初級システムアドミニストレータ試験
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初級システムアドミニストレータ試験 | |
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英名 | Systems Administrator Examination |
略称 | 初級シスアド |
実施国 |
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資格種類 |
国家試験 (情報処理技術者試験) |
分野 | 情報処理 |
試験形式 | 筆記 |
認定団体 | 経済産業省 |
認定開始年月日 | 1994年(平成6年)12月1日 |
認定終了年月日 | 2009年(平成21年)5月26日 |
根拠法令 | 情報処理の促進に関する法律 |
公式サイト | https://www.jitec.ipa.go.jp/ |
特記事項 | 実施は情報処理技術者試験センター(現 IT人材育成センター国家資格・試験部)。後継はITパスポート試験および基本情報技術者試験。 |
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初級システムアドミニストレータ試験(しょきゅうシステムアドミニストレータしけん、Systems Administrator Examination、略称:初級シスアド、略号:AD)は、情報処理技術者試験に存在した区分である。
概要[編集]
旧名システムアドミニストレータ試験として、1994年に初回試験を実施。このときは、年1回秋期のみの開催だった。1996年にシステムアドミニストレータを初級システムアドミニストレータ試験と改名、さらに上位の範囲を上級システムアドミニストレータ試験(現在のITストラテジスト試験の前身)として実施。1999年に初級システムアドミニストレータの受験者増加により春期・秋期の年2回の開催となり、範囲はやや上等になる。この年から合格率が低下する。
試験内容は、業務効率の向上・改善を目的とし、現状業務における諸問題を把握・解決するために、担当する業務の情報化を利用者の立場から推進するエンドユーザーコンピューティング(EUC)役割がある。ただし、本来のシステムアドミニストレータは、サーバやネットワークの構築・運営・管理を行う「システム管理者」の意味であって、情報システムを利用して担当業務を遂行する「エンドユーザ」や「システム利用者」の意味ではないから、注意を要する。
受験者は高校生・大学生~20代の若い世代が多く、宅地建物取引主任者や旅行業務取扱管理者と並び、就職を控えた学生が取得を目指す人気資格の一つに数えられていた。ただし基本情報技術者試験ほど20代に集中してはおらず、30代以上の層も少なくなかった。60歳代や70歳代など高齢者の受験や、10代の受験も僅かながら増加していた。
受験者は一年に10万人を超えることもあるなど非常に人気が高かった。他の団体の主催する簿記検定やベンダー資格などの合格者が受験することもあり合格者の年齢層は28歳前後の業務経験者が中心であった。学生にとっては合格率が10%を下回る学校も多くあった、そのため他の業界の国家試験としては、1990年代は社会福祉士2000年以降はファイナンシャルプランニング技能士2級程度、しかし2009年度以降のITパスポート試験はファイナンシャルプランニング技能士3級程度の難易度が目安となっている。ただしファイナンシャルプランニング技能士2級は取り方によって難易度の変化が激しいと言われているためこの限りではない。
2009年4月30日の試験を最後に、新制度への移行により廃止されることとなった。
試験の難易度[編集]
- 簿記・経営分析といったストラテジに関する出題は、全経簿記能力検定上級に近い範囲の出題もあった。そのため日商簿記検定2級や販売士2級などの高卒程度の検定試験に合格後の受験者も多かったようである。
- テクノロジの知識を問う範囲は、J検情報処理活用能力試験2級・J検・情報活用試験1級・全商情報処理検定1級、サーティファイシスアド技術者能力認定試験1級・全経情報処理能力検定1級・IT活用能力検定1級、より上等である。特にJ検情報処理活用能力試験2級の選択科目EUCもしくは開発のうち、EUCは初級シスアドへのステップアップを想定し、開発は基本情報技術者へのステップアップを想定して実施していた。J検情報処理活用能力試験2級の受験者の学歴は高校卒業程度が多く、初級シスアドおよび基本情報技術者は大学卒業者が最頻となっている。これらのことから見ても、J検情報処理活用能力試験2級より初級システムアドミニストレータ試験の方が上等に範囲が設定されている。またパソコン検定(P検)では、難易度からみてパソコン検定準1級と2級の間に初級シスアドがあると言われていたが現在のICTプロフィシエンシー検定試験1級より上等である。また、旧通商産業省認定のパーソナルコンピュータ利用技術認定試験(PAT認定試験)の2級の難易度が近いと言われていた。試験範囲は旧第二種情報処理技術者試験で出題されなくなったデータベース、ネットワーク・業務分析等が出題範囲となったが、2009年度に廃止すると同時に、基本情報技術者へこれらの範囲が出題されるようになる。出題の難易度は基本情報技術者試験で問われるものと殆ど同等である。試験時間は5時間で午後問題だけで50ページ以上を2時間半で解かなけれなならない。そのため時間切れになりやすく、初級とつくわりに難易度は高めである。ITパスポート試験が情報系以外の大学4年程度のITリテラシーを想定するのに対し、初級シスアドは基本情報技術者と同じIT関連職の新人程度(1年以上3年未満の実務経験)を想定している。
- 上記試験の合格者のうち、差分講習・修了考査の後、初級システムアドミニストレータ試験の午前試験を免除可能となる試験もあった。この考え方は、後の基本情報技術者試験の午前試験免除につながっている。(J検情報システム試験基本クラス・サーティファイ情報処理技術者能力認定試験2級により置き換わっている。)。他にも国際資格であるCIW(Certified Internet Web Professional)のうちウェブファウンデーションアソシエイトの資格で午前免除講習を受講できた。
- 上位には、情報セキュリティアドミニストレータ試験と上級システムアドミニストレータ試験という検定試験があったが、試験内容としてはデータベース・ネットワーク・運用管理からの出題が多いことからこの検定受検にて技術的知識を習得し、ソフトウェア開発技術者試験(現・応用情報技術者試験)を経てテクニカルエンジニア試験へと難易度が高い検定へと受検していく受験者が多かった。また中小企業診断士一次試験の範囲とも部分的には類似もしくは重複しており、財務会計・運営管理・マーケティング・経営分析・金融などの出題もあるため、ストラテジやマネジメントに関するさまざまな試験へと受検していくことも出来る試験でもあった。
沿革[編集]
- 1994年(平成6年)7月1日 システムアドミニストレータ試験を新設する[1]。
- 年一回、秋期に実施するものとされた。
- 同年10月16日 試験を初実施する[2]。
- 同年12月1日 初の合格者を告示する[3]。
- 1996年(平成8年)5月21日 システムアドミニストレータ試験を廃止し、初級システムアドミニストレータ試験を新設する[4]。
- 上級システムアドミニストレータ試験が新設されたことにより、本試験は名称を変更する形となった。
- 1999年(平成11年)4月18日 春期試験を初実施する[5]。
- 受験者増大により年二回実施されることとなった。
- 2000年(平成12年)午後試験の方式変更。
- 2009年(平成21年)4月19日 最後の試験を実施する[6]。
- 同年4月30日 試験を廃止する[7]。
- 新制度への移行により廃止されることとなった。後身のITパスポート試験では、より一般ユーザ向けに難易度を落とした午前試験のみ実施している。
- 同年5月26日 最後の合格者を決定する[8]。
形式[編集]
午前 | 午後 |
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150分 多肢選択式(マークシート使用) |
150分 多肢選択式(マークシート使用) |
内容 以下の6項目と応用分野
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当初から平成12年(2000年)までは午後は、4問が基礎能力、3問が応用能力とされていた。
科目免除
- 平成17年度(2005年度)から、情報活用試験1級(旧・情報処理活用能力検定準2級)など国又は情報処理推進機構が認定した試験の合格後、差分講習の修了者は修了日から1年間、午前の科目が免除された。現在では基本情報技術者の午前試験の免除方法に受け継がれている。
合格者の特典[編集]
- 国家公務員および地方公務員の採用条件・階級評価となることがある。
- 高等学校・大学・大学院・短期大学等では、入学試験での優遇や、入学後の単位認定の対象となることがある。
- 工業高等学校や高等専門学校などのジュニアマイスター顕彰制度において、12ポイント~20ポイント(基本情報技術者試験へ吸収後)が付与される。このポイントは、実用英語技能検定(英検)準1級・危険物取扱者甲種・第一種電気工事士・電気通信設備工事担任者総合種・第二級総合無線通信士・消防設備士甲種第4類・公害防止管理者(大気2種・水質2種)・ボイラー技士1級・測量士補などと同等である[9][10][11]。
その他[編集]
IT人材育成センター国家資格・試験部の統計資料による累計の受験者数1,644,386人、合格者数519,990人、合格率31.6%(システムアドミニストレータ試験の受験者数84,838人、合格者数29,010人を含む)。
応用分野
情報処理の分野だけでなく、製造・サービス・建設業・運輸など、あらゆる分野において応用が効くとされる。これは、エンドユーザ・コンピューティングがコンピュータの小型化、低価格化の進展によりあらゆる場面で活用される状況が発生しているためであり、今後のユビキタスコンピューティングの進展には必須とも言われていた。
初級シスアドはコンピュータ利用の基本的知識を問うものであるので、これ単独ではなく、多方面の専門職業資格を合わせ持つのが最も望ましい状態とされている。
脚注[編集]
- ^ 平成6年通商産業省令第1号「情報処理技術者試験規則の一部を改正する省令」
- ^ 平成6年6月10日『官報』第1417号、14ページ「官庁報告 国家試験 平成6年度秋期情報処理技術者試験」
- ^ 平成6年12月1日『官報』号外第225号、11ページ「官庁報告 国家試験 平成6年度秋期情報処理技術者試験合格者」
- ^ 平成8年5月21日、通商産業省令第49号「情報処理技術者試験規則の一部を改正する省令」
- ^ 平成10年12月8日『官報』号外第256号、64ページ「官庁報告 国家試験 平成11年度春期情報処理技術者試験」
- ^ 平成20年11月20日『官報』号外第255号、50ページ「官庁報告 国家試験 平成21年度春期情報処理技術者試験」
- ^ 平成19年12月28日、経済産業省令第79号「情報処理技術者試験規則等の一部を改正する省令」
- ^ 平成21年6月18日『官報』号外第127号、1ページ「官庁報告 国家試験 平成21年度春期情報処理技術者試験合格者」
- ^ 若狭東高等学校_ジュニアマイスター顕彰制度について
- ^ 岡山県立笠岡工業高等学校_ジュニアマイスター顕彰に係わる区分表
- ^ 高知工業高等学校HP ジュニアマイスター
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- IT人材育成センター国家資格・試験部
- 初級システムアドミニストレータ試験(AD) 平成13年度春期から平成21年度春期まで(情報処理技術者試験制度 - 制度の概要)
- 初級システムアドミニストレータ試験(AD) 平成6年度秋期から平成12年度秋期まで(同上)