関電トンネル電気バス

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関電トンネル電気バス(かんでんトンネルでんきバス)は、長野県大町市扇沢富山県中新川郡立山町黒部ダムとの間を関電トンネル経由で結ぶ、関西電力(関電)のバス路線である。立山黒部アルペンルートの一部を構成する。

長野・富山県境の交通は飛騨山脈後立山連峰)の急峻な地形によって阻まれており、一般の車両が通ることができる道路はないことから、本路線は両県境を直接行き来することができる唯一の交通機関となっている[1]

本項では、前身として2018年まで運行していた「関電トンネルトロリーバス」についても記述する。

概要[編集]

関電が2018年まで運営していた無軌条電車(トロリーバス)の路線(関電トンネルトロリーバス、正式名称:関電トンネル無軌条電車[2])を引き継いだもので、2019年から電気バスによる営業運行を行っている[3]。関電のグループ企業が運営する北アルプス交通関電アメニックス)や黒部峡谷鉄道と違い、本路線は関電の黒四管理事務所運輸課による直営である[4]

使用される車両は日野・ブルーリボンがベースで[5]、15台が配備されている。車載パンタグラフ経由で蓄電池に充電する方式で、扇沢の乗り場に設置された充電設備により、10分間で急速充電する。主電動機は三相同期電動機で、トロリーバスの約2倍の出力となる[6]。最高速度は50 km/h[6]。トロリーバス時代と比べ、座席数は36席から33席に減り、定員は72名から80名に増加している[6]。車体は北アルプスの雪に着想を得た白を基調色とし[7]、「黒四」にちなんだ黒色の線が4本入っている[5]。また、退役したトロリーバス車両から取り外した関電の社章が前面に取り付けられている[7]。車内のつり革のデザインは、黒部ダムのマスコットキャラクターである猫「くろにょん」をモチーフにしている[8]

冬季休業中や修理点検の際に公道を回送するため自家用ナンバープレート(いわゆる白ナンバー)を取得しているが、営業運転では1001 - 1015の通し番号が入ったプレートを掲示する。事業用の緑ナンバーでないのは、営業運転の経路が国立公園の敷地内であり、道路交通法上の「道路」に当たらないため、ナンバー取得の必要がないからである[5]。また、トロリーバスでは、運転士は動力車操縦者運転免許(無軌条電車運転免許)と大型自動車第二種運転免許の取得が必要であったが、電気バス転換後は大型二種免許のみで運転ができる[5]

歴史[編集]

関電トンネルは関電黒部川第四発電所関連施設の建設のための資材輸送用の「大町トンネル」として建設され、1958年に貫通した。このため関電トンネルは、バス運行の合間に、黒部トンネルとともに工事用車両による工事用資材輸送にも使用されている。

黒部川第四発電所竣工に伴い、関電トンネルは立山黒部アルペンルートの一部として転用されることになったが、通常のバスによる運行ではトンネル内の排気ガスの問題があったためトロリーバスが選択され、1964年8月1日に開業した。

老朽化したトロリーバス車両「300形」を更新するにあたり、運行ルートが中部山岳国立公園内であることから、関電は環境性および運行にかかる経済性なども踏まえ、2019年4月の冬季休業明けよりトロリーバスから電気バスに変更する方針とした。2017年8月28日、北陸信越運輸局に「関電トンネル無軌条電車」の鉄道事業廃止届が出された[6][9]のち、2018年の冬季休業前の営業最終日となる11月30日限りでトロリーバスとしての運行を終了し、翌12月1日に廃止された[10]。トロリーバスとして営業していた54年間、無事故であった[11]

なお、トロリーバス運行最終年の2018年、関電は「トロバスラストイヤーキャンペーン」として、2018年4月15日 - 11月30日の間、各種イベントを実施した[12]。最終運行日の11月30日には引退セレモニーが行われ、この日のトロリーバス最終便に乗車するには扇沢駅と黒部ダム駅で配布する整理券の提示を必要とするなど、混乱を招かない工夫もされた[13]

冬季休業明けの2019年4月15日から電気バスとして営業を開始した。これに伴い、関電では「電気バス元年キャンペーン」と銘打って同年11月30日まで各種のイベントを実施する予定である[14]

年表[編集]

(トロリーバス時代の歴史も含める)

  • 1963年昭和38年)
    • 3月26日 - 「関西電力株式会社の上扇沢・ダム間の地方鉄道(無軌条電車)敷設免許申請について」運輸審議会へ諮問[15]
    • 4月23日 - 運輸審議会が「関西電力株式会社申請の上扇沢・ダム間(5.9キロ)の地方鉄道(無軌条電車)の敷設は、免許することが適当である。」と答申[15]
  • 1964年(昭和39年)8月1日 - 扇沢駅 - 黒部ダム駅間が開業。トロリーバス運行開始。
  • 2017年平成29年)
    • 7月6日 - トロリーバスの乗車人数が累計6000万人を達成し、記念式典を扇沢駅で開催[16]
    • 8月28日 - 北陸信越運輸局に鉄道事業廃止を届出[9]
  • 2018年(平成30年)
    • 11月30日 - トロリーバス最終運行日[13]
    • 12月1日 - 鉄道(トロリーバス)事業を廃止[10]。これにより扇沢駅・黒部ダム駅は鉄道駅ではなくなる。
  • 2019年(平成31年)4月15日 - トロリーバスの後継として電気バスによる運行を開始[3]

トロリーバス時代[編集]

関電トンネルトロリーバス
黒部ダム駅に停車中の車両
黒部ダム駅に停車中の車両
基本情報
日本の旗 日本
所在地 長野県富山県
種類 無軌条電車
起点 扇沢駅
終点 黒部ダム駅
駅数 2駅
開業 1964年8月1日
廃止 2018年12月1日[10]
所有者 関西電力
運営者 関西電力
使用車両 車両の節を参照
路線諸元
路線距離 6.1km
線路数 単線
電化方式 直流600 V 架空電車線方式
テンプレートを表示
停車場・施設・接続路線
BUS
↑路線バス(信濃大町方面)
uexSTR+l uexBHFq uexSTR+r
0.0 扇沢駅
uexSTR uextSTRa
uextSTRa uextSTR
uextSTRl uextSTRq uextABZg+r
uextSTR+GRZq
長野県富山県
uextBS2+l uextBS2+r
関電トンネル 5.4km
uextBS2l uextBS2r
uextSTR
uextSTRq uextABZq+l uextABZgr+r
黒部トンネル(専用線)
uextSTR uextBHF
6.1 黒部ダム駅
uextSTRl uextSTRr
WASSERq uexRESVGl WASSERq
黒部ダム黒部湖
tKBHFa
黒部湖駅
FUNI tSTR
黒部ケーブルカー

運行形態[編集]

所要時間16分。冬期(毎年12月1日 - 翌年4月中旬)は運休。

扇沢 - 黒部ダム間 6.1 kmの全線単線で架線電圧は直流600 Vであった。旅客数を勘案して発車前にトロリーバスの両数を決めて、それらを1つの「列車」として運行するため、各トロリーバスに運転士が乗り込んでの続行運転となり、最後尾の車両は車両上部の前部・後部表示灯のオレンジ色の灯火を2つ点灯させていた。

関電トンネル内の扇沢起点4.2 kmにお互いの車両がすれ違うための中間信号場(鉄道で言えば交換設備)があり、閉塞区間はそこを境に扇沢 - 信号場、信号場 - 黒部ダムの2つの区間で構成されていた。それにより鉄道としての閉塞運転が行われるが、スタフ閉塞式による閉塞運転が採用されていた。これは、運行票と呼ばれる通票(スタフ)を使用して行われており、扇沢 - 信号場間の黄色 (A) の運行票を扇沢発の下り最後尾車両に、信号場 - 黒部ダム間の赤色 (B) の運行票を黒部ダム発の上り最後尾車両にそれぞれ持たせ、中間信号場に到着した時、扇沢 - 信号場間の黄色 (A) の運行票を上りの先頭車両に、信号場-黒部ダム間の赤色 (B) の運行票を下り先頭車両にそれぞれ渡して閉塞を確保していた。

また、信号機による閉塞も並行して行われ、扇沢駅には出発・場内信号機各1基、中間信号場構内には出発・場内信号機各2基、黒部ダム駅には出発・場内信号機各1基と出発信号機中継用の中継信号機が設置されており、扇沢駅にある運転指令室で本線に支障がないことをトンネル内各所に設置されたカメラによるモニターで確認した上で指令員が扇沢駅と黒部ダム駅の出発信号機を進行現示する。その後、駅構内の軌道分岐上にあるトロリー線のフロック(分岐)に設置されたトロリーコンタクターで通過両数チェックを受け、中間信号場でも同様に通過両数チェックを受け、駅での記憶された通過両数と中間信号場での通過両数が合わなければ閉塞は解除されず、よって中間信号場の出発信号機を進行現示することができないようになっており、中間信号場を出発の際には中間信号場構内両側の軌道分岐上にあるトロリー線のフロックに設置されたトロリーコンタクターで通過両数チェックを受け、扇沢駅と黒部ダム駅でも同様に通過両数チェックを受け、中間信号場での記憶された通過両数と扇沢駅と黒部ダム駅での通過両数が合わなければ閉塞は解除されないようになっていた。運転指令室の総合表示盤には、トロリーバスの位置と両数・信号現示・工事車両入口にある遮断器の状態が表示され常に指令員が監視していた。

トロリー線は2本で本線下りから見て左側がプラスで右側がマイナスであり、フロックでは絶縁区間を介してプラスとマイナスがを走行中に入れ替わるがトロリーバスの主回路には影響を与えない。またフロックでは、左側進行のため、2本のトロリー線をスプリングで右側に押す方式のスプリング式となっていた。

路線データ[編集]

  • 路線名:なし
  • 路線距離(営業キロ):6.1 km
  • 駅数:2駅(起終点駅含む)
  • 複線区間:なし。全線単線(関電トンネル中央部に行き違い設備あり)
  • 電化方式:直流 600 V
  • 閉塞方式:カウンターチェック(台数確認)式・スタフ閉塞式併用
途中のトンネル内信号所で対向車と行き違いするが、全区間を一閉塞とした併合閉塞で運行する場合もあった。続行運転時は最後尾の車両がスタフを携行した。

車両[編集]

駅一覧[編集]

駅名 営業キロ 接続路線
扇沢駅 0.0 東日本旅客鉄道(JR東日本)信濃大町駅長野駅方面路線バス
黒部ダム駅 6.1 立山黒部貫光黒部ケーブルカー黒部湖駅(徒歩約15分)


脚注[編集]

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  1. ^ 佐藤健太郎『国道者』新潮社、2015年11月25日、51頁。ISBN 978-4-10-339731-1
  2. ^ 関電トンネル無軌条電車 平成29年度 安全報告書
  3. ^ a b “立山黒部アルペンルート全線開通 電気バスが運行開始 長野”. 長野放送. (2019年4月15日). https://www.fnn.jp/posts/3189NBS 2019年4月20日閲覧。 
  4. ^ え!?関電が鉄道事業? 今年で最後のトロバスに迫る”. かんでんホンネトーク ミライスイッチ Vol.07. 関西電力株式会社. 2018年12月5日閲覧。
  5. ^ a b c d 【初公開!】関電電気バス🚌トロリーに変わり来春から運行!!”. 立山ガール日記. 立山黒部アルペンルートオフィシャルガイド (2018年7月25日). 2019年4月21日閲覧。
  6. ^ a b c d 関電トンネルトロリーバスと電気バスの仕様等 (PDF) - 関西電力株式会社(2017年8月28日)
  7. ^ a b “アルペンルート、電気バス視界良好 15日運行開始”. 中日新聞. (2019年4月12日). https://www.chunichi.co.jp/article/nagano/20190412/CK2019041202000012.html 2019年4月21日閲覧。 
  8. ^ “「くろにょん」つり革登場 関電トンネル電気バス”. 北日本新聞. (2019年3月20日). http://webun.jp/item/7549174 2019年4月21日閲覧。 
  9. ^ a b 関電トンネルにおけるトロリーバスの電気バスへの変更について - 関西電力株式会社(2017年8月28日)
  10. ^ a b c 国土交通省鉄道局監修『平成30年度 鉄道要覧』電気車研究会、2018年9月30日、13頁。ISBN 978-4-88548-131-4
  11. ^ “開業から54年無事故、ラストラン 黒部ダムのトロバス”. 朝日新聞. (2018年12月1日). https://www.asahi.com/articles/ASLCZ3J2TLCZUOOB00D.html 2019年4月21日閲覧。 
  12. ^ 「トロバスラストイヤーキャンペーン」に係るイベント等の概要 (PDF) - 関西電力株式会社(2018年4月10日)
  13. ^ a b 最終便は乗車券のほかに整理券が必要…ラストランを迎える関電トロリーバス 11月30日 - レスポンス、2018年11月21日
  14. ^ “関電トンネル電気バス「電気バス元年キャンペーン」の実施について” (プレスリリース), 関西電力株式会社, (2019年4月15日), https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2019/0415_1j.html 2019年4月21日閲覧。 
  15. ^ a b 1963年7月2日運輸省告示第207号「運輸審議会の答申があつた件」
  16. ^ 北日本新聞2017年7月11日朝刊27面

関連項目[編集]

外部リンク[編集]