マウリツィオ・ポリーニ
マウリツィオ・ポリーニ Maurizio Pollini | |
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基本情報 | |
生誕 | 1942年1月5日(81歳) |
出身地 |
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学歴 | ミラノ大学 |
ジャンル | クラシック音楽 |
職業 | ピアニスト |
活動期間 | 1957年 - |
マウリツィオ・ポリーニ(Maurizio Pollini、1942年1月5日 - )は、イタリアのミラノ出身のピアニスト。
父親は有名な建築家ジノ・ポリーニであり[1]、また母親(彫刻家ファウスト・メロッティの妹)は声楽もこなすピアニストである。5歳からカルロ・ロナーティに、ロナーティの死後はカルロ・ヴィドゥッソにピアノを学ぶ。現役では最も高い評価を受けているピアニストのうちのひとりである。
略歴[編集]
1957年、15歳でジュネーブ国際コンクール第2位(マルタ・アルゲリッチは女性部門で1位)。1958年の同コンクールで1位なしの第2位。1959年の第一回ポッツォーリ国際ピアノコンクールで優勝。
1960年、18歳で第6回ショパン国際ピアノコンクールに審査員全員一致で優勝。審査委員長のアルトゥール・ルービンシュタインが「今ここにいる審査員の中で、彼より巧く弾けるものが果たしているであろうか」と賛辞を述べ、一躍国際的な名声を勝ち取る。
その後10年近く、国際演奏活動から遠ざかり、国内の様々なコンサート[2]、リサイタルのみに限定出演の形で活動[3]。その理由として、健康面や腕の故障など諸説あるが、まだ若く、さらに勉強が必要であることをポリーニ自身が自覚しており、直ちに多忙な演奏生活に入ることを避けたというのが有力である[4]。提示されたコンサート出演の数が多すぎたため、ストックの協奏曲の数を増やさなければならなかったことも一因である[5]。この間、ミラノ大学で物理学を学んだり、イタリアの名ピアニストアルトゥーロ・ベネデッティ・ミケランジェリに師事するなど、研鑽を重ねていた[6]。
1968年に国際ツアーに復帰し、1971年よりドイツ・グラモフォンから録音作品を発売開始。以後、ヒット作を連発する。1974年、初来日。
1995年、ザルツブルク音楽祭で自身の企画による連続演奏会「ポリーニ・プロジェクト[7]」を開始。プロジェクトは国を変えて現在も続く。
2002年、10月と11月に東京でも同プロジェクトとして9夜にわたる連続演奏会を開き、大きな注目を集めた。2005年、11月に同プロジェクト、東京での第2弾。ただし3夜のみで小規模。ポリーニ本人の演奏は1夜のみ。
特徴[編集]
16世紀から現代まで時代を問わないが、敬遠している作曲家もあり、ラフマニノフの「音の絵」の全曲演奏はなされていない。当世最高、とまで言われる[8]。
ポリーニが録音を残している代表的な作曲家としては、ベートーヴェン、シューベルト、ショパン、シューマン、ストラヴィンスキーなどがある。またブーレーズやウェーベルンといった現代音楽にも積極的に取り組んでいる。独奏曲と協奏曲の録音が中心で、室内楽曲は現在のところ、ブラームスのピアノ五重奏曲のみ。2000年に入ってからモーツァルトのみだが、弾き振りの録音も行っている。ベートーヴェンについては、39年をかけて全ピアノ・ソナタの録音が完了した。
挿話、人柄[編集]
- インタビュアーの質問に対しても即答せず、間を置いて、よく考えてから話す特徴がある。
- NHK教育テレビの番組『ステージドア』(1998年放送)の中で、ポピュラーミュージックに対して、「イマジネーションが貧弱だと思います。クラシックの方が聞いていて面白いのに、どうして若い人たちは好きでないのでしょうかね」と淡々とした口調で厳しい発言をしている。
- 同じく同番組で、小さい頃はあまりピアノの練習をしなかったと語っている。その理由として、「ある弾き方で弾くのは割と簡単だったから」と述べ、「20代より30代、40代の方が多く練習した」と、年齢を重ねるごとにスケジュールが多忙になり練習時間を増やしていったことを振り返っている。
- 同郷(同じミラノ生まれ)の指揮者クラウディオ・アバドとは親友であり、芸術上のパートナーであり(数々の協奏曲で多くの共演を行っている)、政治的・社会的活動においても志を同じくし、イタリア共産党員であった作曲家ノーノとも深い親交があった。
- 日本文化への関心が高い。京都、奈良には何度も通い、神社やお寺などに行っている。紫式部の源氏物語のファンであり、黒澤明の映画、武満徹の音楽も好む。
- 共演はなかったものの、木之下晃によるカルロス・クライバー追悼写真集にクライバーとのツーショットが掲載されている。
- 小柄な体に反して、指がとても大きく、ピアノの“ド”の鍵盤から一オクターブと五度上の“ソ”(約26cm)まで届く。そのため、ピアニストが弾くのに苦労するベートーヴェンのピアノソナタ第21番、第3楽章に出てくる重音グリッサンドを易々と弾くことが出来る[9]。
- 著名なピアニスト、ミケランジェリ、ブレンデルと同じ1月5日生まれ。3人は11年ずつ年が離れている(ミケランジェリは1920年、ブレンデルは1931年、ポリーニは1942年生まれ)。
録音作品(年代順)[編集]
1960年代[編集]
1970年代[編集]
- ストラヴィンスキー:ペトルーシュカからの3楽章(1971)
- プロコフィエフ:ピアノ・ソナタ第7番(1971)
- ショパン:12の練習曲 作品10、作品25(1972)
- シューベルト:さすらい人幻想曲、ピアノ・ソナタ第16番(1973)
- シューマン:ピアノ・ソナタ第1番 作品11、幻想曲 作品17(1973)
- ノーノ:力と光の波のように(1973)
- シェーンベルク:3つのピアノ曲 作品11、6つのピアノ小品 作品19、5つのピアノ曲 作品23、ピアノ組曲 作品25、ピアノ曲 作品33ab(1974)
- ショパン:前奏曲集(1974)
- ショパン:ポロネーズ 第1~6番(1975)
- ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第30・31番(1975)
- ブラームス:ピアノ協奏曲第2番(1976)
- モーツァルト:ピアノ協奏曲第19・23番(1976)
- ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番、ピアノ・ソナタ第28番(1976)
- ヴェーベルン:ピアノのための変奏曲 作品27(1976、1977)
- ブーレーズ:ピアノソナタ第2番(1976、1977)
- ノーノ:...苦悩に満ちながらも晴朗な波(1977)
- バルトーク:ピアノ協奏曲第1・2番(1977)
- ブラームス:ピアノ協奏曲第1番(1977)
- ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番、ピアノ・ソナタ第29・32番(1977)
- ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番(1978)
- ブラームス:ピアノ五重奏曲(1979)
1980年代[編集]
- マンツォーニ:質量(1980)
- モーツァルト:ピアノ協奏曲第12・14・20番(1981)
- シューマン:交響的練習曲、アラベスク(1981、1983)
- ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1・2番(1982)
- シューベルト:ピアノ・ソナタ第20番(1983)
- ロッシーニ:歌劇『湖上の美人』(1983)- 指揮者としての録音
- ショパン:ピアノ・ソナタ第2・3番(1984)
- シューベルト:ピアノ・ソナタ第19・21番、アレグレット、3つの小品(1985)
- シューマン:ピアノ協奏曲(1988)
- ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第17・21・25・26番(1988)
- シェーンベルク:ピアノ協奏曲(1989)
- リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調、灰色の雲、凶星、悲しみのゴンドラI、リヒャルト・ワーグナー―ヴェネツィア(1989)
1990年代[編集]
- ショパン:スケルツォ第1・2・3・4番、子守歌、舟歌(1990)
- ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第13・14・15番(1991)
- ドビュッシー:12の練習曲(1992)
- ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第1・2・3・4番(1992) 再録音
- ベルク:ピアノ・ソナタ(1992)
- ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番(1993) 再録音
- ブラームス:ピアノ協奏曲第2番(1995) 再録音
- ブラームス:ピアノ協奏曲第1番(1997) 再録音
- ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第11・12・21番(1997) 第21番のみ再録音
- ドビュッシー:前奏曲集第1巻、喜びの島(1998)
- ベートーヴェン:ディアベッリ変奏曲(1998)
- ショパン:バラード第1・2・3・4番・、前奏曲嬰ハ短調、幻想曲(1999)
2000年代[編集]
- シューマン:ダヴィッド同盟舞曲集、ピアノ・ソナタ第3番(2000)
- シューマン:アレグロ ロ短調、クライスレリアーナ 、暁の歌(2001)
- ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第5・6・7・8・22・23・24・27番(2002)
- ショパン:夜想曲第1~19番(2005)
- モーツァルト:ピアノ協奏曲第17番、21番(2005)
- ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第1・2・3番(2008)
- モーツァルト:ピアノ協奏曲第12番、24番(2007)
- 第12番のみ再録音
- ショパン:マズルカ第22番~25番、ワルツ第2番~第4番、 ピアノソナタ第2番「葬送」 、即興曲第2番、バラード第2番(2008)
- ピアノソナタ第2番「葬送」とバラード第2番は再録音
- バッハ:平均律クラヴィーア曲集第1巻(2009)
- ショパン:ショパン(2009)
2010年代[編集]
- ブラームス:ピアノ協奏曲第1番(2011) 再々録音
- ショパン:前奏曲集(2012)再録音
- ブラームス:ピアノ協奏曲第2番(2013) 再々録音
- ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第4・9・10・11番・16番・17番・18番・19番・20番(2013,2014)第11・17番のみ再録音
- ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第30・31・32番(2019)再録音[10]
脚注[編集]
注釈[編集]
出典[編集]
- ^ 吉澤ヴィルヘルム『ピアニストガイド』青弓社、印刷所・製本所厚徳所、2006年2月10日、54ページ、ISBN 4-7872-7208-X
- ^ “PROKOFIEV Piano Concerto No.3 M.Pollini, RAI Torino, H.Albert、1967”. www.dailymotion.com. 2018年11月14日閲覧。
- ^ 青澤唯夫「ショパンを弾く」 P248、春秋社、2009年
- ^ “Gli 80 anni di Maurizio Pollini”. www.classicvoice.com. www.classicvoice.com (2022年1月4日). 2023年7月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年8月21日閲覧。
- ^ Schonberg, Harold C. (1987). The Great Pianists: From Mozart to the Present. New York: Simon & Schuster. pp. 488. ISBN 978-0-671-63837-5.
- ^ Morin, Alexander J. (2001). Classical Music: Third Ear: The Essential Listening Companion. San Francisco: Backbeat Books. p. 1134. ISBN 978-0-87930-638-0.
- ^ “ポリーニ・プロジェクト”. www.kajimotomusic.com. 2018年11月14日閲覧。
- ^ “マウリツィオ・ポリーニ・ピアノ・リサイタル”. www.kajimotomusic.com. 2018年11月14日閲覧。
- ^ “アナログ教育 1998年07月05日(日)午後09:00 〜 午後09:30の番組末尾”. www.nhk.or.jp. NHK (1998年7月5日). 2023年8月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年8月21日閲覧。
- ^ “The Last Three Piano Sonatas”. www.deutschegrammophon.com. DG. 2020年5月18日閲覧。
参考文献[編集]
- Schonberg, Harold C. (1987). The Great Pianists: From Mozart to the Present. New York: Simon & Schuster. ISBN 978-0-671-63837-5.
- Morin, Alexander J. (2001). Classical Music: Third Ear: The Essential Listening Companion. San Francisco: Backbeat Books ISBN 978-0-879-30638-0.