ピアノソナタ第8番 (ベートーヴェン)

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ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンピアノソナタ第8番ハ短調作品13『大ソナタ悲愴』Klaviersonate Nr. 8 c-Moll "Grande Sonate pathétique" )は、ベートーヴェンが作曲した10番目の番号付きピアノソナタであり、初期を代表する傑作として知られる。ベートーヴェンの三大ピアノソナタにも含まれる人気曲である。全楽章とも有名。

概要[編集]

6つの弦楽四重奏曲や七重奏曲交響曲第1番などと並ぶ、ベートーヴェンの初期の代表作として知られる。また、ピアノソナタ第14番(月光)、ピアノソナタ第23番(熱情)と並んでベートーヴェンの3大ピアノソナタとも呼ばれることもある。

『大ソナタ悲愴』という標題は、ベートーヴェン自身が名づけた数少ない標題の例として知られる。ベートーヴェン自身が楽曲に標題を与えることは珍しく、ピアノソナタのなかではほかに『告別』があるのみで、その他の標題(『月光』など)はベートーヴェン以外が名づけている。したがって、この標題には特別な意味があるとみなされることも多い。

この曲はそれまでのピアノ曲とは異なり、人間的な感情の表現が豊かになっている。そのような点で、ロマン派音楽のピアノ書法の原点のひとつとみなすことが可能であり、また、ピアノのロマン的な特性を利用することに成功した初めての曲と言うこともできる。

なお、約100年後にロシアの作曲家チャイコフスキーが、同じく「悲愴」と題された交響曲(交響曲第6番ロ短調『悲愴』)を作曲しているが、この作品との関連性は薄い。しかし最近になってチャイコフスキーの「悲愴」のモチーフの多くが、ベートヴェンの「悲愴」と酷似していることや、非和声音を加えて前後を逆さまにしたものだ、という説を唱える研究者も現れた[誰?] 。この説を唱える研究者は未だ少数である。

作曲の経緯[編集]

ピアノソナタ第5番モーツァルトのピアノソナタ第14番との関連性が指摘される。

曲の構成[編集]

ベートーヴェンのそれまでのピアノソナタに比べて革新的な点が多い。初期のピアノソナタには4つの楽章で構成されたものが多いが、この作品は3つの楽章で構成されている。演奏時間は約20分。

第1楽章 Grave - Allegro di molto e con brio
ハ短調ソナタ形式。Graveの序奏を有する点が特徴的。この中の2つの動機が曲全体にわたって用いられる。序奏が冒頭及び途中に用いられるという当時としては珍しい様式だが、ベートーヴェンはこの手法を選帝侯ソナタ第2番ヘ短調WoO.47-2(1782 - 83年)の第1楽章でも用いている。
第2主題は本来であればハ短調の並行調である変ホ長調で現れるべきだが、変ホ短調が使用されている。ハ短調-ト長調-変イ長調-変ロ長調-変ホ短調と巧妙な転調を経て変ホ短調-同長調とすることで第二主題を強調している。第二主題の同名短調を提示するのは初期の作曲者によく見られる。その後は変ホ長調の新動機が出たところで提示部は序奏の再現により断ち切られ、そのまま展開部、再現部へ続く。第2主題、小結尾がハ短調で再現されたのち、クライマックスに達したところで再び序奏が再現した後、第1主題による短いコーダで終結する。
第2楽章 Adagio cantabile
変イ長調小ロンド形式。ベートーヴェンの最も有名なアダージョのひとつであり、さまざまな編曲も知られている。自身の後年の作品でも、交響曲第9番の第3楽章の主題がこの旋律と似ているほか、幻の作品といわれる交響曲第10番の冒頭部でもこの旋律が転用される計画があったとする研究もある(これは、ベリー・クーバーによる補筆完成版などで実際に聴くことができる)。
中間部では、同主調の嬰ト短調(譜面上は同名短調の変イ短調)を経由してホ長調へ転調される。中間部で新たに提示された3連符の素材が再現部に持ち越される。
第3楽章 Rondo; Allegro
ハ短調ロンドソナタ形式。ロンド主題は第1楽章第2主題が元になっている。中間で変イ長調の巧みなフーガが挿入されている他、それまでの楽章からの引用も存在し、最終楽章に相応しい。

編曲例[編集]

関連記事[編集]

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン

外部リンク[編集]