ピアノソナタ第5番 (ベートーヴェン)

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ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンピアノソナタ第5番ハ短調作品10の1は、初期に作曲された三曲のピアノソナタのうちの最初の一曲である。小規模な作品であり、後の《悲愴》との近似性から《小悲愴》と呼ばれることもあるが、あまり普及した通称ではない。

曲の構成[編集]

第1楽章 Allegro molto e con brio
ハ短調。ソナタ形式。ベートーヴェンらしい激しくもあり悲愴感あふれる曲。高低差の激しい躍動的な第一主題と、なだらかに流れる第二主題を持つ。ソナタ形式を知る上で比較的易しい曲で学習しやすい曲であり、初心者がはじめて1番と同様ベートーヴェンのソナタを手がけやすい曲。
第2楽章 Adagio molto
変イ長調。展開部の省略されたソナタ形式。シューベルトの「アヴェマリア」の主題を思わせる、初期作品ながら既にベートーヴェンの緩徐楽章ならではの崇高な旋律美を持つ。
第3楽章 Finale. Prestissimo
ハ短調ソナタ形式。ユニゾンで開始される動機が非常に印象的でこれが激しく激烈を極める動きとなる。オクターヴの単音で打ち鳴らされる、調の確定しない不気味で緊迫感のある動機がやがてハ短調の第一主題に発展する。「運命動機」に似た動機も登場するのが面白い。この動機は楽章全体を支配している。終りのコーダも終るまで緊迫感を伴い不安定で、非常にユニーク。すばやい指のこなしも難しいが、ピア二シモとフォルテシモが極端で交互に激しくやってくるため、音量バランスが見た目より難しい。気持ちを引き締めて音量のバランスに注意したい。

解説[編集]

ハ短調-変イ長調-ハ短調の3楽章構成や、第1楽章に見せる激しい感情の起伏、平穏で美しい旋律を持つ第二楽章などから、後に作曲され初期の傑作とされる第8番(悲愴)との関連性が見いだせる。

ただし、短調のソナタの緩徐楽章を下属調の平行長調にするのはベートーヴェンの好んだ手法であり(他にも《熱情》がこの構成である)、ことさら本曲と第8番との間だけの共通点であるわけではない。