「ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦!南海の大怪獣」の版間の差分

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2018年10月8日 (月) 17:48時点における版

ゲゾラ・ガニメ・カメーバ
決戦! 南海の大怪獣
Space Amoeba
監督 本多猪四郎(本編)
有川貞昌(特撮)
脚本 小川英
製作 田中友幸
田中文雄
出演者 久保明
高橋厚子
小林夕岐子
佐原健二
土屋嘉男
音楽 伊福部昭
撮影 完倉泰一(本編)
富岡素敬(特撮)
真野田陽一(特撮)
編集 永見正久
配給 東宝
公開 日本の旗 1970年8月1日
上映時間 84分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦! 南海の大怪獣』(ゲゾラ ガニメ カメーバ けっせん! なんかいのだいかいじゅう)は、1970年8月1日に夏休み東宝チャンピオンまつりの1本として公開された東宝製作の特撮映画作品。カラー、シネマスコープ。上映時間は84分。

概要

特技監督円谷英二が死去してから公開された初めての東宝の特撮作品で、特撮パートは円谷の愛弟子だった有川貞昌がメガホンを取った。検討用台本の作成時点で病気療養中であった円谷は参加意欲を見せていたため、台本には特技監修の肩書きで記載されており、ポスターなどもこれに準じたものが作られている[1]。クランクイン直後の1970年1月25日には円谷が死去し[1]、告別式には撮影を中断して参加したスタッフが、おやじ(円谷英二)への恩返しと円谷特撮技術の総決算を誓った。すべて新怪獣3頭という東宝怪獣映画史上唯一の趣向(それ以前には『ゴジラの息子』がゴジラ+新怪獣3頭)で挑んだ意欲作であり、脚本もこの路線初参入の小川英が迎えられた。

原案は1966年にアメリカとの合作用に書かれた検討用脚本の1つ『怪獣大襲撃』であり、1969年に発表された製作ラインナップにもこのタイトルで記載されている[1]

当初、ヒロイン役には高橋紀子が予定されていたが、結婚して出演できなくなったため、高橋厚子に交代した。高橋厚子は、本作への出演直後にTBSのテレビドラマ『アテンションプリーズ』のレギュラーに抜擢されるが、教官役の佐原健二とは先に本作で共演していたことになる。

「ゲゾラ」、「ガニメ」、「カメーバ」のネーミングは、助監督の谷精次によるもの。劇中では、セルジオ島の島民が付けた名前という設定になっている。

あらすじ

木星調査に旅立った無人ロケット・ヘリオス7号が宇宙空間でアメーバ状の宇宙生物に寄生され、消息不明となった。

数か月後、カメラマンの工藤太郎は太平洋に落下するヘリオス7号を目撃し、その謎を調査するために落下地点付近の孤島セルジオ島の宣伝写真撮影依頼を受注した。セルジオ島では「アジア開拓」による観光開発計画が進められていたが、同社の社員・佐倉と横山は釣りをしている最中に巨大な怪獣の襲撃を受け、佐倉が捕食されてしまう。怪獣の正体は宇宙生物に寄生されて巨大化したイカだったが、島の祈祷師オンボはそれを島に伝わる伝説の怪物ゲゾラと同一視する。

数日後、工藤とアジア開拓の宣伝部員・アヤ子、生態観察顧問の宮、風俗研究家を名乗る産業スパイ・小畑が島に到着するが、島民たちはゲゾラを怒らせた日本人を「悪魔の使い」として迫害する。工藤たちは横山に事情を聞こうとするが、恐怖で錯乱した横山は島からの脱出を図ってゲゾラに捕食され、彼を止めようとした案内人のリコもショックで記憶喪失に陥ってしまう。海底に沈んだヘリオス7号を調査していた工藤らもゲゾラの襲撃を受けるが、付近にイルカの群れが接近するとゲゾラは逃げ去っていった。その直後、上陸したゲゾラは島民たちの集落を襲撃するが、焚き火に怯んだことから高熱に弱いことが発覚。工藤は島民たちと力を合わせてガソリンを利用した罠を仕掛け、ゲゾラを倒す。

一同は島に遺棄されていた旧日本軍の銃火器を利用してゲゾラの再来に備えるが、今度は銃弾すら通用しない巨大カニの怪獣ガニメの襲撃を受ける。壮絶な死闘の末、弾薬庫の爆発に巻き込むことで銃火器を失う代わりにガニメを倒した一同は、リコの記憶が回復したことがきっかけで、怪獣たちがコウモリやイルカの放つ超音波を恐れることを知り、コウモリの生息する洞窟に隠れて怪獣をやり過ごすことになる。しかし、宇宙生物に寄生された小畑が洞窟内にガソリンと火を放ち、コウモリを焼き殺そうと目論んだうえ、2体目のガニメと巨大なカメの怪獣カメーバが現れたことで、一同は絶体絶命の危機に追い詰められる。

しかし、アヤ子の必死の説得に心を動かされた小畑は宇宙生物に反抗し、コウモリを空へ解き放つ。コウモリの超音波によって二大怪獣は錯乱して同士討ちを始め、火山の噴火口へ落下する。そして、小畑もまた自らの体内に寄生する宇宙生物を抹殺すべく、火口へ身を投じる。かくして、地球の平和は保たれたのだった。

登場怪獣

宇宙生物

無人宇宙船ヘリオス7号に付着して地球に飛来した液状生命体。高度な進化の末に肉体を失った種族とされ、宇宙アメーバとも呼ばれる。他の生物に取りついて巨大怪獣化させる能力を持つほか、高い知性を有しており、人間に取りつくことでその肉体を支配し、それを介して会話することも可能である。長い放浪の末に地球にたどり着き、その侵略を企むようになる。

コウモリイルカが発する超音波が弱点であり、これを受けると精神が破壊されて混乱を来してしまう(ガニメとカメーバはこれで同士討ちに陥る)。そのため、取り付いた小畑を使って島中のコウモリを焼き殺そうとするが、アヤ子の説得で正気を取り戻した小畑の抵抗に遭って失敗する。最後は取り付いていたガニメとカメーバが交戦の果てに島の火山へ落下し、小畑に取り付いていた個体も彼が自ら火口へ投身することによって全滅する。

輸出時にはこの生物が憑依した三大怪獣を総称する、ヨグという名称がつけられた[要出典]

不定形のアメーバ形態のため、アニメーション作画合成で表現された。

大いか怪獣 ゲゾラ

宇宙生物がカミナリイカ(モンゴウイカ)に取りついて誕生した怪獣。名前だけはセルジオ島民に海の怪物として伝承されており、それが名前の由来となっている。0度の体温で触れた物を凍らせるが、超音波だけでなく熱にも極端に弱い。工藤たちが島に乗り込んでから幾度も人間に襲いかかるが、島民たちの村を襲撃した際に松明を嫌ったことから熱に弱いことが発覚する。最後は進路上に撒かれたガソリンによる火柱で致命傷を負い、海に逃げ込んだところで死亡する。

スチル写真やオープニング画面などではガニメやカメーバと戦っているが、劇中では交戦していない。

  • 体長:30メートル
  • 体重:2万5千トン

造形は利光貞三と八木康栄による。スーツアクター中島春雄。甲の部分と脚の部分が分割できるようになっており、脚だけが映るシーンは上部分を被らずに演じている。実物大の触手も制作され、ピアノ線による操演で効果的に使われた[1]

「ゲゾラ」のネーミングは、谷精次によると「ゲソ」から。

その他の作品に登場するゲゾラ

ファミリーコンピュータ用ゲーム『ゴジラ』ではX星人の操る怪獣軍団の1匹という設定で登場し、1面から最終面にかけてボスキャラクターとして出現する。ゴジラ以上の巨体を持つうえ、常に触手で飛び跳ねながら行動する。攻撃手段は触腕による打撃のみ。時折、プレイヤーが操る怪獣を画面端に追い詰めて封殺してくるが、ダメージは無い。

ゴジラ FINAL WARS』(2004年)ではライブフィルムで登場する。

小説『GODZILLA 怪獣黙示録』では、2010年代後半から地中海を縄張りとするようになり、難民の移動を妨げるようになったことが語られている[2]。2039年から行われた「オペレーション・エターナルライト」でその脅威は排除されたとされる[3]

大蟹怪獣 ガニメ

ゲゾラから分離した宇宙生物がカルイシガニに取りついて誕生した怪獣。ゲゾラと違って全身を固い甲殻で覆われており、銃火器類の攻撃が一切通用しない。工藤とアヤ子を執拗に追撃した末に誤って崖から転落して動けなくなり、工藤の機転で付近の弾薬庫の爆破に巻き込まれて爆発するが、宇宙生物が別のカルイシガニに取りついて2体目が登場したうえ、小畑に取り付いた群体の指示で工藤らを襲おうと再度上陸したところを小畑が開放したコウモリの超音波を浴びて凶暴化し、仲間であるはずのカメーバと同士討ちとなる。

  • 体長:20メートル
  • 体重:1万2千トン

特技監督の有川貞昌は、このガニメの口の部分の気持ち悪さや泡のギミックに特にこだわったとコメントしている。「ガニメ」のネーミングは、谷精次によると「ガニ(食用にならないカニ)」+「ニャロメ」から。

造形は安丸信行と八木康栄による。スーツアクターはゲゾラ同様、中島春雄。口から泡を吹く仕掛けが組み込まれ、左右の顎と眼球がリモコンで動く。全身の毛は麻を使用した。実物大のハサミも制作され、効果的に使われた。

その他の作品に登場するガニメ

ゲーム『ゴジラトレーディングバトル』ではゴジラと共演し、本作の怪獣で唯一オープニングにも出演している。

小説『GODZILLA 怪獣黙示録』では、生息地のベーリング海でカニ漁を行うアメリカ漁船を襲撃していることが語られている[4]。また、2047年12月に北米ヘドラ研究所を襲撃した、「赤い外骨格と鋼鉄製の扉を溶解する能力を持つ甲殻類のような群体生物」がベーリング海から南下したガニメの亜種と考えられているが、人類が喪失した大陸での調査は行えず詳細は不明のままである[5]

大亀怪獣 カメーバ

登場メカニック

ヘリオス7号
国連宇宙局が打ち上げた木星探査を目的としたロケット。無人のカプセルを搭載しており、資料を採取して約3年後に地球へ帰還する予定であった。しかし、打ち上げから約4か月後に消息を絶ったカプセルは謎の宇宙生物に制御系を乗っ取られ、そのまま地球に帰還してセルジオ島近海へ落下し、3種類の怪獣を出現させる要因となる。
冒頭の打ち上げシーンで用いられたミニチュアはパースモデルで、発射台は斜めに組み立てられている。ロケットやカプセル部分のデザインは、アポロ計画で用いられたアポロ司令・機械船の影響がみられる[注 1]
カプセル部分のミニチュアは、特撮テレビ番組『流星人間ゾーン』で城模型店の商品棚に陳列されている。

登場人物

工藤 太郎
本作の主人公。好奇心旺盛で血気盛んなフリーカメラマン。取材旅行の帰途、セルジオ島の上空でヘリオス7号の墜落を目撃し、真相究明と怪物伝説の謎を追うべく、セルジオ島開発調査に宣伝カメラマンとして同行する。
星野 アヤ子
本作のヒロイン。セルジオ島の観光開発を進めるアジア開拓の宣伝部員。現地調査に赴き、怪獣たちの壮絶な死闘に遭遇する。
サキ
セルジオ島の現地住民女性。日本人に対しては好意的。
宮 恭一
アジア開拓のセルジオ島生態観察顧問。生物学の権威であり、工藤とは取材を通じて親交がある。自らの礎を築いた現代科学の限界に絶望感をおぼえつつ、怪獣たちの撃退方法を模索する。
ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』では名前のみ登場。
小畑 誠
風俗研究家を名乗って工藤たちに接近するが、その正体はアジア開拓のライバル企業に雇われた産業スパイ。怪物伝説を迷信と一蹴し、事件を島民による自作自演だと吹聴したり、抜け駆けで島からの逃走を目論むなど、性格は軽薄で利己主義的。しかし、そんな男の心の片隅に残っていた一縷の誇りと良心が、最後に人類の危機を救うこととなる。
脚本の初稿では宇宙生物が抜け出して元に戻る結末であったが、監督の本多猪四郎は制作過程でこれを変更し、自ら死を選ぶことで宇宙生物を死滅させるものとした[6]
リコ
サキの恋人。島の案内役として開発調査員たちと行動を共にするが、開発事務所で横山と共にゲゾラの襲撃を受ける。一命は取り留めたもののショックで記憶を失ってしまう。
オンボ
セルジオ島の祈祷師。当初は工藤たち一行を「悪魔の使い」と呼んで拒絶していた。
横山
アジア開拓のセルジオ島駐在員。ゲゾラに佐倉を殺害されて以来神経質になっており、恐怖のあまり島からの逃走を図ろうとしたところをゲゾラに襲撃され、死亡する。
佐倉
横山の相棒。禁漁区で魚釣りの最中、ゲゾラによって海中へ引きずり込まれる。

スタッフ

※映画クレジット順

キャスト

※映画クレジット順

※以下クレジット表記無し

備考

  • 劇中のセルジオ島民の祈祷歌は、『キングコング対ゴジラ』での、ファロ島民の祈祷歌をアレンジしたものが使われている。
  • テレビアニメ『ケロロ軍曹』第57話Bパート「巨大カエル対南海の大怪獣であります」は本作のパロディとなっており、「イカラ」「カニメ」「ガメーバ」という怪獣が登場する。
  • 本作のポスターは当時の『週刊少年マガジン』の表紙に使用されたことがある[要出典]

同時上映

映像ソフト

  • 2005年6月24日にDVDが、発売され、オーディオコメンタリーは製作の田中文雄が務めた。
  • 2014年2月7日、<期間限定プライス版>として再発売された。
  • 2015年8月19日、<東宝DVD名作セレクション>として再発売された。

脚注

注釈

  1. ^ 本作公開の前年にアポロ11号が有人月面着陸を行っている。

出典

  1. ^ a b c d 『東宝特撮映画大全集』ヴィレッジブックス、2012年、140 - 143頁。ISBN 9784864910132 
  2. ^ 怪獣黙示録 2017, pp. 19–111, 第1章『出現』
  3. ^ プロジェクト・メカゴジラ 2018, pp. 53–85, 第6章『長征』
  4. ^ 怪獣黙示録 2017, pp. 112–150, 第2章『G』
  5. ^ プロジェクト・メカゴジラ 2018, pp. 112–139, 第8章『決戦』
  6. ^ 切通理作『本多猪四郎 無冠の巨匠』洋泉社、2014年、408頁。ISBN 978-4-8003-0221-2 

参考文献

外部リンク