坪尻駅

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坪尻駅
駅舎(2017年3月)
つぼじり
Tsubojiri
D18 讃岐財田 (8.2 km)
(3.3 km) 箸蔵 D20
地図
所在地 徳島県三好市池田町西山
北緯34度3分14.53秒 東経133度49分25.25秒 / 北緯34.0540361度 東経133.8236806度 / 34.0540361; 133.8236806座標: 北緯34度3分14.53秒 東経133度49分25.25秒 / 北緯34.0540361度 東経133.8236806度 / 34.0540361; 133.8236806
駅番号 D19
所属事業者 四国旅客鉄道(JR四国)
所属路線 土讃線
キロ程 32.1 km(多度津起点)
電報略号 ツリ
駅構造 地上駅
ホーム 1面1線
乗降人員
-統計年度-
2[1]人/日
-2019年-
開業年月日 1950年昭和25年)1月10日
備考 無人駅
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坪尻駅(つぼじりえき)は、徳島県三好市池田町西山にある、四国旅客鉄道(JR四国)土讃線である。駅番号D19

車道集落には山道でしか通じておらず徒歩でしか駅へ向かうことのできない、いわゆる秘境駅の一つとして知られる[2]

概要[編集]

阿讃山地の谷あい[3]、徳島県と香川県の県境にある猪ノ鼻峠付近、標高272 m[4]の地点に位置する。周辺に集落は複数あるが、駅まで行ける車道は無い。

勾配がきついためスイッチバック駅になっており、香川県側から来た列車は同駅をいったん通り過ぎてから後退し、香川県側へ向かう列車は一度戻ってから斜面を登っていく[2][5]

駅利用者が極めて少ない上に、普通列車自体が減便されているため、同駅に停車する定期列車は1日で下り3本/上り4本のみ、そして終列車は下り(阿波池田行き)が16:51発、上り(琴平行き)が17:01発と、いずれも日没前となっている(2023年7月時点)。

歴史[編集]

駅構造[編集]

単式ホーム1面1線を有するスイッチバック式地上駅で、阿波池田駅管理の無人駅。ホームは2両分のみ嵩上げされている。

ホームが1面1線のみのため、当駅で普通列車同士が行き違う場合はいずれかが必ず通過となる[4]。本線通過制限速度は100 km/hで、通過列車は、横の本線を高速で去っていく。かつてはシーサス・クロッシングポイントが設置されていた(画像参照)が、JR化後の高速化改良工事により撤去され、現在の形となった。

当駅で停車する列車においては、下り列車は引き上げ線に待避してから駅に進入し、上り列車は駅を出発して引き上げ線に待避したのち讃岐財田駅に向かう。運転士は進行方向を変えるごとに必ず前方となる運転台へ移動する(車掌が乗務する列車ではバックで進入させることもある)。

駅舎内の待合室は出入口・ホーム側ともに引き戸となっており閉めることもできるため、虫の侵入を防ぐことができる。また、待合室内には発車時刻表、10分以上停車する列車の時刻表、定期列車の通過時刻表が掲示されている(通過時刻表は踏切にも掲示されている)。このほか、駅ノート[2]駅スタンプが置かれている。駅スタンプは当初、2008年5月15日に地元の町づくり団体から寄贈されたものが置かれていたが、2010年2月10日に紛失したことが判明し[14]、その2ヶ月後に、青森県津軽線中沢駅で発見された[15]。しかし、2018年8月に、再び駅スタンプが紛失したことが判明し、今回も盗難に遭ったと見られている[16]2019年1月時点でも発見できなかったことから、2個目の駅スタンプが設置された[17]

なお、駅舎内のトイレは閉鎖されており、現在は使用できなくなっている。

利用状況[編集]

2019年度の1日平均乗降人員は2人である[18]

駅から徒歩で30分ほど山道を登った所に木屋床こやとこという集落があり、開業当時は通学客や野菜の行商に出る人などで賑わっていた。しかし、集落付近に道路が整備されたため、駅を利用する住民はほとんど居なくなった[19]

1997年6月20日放送の朝日放送(ABCテレビ)製作の『探偵!ナイトスクープ』では、番組に寄せられた「この駅の乗降客数を調べてほしい」という依頼で、調査が行われた[20]。その際の乗降客数は24時間で、一組の夫婦が駅から出かけ、駅へ帰ってきた「のべ4人」だった。鉄道ルポ漫画『鉄子の旅』の作者達が2003年9月にこの駅を訪れた際には、「30分くらい歩いたところに」住んでいる77歳の老人と遭遇したことが描かれている(単行本第2集収録・第16旅)。

1998年4月22日に放送されたテレビアニメセンチメンタルジャーニー』の第3話「七瀬優 -星降る夜の天使-」にてストーリーの冒頭で当駅が登場したことがあり、熱心な同作品のファンの訪問(聖地巡礼)により利用客が微増していた時期があった。

2010年6月2日に放送されたテレビ朝日系列のバラエティ番組『ナニコレ珍百景』で、「利用者が1人しか居ない駅」として紹介された。その1人とは『探偵!ナイトスクープ』で紹介された夫婦の夫の方である。その後2014年6月4日に放送された同番組で、その男性は体調を崩し入院中のため利用していないが、駅を見にくる他の利用者がいると紹介された[21]

2016年9月14日に放送されたフジテレビ系列のバラエティ番組『世界の何だコレ!?ミステリー 日本の謎を大調査SP/消えた秘宝が徳島に眠る?』において、当駅開業当初は1日平均20名の利用者がおり、現在はある意味面白い駅として、全国から利用者がいることが証言されている[22]

駅周辺[編集]

鮎苦谷川沿いの谷に駅が位置するため、車では近づくことができず、到達手段は徒歩のみである[4]

駅舎を出ると、東側・西側にそれぞれ山道が1本ずつあり、駅舎の南側にある踏切[23] を東側へ渡って10 - 20分程度歩くと徳島県道5号観音寺池田線(旧国道32号。2021年4月に国道指定取り消し)に、西側へ行くと市道に出る。ただし、山道にはゴミが散乱していたり倒木があったりする場合があるほか、降雨時や雨上がりは地面がぬかるんでおり、ごく一部を除いて柵がないため崖下に落ちる危険性もあるため注意が必要。また、季節によってはマムシハチが出ることもある。

踏切を渡った先にはかつて雑貨店があったが、現在は廃屋となって放置されている(連続強盗殺人の犯人が押し入った店跡である。「四国連続強盗殺人事件」参照)。

当駅は近隣住民の請願によって駅に昇格したこともあり、旧国道32号より駅までの600メートルの山道は、近隣住民による手作りであることが『世界の何だコレ!?ミステリー』で証言されている。

なお、駅が立地しているのは、元は鮎苦谷川(州津川)の川底だった場所である。建設に際して、敷地を確保するため水を流すトンネルを掘削して川の流路を変えた上で川底を埋め立て、駅(当時は信号場)が設置された[24]。線路を通すためにトンネルで川を迂回させた場所は当駅の前後にも1カ所ずつあり、そのうちの1つは坪尻駅より多度津側のトンネルを出た車窓の西側に見える。

駅から直線距離で500メートルほど南東に離れた県道近くの場所[25] に坪尻駅展望台(落展望台)が設けられており[4]、遠目になるがここから駅を眺めることができる。

バス路線[編集]

香川・徳島県道5号線沿いに四国交通の「坪尻」停留所があり、野呂内線のバスが経由する。なお、1月1日は全便運休となる[26]

その他[編集]

  • ミステリー小説の短編集『秘境駅のクローズド・サークル』(鵜林伸也著、東京創元社、2022年刊)の表題作では坪尻駅とその周辺を舞台にした殺人事件が発生し、スイッチバックを利用したトリックが考案されている。

隣の駅[編集]

四国旅客鉄道(JR四国)
土讃線
普通(一部列車は通過)
讃岐財田駅 (D18) - 坪尻駅 (D19) - 箸蔵駅 (D20)

脚注[編集]

  1. ^ 徳島県 駅乗降客数”. 2021年3月11日閲覧。
  2. ^ a b c 【いいね!探訪記】JR坪尻駅(徳島県三好市)何もないだから降りたい朝日新聞』夕刊2022年12月17日3面(2022年12月24日閲覧)
  3. ^ 東四国の自然を楽しむガイドブック - 地形・地質を中心として -日本第四紀学会(2022年3月16日閲覧)
  4. ^ a b c d プレスマンユニオン編集部: “坪尻駅(スイッチバック駅)”. ニッポン旅マガジン(プレスマンユニオン). 2022年4月20日閲覧。
  5. ^ スイッチバック駅は四国に二つのみで。もう一つは同じ土讃線新改駅である。
  6. ^ 豫讃線 鉄道停車場一覧. 昭和9年12月15日現在
  7. ^ 官報. 1929年04月20日
  8. ^ 大蔵省印刷局(編)「日本国有鉄道公示 第5号」『官報』第6895号、国立国会図書館デジタルコレクション、1950年1月9日。 
  9. ^ a b 石野哲(編)『停車場変遷大事典 国鉄・JR編 Ⅱ』(初版)JTB、1998年10月1日、664頁。ISBN 978-4-533-02980-6 
  10. ^ 「通報 ●土讃本線及び中村線の駅員無配置について(旅客局)」『鉄道公報日本国有鉄道総裁室文書課、1970年9月26日、7面。
  11. ^ 「日本国有鉄道公示第389号」『官報』、1970年9月26日。
  12. ^ ※記事名不明※『交通新聞』2010年1月14日
  13. ^ 「絶景!土讃線秘境トロッコ号」デビュー! 巡るめく四国 四国地区観光公式サイト
  14. ^ 徳島新聞「寄せ書きノート9冊なくなる」”. 徳島新聞 (2009年4月24日). 2009年5月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年12月1日閲覧。
  15. ^ 不可解な旅…土讃線坪尻駅で盗難のスタンプ青森に読売新聞(2010年4月25日)
  16. ^ 無人の「秘境駅」スタンプ、盗難か 8年前も持ち去られ 朝日新聞(2018年12月17日)
  17. ^ 坪尻駅スタンプ 苦渋の新調”. YOMIURI ONLINE(読売新聞) (2019年1月8日). 2019年1月8日閲覧。
  18. ^ 徳島県 駅乗降客数”. 2021年3月10日閲覧。
  19. ^ 所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ! 2014年4月4日放送回 - gooテレビ番組
  20. ^ ロケ実績一覧(徳島県ロケーション・サービス)
  21. ^ 「ナニコレ珍百景」2014年6月4日放送回 - gooテレビ番組
  22. ^ 「世界の何だコレ!?ミステリー」2016年9月14日放送回 - gooテレビ番組
  23. ^ 遮断桿が設けられており、通行の際は自力で前に押し出す。
  24. ^ 徳島新聞「土讃線いま昔」Archived 2014年9月3日, at the Wayback Machine.
  25. ^ 北緯34度03分03.9秒 東経133度49分38.6秒 / 北緯34.051083度 東経133.827389度 / 34.051083; 133.827389 (坪尻駅展望台)
  26. ^ 野呂内線時刻表(2020年11月25日改正)四国交通

関連項目[編集]

外部リンク[編集]