電気バス

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電気バス(でんきバス、Electrical Bus)は電気自動車の一種であり、電気のみを動力として走るバスのうち、電力を架線から集電するトロリーバス(無軌条電車)以外のものを指す。蒸気内燃機関(炭素化合物の燃焼により発生する気体の膨張を主に利用するもの)ではなく、電気エネルギーを動力源とするバスである。ほとんどが蓄電池の電力によりモーターを回転させて走行する。

概要[編集]

内燃機関を用いたバスは、一般に制動(減速)は容易だが、電気車に比べ発進と加速が難しいとされる。内燃機関としてのディーゼルエンジンと、トランスミッションとしてセミATまたはATを組み合わせることで、加速時の負担を減らすのが一般的であるが、電気バスの場合には動力が電気エネルギーのため、加速時も操作は容易である。20世紀中は技術が未成熟であったためあまり普及しなかったが、リチウムイオンバッテリーの発明等の技術革新により本格的に普及が始まっている。

2021年3月現在、地球上のバスの約17%にあたる、42万5,000台のバスが電動化されている[1]中華人民共和国では電気バスが非常に普及しており、2019年現在、地球上の電気バスの99%が中国で運用されている[1]深圳などでは路線バスは完全に電動化されている[1]

2つ以上の異なる動力源(原動機)を組み合わせた自動車ハイブリッドカーと呼ぶが、内燃機関と電気を組み合わせることが多い。動力源として電気を用いていても、ハイブリッドカーは電気自動車とは別に扱われるのが一般的である。

ハイブリッドタイプのものでは、車上で発電した電気を車載バッテリーに蓄電し、その電気でモーターを駆動する方式もある。一例としてデザインライン・タービン電気バスがあり、このバスはマイクロガスタービンを用いた発電装置と蓄電池・モーターによるもので、ディーゼルエンジンでないところが環境対応として考えられたものとなっており[2]、加減速を頻繁に行なう市街地走行に適しているといえる[2]。同車種は日本では日の丸自動車興業の無料巡回バス「丸の内シャトル」「メトロリンク日本橋」で採用されている[2]

歴史[編集]

欧米[編集]

19世紀末のヨーロッパでは公共交通機関として「オムニバス (Omnibus) 」と呼ばれる乗合馬車がみられた、自動車が発明されると乗合馬車も電動機などで駆動する試みが現れた[3]

1881年パリでの「電気の博覧会」(Exposition Internationale d 'Électricité)にフランスのGustave Trouveが三輪自転車に電動機を搭載した車両を展示した[3]。1882年にはパリバス会社において50人乗り馬車を改造した電気自動車の試作が行われた[3]

1901年には米国のフィッシャー社が30人乗りのハイブリッド駆動バスを開発し、1903年からロンドンのバス会社で運行されたが、重量と燃費に問題がありすぐに使われなくなった[3]

イギリスではサウス・シールズ1913年から1920年頃まで電気バスが運行されていた[3]

中国[編集]

中国で運行をしているBYDの電気バス

2016年に156,000台の電気バスが使用されていた。その後さらに数が増え、2017年には385,000台の電気バスが走行している。これは世界の電気バスの99%を占める台数である。

中国で運行されるバスの17%が電気バスによる運行。

韓国[編集]

ファイバー社のプリムスを改造したオンライン電気バス

2010年にKAISTが道路に埋没された充電装置とバスに搭載された充電装置で電磁誘導を行うオンライン電気自動車を開発し、ソウル大公園内の循環バスで世界で初めて実用化された[4]

日本[編集]

日本での歴史[編集]

大阪乗合自動車(青バス)の電気バス(1937年頃)
中島製作所の電気バス[編集]

戦前の日本では1930年東邦電力湯浅電池株式会社中島製作所が電気バスを共同開発し、名古屋市電気局で約1年間営業運転された[3]

この中島製作所は現在の大阪市港区で設立された会社で[5]、1924年(大正13年)に電気自動車の第1号車を製作し[5]兵庫県尼崎市に工場を設置して中島運搬機製造株式会社となった[5]昭和初期には日本の電気自動車のトップメーカーとして多数の電気バスを制作し[5]、戦中戦後の燃料不足の時期には全国のバス事業者に多数の車両納入実績がある[5]。なお、SUBARUの源流となった中島飛行機とは資本的・人的に全く関係ない別の会社である[5]

また1933年には、名古屋乗合自動車(通称「青バス」)が名バス公園線(鶴間公園)に電気バスを導入した[3]

1939年7月には川崎鶴見臨港バスが電気バスの仕様を開始[6]しているが、これも中島製作所が製造した車両であった[7]

その後は太平洋戦争の激化に伴い、石油燃料統制への対応策として大都市の事業者で電気バスが導入された。戦後も石油燃料の不足・統制は続いていたことから、1948年から1950年代初頭までの時期を中心に、各地の都市の事業者で使用されたが、石油事情の好転とともにディーゼルバスに置き換えられ、短期間の使用に終わった。

低公害車としての導入[編集]

公害社会問題化した1970年代には、低公害に着目して神戸市交通局大阪市交通局などの排気ガス公害の深刻だった都市の事業者が導入するなど、公営バス事業者を中心に導入の試みが続けられた[8]

京都市交通局では、1970年代に路線を廃止したため余剰となったトロリーバス車両(300形318号)を用いて蓄電池を搭載し京都駅 - 深泥池間で実証試験を行った。その後1979年から西京区内の洛西ニュータウンで本格的に行った営業運行では、三菱自動車工業(現:三菱ふそうトラック・バス)製の電気バスME460型[注釈 1]6両を洛西営業所に配置し、蓄電池を脱着可能にして専用設備で蓄電済のバッテリーユニットを取り替えることで車両運用効率を向上したシステムを採用した[8]。しかしニュータウン内の環境汚染対策としては効果が認められたが、当該運行区間は坂が多いこともあって蓄電池の消耗劣化が如何ともしがたいこと、バスの冷房化が困難であることなどにより、1987年に電気バスの運行を取りやめた。

大阪市交通局においては、1972年いすゞ自動車製の電気バスEU05型を2両導入し「あおぞら号」の愛称で使用した[9]。神戸市・京都市の三菱車と同様にバッテリーをユニット化した構造で、営業所には3分間でバッテリー交換ができる設備も備えていた。1982年まで使用された。

同時期に名古屋市営バスでは、1973年日野BT900を1両導入して[9]1979年まで運行した[10]。日野自動車では、このときに苦労した経験が後にHIMR(ハイエムアール)の開発に役立ったという。

日野・ポンチョ電気バス[編集]
日野・ポンチョ電気バス
充電中の電気バス「はむらん」
(東京都羽村市、2012年)

2010年代からは、リチウムイオン二次電池を使用した電気バスの導入が進められている。

2012年には、電気バス車両とその充電設備の導入費用の半額を助成する国土交通省の「電気自動車による公共交通のグリーン化促進事業」を利用し[11]東京都羽村市日野・ポンチョベースの小型電気バス「ポンチョ電気バス」1台を導入、3月10日より羽村市コミュニティバスはむらん」(西東京バスへ運行委託)の新路線に投入し、これが日本初の電気バスによる路線バス実用運行となった[12] [13]。羽村市には日野自動車羽村工場があることから協力関係が進められた。

この10日後の3月20日には、東京都墨田区墨田区内循環バスがポンチョ電気バスの運行を開始、導入された車両の中には電気バス「すみだ百景 すみりんちゃん」1台が含まれている[14]。車両はポンチョ電気バスで、羽村市の「はむらん」と同型のものである[13]

2013年3月30日には、小松バスが「宇宙バスこまち☆」としてポンチョ電気バスを導入、内装は宇宙船をモチーフとした斬新なものとなっている[15]サイエンスヒルズこまつ小松駅 - 小松空港石川県立航空プラザ間で運行(一部は安宅住吉神社発着)。「はむらん」「すみりんちゃん」と同型式である[16]石川県小松市にはジェイ・バス本社および小松工場(旧:日野車体工業)がある。

2015年には中国の電気バスのメーカーであるBYDが参入し、京都のバス会社であるプリンセスラインへのK9の導入を皮切りに、2020年には日本向け電気バスのJ6を開発し、市場に投入している[17]

2021年に日野自動車がBYDからの技術供与の上、J6のOEM車種である日野・ポンチョZ EVを販売開始すると発表した。[18]

日本での採用例[編集]

リチウムイオン二次電池による電気バスの、試験運行ではない営業運行。営業開始日順。

脚注[編集]

[脚注の使い方]

注釈[編集]

  1. ^ これより早い1973年から1976年まで、神戸市交通局が試験的に4両を採用していた。[要出典]

出典[編集]

  1. ^ a b c “クリーンなはずの「電気バス」は、なぜ世界を席巻しないのか? その理由を考える”. wired.jp. (2019年7月1日). https://wired.jp/2019/07/01/electric-buses-havent-taken-over-world/ 2020年1月28日閲覧。 
  2. ^ a b c バスの紹介 日の丸リムジングループ公式サイト
  3. ^ a b c d e f g 森本 雅之. “電動バスの歴史 (PDF)”. 東海大学. 2020年1月28日閲覧。
  4. ^ 出典
  5. ^ a b c d e f 森本雅之. “電気学会自動車研究会『大正時代の国産電気自動車』3.2 中島製作所の第1号電気自動車(1924)”. 東海大学工学部 電気電子工学科. 東海大学 森本研究室 ”次世代モーターを創る”. p. 3. 2020年9月18日閲覧。
  6. ^ 企業情報 - 沿革 川崎鶴見臨港バス
  7. ^ 「創立70周年を迎えた 川崎鶴見臨港バスアーカイブス」『バスラマ・インターナショナル No.105』ぽると出版、2007年12月25日、30-33頁。ISBN 978-4-89980-105-4
  8. ^ a b 「特集 電気バス2014(1970年代に登場した大型電気バス)」『バスラマ・インターナショナル』第142号、ぽると出版、2014年3月、 p.23。
  9. ^ a b 鈴木文彦 『日本のバス年代記』 グランプリ出版、1999年、pp.201-202
  10. ^ 電気自動車の時代 (読売科学選書). 東京: 読売新聞社. (1991). ISBN 978-4643911312 
  11. ^ “「電気自動車による公共交通のグリーン化促進事業」の対象案件の決定について(第2次公募)” (プレスリリース), 国土交通省自動車局環境政策課, (2011年12月2日), http://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha10_hh_000065.html 2012年3月10日閲覧。 
  12. ^ a b “【EVバス運行開始】定期路線として全国初の運用開始”. Response.. (2012年3月11日). http://response.jp/article/2012/03/11/171212.html 2012年3月12日閲覧。 
  13. ^ a b c d “【EVバス運行開始】車両価格8000万円、満充電での航続は30km”. Response.. (2012年3月12日). https://response.jp/article/2012/03/12/171232.html 2018年7月26日閲覧。 
  14. ^ すみだ区報(墨田区のお知らせ「すみだ」)2012年3月13日号 区内循環バス特集号”. 墨田区役所 (2012年3月13日). 2012年3月21日閲覧。
  15. ^ a b EVバス”. 小松市 (2018年12月4日). 2019年2月24日閲覧。
  16. ^ a b 【人とくるまのテクノロジー13】日野がフルEVのコミュニティバスを出品”. Response. (2013年5月24日). 2019年2月24日閲覧。
  17. ^ BYD、低価格EVバスを日本で発売、鉄系電池で打倒ポンチョ 日経クロステック、日経BP、2019年5月9日
  18. ^ 日野が小型EVバス「ポンチョZ EV」、BYDからOEM受け2022年春に発売 日刊自動車新聞電子版、2021年6月10日
  19. ^ 電気BRT車両および観光型BRT車両の導入について (PDF) - 東日本旅客鉄道盛岡支社プレスリリース(2014年2月21日)
  20. ^ “JR気仙沼線BRT向け電気バスを東日本旅客鉄道株式会社へ納入しました。” (プレスリリース), 東京アールアンドデー, (2014年6月3日), http://www.tr-d.co.jp/2014/06/03/%ef%bd%8a%ef%bd%92%e6%b0%97%e4%bb%99%e6%b2%bc%e7%b7%9a%ef%bd%82%ef%bd%92%ef%bd%94%e5%90%91%e3%81%91%e9%9b%bb%e6%b0%97%e3%83%90%e3%82%b9%e3%82%92%e6%9d%b1%e6%97%a5%e6%9c%ac%e6%97%85%e5%ae%a2%e9%89%84/ 
  21. ^ ポケモン電気バス”. 三重交通公式サイト. 2020年5月2日閲覧。
  22. ^ “当社初の商用EVバスが川崎鶴見臨港バス株式会社川崎病院線で運転を開始” (プレスリリース), 東芝, (2015年3月30日), http://www.toshiba.co.jp/about/press/2015_03/pr_j3004.htm 
  23. ^ コミュニティバスの路線を活用したEVバスの実証運行を開始”. 東芝. 東芝インフラシステムズ (2014年2月5日). 2020年5月2日閲覧。
  24. ^ 港区、EVバスを本格導入 来月から芝ルートに 3年間で6台” (日本語). 産経ニュース (2015年10月2日). 2020年5月2日閲覧。
  25. ^ 岩手医大附属病院バス路線に電気バス導入/岩手” (日本語). IBC岩手放送 (2020年2月20日). 2020年2月21日閲覧。
  26. ^ “輸送力拡大による観光振興、環境保全の両面から沖縄県に貢献! 国内初 観光仕様の大型電気バスを導入しました!”. 伊江島観光バス. (2019年10月15日). https://iejima-bus.com/2019/10/15/news/ 
  27. ^ 電気バスを山梨県内初導入 3/16(月)より富士五湖エリアで運行開始 (PDF)”. 富士急行バス株式会社. 2020年3月20日閲覧。
  28. ^ 無料巡回EVバスRIDEN運行スタート (PDF)
  29. ^ 本日、協同バス様にて大型電気バスK9のお披露目会を開催いたしました。
  30. ^ “ハウステンボスへ電気バスを10台納車”. BYDジャパン. (2020年12月7日). https://bydjapan.com/archives/314 
  31. ^ “EVバス(電気バス)の運行実証を開始しました”. 飯田市. (2021年1月15日). https://www.city.iida.lg.jp/site/iida-linear/evbus-unkoujisyou.html 
  32. ^ “電気バス3台、今春導入 千葉県内初、千葉市内路線で運行 平和交通”. 千葉日報. (2021年2月25日). https://www.chibanippo.co.jp/news/economics/767369 
  33. ^ “茨城・つくばみらい市、EVバス導入 県内初”. 日本経済新聞. (2021年3月2日). https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFB022XN0S1A300C2000000/ 
  34. ^ “電気バスで巡る 沖縄・世界自然遺産の候補地ツアー 「やんばる黄金号」8日から運行”. 琉球新報. (2021年3月2日). https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1279996.html 
  35. ^ “大熊町 電気バス導入で試乗会”. NHK NEWS WEB. (2021年3月16日). オリジナルの2021年3月16日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20210316093149/www3.nhk.or.jp/lnews/fukushima/20210316/6050013831.html 
  36. ^ “日光国立公園にEVバス 自然博物館が運行”. 日本経済新聞. (2021年4月22日). https://www.nikkei.com/article/DGXZQOCC228SO0S1A420C2000000/ 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]