公的職業安定組織

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公的職業安定組織(こうきょうしょくぎょうあんていそしき 英語public employment service)とは、政府により運営される職業紹介事業国際労働機関条約88条に基づき加盟国に設置され、無料で利用できる。

雇用の仲介を行うだけでなく、職業訓練の援助サービスも責務である。

国際労働条約[編集]

国際労働条約第88号では、公的職業安定組織が提供すべきサービスを定義している。日本はこれを批准している。

第1条1 この条約の適用を受ける国際労働機関の加盟国は、無料の公共職業安定組織を維持し、又はその維持を確保しなければならない。

第2条 職業安定組織は、国の機関の指揮監督の下にある職業安定機関の全国的体系で構成される。

第6条 職業安定組織は、効果的な募集及び斡旋を確保することができるように構成しなければならず、また、この目的のため、

(a) 労働者が適当な職業を見出すこと及び使用者が適当な労働者を見出すことを援助し、特に、全国的に適用される規程に従つて次のことを行わなければならない。
(i) 求職者を登録し、その者について、職業上の技能、経験及び希望を記録し、職業紹介のために面接し、必要な場合にはその肉体的及び職業的能力を評価し、並びに適当な場合にはその者が職業指導又は職業訓練若しくは職業再訓練を受けることを援助すること。
(ii) 使用者が職業安定機関に通告する求人及び使用者の求めている労働者の具備すべき要件について正確な情報を使用者から得ること。
(iii) 職業的及び肉体的能力を有する求職者を適当な職業に紹介すること。
(iv) 最初の職業安定機関が求職者を適当な職業に斡旋することができないか若しくは求人を適当に充足することができない場合又は他の適当な事由がある場合には、求職及び求人を他の職業安定機関に連絡すること。
 (b) 次のことを行うため適当な措置を執らなければならない。
(i) 労働力の供給を各種の職業における雇用機会に適応させるため職業間の移動を容易にすること。
(ii) 適当な雇用機会のある地域への労働者の移動を援助するため地域間の移動を容易にすること。
(iii) 労働力の需要供給の一時的な地方的不均衡に応ずる手段として、一地域から他の地域への労働者の一時的移動を容易にすること。
(iv) 関係政府の承認を得て行われる一国から他国への労働者の移動を容易にすること。
(d) 失業保険、失業者扶助その他の失業者救済措置の実施について協力しなければならない。
—  1948年の職業安定組織条約(第88号)

各国の公的職業安定組織[編集]

日本[編集]

日本においては、厚生労働省設置法23条に基づき設置される公共職業安定所(ハローワーク、英語Hello Work)が該当する。

アメリカ合衆国[編集]

イギリス[編集]

ジョブセンタープラス(jobcentre plus)

ドイツ[編集]

アーゲントゥーア・フュア・アルバイト(Agentur für Arbeit:AA、雇用エージェンシー)。連邦雇用庁(Bundesagentur für Arbeit)が運営。連邦雇用庁が公社化する前はアルバイツアムト(Arbeitsamt、雇用局)と呼ばれていた。

フランス[編集]

ポール・アンプロワ(Pole emploi)2008年12月19日に発足。(業務開始は2009年1月1日)  フランスでは職業紹介業務はアンペ(ANPE, fr:Agence nationale pour l'emploi)という政府機関が行い、失業保険は全国商工業雇用連合(UNEDIC)及びその地方機関である商工業雇用協会(ASSEDIC)という労使が協約により設立した機関よって運営されていた。現在では政府機関として統合され、国家公務員による運営がなされている。統合前の2008年には合わせて4万5000人の職員数であったが、統合の際に3000人増員され現在では4万8000人で運営されている。統合に際しては経済協力開発機構の1994年雇用戦略及び2006年雇用戦略(1994年雇用戦略の改訂)においては職業紹介と失業給付の統合・一体化が求められていたことも背景にある。

オーストラリア[編集]

公共職業安定機関は存在しない

韓国[編集]

雇用労働部傘下の、韓国雇用情報院が運営する「雇用センター」(ko:고용센터) が全国各地に設けられている。日本同様、職業紹介、雇用保険、失業保険の手続きを行っている。

関連項目[編集]