築地市場移転問題

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豊洲の移転予定地
(2010年5月31日撮影)

築地市場移転問題では、東京都中央卸売市場築地市場 (中央区)から豊洲市場 (江東区)への移転に関して発生している諸問題について記述する。

経緯[編集]

築地市場は、当初、列車輸送が想定されていたためトラック駐車スペースは狭小であった。

築地市場が、取り扱い数量の拡大(2005年に2140トンで日本最高)により施設が手狭になったことや1935年(昭和10年)開場の施設の老朽化や違法駐車増加、銀座などに近い[1]築地という立地条件の良さの他目的への利用価値の観点から、道路条件や駐車スペースなど2012年(平成24年)をめどに東京都江東区東京ガスの工場跡地の豊洲市場への移転が検討された。東京都は、築地市場の移転先を豊洲にすることは元々反対の立場で築地市場の再整備を始めていたが、営業しながらの再整備工事は完成まで長期間かかり、再整備工事期間中は市場の営業活動に悪影響をもたらすことなどの問題点が浮上し、当初の計画通りに工事を進めることが困難なことから賛成へと変化し、2001年(平成13年)に再整備をやめて豊洲に移転することを決定した。東京都側と築地市場業界との協議機関として、新市場建設協議会が設置されており、2004年(平成16年)7月、「豊洲新市場基本計画」[2]が策定された。

移転問題が浮上した際の東京都知事であった石原慎太郎は「築地は古くて清潔でない。都民や消費者の利益を考えれば、市場を維持するわけにはいかない。ほかに適地はない」と示したこと、石原が2007年の都知事選挙に於いて三選された後の記者会見を行った際に「築地市場には大量のアスベストが存在しており移転は必要である」と発言している[3]

移転への反対論[編集]

工事が中断した環状二号線の築地大橋(築地市場内から撮影)

移転先の場所はかつて東京ガスの施設があり、それによる土壌汚染が判明している(東京ガスから東京都側にはそのことの説明が行われており、東京都は承知していた)。このため豊洲への移転には反対論が存在し、都議会においては民主党などが反対している。

東京都などは、汚染された土を掘り出し浄化処理して埋め戻したことから問題はないとして移転計画を推進しているが、一方で"豊洲は汚染されている"とした移転反対運動がある。これを裏付けるように、都が2007年(平成19年)10月6日に発表した調査結果で地下水はベンゼンシアン化合物ヒ素が環境基準を、土壌はベンゼン、シアン化合物、ヒ素が環境基準を上回る汚染が明らかになった。これと共に東京湾環境問題も注目され、そこで獲れる魚介類の汚染も浮き彫りになっている[4]。なお、環境問題に関しては現在の築地市場でも、海軍の毒ガスや化学兵器の研究を行う技術研究所研究部化学兵器研究室が設けられていた時期があった[5]ことや地下には第五福竜丸によって水揚げされた、水爆被爆したマグロ(当時「原爆マグロ」と呼ばれた)が埋められている問題が存在している。ただし、それによる汚染を客観的に数値化した資料は存在しない。

2009年(平成21年)7月の東京都議会選挙の結果、移転賛成派の自由民主党に代わって反対派の民主党が都議会第一党となり、移転へのハードルが上がった。同年9月には赤松広隆農林水産大臣が築地市場を訪れ、安全性が担保されない限り卸売市場法に基づく許認可を出さない方針を表明している。民主党は豊洲移転に替わる案として、晴海地区を利用し、現在の築地市場を再整備する案を表明している。この案には民主党の他に日本共産党も賛成しており、豊洲移転推進派の自由民主党と公明党は反対している[6]

しかしその後都議会民主党は、都が関係者と合意したことで移転賛成に転じた。2012年3月29日の都議会では、市場移転費用を含む新年度予算案が賛成多数で可決し、移転はほぼ確実になった。 その後も工事と同時並行で協議は進み、2014年12月17日の新市場建設協議会において、2016年11月7日に豊洲市場を開場する方向で正式に決定した。

移転後の築地活用[編集]

移転後の築地市場跡地の活用方法として、招致活動を行った2016年東京オリンピックのメディアセンターとする構想を明らかにしていた[7]が、2008年(平成20年)10月31日の定例記者会見で石原都知事はこれを断念し、東京ビッグサイトにメディアセンターを設置する方針を表明した。ただし、2016年のオリンピックがリオデジャネイロに決まったことによりこの案は一旦消滅し、2020年東京オリンピック構想に引き継がれる。

また、石原都知事は2006年(平成18年)9月8日の定例記者会見において築地市場跡地に「NHKが移転する」と発言し波紋を広げたが、NHKは「そんな計画はない」と完全否定している[8]

移転延期[編集]

2016年8月31日、東京都の小池百合子都知事は同年11月7日に予定されていた豊洲市場の開場を延期すると共に、築地市場の解体工事も延期すると発表した[9]

同年9月に、豊洲市場における土壌汚染対策等に関する専門家会議が設置され、座長に平田健正(元和歌山大学副学長)が、委員に駒井武東北大学工学部教授)、内山巖雄医師京都大学名誉教授)が、オブザーバー小島敏郎弁護士、元環境省地球環境審議官)が、それぞれ就任した[10]。2017年3月19日、同会議は豊洲市場につき、科学的、法的に安全であるとの評価を行った[11]

脚注[編集]

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関連項目[編集]