アイテム課金

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アイテム課金(アイテムかきん)とは、主にオンラインゲームソーシャルゲームなどで導入されている、ゲーム内で利用できるアイテム(追加コンテンツ)を課金してユーザー販売するビジネスモデルである。

日本オンラインゲーム協会(JOGA)のガイドライン[1]によると、2013年現在、ゲームの課金方式は「パッケージ販売」、「月額課金」、「アイテム課金」、「従量課金」(プレイするたびに課金する方式)、「その他の課金」(複数の課金方法を組み合わせたものなど)の5種類あるとされており、そのうちの「アイテム課金」を本稿では扱う。以下、用語などはJOGAのガイドラインになるべく従うものとする。

概要[編集]

アプリケーション内で小出しで課金することによってサービスが拡充するというマイクロトランザクション英語版と呼ばれるシステムの一種である。アイテム課金型ビジネスモデルを採用したゲームの多くは、プレイするにあたっての基本料金が無料である「基本無料」と呼ばれる形態のビジネスモデルを採用しているが、アイテム課金にその他の課金方法を組みあわせた「ハイブリッド課金」と呼ばれる形態のゲームも存在する。

日本では一部でも無料で遊べる要素がある場合「基本無料」などと銘打つことが多く、課金については小さく注意書きとして書くことが多い。

歴史[編集]

日・中・韓でのみ「アイテム課金」が流行した背景として、当時韓国中国で、インターネットの普及に合わせて売り切り型ゲームで急激に増える海賊版ユーザーを防ぐために月額課金型のオンラインゲームが隆盛をみており[2]、一部の韓国製オンラインゲームが日本にも進出して人気を得ていたという事情がある。ちなみに日本市場におけるフィーチャーフォン時代後期以降からスマホ時代にかけてのコンテンツビジネスの歴史は『スマホ白書』各年度版に詳しい。

アイテム課金は、2001年9月に韓国中国で同時にリリースされた韓国製MMORPGの『The Legend of Mir 2』が、アバター用の服装のアイテムに課金したのが最初である。当初はカジュアルゲームと呼ばれ、高額な月額課金が払えない経済力の低い学生を対象とする無料ゲームにアイテム課金が採用された。

アバターシステムとは、アバター用アイテムを購入することでアバターにおしゃれをさせられる、という形で(ガチャではなく)アバターで収益を上げる無料ゲームのビジネスモデルを指す。のちに「ガチャ」と言うシステムを生み出す『メイプルストーリー』も、2003年4月のリリース当時はアバターシステムを柱としていた[3]。一方ハイブリッド課金とは、月額課金や従量課金などにアイテム課金(この当時の「アイテム」とは「アバター用アイテム」を指す)を組みあわせて収益を上げるビジネスモデルであり、当時の一般的なオンラインゲームはこちらを採用していた。例えば、無料のカジュアルゲーム『メイプルストーリー』を提供するネクソンも、一方では『風の王国』などの月額課金ゲームを提供しており、中国で人気の『The Legend of Mir 2』も当時はハイブリッド課金を採用していた。『メイプルストーリー』開発者インタビューで、無料ゲームのアバターに「1万円近く使っている人が多い」ということがわざわざ特筆されるなど、後に天井無しの課金額が各国で法の介入を招く「アイテム課金」も、カジュアルユーザーをメインターゲットとする2003年当時の収益はこの程度であった。ちなみに2003年8月に日本でのベータ版サービスが開始されたこの『メイプルストーリー』が、日本初の基本無料(アイテム課金)ゲームとなる[4]

ランダム型アイテム提供方式(いわゆる「ガチャ」)は、日本版『メイプルストーリー』が2004年4月に実装した「ガシャポンシステム」が初出で[5]、韓国や中国ではランダム型アイテム提供方式が法的に規制されているため日本で最初に実装された。韓国ではガチャによって得られるアイテムが最初から分かっている「確定ガチャ」(日本で言う「BOXガチャ」に相当)が2014年の時点では主流で、日本のようによりレアなアイテムを得られる確率を低くするのではなく、よりレアなアイテムを得られるための課金が倍々で増えることで収益を得ている[6]。また、中国ではガチャ課金が2013年に禁止されたため、課金の累積額に応じて「特権」を得られる「VIPシステム」が収益の基本となっている[7]。それぞれ、廃課金と呼ばれる高額課金ユーザーを生み出し、2010年代には社会問題化した(後述)。2008年の時点で既に「ガシャポンはアイテム課金の代表的なサービス」であることが『メイプルストーリー』の開発者から語られている。2010年代には無料ゲームに数十万円も課金する「廃課金」はおろか、数百万円課金する「神」クラスも現れた。

基本無料」は、1990年代後半から2000年代前半にかけて存在した、上記『メイプルストーリー』などの無料カジュアルゲームを祖先として挙げることもできるが、月額課金に代わって「基本無料」が主流となる直接的なきっかけとなるのが、月額課金型オンラインゲームの市場飽和と、中国・韓国・日本で2004年から2005年にかけて運営を開始した無料カジュアルゲーム『マビノギ』や『スカッとゴルフ パンヤ』などの成功である。これを受け、韓国では2005年8月にネクソンが『風の王国』など自社の月額課金ゲームを「基本無料」へと切り替えるパラダイムシフトが起きた。それらが成功をするのを見た競合韓国企業も、自社のコンテンツを「月額課金」から「基本無料」へと変えた[8]。中国でも2005年11月には『The Legend of Mir 2』が「基本無料」となり、続いて中国で2006年4月に正式リリースされた『征途』の成功によって基本無料(部分有料)でアイテム課金型のビジネスモデルが確立する。『征途』をきっかけに、中国でも金山軟件完美世界などの大手メーカーが一気に基本無料MMORPGに参入し、「征途時代」と呼ばれる盛況を呈した[9]。欧米のゲームでも『The Lord of the Rings Online』が2007年11月に「Free to Play」(F2P)となるなどして、次第に一般化した。

「カードコレクションバトル」型ゲームは、「キャラクターのコレクション」「合成や進化」「スタミナ制」「ガチャ」などの要素を持つゲームで、日本のフィーチャーホン時代のピークとなる2010年から、スマートフォン時代の最初期となる2012年にかけてブームとなり、日本メーカーから盛んにリリースされた[10]。モバイルソーシャルゲームはグリーが2007年5月にリリースした「釣り★スタ」が史上初[11]で、それ以来、PC時代→フィーチャーフォン時代→スマホ時代と、アイテム課金は文字通り「進化」を経ていった。『スマホ白書2015』では、スマホ向けゲームがゲーム性よりも収益性を重視するようになった原因として、フィーチャーフォン時代のSNSゲームのブームを挙げ、スマホ画面をタップするだけのゲームからゲーム性を重視する姿勢へと回帰した一つのエポックとして、2012年2月リリースの『パズル&ドラゴンズ』を挙げる。

アプリ内課金は、2011年2月にApp Storeが「App内課金」に対応したのが最初で、2011年3月にはAndroid Market(後のGoogle Play)も「アプリ内課金サービス」に対応した[12][13]ことで一般的になった。この仕組みは、アプリ内でのアイテム課金に対する決済をアプリマーケット側が代行してくれるもので、これによって製作者側としてはアイテム課金方式のゲームアプリをより容易に作ることが出来るようになり、また課金者側としてもクレジットカードを必要とせずに課金が行えるなど課金がよりカジュアルに行えるようになった。このようなマイクロペイメント少額決済)を容易にする、スマートフォンタブレット端末といったスマートデバイスが普及してからは、アイテムに限らずアプリ内のサービスごとに小出しに課金するマイクロトランザクション方式のビジネスモデルを採用したゲームが一般的になった。

フリーミアムとは、基本的なコンテンツを無料(フリー)で提供し、付加的な価値(プレミアム)を有料で提供することで収益を得るビジネスモデルを指す。2011年にはApp Storeにおける無料ゲームの「売り上げ」が有料ゲームの売り上げを超え[14]、2012年には日本で『アイドルマスター シンデレラガールズ』の売り上げが月あたり10億円に達するなど[15]、2012年にはゲームにおけるフリーミアムのビジネスモデルの優位性が明確になった。大手ゲームメーカーの中では最後までフリーミアムに否定的見解を示していた任天堂も2014年2月に初の基本無料タイトル『STEELDIVER SUBWARS』をリリースするなど、2014年にはゲーム業界においてフリーミアムのビジネスモデルが完全に定着した。

課金方式[編集]

ポイント方式と直接課金方式[編集]

2000年代においては、リアルマネー(現金電子マネー)、クレジットカードプリペイドカードなどにより、いったんある程度の額を支払って「ゲーム内の仮想通貨」である「ポイント」を購入し、そのポイントを使用してアイテムあるいは「有料ガチャ」を購入する、という方式が一般的だった。これは、アイテムを購入するたびにいちいち100円程度の少額を課金する手続きをすることが当時は現実的ではなかったためである(課金するたびに決済手数料がかかる。課金が少額だと決済手数料のほうが高くなる可能性も)。しかし2010年代以降はマイクロペイメントのシステムが整備され、「ポイント」を利用せずにApple StoreやGoogle Playなどの決済代行業者に登録されたクレジットカードから課金が直接引き落とされる方式も一般的となった。ただし、もともと日本では2000年代後半のフィーチャーフォン時代からゲームの課金を携帯電話の料金決済に合算できるような仕組みが整備されており、マイクロペイメントへの親和性は高かった。

課金アイテム[編集]

販売されるアイテムは多岐に及び、性能が高いアイテム、無課金のプレイでは入手が不可能(もしくは困難)なレアアイテム、どんなアイテムかは解らないもののレアアイテムが出てくることが期待されるランダム型アイテム提供方式(ガチャ)、キャラクターの服装や髪型など見た目を変えるアバター関連アイテム(ファッションアイテム)、「スタミナ」回復アイテム、コンティニューを可能にするアイテム、経験値の獲得効率・消費項目の時間短縮・アイテム所持数の増加といった利便性を向上させるアイテムがある。消費者庁による「インターネット上の取引と「カード合わせ」に関するQ&A」においては「アイテム」「カード」「キャラクター」「アバター」などを総称して「アイテム等」と呼称され、いずれも日本の法律である不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)の「景品類指定告示第1項」の第4号「便益、労務その他の役務」に相当すると判断されており[16]、したがって景品表示法の規制を受ける。

アイテム課金制のゲームの多くは無料プレーヤーには「ストレス」を与え徐々に課金に導くシステムとなっている[17]。一方で課金アイテムが少なく、無料プレイヤーでも最後までプレイ可能なゲームも存在する。

課金アイテムは「景品類指定告示第1項」の第1号「物品」に相当する価値があると錯覚されがちだが、実際は前述のとおり単なる「役務」(サービス)であり、課金アイテムに「物品」としての価値はない

アバター用アイテム[編集]

ゲーム内のアバターの服装などのファッションアイテム。「アイテム課金」というシステムが誕生した当時からあるアイテム。「ガチャ」が存在しない時代は「アイテム」というと必然的にアバター用アイテムのことを意味した。

「スタミナ」回復アイテム[編集]

「基本無料」のゲームの多くは「スタミナ」(「燃料」「体力」などと呼ばれる要素や、プレイ後の再プレイ制限時間などの「消費項目」)制を導入している。ゲームプレイ時にそれらを消費し、その消費量と上限値を設けることで、無課金プレイは1日あたりにプレイできる回数が1回~数回程度に制限される。この仕組みは東アジア圏のソーシャルゲームによく見られるが、西洋においてはほんの一部のゲームで採用されてはいるものの「League of Legends」「World of Tanks」のようにプレイ制限を設けないタイプが主流である。

この要素はゲーム内でクリアした際に得られる報酬の他に、時間の経過と共に回復していく。連続プレイにより消費が自然回復に追いつかなくなってきた(待ち時間が煩わしくなってきた)場合、課金アイテムを使用することで回復できる[18]アーケードゲームでのコンティニューなどのクレジット追加に近い)。

レアアイテム[編集]

文字通りレアなアイテム。アイテムの提供数や提供期間が限定されていたり、提供開始後からの利用期間が限定されていたり、提供終了後に再発売を行わないことをうたって希少感を高めているケースもある。これらのアイテムはゲーム内で直接購入するのが一般的であるが、攻略本などの書籍にレアアイテムと交換できるシリアルコードを付属させることでさらなる収益を計ることもある。

有料ガチャ[編集]

アイテム課金を採用しているゲームの中には、「アイテム等」を商品とした「くじ」を引く権利が有料で販売されているものがある。JOGAのガイドラインでは有料ガチャと呼称し、「利用者が有料で利用するランダム型アイテム提供方式」と定義される。課金者側からの視点では通称「ガチャ課金」ともいう。有料ガチャで提供されるアイテムのうち、「顧客を誘引する目的で提供されるもの」が特に「ガチャレアアイテム」と定義される。景品表示法でも有料ガチャと呼称し、「くじを用いるなど、偶然性を利用して、利用者に対してアイテム等を提供する仕組み」を「ガチャ」、「有料で行うガチャ」を「有料ガチャ」と定義している。ゲームにおいては有料または「ログインボーナス」などと称して無料で提供される何らかの「アイテム」を介してガチャを行うものが多いため、「無料ガチャ」と「有料ガチャ」は区別されず、単に「ガチャ」と表記される場合が多いが、景品表示法では法的規制を受ける「有料ガチャ」と、規制を受けない「無料ガチャ」ははっきりと区別されている。

日本では有料ガチャに対して長らく法的規制がなく、「遊びすぎに注意しましょう」くらいしか言えない状況が2012年まで続いたが[19]、2012年に起こった「コンプガチャ騒動」(後述)において、欺瞞性があったり著しく射幸心を煽る有料ガチャに関しては景品表示法の規制を受けることが消費者庁によって明言され、業界団体の自主規制なども設けられた。

「有料ガチャ」の価格は運営会社やゲームタイトルごとによって異なり1回ガチャを回すごとに一定の金額を消費し、あらかじめ設定された確率によって希少性の異なるアイテムを1個ないし複数個入手する。その中には有料ガチャでしか入手ができない強力なレアアイテムや、レアキャラクター、希少性の高いアバター用アイテム等(すべてJOGAにおいては「ガチャレアアイテム」)が一定の確率で目玉アイテムとして入る。

JOGAガイドラインでは有料ガチャで提供されるアイテムの価格がガチャ一回分の価格を上回ることが規定されており、また1%(以上)の確率、5万円(以下)でレアアイテムをゲットできることが期待される(期待値)。このため、ガチャアイテムには最低でも課金額と同等の資産価値があることが錯覚されるが、どれだけ高額の課金をしたアイテムであっても資産として課税されないことから解るように、どれだけスーパーレアなガチャレアアイテムであっても法的には資産としての価値はゼロである(前述のとおり、アイテム等は法的には「物品」ではなく「サービス」である)。

しかし、2015年末から2016年3月現在も続いているCygamesの「グランブルーファンタジー」の特定キャラクターが追加される武器の出現率に事を発する騒動において、国家公安委員長兼消費者及び食品安全担当大臣兼規制改革担当大臣兼防災担当大臣の河野太郎が2月26日の会見でコメントするにまで至ったことを受け、Cygames側は3月10日より一定回数以上(300回、9万円相当)のガチャを引けば任意のアイテムを入手できる仕様を追加した。これについて国際カジノ研究所所長の木曽崇はtwitter上で「賭博的にはセーフだがキャラがプレゼント扱いになったことで景品表示法の規制対象となった」と指摘[20]し、一部ニュースメディアからも指摘されている[21]

ガチャの種類[編集]

無料ガチャと有料ガチャ(ガチャ課金)が存在する。2013年12月に中国政府がガチャ課金を「賭博」と判断して突然禁止したためにコンテンツの変更を余儀なくされる[22]など、ガチャ課金は中国に限らず突然違法とされるリスクがあるため、同じゲームでも日本と韓国以外ではガチャ課金以外のマネタイズ方式が採用されている場合も多い(2015年の時点で中国では主に「VIPシステム」が採用されている)。一方で「ガチャ」と言うシステム自体は実装し、「無料ガチャ」でドロップしたアイテムボックスを開いてアイテムをゲットするための「鍵」を有料で販売する、BOXガチャや確定ガチャなどランダムではないガチャによる課金を実装して「賭博ではない」と主張する、など何らかの形でガチャを通じたマネタイズが行われている場合もある。

ランダム型アイテム提供方式(通常のガチャ)[編集]

現実世界に存在するいわゆる「くじ」とは違い、提示された当選確率に応じてランダムにアイテムが当選する。いわゆるくじにおける「箱」や「残量」のような概念がないためハズレを引いても当たりの確率が上がることはなく、一度当選したアイテムも再び同じ確率で当選しつづける(このような事象を、確率論では「独立」と言う)。日本と台湾では単に「ガチャ」と言うと「ランダム型アイテム提供方式」のことを指すが、韓国では禁止されている。

BOXガチャ[編集]

アイテムの総数・内容があらかじめ予告されており、1個アイテムを排出すると(擬似的に)箱の中身が1個減っていくガチャ形式。予告された個数分排出させることでアイテムが全て揃う。イメージとしては通常のくじに近く、抽選のたびに均等に景品が選ばれる場合はハズレを引くと当たりの確率が上がり・当たりを引くとハズレの確率が上がることになる。プレイ回数・金額の上限(天井)が存在する。ただし実際には当たり・ハズレの当選率を制御することは可能で、レアリティに応じて確率を変動させたり終盤にしかレアアイテムが当たらないような調整をすることは可能である。その他、BOXガチャに他の異なる条件を組み合わせていることもある。

ランダムガチャが賭博として禁止された韓国では「BOXガチャ」を採用して法的規制を回避したが、それでも一人当たりのモバイルゲーム課金額が日本に次いで世界2位となり3位(アメリカ)以下を引き離すなど、日本で主流のランダム型アイテム提供方式と比べて必ずしも射幸心が劣っているわけではない。

確定ガチャ[編集]

「箱」の中身が1つで、課金すれば確実に特定のアイテムが貰えるガチャ。アイテムが当たる「くじ」を引く権利を販売するガチャのシステムを使って、アイテム販売に相当することを行なう。

コンプリートガチャ(コンプガチャ)[編集]

通常のガチャを複数回行うことで得られる特定の複数アイテムをすべて揃えることで、特定のアイテムが得られるガチャ。日本では禁止されている。

「基本無料」と「Free to Play」との違い[編集]

「基本無料」ゲームはFree to Play(F2P)とも呼ばれるが、欧米では特にゲームの根幹部分(勝敗やプレイ要素、プレイ回数など)に制限を設けず自由・無料(Free)とした場合にのみF2P (Free to Play) と呼称することが求められるため[23]、日・中・韓のゲームの「基本無料」と欧米のゲームの「Free to Play」は本来異なる概念である。中国では「基本無料(部分有料、アイテム課金)」のビジネスモデルは「基本免費(道具収費)」と呼び、「F2P模式」と対比して「IB(item billing)模式」と呼ばれるが、これは中国製英語である。

日本・韓国・台湾ではF2Pゲームの多くがアイテム課金依存型のビジネスモデルを採用しているのに対し、欧米ではアイテム課金非依存型のビジネスモデルを採用したF2Pゲームも多い。例えばゲーム内広告を中心とするビジネスモデルや、アイテムに限らず追加マップや追加サービスなど「基本」以外の要素を小出しに課金するマイクロトランザクション型などがあり、ゲームの一部までをプレイできて課金することで続きがプレイできる「体験版」もF2Pに含まれる。上記の「Free to Play」の制約の中で、欧米のアイテム課金依存型のゲームの多くは「ゲームをプレイできるためのアイテム」ではなく「対戦で勝つためのアイテム」に課金すると言うビジネスモデルを採用しているが、このような重課金を煽るシステムは日本のガチャ依存型ゲームと同様に大きな批判があり、課金バランスによって、無課金でも対等に勝てるFree to Winや重課金でのみ勝てるPay to Winと言う分類がされている[24]

世界の課金[編集]

Electronic Entertainment Design and Research(EEDAR)の調査によると、2015年度のモバイルゲームの地域別ランキングでは1位が「Pay to Win」の北米、2位が「ランダム型アイテム提供方式」の日本、3位が「VIPシステム」の中国、4位が「BOXガチャ」の韓国、の順に収益が多い[25]

一人当たりでは日本、韓国、北米、中国の順に収益が多い(ただし中国ではスマホがまだ全国民に普及し切っていない点に注意)。

日本の一人当たりの課金額は一月に9.39ドル(約1158円)、無課金ユーザーを除いた場合は一人当たり一月に24.06ドル(約2967円)と、2位以下を引き離している。

ガイドライン[編集]

JOGAガイドライン[編集]

日本オンラインゲーム協会(JOGA)が策定するガイドライン。2009年に策定された当時は、スマホもコンプガチャも存在しない、フィーチャーフォンでSNSゲームの普及が始まったあたりの時期であるため、チートやRMTなど当時よくあったトラブルに注意喚起を呼び掛ける程度の簡易なものだった。

コンプガチャ騒動が起こった2012年に改訂され、ガチャなどに関する詳細な規定が盛り込まれた。しかしJOGAに所属しない企業は守る義務がなかったため、引き続きトラブルが起こった。

グラブル騒動が起こった2016年の4月1日に再度改訂された。今回はJOGAだけではなく他の業界団体であるモバイル・コンテンツ・フォーラム(MCF)に所属する企業や、両団体に所属しない企業にも順守することを求めている。(グラブル騒動を起こしたCygamesはMCFに所属している)

CESAガイドライン[編集]

日本のほぼすべての大手ゲーム会社が加盟するコンピュータエンターテインメント協会(CESA)が策定するガイドライン。

CESAの所属企業(つまり日本のほぼすべての大手ゲーム会社)が順守すべき「オンラインゲーム運営ガイドライン」が存在するが、スマホどころか携帯電話用SNSゲームすら存在しない2006年に策定されたものがほぼそのままの形で2016年まで公開されており、SNSゲーム普及以降に急増したトラブルには何の効力もなかった。2009年に改訂されチャット機能などに関する注意が加わった程度であった。

2016年4月27日に再度改訂され、「ネットワークゲームにおけるランダム型アイテム提供方式運営ガイドライン」が公開された。会員企業に対してガチャで取得できるアイテムや確率を表示するよう求めている他、JOGAやMCFとも連携してゲーム業界の健全な成長に貢献していくことを明記している[26]

問題点[編集]

ガチャの確率[編集]

サイコロ(期待値3.5)の出目の平均値を示した図。だいたい500回くらいの試行収束している。ガチャレアアイテム(期待値5万円)だと2500万円に相当し、期待値が収束する前に破産する

ガチャで目玉景品やその他のレアアイテムの当たる確率は運営会社のさじ加減次第であるが(JOGA加盟企業の場合、確率が明記されていない場合は1%以上の確率、期待値が5万円以下とされる)、ほとんどの場合レアアイテムが入手できるか否かは、確率論でいうところの偶然性により、プレーヤーが過去のガチャ課金で「いくら課金したのか」(課金額)は無関係である。つまり、「一定額以上の課金で必ずレアアイテムを入手できる」仕様にはなっておらず(埋没費用)、「一定回数以上のガチャで必ずレアアイテムを入手できる」仕様にもなっていない(試行の独立)、「一定回数以上ハズレを引けば必ずレアアイテムを入手できる」仕様にもなっていない(事象の独立)ため、運が悪いと数十万円課金してもレアアイテムが入手できないこともある。そのため、レアアイテムの確率が低く設定されている『女神転生IMAGINE』では10万円を投じても欲しいアイテムが出なかったプレイヤーが、運営会社を提訴した[27][28]

ちなみにガチャレアアイテムの確率がJOGAガイドラインで許容されるギリギリの1%に設定されていた場合、1回500円のガチャに100回(5万円)課金した場合に1つもレアアイテムを得られない確率は36.6%(1/eにほぼ等しい)、200回(10万円)課金した場合でも13.3%の人はレアアイテムが出ない計算となる。さらに、300回(15万円)の場合は4.9%、500回(25万円)の場合は0.65%、688回(34万4000円)の場合にようやく0.099%となることから、有料ガチャに34万3500円課金しても1000人に1人は1つもレアアイテムを得られない計算となる。確率の収束を見るには最低でも数百回の試行が必要になるが、期待値5万円のガチャで(この場合「ガチャを一回引くこと」ではなく「5万円前後の課金をしてガチャレアアイテムを一つ引くこと」が一回の試行に相当する)、仮に100回の試行で収束が見られたとしても500万円程度、500回の試行で期待値が収束したとしても2500万円程度の課金が必要になり、期待値の収束を見る前に破産する。未成年者はこのような後期中等教育数学A「場合の数と確率」)で習う期待値の計算ができないことも一因で有料ガチャに高額課金をしてしまう可能性が高いことから、JOGAガイドラインでは未成年者に対する高額課金の抑止が明記されており、「課金上限」「ペアレンタルコントロール」などの抑止策がとられているが、あまり活用されておらず、2010年から2014年にかけて、消費者庁に寄せられるトラブルの件数は毎年倍増している[29]

景品表示法では、「ガチャ」自体には欺瞞性は認められておらず、射幸心を煽ること自体も規制されない。ただしガチャの一種「コンプリートガチャ(コンプガチャ)」については、2012年に消費者庁によって「欺瞞性」、すなわち「当選率に関する錯覚」、特に「判断力が未成熟な子ども」に対する欺瞞性が認められ、昭和44年に景品表示法で禁止された「カード合わせ」に相当する可能性があるとされたため、法の介入を受ける前に業界団体によって自主規制が行われた。ちなみにそれまで俗語であった「ガチャ」が法的な用語となったのもこの件がきっかけである。

コンプガチャ騒動後は業界団体によってアイテム課金に対して一定のガイドラインが設けられたが、スクウェア・エニックスコロプラなど業界団体に未加盟の大手メーカーもあり、これらのメーカーはガイドラインを守る義務がないため、引き続き問題となっている。2015年半ば頃からガチャに含まれるレアリティの封入率が公表されるようになり、2016年3月より前述のグランブルーファンタジーにおける騒動によってガチャに含まれるアイテム単位での出現率が公表されるようになった。

コンプリートガチャ(コンプガチャ)[編集]

景品くじでしか購入できないアイテムを、特定の組み合わせで揃えると別のレアアイテムを獲得できる「コンプリートガチャ」(通称:コンプガチャ)と呼ばれるシステムが2012年以前は日本に存在した。懸賞による景品類の提供に関する事項の制限(昭和52年3月 1日公正取引委員会告示第3号)では「二以上の種類の文字、絵、符号等を表示した符票のうち、異なる種類の符票の特定の組合せを提示させる方法を用いた懸賞による景品類の提供はしてはならない」としており、消費者庁は「コンプリートガチャ」がこの違法な「カード合わせ」に該当するとの見解を2012年5月に示した[30]。その後、業界団体のソーシャルゲーム6社協議会は同月に「コンプリートガチャガイドライン」を発表、2012年8月にはJOGAもコンプガチャの禁止に加えて確率明示などのガイドラインを示した「オンラインゲームにおけるビジネスモデルの企画設計および運用ガイドライン」を発表、国内各社はコンプリートガチャを終了するとともに、これまで無法状態であったガチャに対して自主規制が設けられた。

優良誤認[編集]

2014年に入って『ドラゴンクエストモンスターズ スーパーライト』のガチャ課金が、「金の地図ふく引き」にて表示されている画像には「金の地図」が8枚あるのに対して、その地図を入手できる確率が非常に低いことから不当表示であるとして、購入したユーザが胴元であるApple StoreおよびGoogle Playに直接返金を求め、それが受理されたことから、騒動に発展した[31]。これは『クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ』『ガンダムコンクエスト』にも飛び火し[32]、『魔法使いと黒猫のウィズ』開発・運営元のコロプラはプラットフォームへ直接請求した場合アカウントを停止するとしている[33]

課金アイテムの下方修正[編集]

アイテム課金を取り扱うゲーム全てに言える事であるが、課金アイテムの性能や効果が開発元で想定してたものより強力であったため、アップデートなどで課金アイテムの性能を引き下げることで公式フォーラムが炎上することがある。『World of Tanks』ではアイテム課金として扱われているアメリカ軍Tier8中戦車「T26E4 スーパーパーシング」が2013年の8.6アップデートにて性能の下方修正が行われる事が告知され、公式フォーラムではユーザーから反発を呼んだ[34]。開発運営元のWarGameing.net社は事態の収拾に追われ、最終的に返金を希望する購入者に対してゲーム内で使用する有料マネーでの返却と修正が完了するまでの間使用及び購入禁止処置で対処した[35]

「基本無料」の問題[編集]

いわゆる「基本無料」、すなわち無料でプレイできることを強調する宣伝をしながら、実際はある程度以上ゲームを進めるためには有料アイテムの購入や有料サービスの利用が必須になるようなシステムは、消費者庁の「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」では「いわゆるフリーミアム(基本的なサービスを無料で提供し、高度な、あるいは、追加的なサービスを有料で提供して収益を得るビジネスモデル)における正確でない「無料」といった表示」と定義し、明確に景品表示法上の問題としている[36]。また、未成年が「無料」に気を引かれて有料のアイテムやコンテンツの存在を自覚せずプレイした結果、数万円の料金が請求されたり、無断で親のカードを利用するトラブルも報告されている[37]

リアルマネートレーディング(RMT)にまつわる問題[編集]

ゲーム内で得た有料アイテム等をゲーム内のアバターやキャラクター同士で取引できるゲームシステムの場合、ユーザー同士が現実世界の金銭を対価にアイテム等を取引することがあり、これをリアルマネートレーディング(RMT)という[38]。特にガチャという射幸心を煽るシステムにアイテム課金が組み合わされる(ガチャ課金)と、レアアイテム等に対して単なるゲーム上のデジタルデータにもかかわらず資産性を感じるようになり、それがRMTの温床となる[38]。多くのゲームで規約違反とされており、また韓国では違法であるが、日本では2015年現在、法的な整備が追い付いていない。

脚注[編集]

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  1. ^ JOGAガイドライン
  2. ^ Kimの韓国最新ゲーム事情#13 4gamer
  3. ^ メイプルストーリーインタビュー
  4. ^ 懐かしくも新しい! 2DサイドビューアクションMMORPG「メイプルストーリー」βテスト開始 4gamer
  5. ^ 「メイプルストーリー」4周年を記念した大型アップデートを実施
  6. ^ 【インタビュー】「FFXIV」プロデューサー吉田直樹氏 G-STAR特別インタビュー - GAME Watch
  7. ^ 「トップ3のゲームで月商9億円。数百万円課金する『神様クラス』のVIPユーザーも」中国スマホゲーム市場の実態をワンオブゼムが語る。 | アプリマーケティング研究所
  8. ^ 【韓国】オンラインゲームの部分有料・アイテム課金モデル、8年の歴史とこれから - japan.internet.com、2009年12月3日。インターネットアーカイブ、2014年2月21日版、2015年12月8日閲覧。
  9. ^ 中国网游是否即将进入“征途时代” 新浪游戏(新浪网)、2006年9月
  10. ^ 『スマホ白書2015』「2014年のスマホゲーム市場の概況」
  11. ^ グリー株式会社 (GREE, Inc.) - 会社情報 - ヒストリー グリー株式会社
  12. ^ Androidでアプリ内課金を始めるための基礎知識(1/3) - @IT 2011年4月28日
  13. ^ In-App Purchaseプログラミングガイド - Apple Developer
  14. ^ Valadares, Jeferson (2011年7月11日). “Free-to-play Revenue Overtakes Premium Revenue in the App Store”. Flurry. 2011年8月5日閲覧。
  15. ^ Idolmaster Mobile Game Earns 1 Billion Yen a Month”. Anime News Network (2012年9月27日). 2013年7月19日閲覧。
  16. ^ インターネット上の取引と「カード合わせ」に関するQ&A 消費者庁
  17. ^ Erik Kain (2014年3月6日). “スマホに背を向ける任天堂は間違っていない”. Forbes.com. 日本経済新聞社. 2015年12月8日閲覧。インターネットアーカイブ、2014年3月9日版、2015年12月8日閲覧。
  18. ^ 『パズル&ドラゴンズ』初心者はこれだけ覚えておけばいい基本情報まとめ”. ファミ通.com. エンターブレイン (2012年5月16日). 2013年5月4日閲覧。
  19. ^ 読売新聞社モニ太のデジタル辞典 - インターネットアーカイブ、2014年2月22日版、2015年12月8日閲覧。
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  21. ^ Cygames、「グラブル」ガチャに実質的上限 9万円相当で必ず好きなキャラ - ITmedia、2016年2月25日版、2016年3月12日閲覧。
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  29. ^ 第1部 第2章 第2節 ( 4 )デジタルコンテンツの普及とそれに伴う消費者トラブル | 平成26年版 消費者庁
  30. ^ インターネット上の取引と「カード合わせ」に関するQ&A 2013年1月9日 消費者庁 表示対策課
  31. ^ 「DQMスーパーライト」ガチャ表示にユーザー怒り → 返金祭りへ発展か スクエニ「現在確認中です」 ※追記”. ITMedia (2014年2月5日). 2014年2月8日閲覧。
  32. ^ 「DQMスーパーライト」の返金騒動が飛び火 「黒猫のウィズ」「ガンダムコンクエスト」でも返金求める動き”. ITMedia (2014年2月6日). 2014年2月8日閲覧。
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  34. ^ T26E4 SuperPershing Changes in the 8.6 Update
  35. ^ Premium Vehicle Changes in the 8.6 Update
  36. ^ 「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」の公表について 消費者庁ホームページ 平成23年10月28日
  37. ^ コンプガチャ、規制後も子供の高額課金トラブル減らず 未成年の半数超は中学生以下 産経新聞 2013年1月5日
  38. ^ a b 薄まるギャンブル性 競売サイト自粛なら効果 日本経済新聞 2012年5月18日

参考文献[編集]

関連項目[編集]

  • プレイバイウェブ(PBW) - 商業PBWでもマイクロトランザクション制を採用したものがあり、販売されるものはキャラクターの行動結果をまとめた『小説』、キャラクターのイメージを描いた『イラスト』、キャラクターのイメージを音源化した『音声』『音楽』、少人数パーティーで編成される『ウェブゲームシナリオ』『ウェブゲームバトルコロシアム』、などがある。

外部リンク[編集]