の懲役又は20万円以上300万円以下の罰金が科せられる。本法で最も重い罰則である。
  • 第6条(中間搾取の排除)
    何人も、法律に基づいて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。
    ここでいう「法律」とは、職業安定法及び船員職業安定法である。これらの法律に定める料金等を超えて金銭等を収受すると本条違反になる。
    労働者派遣は、本条違反にはならない。
  • 第7条(公民権行使の保障)
    使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。但し、権利の行使又は公の職務の執行に妨げがない限り、請求された時刻を変更することができる。
    実際に権利が行使されたかどうかを問わず、拒むこと自体が本条違反に当たる。
    公民権の行使に係る時間を有給とするか無給とするかは当事者の事由に委ねられ、無給でもよい。
    応援のための選挙活動、一般の訴権の行使、予備自衛官の招集、非常勤の消防団員の職務等は、公民としての権利・公の職務に該当しないとされる。
  • 第9条(労働者の定義)
    この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
    使用者の指揮命令を受けて労働力を提供し、その労働の対価として賃金を支払われる者は、本条でいう「労働者」に当てはまる。したがって、法人の重役で業務執行権又は代表権を持たず、工場長、部長の職にあって賃金を受ける者は「労働者」に該当する。また労働組合の専従職員は、労働提供を免除されて組合事務に専従しているが、本条でいう「労働者」にあたる。
    「労働者」にあたらない例として、個人事業主、法人・団体等の代表者又は執行機関たる者、下請負人、同居の親族等があげられる。
  • 第10条(使用者の定義)
    この法律で「使用者」とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。
    「使用者」に該当するかどうかは、肩書にとらわれることなく、実質的に一定の権限を与えられているかどうかで判断する。単に上司の命令の伝達者にすぎない場合は、「使用者」に該当しない。

第2章 労働契約

  • 第13条(労働基準法違反の契約)
    この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となった部分は、この法律で定める基準による。
  • 第14条(契約期間等)
    労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、3年(次の各号のいずれかに該当する労働契約にあっては5年)を超える期間について締結してはならない。
    1. 専門的な知識、技術又は経験(以下この号において「専門的知識等」という。)であつて高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限る。)との間に締結される労働契約
    2. 満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約(前号に掲げる労働契約を除く。)
  • 第15条(労働条件の明示)
    使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。(第1項)
    前項の規定によって明示された労働条件が事実と相違する場合においては、労働者は、即時に労働契約を解除することができる。(第2項)
    前項の場合、就業のために住居を変更した労働者が、契約解除の日から14日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。(第3項)
    明示事項については、労働基準法施行規則に定めがある。詳細は労働条件#労働条件の明示を参照。
    即時解除は、使用者の即時解雇と対をなすが、他の労働者の労働条件が事実と相違していても、即時解除はできない。
    帰郷旅費については、労働者が家族とともに住居を移転した場合はその家族の旅費も含まれる。
  • 第16条(賠償予定の禁止
    使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
    あらかじめ定めておくことが禁止されているのであって、現実に生じた損害について損害賠償することまで禁止されているのではない。
  • 第17条(前借金相殺の禁止)
    使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。
    このため、労働者であることを条件として前貸しした借金については、給料から控除して払うことは禁止されている。これは、労働者が給料からの控除を希望した場合でも禁止されているので、いったん給料を全額支払った後に、労働者が借金を支払うという方法をとる必要がある。また、この場合、この条文により裁判所も差押命令を発することもできない。しかし、銀行に勤める人が一般の人向けに行っている住宅資金の貸付を受ける場合などは別とされている。つまり、労働者であることを条件に前貸しされている借金についてのみ、賃金との相殺が禁止されている。
  • 第18条(強制貯金)
    使用者は、労働契約に附随して貯蓄の契約をさせ、又は貯蓄金を管理する契約をしてはならない。
    事業場に雇う条件として社内預金をさせるようなこと(強制貯蓄)は禁止される。いっぽう、労働者の委託を受けて社内預金をするようなこと(任意貯蓄)は禁止されていない。任意貯蓄については労使協定を締結し、所轄労働基準監督署長に届出る必要がある。
  • 第19条(解雇制限)
  • 第20条(解雇の予告)
  • 第21条
  • 第22条(退職時等の証明)
  • 第23条(金品の返還)

第3章 賃金

第4章 労働時間、休息、休日及び年次有給休暇

  • 第32条(労働時間
    使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない。(第1項)
    使用者は、1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない。(第2項)
    「1週間」は、就業規則等に特段の定めがない限り、日曜日から土曜日までのいわゆる暦週をいう。「1日」は、午前0時から午後12時までのいわゆる暦日をいう。ただし継続勤務が2暦日にわたる場合は、たとえ暦日を異にする場合であっても1勤務として扱い、始業時刻の属する日の労働としての「1日」となる。
    1週間の労働時間の上限については、商業、映画・演劇業(映画の製作の事業を除く)、保健衛生業及び接客娯楽業のうち常時10人未満の労働者を使用するものについては44時間とする。
    これらの法定労働時間にとらわれない、柔軟な労働時間の枠組みを以下の各条で定めている。詳細は変形労働時間制およびフレックスタイム制を参照。
  • 第32条の2【1ヶ月単位の変形労働時間制】
  • 第32条の3【フレックスタイム制】
  • 第32条の4【1年単位の変形労働時間制】
  • 第32条の5【1週間単位の非定型的変形労働時間制】
  • 第33条(災害等による臨時の時間外労働
    災害その他避けることのできない事由によって、臨時の必要がある場合においては、使用者は、行政官庁(所轄労働基準監督署長)の許可を受けて、その必要の限度において法定労働時間を延長し、又は法定休日に労働させることができる。ただし、事態急迫のために行政官庁の許可を受ける暇がない場合においては、事後に遅滞なく届け出なければならない。(第1項)
    事後届出があった場合において、行政官庁がその労働時間の延長又は休日の労働を不適当と認めるときは、その後にその時間に相当する休憩又は休日を与えるべきことを、命ずることができる。(第2項)
    公務のために臨時の必要がある場合においては、官公署の事業(現業を除く)に従事する国家公務員及び地方公務員については、法定労働時間を延長し、又は法定休日に労働させることができる。(第3項)
    「災害等」には、急病、突発的な機械の故障で事業運営が不能となる場合は該当するが、単なる業務の繁忙や、通常予見される機会の部分的な修理等は該当しない。
    派遣労働者については、派遣先の使用者が許可または事後の届出を要する。第3項による公務員については、許可または事後の届出は不要である。年少者(18歳未満)であっても同様であるが、公務のための場合においては深夜業をさせることはできない。
  • 第34条(休憩
    使用者は、労働時間が6時間を超える場合においては少なくとも45分、8時間を超える場合においては少くとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。
    残業時間が何時間であっても、1時間の休憩を与えれば違法ではない。
  • 休憩の3原則
  1. 途中付与の原則
    休憩時間は、労働時間の途中に与えなければならず、勤務時間の始めまたは終わりに与えることは本条違反となる。
  2. 一斉付与の原則
    休憩時間は一斉に与えなければならない。ただし当該事業所に労使協定がある場合はこの限りではない。
    坑内労働の場合、運輸交通業、商業、金融広告業、映画演劇業、通信業、保健衛生業、接客娯楽業又は官公署の事業の場合は、労使協定を締結しなくても、休憩を一斉に付与しなくてよい。
  3. 自由利用の原則
    使用者は、休憩時間を自由に利用させなければならない。もっとも、事業場の規律保持上必要な制限(外出を許可制にする等)を加えることは、休憩の目的を害しない限り差し支えない。
    坑内労働をしている者、警察官、消防吏員、常勤の消防団員、児童自立支援施設に勤務する職員で児童と起居を共にする者、乳児院・児童養護施設・障害児入所施設に勤務する職員で児童と起居を共にする者であって使用者があらかじめ所轄労働基準監督署長の許可を受けた者、については、自由利用させなくても差し支えない。
  • 第35条(休日
    使用者は、労働者に対して、毎週少くとも1回の休日を与えなければならない。この規定は、4週間を通じ4日以上の休日を与える使用者については適用しない。
    休日の単位は、暦日の午前0時から午後12時までの休業をいう。ただし、8時間3交代制連続作業の交代制においては、継続した24時間でもよい。なお日曜日や祝日を休日としなくても、本条違反とはならない。
    4週4休の場合は、その4週の起算日を明らかにする必要がある。また、4週ごとに4日の休日があればよく、どの4週を区切っても4日の休日がなければならないということではない。
    あらかじめ休日と定められている日を労働日としてその代わりに他の労働日を休日とする(休日の振替)場合は、休日労働にならないので、割増賃金の支払いは不要である。これに対し、休日に労働を行った後に、後の特定の労働日の労働義務を免除する(代休)場合は、休日労働に関する割増賃金の支払いが必要である。
  • 第36条(時間外及び休日の労働)
    時間外労働
  • 第38条(時間計算)
    労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する。(第1項)
    坑内労働については、労働者が坑口に入つた時刻から坑口を出た時刻までの時間を、休憩時間を含め労働時間とみなす。但し、この場合においては、第34条第2項及び第3項の休憩に関する規定は適用しない。(第2項)
    「労働時間」とは、使用者の明示または黙示の指示によって、労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいう。労働時間に該当するかどうかは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるかどうかによって客観的に定まるものであって、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんによって決定されるものではない。
  • 第39条(年次有給休暇
  • 第40条(労働時間及び休憩の特例)
    別表第一第1号から第3号まで、第6号及び第7号に掲げる事業以外の事業で、公衆の不便を避けるために必要なものその他特殊の必要あるものについては、その必要避くべからざる限度で、第32条から第32条の5までの労働時間及び第34条の休憩に関する規定について、厚生労働省令で別段の定めをすることができる。(第1項)
    前項の規定による別段の定めは、この法律で定める基準に近いものであって、労働者の健康及び福祉を害しないものでなければならない。(第2項)
  • 第41条(労働時間等に関する規定の適用除外)
    労働基準法で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
    1. 別表第一第6号(林業を除く)又は第7号に掲げる事業に従事する者
    2. 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
    3. 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの
    これらの者については、法定労働時間を超えて労働させることができ、時間外労働に対する割増賃金の支払義務も発生しない。また、法定の休憩や休日を与えなくても違法とならない。一方、深夜業の規定と年次有給休暇の規定はこれらの者にも適用される。
    「監督又は管理の地位にある者」とは、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいう。具体的には、職務内容、権限及び責任に照らし、企業全体の事業経営にどのように関与しているか、その勤務態様が労働時間等に関する規制になじまないものであるか否か、給与及び一時金において管理監督者にふさわしい待遇がされているか否か、などの点から判断すべきである(日本マクドナルド事件、東京地判平20.1.28)。
    「機密の事務を取り扱う者」とは、秘書その他職務が管理監督者の活動と一体不可分であり、厳格な労働時間管理になじまない者をいう。
    「監視又は断続的労働に従事する者」とは、一定部署にあって監視を本来の業務とし、常態として身体の疲労又は精神的緊張の少ない業務に従事する者や、休憩時間は少ないが手待ち時間が多い者をいう。他の業務を本務とする者が附随的に監視又は断続的業務に従事する場合も含まれる。
    41条該当者であっても、産前産後の休業、育児時間、生理休暇の規定は適用される。

第5章 安全及び衛生

労働基準法制定時には、安全及び衛生について一章を設けていたが、労働安全衛生法の施行により、主な条文はそちらで定めることとしたため、労働基準法上の条文は削除されている。

第6章 年少者

民法の未成年者に関する規定について、労働法上の特則を定めている。

  • 第56条(最低年齢)
    使用者は、児童が満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで、これを使用してはならない。
    満13歳以上の児童については、修学時間外に、健康及び福祉に有害でなくその労働が軽易なものについては、行政官庁(所轄労働基準監督署長)の許可を受けて使用出来る。また、映画製作・演劇に限り、満13歳に満たない児童についても同様の条件で使用出来る。
    最低年齢違反の労働契約に就労している児童を解雇する場合についても、20条の解雇予告に関する規定は適用される。
  • 第57条(年少者の証明書)
    使用者は、満18歳に満たない者について、その年齢を証明する戸籍証明書を事業場に備え付けなければならない。使用者は、前条第2項の規定によって使用する児童については、修学に差し支えないことを証明する学校長の証明書及び親権者又は後見人の同意書を事業場に備え付けなければならない。
    年齢確認義務は、使用者が負う。
  • 第58条(未成年者の労働契約)
    親権者後見人は、未成年者の代理になって労働契約を締結してはならない。親権者若しくは後見人又は行政官庁は、労働契約が未成年者に不利であると認める場合においては、将来に向ってこれを解除することができる。
  • 第59条
    未成年者は、独立して賃金を請求することができる。親権者や後見人が代理として受け取ってはならない。
  • 第61条(深夜業
    満18歳に満たない者を22時~5時までの間は使用してはならない。
    厚生労働大臣が認めた場合のみ、地域や期間限定で、23時~6時までとすることができる。
    満13歳に満たない児童については20時~5時までの間は使用してはならない。
  • 第62条(危険有害業務の就業制限)
    使用者は、満18歳に満たない者を、一定の危険な業務に就かせ、又は一定の重量物を取り扱う業務に就かせてはならない。
    都道府県労働局長の許可を受けた使用者は、認定職業訓練の訓練生に技能を習得させるために必要がある場合においては、これらの業務に就かせることができる
  • 第63条(坑内労働の禁止)
    使用者は、満18歳に満たない者を、坑内で労働させてはならない。
    都道府県労働局長の許可を受けた使用者は、認定職業訓練の訓練生に技能を習得させるために必要がある場合においては、満16歳以上の男性である訓練生を坑内労働に就かせることができる(労働基準法施行規則第34条の3)。
  • 第64条(帰郷旅費)
    満18才に満たない者が解雇の日から14日以内に帰郷する場合においては、使用者は、必要な旅費を負担しなければならない。ただし、満18才に満たない者がその責めに帰すべき事由に基づいて解雇され、使用者がその事由について行政官庁の認定を受けたときは、この限りでない。

第6章の2 妊産婦等

女性特有の身体状況に対する特則を定める。「妊産婦」とは、妊娠中の女性及び産後1年を経過しない女性をいう。

  • 第64条の2(坑内業務の就業制限)
    使用者は、次の各号に掲げる女性を当該各号に定める業務に就かせてはならない。
    1. 妊娠中の女性及び坑内で行われる業務に従事しない旨を使用者に申し出た産後1年を経過しない女性・・坑内で行われるすべての業務
    2. 前号に掲げる女性以外の満18歳以上の女性・・坑内で行われる業務のうち人力により行われる掘削の業務その他の女性に有害な業務として厚生労働省令で定めるもの(人力・動力(遠隔操作を除く)・発破により行われる鉱物等の掘削等の業務及びこれらの業務に附随する資材の運搬等の業務)
  • 第64条の3(危険有害業務の就業制限)
    使用者は、妊産婦を、重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所における業務その他妊産婦の妊娠、出産、哺育等に有害な業務に就かせてはならない。
    使用者は、妊産婦以外の満18歳以上の女性であっても、以下の「女性の妊娠又は出産に係る機能に有害である業務」にに就かせてはならない。
    1. 断続作業の場合30キログラム以上、継続作業の場合20キログラム以上の重量物を扱う業務
    2. 特定化学物質、鉛中毒予防規則又は有機溶剤中毒予防規則に定める一定の有害物を発散する作業場の業務であって、呼吸用保護具の使用が義務付けられている業務及び作業環境測定の結果、第3管理区分に区分された屋内作業場の業務
  • 第65条(産前産後)
    使用者は、出産予定日の6週(多胎妊娠の場合14週)以内に出産する予定の女性がに休業を請求した場合、その者を就業させてはならない。
    使用者は、出産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、6週間を経過した女性が請求した場合において、医師が支障がないと認めた業務に就かせることは差し支えない。
    使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない。
    女性が請求しなければ、出産日まで就業させて差し支えない。なお、出産当日は、産前6週間に含まれる。「出産」とは、妊娠4カ月以上の分娩をいい、正常分娩に限らず、早産、流産、死産を含む。
    「産前6週間」は、出産予定日を基準として計算し、「産後8週間」は、現実の出産日を基準として計算する。
    「軽易な業務」については、他に軽易な業務がない場合において新たに軽易な業務を創設してまで与える義務はない。また軽易な業務がないためにやむを得ず休業する場合においては、休業手当を支払う必要はない。
  • 第66条
    使用者は、妊産婦が請求した場合には、以下のようにしなければならない。
    1. 1カ月単位の変形労働時間制、1年単位の変形労働時間制、1週間単位の非定型的変形労働時間制を採用している場合であっても、1週間について1週の法定労働時間、1日について1日の法定労働時間を超えて労働させてはならない(フレックスタイム制についてはこの限りではない)。
    2. 災害等若しくは公務のために臨時の必要がある場合又は三六協定を締結している場合であっても、時間外労働・休日労働をさせてはならない。
    3. 深夜業をさせてはならない
    妊産婦が請求しなければ、時間外・休日・深夜労働をさせてよい。また、41条該当者については時間外・休日労働をさせてよい(深夜業は不可)。
  • 第67条(育児時間)
    生後満1年に達しない生児を育てる女性は、第34条の休憩時間のほか、1日2回各々少なくとも30分、その生児を育てるための時間を請求することができる。使用者は、この育児時間中は、その女性を使用してはならない。
    「生児」については、必ずしもその女性が出産した子である必要はない。
    女性が請求しなければ、育児時間を与えなくてもよい。また、男性が請求しても、育児時間を与える必要はない。育児時間を有給とするか否かは、当事者の自由であり、無給でもよい。
    1日の労働時間が4時間以内である場合には、1日1回の育児時間の付与で足りる。
  • 第68条(生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置)
    使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない。
    生理休暇を有給とするか否かは、当事者の自由であり、無給でもよい。日単位でも時間単位でもよいが、就業規則等でその上限を設けることは認められない。

第7章 技能者の養成

  • 第69条(徒弟の弊害排除)
    使用者は、徒弟、見習、養成工その他名称の如何を問わず、技能の習得を目的とする者であることを理由として、労働者を酷使してはならない。(第1項)
    使用者は、技能の習得を目的とする労働者を家事その他技能の習得に関係のない作業に従事させてはならない。(第2項)

第8章 災害補償

  • 第75条(療養補償)
    労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかった場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない。
  • 第76条(休業補償)
    労働者が前条の規定による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の60%の休業補償を行わなければならない。
  • 第79条(遺族補償)
    労働者が業務上死亡した場合においては、使用者は、遺族に対して、平均賃金の1000日分の遺族補償を行わなければならない。
  • 第80条(葬祭料)
    労働者が業務上死亡した場合においては、使用者は、葬祭を行う者に対して、平均賃金の60日分の葬祭料を支払わなければならない。
  • 第81条(打切補償)
    第75条の規定によつて補償を受ける労働者が、療養開始後3年を経過しても負傷又は疾病がなおらない場合においては、使用者は、平均賃金の1200日分の打切補償を行い、その後はこの法律の規定による補償を行わなくてもよい。
  • 第83条(補償を受ける権利)
    補償を受ける権利は、労働者の退職によつて変更されることはない。補償を受ける権利は、これを譲渡し、又は差し押えてはならない。

第9章 就業規則

第10章 寄宿舎

第11章 監督機関

  • 労働基準主管局(厚生労働省本省に「労働基準局」が置かれている)
  • 都道府県労働局
  • 労働基準監督署
  • この法律に規定される事項に違反があった場合について、労働基準監督機関による監督行政の対象となる(第97条~第105条)。
  • 第104条(監督機関に対する申告)
    事業場に、この法律又はこの法律に基いて発する命令に違反する事実がある場合においては、労働者は、その事実を行政官庁又は労働基準監督官に申告することができる。使用者は、この申告をしたことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱をしてはならない

第12章 雑則

  • 第115条(時効
    この法律の規定による賃金(退職手当を除く)、災害補償その他の請求権は2年間、この法律の規定による退職手当の請求権は5年間行わない場合においては、時効によって消滅する。
  • 第116条(適用除外)
適用事業
1998年改正前の労働基準法第8条では労働基準法の適用事業が規定されていたが、現行法はこの規定を廃止して原則として全事業に労働基準法を適用することとしている。ただし、それぞれの業種の性質に応じて法規制を行う必要があるため、労働基準法では別表第1で業種を例示列挙している。
適用外
同居の親族のみを使用する事業(第2項) - 全面的適用除外
家事使用人 - 家庭は事業ではないため適用外
船員法に規定する船員(第1項)。但し、労働基準法の労働条件の基本原則及び罰則等に関する規定については船員にも適用される。
一般職の国家公務員国家公務員法附則第16条参照) - 但し、独立行政法人国有林野事業の職員は除く
一般職の地方公務員についての一部(地方公務員法第58条第3項参照)

第13章 罰則

  • 違反事項には罰則対象のものもある(第117条~第121条)。

関連文献・記事

関連項目

外部リンク