ペ・ド・ノンヌ

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ペ・ド・ノンヌ
種類 ペイストリー
フルコース デザート
発祥地 フランス
提供時温度 熱いか室温
主な材料 バター牛乳小麦粉砂糖、卵、(蜂蜜
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ペ・ド・ノンヌ(Pet de nonne)は、フランスに起源を持ち、カナダアメリカ合衆国イングランドでも見られるデザートペイストリーである。

起源[編集]

フランスでは「尼のおなら」を意味する「ペ・ド・ノンヌ(Pet de nonne)」の名前で知られるが、時には品の無い言葉を避けて「尼のため息」を意味する「スーピール・ド・ノンヌ(soupir de nonne)」の名前で呼ばれることもある[1][2][3]

ペ・ド・ノンヌは揚げ物を指すベニエのうち、揚げたときに生地が膨らむベニエ・スフレに分類される[1]。揚げた生地の中にフルーツを混ぜたクリームを詰め、粉砂糖やフルーツソースで飾り付けて供される。オーブンの普及以前には、半流動的なシュー生地を加熱する際に、熱湯や熱した油に落とすという方法を取っていた。そのため、ペ・ド・ノンヌは焼いて生地を膨らませるシュー菓子の祖先とも言える[1]

珍妙な名前の起源については、フランシュ=コンテのポーム・レ・ダームの修道院でシュー生地を作っている修道女が、調理中に放屁したために誤って生地を油に落としたことがきっかけとなってこの菓子が誕生した逸話が知られている[2][3]。この逸話の年代は18世紀後半とされているが、年代的には矛盾が生じている。ほか、揚げ菓子を作っている修道女のそばを偉い神父が通りかかり、緊張の余り修道女が放屁した逸話、膨らんだ形に由来して名前が付けられたなど諸説ある[1]。また、発祥地もポーム・レ・ダームのほかにトゥーレーヌのマルムティエ修道院、オート=サヴォアシャモニーなどが挙げられている[3]

似たようなフランスの菓子であるペ・ド・スールフランス語版は、しばしばこの菓子と混同されるが、実際は全く別のペイストリーである。

nun’s puffs[編集]

英名の“nun's puffs”の由来は不明であると言われている[4]。1856年発行の料理本にレシピが掲載され、オックスフォード大学Household Encyclopediaでは1859年版から収録されている[5][6]

このデザートは、バター、牛乳、小麦粉、砂糖、卵から作られ、蜂蜜が加えられることもある。伝統的にはラードで二度揚げ焼きし、その後焼く[7][8]。最も確立したレシピでは、バター、牛乳、小麦粉を鍋で調理し、その後卵を加え、焼く前に混ぜた材料に砂糖を振りかける[4]。バターとパン生地を足して2で割ったようなものであり[9]シュー皮に似てクリームも詰められる[7]

このデザートのレシピは、バージニア州の2冊の料理本にも見られる[8][10]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d 吉田『西洋菓子 世界のあゆみ』、285-286頁
  2. ^ a b 猫井登『お菓子の由来物語』、70頁
  3. ^ a b c 河田『「オーボンヴュータン」河田勝彦のフランス郷土菓子』、48頁
  4. ^ a b Tricia Laning New cook book Edition 12, illustrated Meredith Books, 2005 ISBN 0-696-22732-0, ISBN 978-0-696-22732-5, 639 pages Better Homes and Gardens page 126
  5. ^ [1] The household encyclopedia Published 1859 Original from Oxford University Digitized Jun 10, 2008 page 257
  6. ^ Hannah Widdifield Hannah Widdifield Widdifield's new cook book; or, Practical receipts for the housewife Peterson, 1856 Original from the New York Public Library Digitized Aug 7, 2008 410 pages page 181
  7. ^ a b Mrs. C. M. Crawford Houston Civic Club cook book Authors Houston Civic Club (Houston, Tex.), Publisher s.n., 1906 Original from the New York Public Library Digitized Jul 22, 2008 128 pages
  8. ^ a b Mary Stuart Smith Virginia cookery-book (from a South Carolina lady) Compiled by Mary Stuart Smith Harper, 1912 Original from Harvard University Digitized Jun 29, 2007 352 pages page 29
  9. ^ Harold McGee [2] On food and cooking: the science and lore of the kitchen page 552
  10. ^ [Housekeeping in old Virginia: containing contributions from two hundred and fifty of Virginia's noted housewives, distinguished for their skill in the culinary art and other branches of domestic economy] Compiled by Marion Cabell Tyree Favorite Recipes Press, 1965 Original from the University of Michigan Digitized Aug 28, 2009 528 pages

参考文献[編集]

  • 河田勝彦『「オーボンヴュータン」河田勝彦のフランス郷土菓子』(瀬戸理恵子構成・編集, 誠文堂新光社, 2014年2月)
  • 猫井登『お菓子の由来物語』(幻冬舎ルネッサンス, 2008年9月)
  • 吉田菊次郎『西洋菓子 世界のあゆみ』(朝文社, 2013年2月)

関連項目[編集]